最近、リスキリングの導入について相談されることが増えている。
「リスキリング(re-skilling)」とは「事業や業務上での必要性に応じて、新たなスキルを獲得する/させること」だ。
近年、あらゆる業界でDX化が進み、ビジネスモデルや業務プロセスに変化が起きている。
技術の革新スピードはとても速く、変化の波は激しさを増している。
この流れにうまく乗るには、特定のスキルの研鑽(けんさん)だけでなく、時代に合わせて様々なスキルを「掛け算式」に習得する柔軟性が必要だ。
そのために生まれたのが、複数のスキルを習得する「リスキリング」という考え方である。
例えば、ある企業では、営業担当者にプログラミングを習得させ、ルーチンワークの自動化を実現しようとしている。
また、別の企業では、全社を挙げて生成AIの活用方法を学び、業務効率化を図ろうとしている。
企業は、このようなリスキリングを進めることで、生産性を向上させたり、競争力を強化できる。
さらには、従業員自らが成長を実感できることで、日々の業務に対するモチベーション向上にもつながる。
行政による支援策が充実してきていることもあり、リスキリングへの関心はますます高まっている状況だ。
しかし、盛り上がりを見せるリスキリングにおいて「うまくいっている企業」と「うまくいっていない企業」の二極化が顕著になってきていると感じる。
なぜリスキリングの導入に失敗してしまうのか?
それは、「リスキリングによってどのような成果を実現するか」の目的設定があいまいだからである。
「このスキルが役立ちそうだから学んでもらおう」
「他社が取り組んでいるから自社でもやってみよう」
そのようなふわっとした考えではリスキリングの導入は失敗する。
ポジティブな面がクローズアップされがちなリスキリングだが、当然ながらリスキリングの導入にはコストがかかる。
従業員の時間的コストや、企業の金銭的コストなどだ。
つまり、リスキリングとはコストを払う「先行投資」なのである。
また、合わせて配慮すべき点は、従業員のモチベーションだ。
従業員には、前向きな気持ちで取り組んでもらう必要がある。
「ただでさえ忙しいのに、また新しいことを学ばないといけないのか・・・」
「自分や会社にとって、本当にプラスになるのだろうか・・・」
「他にもっと身に付けたほうがよいスキルがあるのではないか・・・」
こういったネガティブな感情が膨らんでしまうと、従業員のモチベーションが下がってしまい、離職されてしまうリスクさえ出てくる。
リスキリングには、上記のようなコストやリスクがあるため、導入には慎重を期すべきなのだ。
では、リスキリングを成功させるためには、どのような目的を設定すべきだろうか?
ここからは、私が考える「リスキリングで実現すべき成果」について述べていく。