教育訓練の種類と給付率
リスキリングとは?取り組むメリットやオススメの学習テーマ
リスキリングとは、「時代の変化に対応するために、デジタル分野を中心とした新たなスキルを習得すること」を指します。本記事では、リスキリングに取り組むメリットや、オススメの学習テーマ、個人が利用できる給付金などについて紹介しています。
近年、自分のキャリア設計を見直す人が増えています。
「将来性がある仕事に転職したい」
「成長している業界で働きたい」
「スキルを身に付けて副業したい」
こうした思いを抱くビジネスパーソンが増える背景には、デジタル技術の急速な進歩があります。
例えば、ChatGPTをはじめとする生成AIは、あらゆる業界の仕事を効率化し、業務プロセスを革新しつつあります。
今後、AIによって代替されていく職業も多いと予想されるなか、現状のスキルだけを頼りに5年、10年と活躍し続けるのは難しくなってくるでしょう。
市場価値の高い人材であり続けるには、常に自分のスキルをアップデートし続け、ときには新たなスキルを学び直す姿勢が求められます。
そこでいま話題になっているのが「リスキリング」です。
多くのメディアで取り上げられ、最近よく見聞きするようになった言葉ですが、どのような意味かご存じでしょうか。
リスキリングとは、「時代の変化に対応するために、デジタル分野を中心とした新たなスキルを習得すること」を指します。
例えば、Webデザインや動画編集、マーケティング、プログラミングといったスキルを新たに身につけ、これまでとは異なるキャリアの可能性をひらくことです。
ここ数年でリスキリングに取り組む人が増えていますが、それは転職を検討している人だけではありません。
「現職での昇給や昇進を目指したい」「副業を始めて収入を増やしたい」といった理由でリスキリングに取り組む人も多くいます。
リスキリングの学習テーマは多岐にわたりますが、中でもオススメしたいのはWebデザインや動画編集といった「クリエイティブスキル」です。
クリエイティブスキルは、未経験からでも勉強しやすく、これからの時代にも引き続き需要があるスキルだからです。
この記事を読めば、以下のようなことがわかります。
リスキリングに取り組むメリット
リスキリングの学習テーマにはどのようなものがあるか
クリエイティブスキルがオススメな理由
そのほか、個人がリスキリングに取り組む際に活用できる給付制度も紹介します。
自分のキャリア設計を見直したい方、Webデザインや動画編集といったクリエイティブスキルに興味がある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
なお、本記事は個人におけるリスキリングにフォーカスしているため、企業におけるリスキリングの導入については「リスキリングとは?意味やメリット、導入時のポイントを徹底解説」をご覧ください。
リスキリングとは?
「リスキリング(reskilling)」について、経済産業省は次のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」 参考:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」 |
リスキリングは、社会のデジタル化に対応するための取り組みとして注目されるようになりました。
そのため、おもにデジタル分野でのスキル獲得を指す言葉として使われます。
これまでとは異なる職務に対応できるよう、Webデザインや動画編集、マーケティング、プログラミングといったスキルを新たに身につけることを「リスキリング」と呼びます。
リカレント教育との違い
リスキリングとよく似た言葉に「リカレント教育」というものがあります。
「リカレント(recurrent)」は「繰り返す」「循環する」といった意味で、「リカレント教育」とは、「学校教育を終えた後も、必要に応じて再び教育機関などで学び、仕事と学習を繰り返すこと」を指します。
リカレント教育とリスキリングの違いは、リカレント教育は離職や休職をしてから学習するのに対して、リスキリングは現職で仕事を続けながら学習することが原則だという点です。
また、リカレント教育は個人の関心にもとづいた自由な学びであり、デジタル領域に限らず、仕事に活かせるあらゆる分野が学習対象となります。
リスキリングに取り組む3つのメリット
リスキリングに取り組むことで、主に3つのメリットを得られます。
自身の市場価値が上がる
キャリアの選択肢が増える
失業のリスクが低くなる
【メリット1】自身の市場価値が上がる
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発行した「DX白書2023」によると、実に8割を超える企業が「DXを推進する人材が不足している」と回答しています。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、デジタル技術を活用して、業務プロセスやビジネスモデルに変化をもたらすことを言います。
企業は、DXを推進できるようなデジタル技術をもった人材を求めていますが、そうした人材が労働市場に足りていないのです。
経済産業省は「2030年までに国内のIT人材が40~80万人規模で不足する」と試算しています。
このような状況の中、リスキリングを通してデジタルスキルを習得できれば、自身の市場価値を上げることができます。
成長産業であるデジタル領域のスキルをもっていることで、企業から評価されやすい人材になれるからです。
デジタルスキルを習得すれば、転職市場で有利になるだけでなく、現職での昇給や昇進も狙いやすくなります。
【メリット2】キャリアの選択肢が増える
リスキリングで新たなスキルを習得すれば、キャリアの選択肢を増やすことができます。
例えば、Webデザインのスキルを習得すれば、営業職からWebデザイナーへの転職といったキャリアチェンジが可能となります。
あるいは、現在の勤め先で新たにデザイン業務を担当し、これまで外注していたバナーやチラシを制作するといったケースもあるでしょう。
また、副業としてクラウドソーシングなどで仕事を受注することもできるようになります。
このように、リスキリングは自身のキャリアの可能性を広げるきっかけとなります。
【メリット3】失業のリスクが低くなる
世界経済フォーラムが発表した「The Future of Jobs Report 2020」では、「今後5年間で8500万件の雇用が消失し、9700万件の新たな雇用が創出される」と予測されています。
これは、デジタル技術の発展によって、市場で求められるスキルが刻々と変化しているということです。
リスキリングを通して自身の市場価値を高め、キャリアの可能性を広げておけば、将来的に失業するリスクを抑えることができます。
時代の変化に合わせて、ニーズの高いスキルを習得する柔軟性があると、常にビジネスの最前線で活躍できるのです。
リスキリングで何を学ぶ?人気の高いスキル4選
リスキリングの学習テーマとして、人気が高いスキルを4つ紹介します。
Webデザイン
動画編集
デジタルマーケティング
プログラミング
1.Webデザイン
Webデザインとは
おもにWebサイトやアプリケーションのビジュアルを制作するためのスキルです。
また、広告用バナーの作成や、資料に用いる図解の作成など、幅広い業務に活かすことができます。
デザイン系の学校を出ていなくても、未経験からスキルを習得してキャリアチェンジすることは十分に可能です。
学習内容
PhotoshopやIllustrator、Adobe XDといったデザインソフトの操作を覚え、レイアウトや配色、フォントといったデザインの知識とスキルを学びます。
向いている人
Webデザインは、自分で何かを作ったり表現したりすることが好きな人に向いています。
また、視覚的な美意識をもっていたり、細やかな点にまで気を配れる人に適性があると言えるでしょう。
2.動画編集
動画編集とは
広告やイベント用の動画、商品やサービスの紹介動画など、多種多様なシーンで必要とされるスキルです。
動画市場は年々拡大を続けており、今後も需要が高いスキルと言えます。
学習内容
Premiere ProやAfter Effectsといった動画編集ソフトの扱い方を覚え、カット編集やトリミング、BGMや効果音の挿入、テロップ入れなどのスキルを学びます。
向いている人
動画編集は、映像や音楽を効果的に組み合わせ、情報や感情を伝える必要があるため、構成力や視覚的なセンスをもっている人に向いています。
また、長時間にわたる細かい作業が多いため、コツコツと作業を進められる人や、細部にまで気を配れる人に適性があります。
3.デジタルマーケティング
デジタルマーケティングとは
デジタル技術とインターネットを活用したマーケティングのスキルです。
ネット社会である現代において、製品やサービスを効果的に宣伝するためには、デジタルマーケティングのスキルが欠かせません。
学習内容
SEOやWeb広告、データ分析、SNS運用、コンテンツ制作など、デジタルマーケティングの範囲は多岐にわたります。
すべてに精通することは難しいので、範囲をある程度絞って学習し、自分の得意分野をもつことが重要です。
向いている人
デジタルマーケティングは、分析的な思考や論理的な思考ができる人に向いています。
戦略を立案するための洞察力や、効果的なコンテンツを制作する企画力も求められます。
4.プログラミング
プログラミングとは
Webサイトやアプリなどを制作するためにコードを書くスキルです。
プログラミングを学ぶことで、Web制作会社やシステム開発会社で働くエンジニアを目指せます。
学習内容
目的に応じたプログラミング言語を学びます。
Web制作:HTML、CSS、JavaScript、PHPなど
Webアプリ開発:Python、PHP、Rubyなど
スマホアプリ開発:Swift、Kotlin、Javaなど
向いている人
プログラミングは、論理的思考力や問題解決能力が高い人に向いています。
自己学習やトライアンドエラーを通じて成長する意欲がある人に適した分野です。
ここまで、人気が高いリスキリングのテーマを紹介しました。
自身のキャリア設計をふまえ、自分にはどのようなスキルが必要なのかを検討してみてください。
個人が利用できる給付金【教育訓練給付制度】
ここで、個人がリスキリングに取り組む際に活用できる「教育訓練給付制度」を紹介します。
教育訓練給付制度は、キャリアチェンジやスキルアップを目指す方が、厚生労働大臣が指定する講座を受講した際、費用の一部が支給される制度です。
語学や専門資格、デジタルスキルといった幅広い分野の講座が対象となっています。
オンライン講座や、夜間・土日に開催されている講座もあるため、働きながら受講することが可能です。
教育訓練給付金の種類と支給金額
教育訓練給付金には「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3種類があります。
それぞれの給付率や対象となる講座は以下の通りです。
|
対象講座の例 |
一般教育訓練 受講費用の20%(上限10万円) |
Webデザイン、動画編集など |
特定の一般教育訓練 受講費用の40%(上限20万円) |
コーディング、プログラミングなど |
専門実践教育訓練 受講費用の最大70%(年間上限56万円・最長4年) |
データ分析やAI関連スキルなど |
※教育特訓給付制度の対象となる講座は、この表に記載したようなデジタル関連スキル以外にも、語学の習得や資格の取得といった幅広い領域の講座が用意されています。
教育訓練給付金の支給条件
教育訓練給付は、正社員に限らず、パートやアルバイト、派遣労働者の方も対象となります。
雇用保険の加入が前提となっており、受講開始時点で雇用保険に加入しているか、離職してから1年以内(妊娠、出産、育児、疾病などで適用対象期間を延長した場合は最大20年以内)であることが必要です。
そのうえで、今までに教育訓練給付を受けたことがなく、雇用保険の加入期間が1年以上(専門実践教育訓練は2年以上)ある方が支給対象となります。
また、過去に教育訓練給付を受けたことがあっても、前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上ある方も教育訓練給付が受けられます。
教育訓練給付制度の詳細は「教育訓練給付制度|厚生労働省」をご確認いただくか、お住まいの地域を管轄するハローワークまでお問い合わせください。
ここまで、リスキリングの概要を一通り解説してきました。
とはいえ、「何を学ぼうか迷ってしまう」「学習テーマを決めきれない」という方もいるでしょう。
そのような方には、Webデザインや動画編集などのクリエイティブスキルのリスキリングをオススメします。
次の章でその理由を説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
クリエイティブスキルがオススメな3つの理由
リスキリングの学習テーマは多岐にわたります。
中でもWebデザインや動画編集といったクリエイティブスキルはオススメです。
主な理由としては、以下の3つが挙げられます。
学習のハードルが低い
未経験からでも転職しやすい
現職や副業でも活かしやすい
【理由1】学習のハードルが低い
Webデザインや動画編集といったクリエイティブスキルは、プログラミングなどに比べると学習のハードルが低く、仕事を続けながらでも学習しやすいという特徴があります。
デザインソフトや動画編集ソフトの基本的な操作は、数週間〜1か月程度で身に付けることが可能です。
また、クリエイティブスキルは、自己学習の中でアウトプットをしやすいスキルです。
例えば、デジタルマーケティングのスキルは、実務の中でアウトプットしながら力を養っていく部分が大きいと言えます。
一方、Webデザインや動画編集であれば、学んだ知識を自由に試したり、気軽に制作したりできるので、学習内容をどんどんアウトプットできます。
そのため、スキルが定着しやすく、リスキリングに取り組むモチベーションを保ちやすいのです。
【理由2】未経験からでも転職しやすい
クリエイティブスキルは、デザインなどの専門学校を出ていなくても、未経験から身につけることが十分に可能です。
社会人になってから勉強を始め、Webデザイナーや動画編集者にキャリアチェンジし、活躍している人は大勢います。
Webデザイナーや動画編集者は、転職市場で求人数が多く、今後も引き続き需要がある職業でしょう。
ただし、およそ30代半ばを目安として、未経験からの転職ハードルは高くなってくるので注意が必要です。
一方、現職や副業でクリエイティブスキルを活かすのであれば、年齢が理由で不利になることは少ないでしょう。
【理由3】現職や副業でも活かしやすい
Webデザインや動画編集といったクリエイティブスキルは、現職や副業で活かしやすいスキルです。
そのため、Webデザイナーや動画編集者に転職するとまではいかなくても、クリエイティブスキルをリスキリングをする価値は十分にあると言えるでしょう。
例えば、営業職の人がWebデザインのスキルを習得すれば、資料のデザインを洗練したり、わかりやすい図解を作ったりすることで、現職に活かすことができます。
動画編集のスキルがあれば、プレゼンのために簡易的な動画を作ったり、部下を育成するために研修用の動画を作ったりできるようになります。
また、現職の中で実践できる場が少なかったとしても、クラウドソーシングで個人的に仕事を受け、副業を始めることもできます。
このように、クリエイティブスキルは実践の場を作りやすいため、リスキリングのメリットを発揮しやすいスキルだと言えるでしょう。
クリエイティブスキルを学べるプログラム
リスキリングに取り組む際、最も重要なのは学習プログラムの質だと言えます。
どんなにモチベーションが高くても、教材や講座のクオリティが低ければ、効率よく学習することはできないからです。
クリエイティブ業界を牽引するアドビでは、質の高い学習コンテンツの提供を通じて、クリエイティブスキルのリスキリングを支援しています。
例えば、アドビ公式のYouTubeチャンネル「AdobeCreativeStation」や、短期完結型のオンライン講座「アドビことはじめ クリエイティブカレッジ」では、プロのクリエイターが主要なクリエイティブツールの使い方をわかりやすく解説しています。
デザインソフトのPhotoshopやIllustrator、動画編集ソフトのPremiere Proなどについて、動画コンテンツで学ぶことができます。
また、2022年に官民一体となり発足した「日本リスキリングコンソーシアム」にアドビも参画しています。
同団体では、パートナー企業が多様な学習コンテンツを公開しており、あらゆる企業や個人のリスキリングをサポートしています。
アドビは、クリエイティブツールの使い方や、制作のコツなどに関するプログラムを提供しており、無料で受講することが可能です。
クリエイティブスキルを学習する際は、ぜひこれらのプログラムやコンテンツを活用してみてください。
AdobeCreativeStation「Premiere Pro超入門編」
「Adobe Creative Cloud」 で使えるクリエイティブツールの一部
いずれも世界中のプロデザイナーやプロクリエイターが使用しているツールであり、写真加工、動画編集、UXデザイン、グラフィックデザインなど、あらゆるクリエイティブにご利用いただけます。
初心者であっても、チュートリアルを一つずつこなしていけば、基本操作はすぐに習得できるので安心してください。
アドビが提供する学習コンテンツ、Creative Cloudの各種ツールを活用し、ぜひリスキリングに取り組んでみてください。