リカレント教育
リスキリングとは?意味やメリット、導入時のポイントを徹底解説
リスキリングとは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するため、新たに必要となるスキルを獲得することです。本記事では、リスキリングのメリットや導入手順、導入事例などについて、わかりやすく解説しています。
いま注目が集まっている「リスキリング(re-skilling)」という言葉をご存じでしょうか。
リスキリングとは「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するため、必要となるスキルを新たに習得すること」です。
リスキリングで習得するのは、主にデジタル分野のスキルであり、例えば、Webデザインや動画編集、デジタルマーケティング、プログラミングといったスキルが学習テーマとなります。
近年、「DX時代」という言葉が生まれているように、業務プロセスや顧客体験はどんどんデジタル化し、あらゆるビジネスで大きな変化が生まれています。
そのような時代に適応するため、重要となるのが「リスキリング」です。
「リスキリング」というワードのGoogle検索数は、2022年から2023年にかけて約11倍にまで増えました。
この状況を見ればわかるように、リスキリングへの世間の関心が急速に高まっています。
本記事では、リスキリングの意味やメリット、導入時のポイントなど、リスキリングの基本について解説していきます。
また、リスキリングの導入について具体的にイメージできるよう、実際の導入事例や、利用できる助成金なども紹介しています。
リスキリングに興味のある方、とくに経営者やマネジメント層の方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、本記事は企業におけるリスキリングにフォーカスしているため、個人におけるリスキリングについては「リスキリングとは?取り組むメリットやオススメの学習テーマ」をご覧ください。
リスキリングとは?
まずはリスキリングという言葉の定義を確認しましょう。
リスキリングという言葉について、経済産業省は次のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」 参考:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」 |
この定義を参考にして、リスキリングを一言で説明するなら、「新たな職務に必要なスキルを身に付ける/させること」と言えます。
例えば、営業しか担当したことがない社員に、デジタルマーケティングのノウハウを学ばせ、Webコンサルタントに転身してもらう。
また、広報をしている社員に、新たに動画編集のスキルを習得させ、セミナー用の動画コンテンツを制作してもらう等。
このように、新たな職務につながるスキルの習得を「リスキリング」と呼びます。
組織にリスキリングを導入することによって、企業は新たな人材活用が可能となります。
同時に、従業員にとってもキャリアパスが広がるため、企業と従業員、双方にとってメリットが大きい取り組みなのです。
スキルアップとリスキリングの違い
さて、「リスキリングとスキルアップはどう違うのか?」と疑問をもつ方も多いでしょう。
この2つには明確な違いがあります。
「スキルアップ」は今もっているスキルを磨いて向上させることですが、「リスキリング」は新たな分野のスキルを習得することです。
例えば、スキルアップは、エンジニアがプログラミング言語をさらに勉強して、現在よりも高度な業務を行えるようになるといったことを意味します。
一方でリスキリングは、エンジニアがWebデザインといった別領域のスキルを学び、現在とは異なる職務に対応できるようになることを指します。
リカレント教育とリスキリングの違い
続いて、リスキリングと似た言葉である「リカレント教育」について説明します。
「リカレント(recurrent)」は「繰り返す」「循環する」といった意味で、「リカレント教育」とは、「学校教育を終えた後も、必要に応じて再び教育機関などで学び、仕事と学習を繰り返すこと」を指します。
リカレント教育とリスキリングの違いは、リカレント教育は個人の興味にもとづく自由な学びであるのに対して、リスキリングは企業が主体となって取り組むものであるという点です。
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リスキリング |
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実施責任 |
個人 |
主に企業 |
目的 |
個人の関心にもとづいた学び |
新しい職務に必要なスキルの獲得 |
学習方法 |
離職して学習する |
就労しながら学習する |
学習内容 |
広範囲にわたる分野 |
主にデジタル分野 |
続いて、「なぜ今リスキリングが必要とされているのか?」、その理由を紐解いていきます。
現代にリスキリングが必要とされる理由
近年、リスキリングに対する関心は世界的に高まっています。
大きなきっかけとなったのは、2020年に開かれた世界経済フォーラムの年次総会です。
世界経済フォーラムとは、ビジネス界のリーダー、政府や国際機関の要人、著名な学者たちが集まり、世界情勢について議論が行われる国際機関です。
同機関では、リスキリングの重要性についてたびたび指摘してきました。
2020年の会議では「2030年までに全世界で10億人のリスキリングを目指す」と宣言され、リスキリングを推進する動きが世界的に活発化したという経緯があります。
この流れを受け、2022年10月の所信表明演説で岸田首相は、「リスキリングの支援に5年間で1兆円を投じる」と表明し、今日までに様々な推進策が講じられています。
その結果、「リスキリング」という言葉が流行語大賞にノミネートされるなど、国内でも注目が集まるようになりました。
そして、現代にリスキリングが必要とされる背景にあるのは、「DX時代」と呼ばれる世界の潮流です。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、「デジタル技術を活用して事業やサービスを革新すること」を意味します。
そして、DX時代とは、このデジタル化の波が社会に浸透し、企業にとってDXの推進が欠かせない時代、まさに私たちが生きている現代のことです。
このDX時代においては、産業構造全体が大きく移り変わっていきます。
世界経済フォーラムの報告書「The Future of Jobs Report 2020」では、「今後5年間で8500万件の雇用が消失し、9700万件の新たな雇用が創出される」と予測されています。
これは、ビジネスの現場でDX化が進むことにより、労働者に求められるスキルが変化していくことを示しています。
しかし、このDX化の推進に対応できる人材不足が深刻化しています。
例えば、経済産業省の試算によれば、2030年までに国内のIT人材は、40~80万人規模で不足する見通しです。
また、日本では生産年齢人口が減少し続けており、そもそも労働者の数が足りていない状況です。
2022年5月に経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」によると、2050年までに日本の生産年齢人口は、現在の約7400万人から約5300万人にまで減少すると推計されています。
つまり、日本経済全体にとって、DX時代に適応できる人材の育成が急務となっています。
そこで政府や企業が力を入れ始めたのが「リスキリング」という取り組みなのです。
ではここからは、リスキリングに成功した企業の事例を見てみましょう。
実際の導入事例を知ることで、リスキリングがもたらす効果を具体的にイメージすることができます。
国内外でのリスキリングの導入事例
実は今、すでに多くの企業がリスキリングの導入に成功しています。
各社がどのようにリスキリングを実施し、どのような成果を得られたのか、国内外での事例を3つ見てみましょう。
【事例1】AT&T
最初に紹介するのは、アメリカの通信業界大手である「AT&T」の成功事例です。
AT&Tはリスキリングの先駆者として有名で、様々なメディアでもリスキリングの事例として紹介されています。
AT&Tがリスキリングに取り組み始めたのは、今から10年以上も前のことです。
AT&Tでは2008年に、従業員のスキルの実態を把握するための内部調査を実施しました。
すると、実に約半数もの従業員が、今後の通信業界の変化に対応できるスキルをもっていないことがわかったのです。
この事実に危機感をもった同社は、「ワークフォース2020」と名付けた大規模なリスキリングプロジェクトを実施。
自社の将来ビジョンに必要なスキルを明確にしたのち、学習のためのプログラムやプラットフォームを従業員に提供し、成績に応じた報酬制度を導入しました。
その結果、リスキリングプロジェクトに参加した従業員は、参加しなかった従業員に比べ、1.7倍の昇進率を実現し、離職率は1.6倍も低くなりました。
現在では技術職の80%以上が社内異動によって補充できており、多くの企業からリスキリングの成功事例として評価されています。
【事例2】西川コミュニケーションズ
続いては日本国内の事例を紹介します。
創業100年を超える老舗企業「西川コミュニケーションズ」は、リスキリングの導入によって大きな変革を遂げた企業のひとつです。
かつての西川コミュニケーションズは、その売上の9割以上を印刷事業が占めており、デジタル化へと向かう時代の変化に強い危機感をもっていました。
そこで同社は、2013年頃からデジタル人材の育成に取り組み始め、積極的にリスキリングを推進してきました。
例えば、2017年のCG事業の立ち上げ時には、まったくの未経験者から希望者を募り、外部研修やeラーニングを用いて専任スタッフを育成しました。
最近では制作部の改革に着手し、需要が縮小している紙媒体からデジタル分野へのシフトを図る中で、デザイナーからプログラマーへの配置転換といった新たなキャリア形成を実現しています。
西川コミュニケーションズがリスキリングに成功した理由のひとつは、社長である西川氏が従業員に対して、リスキリングの意義と重要性を繰り返し伝えてきたことです。
また、社長自らが率先して、AI関連の資格を取得することで、従業員のモチベーションを高めました。
その結果、多くの営業社員がAI関連の資格取得に成功し、AIプランナーへのキャリアチェンジにつながったのです。
もともとは紙媒体の印刷事業が中心だった西川コミュニケーションズ。
リスキリングによって華麗な変化を遂げ、今ではデジタル分野を中心とした事業転換に成功しています。
【事例3】パーソルホールディングス
リスキリングの波は、人材業界のあり方にも影響をもたらしています。
業界最大手の「パーソルホールディングス」は、リスキリングによって動画制作を内製化し、動画コンテンツを通した顧客コミュニケーションの改善を実現しています。
コロナ禍以前の同社は、求職者や企業に対して、対面でのコミュニケーションが中心となっていました。
しかしコロナ禍によって、対面でのコミュニケーションが難しくなり、そこで選択肢に上がったのが動画の活用でした。
動画であれば、対面とまではいかなくても、情緒的なコミュニケーションが実現できるからです。
早速、社内にリスキリングのプロジェクトを立ち上げ、動画制作スキルの獲得に向けたプロジェクトを開始。
動画編集ツールにはアドビ製品のPremiere Proを導入し、映像制作コンサルティング会社の協力を得ながら、動画制作のリスキリングを実施しました。
その結果、セミナー動画の制作を内製化できるようになり、スピーディーな情報発信や、外注コストの削減に成功しています。
以上、企業におけるリスキリングの成功事例を紹介しました。
このように、様々な業界でリスキリングの導入が進んでおり、大きな成果を得ている企業が増えています。
次の章では、リスキリングを導入するメリットを改めて整理します。
リスキリングを導入するメリット
リスキリングの導入には様々な効果が期待できます。
以下、主なメリットを4つ解説します。
人材不足の解消
イノベーションの促進
外注コストの削減
従業員エンゲージメントの向上
【メリット1】人材不足の解消
従業員のリスキリングを実施することで、デジタル人材の不足を、社内での配置転換によって解消できるようになります。
先述の通り、労働市場においてデジタル人材は不足の一途をたどっており、求職者に有利な売り手市場が続いているため、採用による人材獲得のコストは高くなっています。
採用に代わる人材獲得の手段として、リスキリングは多くの企業にとっての活路となり得るでしょう。
また、新たな人材を採用するよりも、リスキリングによって従業員を育成したほうが、自社にフィットした人材を確保しやすくなります。
なぜなら、既存の従業員であれば、自社の文化や業務プロセスを理解しているため、新たなスキルを自社に最適化したカタチで習得できるからです。
【メリット2】イノベーションの促進
リスキリングを通して、これまでの職務と異なる分野を学ぶことで、従業員は新たな視点や発想を得られるようになります。
その結果として、業務プロセスの改善や、新規事業の開発につながるなど、社内のイノベーションを促進できるというメリットがあります。
近年は製品やサービスのライフサイクルが短くなっています。
これからの時代を生き抜くためには、イノベーションが生まれやすい社内文化が強力な武器となるのです。
従業員が柔軟なアイデアを出し、イノベーションを生み出すことで、顧客のニーズ変化に対応できる可能性が高まるからです。
ニーズ変化への対応力が高まれば、企業の競争力を強めることができます。
【メリット3】外注コストの削減
リスキリングによって、これまで外注していた業務を内製化できれば、外注コストを削減できます。
金銭的なコストのほか、コミュニケーションコストも減り、浮いた資金と時間を別のところに充てることができます。
また、業務を内製化することで、スケジュールの柔軟な調整や、メンバー間でのスムーズな意思疎通が可能となり、テンポよくプロジェクトを進行できるようになります。
ノウハウが社内に蓄積されていくため、それが会社の資産となっていき、従業員のさらなる成長にもつながっていくでしょう。
【メリット4】従業員エンゲージメントの向上
リスキリングの導入には、「従業員エンゲージメントの向上」というメリットもあります。
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社に対して、どれだけ信頼感や貢献意欲をもっているかという度合いです。
リスキリングは従業員のキャリアアップを促進し、雇用の安定や働きがいの向上につながります。
リスキリングを通してキャリア形成を支援することで、モチベーションの向上や、離職率の低下といった効果が期待できるのです。
以上、リスキリングを導入する主なメリットを紹介しました。
続いては、実際にリスキリングに取り組む手順について解説します。
【手順1】学習テーマの検討・対象者の選出
リスキリングとは、事業戦略上で必要となる職務に対して、従業員が対応できるようにするための取り組みです。
そのため、まずは自社の事業戦略にもとづき、今後どのようなスキルが必要なのかを明確にしましょう。
今後必要となるスキルと、従業員が現在もっているスキルとを比較し、そのギャップにあたる部分がリスキリングに取り組むべき学習テーマとなります。
学習テーマが決まったら、次はリスキリングに取り組んでもらう従業員を選出します。
リスキリングの対象者を選ぶ際には、希望者を募ったり、本人の意向を尊重したりするなど、できるだけ自主性を重んじましょう。
なぜなら、一方的に会社側からリスキリングを強要してしまうと、「やらされ感」が出てしまい、モチベーションの維持が難しくなってしまうからです。
そして、リスキリングを実施する背景や目的をきちんと説明することが重要です。
「What(学習内容)」や「How(学習方法)」だけでなく、「Why(学習目的)」をしっかり共有することで、従業員の理解を得やすくなったり、意欲を引き出したりすることができます。
例えば、以下のような内容を伝えます。
何のためにリスキリングを実施するのか
事業や組織にどのようなメリットがあるのか
従業員のキャリアパスにどう関係してくるのか
【手順2】学習プログラムの選定・スケジュールの作成
リスキリングの学習テーマと対象者が決まったら、次は学習プログラムを用意します。
学習プログラムとは、学習するために必要な教材や講座、研修などのことです。
学習テーマに関して、既に十分な知識をもっている従業員がいる場合、学習プログラムを社内で作ることも可能です。
ただし、専門的な内容であればあるほど、自分たちで学習プログラムを作るには多大なリソースが必要となります。
そこでオススメなのは、外部のリソースを利用することです。
既存のオンライン教材を利用したり、外部講師を招いたりしたほうが、高いコストパフォーマンスを発揮できる場合が多いのです。
詳しくは後述しますが、アドビではデジタル人材の育成支援として、様々な学習コンテンツを提供しています。
例えば、アドビ公式のYouTubeチャンネル「AdobeCreativeStation」や、短期完結型のオンライン講座
「アドビことはじめ クリエイティブカレッジ」では、デザインソフトや動画編集ソフトの使い方を解説しています。
クリエイティブ分野のリスキリングに取り組む際には、ぜひ活用してみてください。
学習プログラムを選定できたら、続けてリスキリングに取り組むスケジュールを作成しましょう。
いつまでに、どの程度の習熟度を目指すかを決め、計画的に実施することが重要です。
無計画に取り組んでしまうと、適切な学習ペースがわかりませんし、実務を優先してリスキリングを後回しにしてしまう可能性が高いからです。
そのため、学習プログラムの内容に応じた目標、スケジュールをしっかりと決めましょう。
【手順3】学習環境の整備・リスキリングの実施
続いて、学習環境の整備が必要となります。
まずは従業員の業務量を調整して学習できる時間を確保しましょう。
リスキリングはあくまで業務の一環なので、就業時間内に学習時間を確保します。
学習テーマによっては、ツールや実践場所などを用意することも必要です。
例えば、動画編集のリスキリングを実施したパーソルホールディングスでは、動画編集ツールとしてPremiere Proを導入するとともに、会議室だった部屋をスタジオに改装するなど、学習と実践のための環境を整えました。
リスキリングをする従業員に対しては、学習環境だけでなく、モチベーションの面での後押しも重要です。
前述した西川コミュニケーションズでは、社長の西川氏が従業員に対して、「リスキリングの意義と重要性」を繰り返し伝えました。
また、社長自らが率先してリードしたり、AI関連の資格を取得したりと、従業員のモチベーションを高めています。
その結果、多くの営業社員がAI関連の資格に合格し、AIプランナーへの転身に成功しているのです。
リスキリングを成功させるためには、会社側から従業員へ積極的に働きかけ、会社全体でリスキリングのムードを盛り上げていくことが重要であると言えるでしょう。
【手順4】実践機会の提供・フィードバックの回収
リスキリングとは、単に知識を学ぶだけでなく、習得したスキルを実務で活かすための取り組みです。
そのため、リスキリングの導入にあたって必須となるのは、実践機会の提供です。
新たに習得したスキルは、実務のなかで実践することで、理解を深めることができ、記憶にも定着しやすくなります。
実施計画を立てる段階で、どのような実践機会を提供できるかも検討しておきましょう。
そして、リスキリングプロジェクトの終了時には、その成果をしっかりと振り返り、今後また取り組む際に活かしましょう。
リスキリングの成果を測る際には、リスキリングの進行中と同様に、従業員からのフィードバックを集めることが重要です。
必要に応じて学習プログラムや学習環境を見直すことで、次回リスキリングを実施する際の効果を高めることができます。
以上がリスキリングを導入する手順となります。
続いては、費用面での負担を軽くできる助成金の紹介です。
リスキリングに利用できる助成金
リスキリングの導入には、国や自治体も支援に力を入れています。
企業におけるリスキリングで利用できる助成金には、主に以下の二つがあります。
- 人材開発支援助成金
- DXリスキリング助成金(東京都)
1.人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は厚生労働省が提供している助成金です。
企業が従業員に対して、職務に関連する専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練を行った場合に、かかった経費や賃金の一部を助成する制度です。
人材開発支援助成金には、いくつかのコースがあります。
そのうち、デジタル分野でのリスキリングに適応できるコースは、主に「人への投資促進コース」と「事業展開等リスキリング支援コース」です。
人への投資促進コースでは、デジタル人材を育成する訓練を行った場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
事業展開等リスキリング支援コースでは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新たな分野で必要となる知識・技能を習得させるための訓練を行った場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
コースやメニューによって、支給条件や支給金額が異なりますので、詳しくは
「人材開発支援助成金|厚生労働省」からご確認ください。
2.DXリスキリング助成金(東京都)
「DXリスキリング助成金」は東京都が提供している助成金です。
都内の中小企業が従業員に対して、民間の教育機関などが提供するDX関連の職業訓練を行った場合に、かかった経費の一部を助成する制度です。
助成率は3分の2、上限額は64万円で、受講料や教材費などが助成されます。
訓練時間は、1講座あたり20時間以上であることが条件です。
助成の対象となる学習テーマは、AIやデザイン、プログラミング、データサイエンスなど、DXに関連する内容です。
そのほか、申請条件や対象経費などが細かく規定されているため、詳しくは
「DXリスキリング助成金募集|東京都」からご確認ください。
ここでは「人材開発支援助成金」と「DXリスキリング助成」の概略を紹介しました。
他にも、各自治体ごとにDX推進やリスキリング関連の支援制度、助成金等を提供している場合があります。
ホームページや窓口等で詳細を確認し、どの助成金が自社に合っているのかを判断してください。
なお、助成金の申請業務などは、社会保険労務士に委託することができます。
助成金の要領を精査するには、ある程度の時間がかかりますので、必要に応じて業務委託することも検討しましょう。
ここまでリスキリングの全体像を解説してきました。
しかし、いざリスキリングの導入を検討してみると、具体的な学習テーマが見つからないといったケースも少なくないでしょう。
そこで、はじめてリスキリングを導入する企業でも取り組みやすく、多くの企業が重要視している「クリエイティブツールスキル」について紹介します。
「Adobe Creative Cloud」 で使えるクリエイティブツールの一部
このようなクリエイティブツールスキルを、従業員が習得すれば、以下のようなメリットが得られます。
外注コストを削減できる
クリエイティブスキルが高まる
コミュニケーション能力が向上する
まず、クリエイティブツールスキルをリスキリングすることで、外注コストを削減できます。
例えば、外部の業者に発注していた動画編集を内製化できれば、費用面での負担だけでなく、ディレクションをするコストもなくなります。
そして、制作面でのノウハウが社内に蓄積されていくので、従業員のクリエイティブスキルも高まります。
プロレベルのクオリティに達するには、それ相応の学習期間が必要ですが、基本的なクリエイティブツールスキルであれば数週間から数か月で身に付けることが可能です。
また、クリエイティブツールスキルは、コミュニケーションスキルとしても有効な能力です。
見やすいレイアウトの資料、わかりやすい図解などを作成できるようになれば、社内外での情報伝達力が高まるからです。
このように、クリエイティブツールスキルを習得することは、企業にとって多くのメリットがあり、学習テーマとしてのハードルも低いため、リスキリングする企業が増えています。
2022年12月にアドビが実施した調査では、52.5%の企業が、社員向けにクリエイティブツールスキル向上を目的とした取り組みを実施した、または実施予定であると回答しました。
クリエイティブツールスキルは、リスキリングの普及も後押しとなり、今後も需要が拡大していくスキルとなるでしょう。
詳しくは「なぜリスキリングは「動画制作」から始めるとよいのか?従業員満足度を高める4つの理由」も合わせてご覧ください。
従業員満足度を高めつつリスキリングを成功させるポイントについて、株式会社ウェブライダーの松尾氏に見解を語っていただきました。
リスキリングに関するアドビの取り組み
続いて、クリエイティブツールスキルを学べるプログラムや、オススメのクリエイティブツールである「Adobe Creative Cloud」を紹介します。
リスキリングの導入にあたり、最も重要なのは、学習プログラムの質だと言えます。
なぜなら、どんなに学習機会を提供し、従業員のやる気があっても、教材や講座のクオリティが低ければ、効率よく学習することはできないからです。
クリエイティブ業界を牽引するアドビでは、質の高い学習コンテンツの提供を通じて、企業のリスキリングを支援しています。
例えば、アドビ公式のYouTubeチャンネル「AdobeCreativeStation」や、短期完結型のオンライン講座
「アドビことはじめ クリエイティブカレッジ」では、プロのクリエイターが主要なクリエイティブツールの使い方をわかりやすく解説しています。
デザインソフトのPhotoshopやIllustrator、動画編集ソフトのPremiere Proなどについて、動画コンテンツで学ぶことができます。
また、2022年に官民一体となり発足した「日本リスキリングコンソーシアム」にアドビも参画しています。
同団体では、パートナー企業が多様な学習コンテンツを公開しており、あらゆる企業や個人のリスキリングをサポートしています。
アドビは、クリエイティブツールの使い方や、制作のコツなどに関するプログラムを提供しており、無料で受講することが可能です。
クリエイティブツールスキルを学習する際は、ぜひこれらのプログラムやコンテンツを活用してみてください。
AdobeCreativeStation「Premiere Pro超入門編」
リスキリングのパートナー「Adobe Creative Cloud」
クリエイティブツールを導入するなら「Adobe Creative Cloud」がオススメです。
アドビの主要なツールを一つにまとめたクラウドサービスで、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなど、20以上のアプリやサービスを利用することが可能です。
いずれも世界中のプロデザイナーやプロクリエイターが使用しているツールであり、写真加工、動画編集、UXデザイン、グラフィックデザインなど、あらゆるクリエイティブプロジェクトにご利用いただけます。
初心者であっても、チュートリアルを一つずつこなしていけば、基本操作はすぐに習得できるので安心してください。
Creative Cloudには個人版と法人版があり、どちらもすべてのアプリとサービスを使用できますが、企業であれば「Creative Cloud 法人版」が便利です。
Creative Cloud 法人版には、専用のダッシュボードが付与され、複数のライセンスを一元管理できます。
また、チームでの共同作業をサポートする機能や、専任オペレーターによるテクニカルサポートが、企業におけるリスキリングを後押しします。
アドビが提供する学習コンテンツ、Creative Cloudの各種ツールを活用し、ぜひリスキリングに取り組んでみてください。