過去の記憶を呼び起こすヴィンテージロゴ
レトロな雰囲気のロゴは、企業の価値観や理念、そしてどの時代を想起させようとしているかなど、多くを語ります。クラシックな外観の個性的なロゴをどのように制作するのかを解説します。
レトロなデザインが呼び起こす感情
グラフィックデザインは、ある時代の雰囲気を即座に呼び起こすパワーを秘めています。複雑なモノグラムは、1900年以前の外観を想起させます。色褪せたステンシルのレタリングは、20世紀初期の流行です。サイケデリックな色は60年代、バブルレターは70年代、ピクセルアートは80年代と90年代をそれぞれ想い起こさせます。ヴィンテージロゴやレトロデザインは、ノスタルジックで想像力を湧き立たせてくれます。スマートでクリエイティブなヴィンテージロゴは競合他社との差別化を可能にし、しかも別の時代から突然現れたようなイメージを与えます。
ヴィンテージロゴには2種類のタイプがあります。実際に古い時代から使用している既存のビジネスロゴを元にしたものと、古き良き時代を彷彿させるために新しくデザインされたロゴです。古いロゴを今の時代に使用する場合も、古い時代を想起させる新しいロゴを制作する場合も、次のようなことを考慮しましょう。
既存のヴィンテージロゴをアップデートする
ヴィンテージロゴは、その企業の歴史や確固たるルーツを反映します。伝統ある企業の多くが、その歴史を誇りにしています。
「長い歴史を誇る家族経営の企業などは、その伝統を重んじています。それらの企業は何十年もの経験を伝えようとします」(サラ・ジフロー)
一般的に、古くからあるロゴを使用する場合は、ヴィンテージデザインの複雑な要素を簡素化させます。1800年代後半と1900年代初期のロゴの多くは、紋章、巻物の装飾、複雑なフォントなど、文房具や商品に表示するには細かすぎるデザインを使っています。
既存のヴィンテージロゴをアップデートするには、古いロゴの中で中心となる要素を見極め、スケーラブルなベクター画像のように、デザインのニーズに合わせてロゴを再構築していきます。アップデートされたヴィンテージロゴは、その企業の歴史と業績を表しながらも、今の時代にも活躍していることを伝えてくれます。
「企業の歴史からアイデアを引き出すのです」(サラ・ジフロー)
IBMのロゴを例にすれば、最初は非常に複雑だったロゴが、現在はすっきりとした3つの文字で表されています。時が経つにつれ、ロゴはシンプルになっていきましたが、認識度は高まりました。
長年、活動していることを強調するために、以前使用していた古いロゴをあらためて使う企業もあります。例えば、ある企業が記念すべき年を祝う場合、オリジナルのロゴを記念品に施せば、懐かしさを感じさせ、昔から続くブランドストーリーに注目してもらえます。
複雑なグラフィックデザインを含む古いロゴの場合、デザインのディテールが全て識別できるように作成します。手書きのレタリングや古いフォントは、媒体によってはディテールが見えなくなってしまうことがあります。ロゴを見る人が目を細めなくても、そのブランドが何なのか認識できるようにしなければなりません。
ヴィンテージスタイルのロゴを今の時代に使うコツ
ヴィンテージロゴの中には、古さを感じることなく、ある特定の時代を想起させようとしているロゴもあります。例えば、理髪店は20世紀初頭の床屋のイメージを出したいかもしれません。また、1967年から突然出現したようなイメージを出したいレコード店もあるかもしれません。そのようなロゴをデザインするには、クライアントが求める時代に流行していたデザインやその傾向を研究する必要があります。デザインのインスピレーションを得るには、その時代の出版物や物をなるべく多く見てみましょう。しかし、単にロゴを古く見せるだけでは不十分です。
「ロゴを古く見せているだけの場合がありますが、それではただの付け足しです」(アシュリー・リパード)
古き良き時代を彷彿させたいのであれば、その時代の印刷技術や複製技術をよく研究する必要があります。昔の印刷技術は今ほど鮮明でもなければ、均一には印刷されませんでした。ヴィンテージカラーは現代の印刷物より、鮮やかさに劣り、線やディテールの精度も低かったようです。
「20世紀初頭のアメリカ風にしたいのであれば、汚れた感じにします。クリーム色と茶色を使ってみましょう。質感も必要です。1800年代後半と1900年代初期の色は、あまり鮮明ではありません。ピュアな赤に少し黒を加えてみましょう。とてもアメリカ風になります。印刷技術が今ほど優れていなかったので、色が鮮明でありません。その頃は、何事もスマートではありませんでした」(アシュリー・リッパード)
しかし、こうしたヴィンテージロゴを21世紀の時代でもしっかり機能させることが大切であることに留意しましょう。ロゴは明確に読めなければなりません。サイズも大小の変更が可能で、グレースケール、カラー、白黒で美しく見える必要があります。ディスコの全盛期から突然出現したようなロゴも、デジタル時代においても効果を発揮する必要があります。
「70年代のTシャツのデザインを見てください。それを取り入れても、そのままコピーしてはいけません」(アシュリー・リッパード)
古い流行を取り入れるということは、その時代のデザイナーの作品をそのまま複製するという意味ではありません。
独自のヴィンテージロゴを作る
ヴィンテージロゴは、スクリーンプリントで印刷した昔のアナログアートのように見えるかもしれませんが、それでも名刺やコーヒーカップにも印刷できるよう、ベクターファイルにする必要があります。レトロ感のあるロゴが、現在でも魅力を発揮するためには、他のロゴ制作と同様な作業をしなければなりません。それは、クライアントとその業界について把握し、現在、何がアピールするのかを追求することです。
「難しいのは、ヴィンテージの雰囲気を維持しながら、古臭く見えないものを生み出すことです」(サラ・ジフロー)
そのためには、クライアントの業界について調査します。その業界では現在、どのようなデザインが流行っているのかを調べましょう。
「業界を知ることで焦点が絞られてきます。特定の業界にはふさわしくない色がある場合もあります」(サラ・ジフロー)
例えばテクノロジー系の企業の場合、濃い青を使う傾向にあります。テクノロジー系のヴィンテージロゴと言えば、機械を使い始めた時代のモノグラムを思い浮かべるかもしれません。しかし、そこに現代的に青を入れてみましょう。
それではヴィンテージロゴの制作を始めましょう。最初に、 Adobe Stock のテンプレートで、ヴィンテージロゴを確認します。このテンプレートからインスピレーションを得ましょう。、または、独自のロゴを作成するためにカスタマイズしましょう。
懐かしさは、伝統や経験を訴えるのと同様の効果を生みます。ヴィンテージロゴなら、それらの要素を取り入れ、レトロなスタイルで新しいストーリーを表現することができます。
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