アクセシビリティ

Adobe IDEAS 2006


基調講演

多様化する情報化社会に対するアドビの指針

基調講演の冒頭ではまず、ジム・ジェラルドがクリエイティブ市場の現状について語った。2006年では、オンライン広告が雑誌媒体の広告売り上げを上回ったと語った。今後は、オンライン上の情報が持つ重要性はますます高まるだろうと示唆した。

次に、テクノロジーの歴史から鑑み、今後、どのように情報を取り巻くテクノロジーが発達していくかを解説するために、二人の人物によるビデオメッセージが流された。

まず一人目はアドビ システムズ社からジョン・ウォーノック氏だ。彼は米アドビ システムズの創設者であり、PDFを開発した研究者でもある。彼は情報の電子化も重要だが、今後も引き続き、紙媒体がなくなることもないと語った。

次に携帯電話機の発明者である、マーティン・クーパー氏による次世代通信および情報管理システムについてのメッセージが流された。固定電話からモバイルへの移行はユーザーのニーズによって必然的に生まれたテクノロジーであり、今後も多様に進化していくだろうと示唆された。

この二人の偉大な発明者からのメッセージによって、マクロメディアを統合したアドビが、今後どのような方向へ進むべきかを示めす重要なヒントが与えられた形となった。

その形のひとつがエンゲージメントプラットフォームという概念だとジム・ジェラルドが語り、次のパネラーを紹介した。

エンゲージメントプラットフォーム

次に壇上へデベロッパリレーションズのプロダクトマネージャであるスコット・フェジェットとアドビジャパンの古村秀幸が呼ばれ、エンゲージメントプラットフォームの概念に関する講演とデモンストレーションがおこなわれた。

エンゲージメントプラットフォームはアドビが提唱する次世代のアプリケーション開発環境を示している。そのコア・テクノロジーとなるのが「Apollo」だ。

Apolloでは、さまざまなシーンで開発されたソースコードを元に、ブラウザを介さずに利用可能なリッチインターネットアプリケーションを開発することができる。

デモンストレーションでは、Flex Builder 2を使って開発されたネットと連動するMP3プレーヤーなどが紹介された。

現在は、Apolloアプリケーションをビルドするにはアドビ社内ではFlex Builder 2を利用しなければならないが、将来的にはFlashやDreamweaverなど、いくつかのアプリケーションからシームレスにApolloアプリケーションを書き出しをすることができるようになる予定だ。

クリエイターは既存のWebアプリケーションの開発スキルをそのまま活かし、Applloの開発をおこなうことができるということだ。この大いなる可能性を持った次世代のリッチインターネットアプリケーション開発環境を目の当たりにし、多くの観客が熱狂を持って支持した。

今後の製品スケジュール

また、ジム・ジェラルドは多くのクリエイターが気にしていたいくつかの疑問を公の場で初めて解き明かした。それは、アドビとマクロメディアの統合によって、両社がもつソフトウェア資産を今後どのように活用していくか、という内容だった。互いに競合する製品をどうまとめていくのか。今回の基調講演の中で、観客が注目した場面のひとつだ。

IllustratorとFreeHand
まず、古くからライバル関係にあった、ふたつのアプリケーションについてのコメントがもたらされた。FreeHandについては、すでにStudio 8に盛り込まれなかった経緯がある。そのことからもStudioやCreative Suiteといった統合パッケージのコンポーネントからは外れていくことが示唆されていた。今後はIllustratorとその他のアプリケーション、たとえばFlashなどとの連携をより一層強化させていくことを強調し、FreeHandについては、単体パッケージ製品として引き続き開発ならびにサポートを行うことを明言した。

GoLiveとDreamweaver
どちらのアプリケーションもHTML制作ツールではあるが、その内容は本質的に異なるとジムは語った。つまり、GoLiveはコンシューマー市場に適しており、これに対してDearmweaverはWebデザイナーの90%以上が使用していることからも、プロ向けの製品としてその他のアプリケーションとの連携を強化させるべきだと考えている。プロフェッショナル向けWeb 制作ツールとして、Dreamweaver は主力のツールとして開発を進めていき、今後のCreative Suite 製品におけるWeb 制作向けのコンポーネントとして同梱する予定と語った。GoLive については単体製品として開発とサポートを継続する予定であると語った。

Fireworks
最後にもうひとつの課題。Fireworksについて語られた。Fireworksはベクトルグラフィックスのサポートという大きな特徴を持っている。この機能において、その他の製品との連携が可能となるため、今後はWeb 制作用グラフィック制作ツールとして、Fireworksは継続して開発していくことが語られた。

以上のように今後はアプリケーションのラインナップにも大きな統廃合が予想されるが、ジムはすべてのデザイナーという職業の人達が、自分達のフィールドを乗り越えて創作活動に専念できる環境を整えていくことがアドビの使命であると語り、基調講演を終えた。