電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?発行方法や不要となる条件を解説
電子帳簿保存法(電帳法)における「タイムスタンプ」とは、デジタル上でおこなわれた取引の日付や時刻を証明するための仕組みを指します。
例えば、請求書や領収書、見積書や契約書が発行された日時を記録するために使われます。
この記事では、電子帳簿保存法に対応する上で知っておくべき「タイムスタンプ」の仕組みや、タイムスタンプの付与が必要なケースについて、わかりやすく解説します。
また記事の後半では、文書の電子化に役立つ「Adobe Acrobat Pro」についても紹介します。
電子帳簿保存法の「タイムスタンプ」とは?
タイムスタンプとは、デジタル上でおこなわれた取引の「日時」を証明するための仕組みのことです。
日本語に直訳すると「時間の刻印」という意味になり、この言葉の通り、一度付与すると変更ができない証明印です。
タイムスタンプは、デジタル上で取引されたデータの「原本性」を証明するために使われます。
例えば請求書を電子メールで送信した際、その書類を「原本」として見なすには、いつ作成・送信したかの日付や時刻がわかるようにしておく必要があります。
そこで請求書にタイムスタンプを付与します。
タイムスタンプを付与しておけば、万が一その請求書が複製され、中身を改ざんされたとしても、複製した請求書が不正なものであることを証明できます。
ちなみに、データを修正・変更する際、データを差し替える形になるためタイムスタンプを新たに付与する必要があります。
つまり、データのバージョンごとに個別のタイムスタンプが必要だと考えてください。
タイムスタンプの仕組みや付け方については後述しますが、タイムスタンプは、日付や時刻の情報だけでなく、「ハッシュ値」と呼ばれる情報も付与します。
このハッシュ値は「d9c3a1e7f5b8d6a4c・・・」というように不規則に並んだ英数字です。
このようにランダム性の高いハッシュ値を各データごとに付与することで、それぞれのデータに付与されたタイムスタンプは個別のものとなります。
電子帳簿保存法において「タイムスタンプ」が必要になるケースは?
「電子帳簿保存法(電帳法)」とは、以前は紙での保存を義務づけられていた帳簿や書類のデータを、デジタル形式すなわち電子データで保存することを可能とした法律です。
ペーパーレス化の実現や、印刷コストの削減や書類の保管場所の省スペース化といった、業務効率を改善する制度として注目されています。
また、2022年1月からは、「電子取引」でやりとりしたデータについては【電子データのままで保存する】ことが義務化されました。
電子データでの保存は便利な一方で、データが複製されたり改ざんされたりする可能性があります。
そこで、取引されたデータにタイムスタンプを付与し、どのデータが原本なのかを証明する必要が生まれました。
※ただし、2022年1月の改正法ではタイムスタンプの条件が緩和され、内容の訂正・削除履歴が残るクラウドシステムやサービスの利用や、訂正・削除を防ぐための事務処理規程を社内で運用することで、タイムスタンプの付与は必須ではなくなっています。
電子帳簿保存法に基づいて電子データを保存する場合、仕訳帳や売上台帳といった「帳簿」を電子保存する場合と、請求書や領収書といった「書類」を電子保存する場合の2つのケースがあります。
そして「書類」の電子保存はさらに2つのケースに分かれ、紙の請求書や領収書をスキャンして保存する場合(スキャナ保存)と、メールやチャットなどを介してやり取りされたデータをそのまま保存する場合とに分かれます。
この「書類」の電子保存のうち、前者の「スキャナ保存」において、タイムスタンプは特に必要です。
一般的に、電子メールや電子取引プラットフォームといった場所で取引される請求書や領収書などのデータには、送受信の過程で自動的に送信・受信日時が記録されます。
それだけでなく、システムには送受信されたデータに暗号化やデジタル署名技術が用いられることが多くあります。
そのため、電子取引で交わされるデータは比較的「原本性」が高く、タイムスタンプを付与する必要性が低いといえます。
一方、紙の請求書や領収書をスキャンした場合、それらの書類がいつ作成・受領されたかといった情報は、スキャンした時点ではデータに含まれません。
もちろん、請求書や領収書には日付が記載されていますが、「その領収書をその日に受領した」という証明にはなりません。
例えば4月1日に受け取った領収書をデータとして保存したい場合には、その領収書を4月1日に受領したことを証明する必要があります。
そこでタイムスタンプを付与できるシステムを用いて、「その時点で確かに受け取っていた」という証明印を付与します。
このタイムスタンプを付与しなければ、一度受け取った領収書の日付を後から改ざんして、取引実態を誤魔化せてしまいます。
そのため、税務当局は、受け取った書類をスキャンして保存する場合は、速やかにスキャンをしてタイムスタンプを付与しなければならないとしています。
ちなみに電子帳簿保存法では、スキャナ保存された書類にタイムスタンプを付与する場合、書類を受領した時点から、概ね7営業日以内、どれだけ遅れても2ヶ月以内に対応すべきと定められています。
例えば4月1日に受領した領収書であれば、4月8日くらいまでに(※)、最長6月8日までにスキャナ保存をしてタイムスタンプを付与すべきということです。
(※ただし、営業日ではない土日祝日を除いた場合、実際はもう少し猶予が生まれます)
なお以前は、3営業日以内にタイムスタンプの付与が必要でした。
しかし、その短い期間内にスキャナ保存、およびタイムスタンプの付与が厳しい場合が多かったため、2022年1月の改正法により要件が緩和され、付与猶予期間が延びました。
タイムスタンプを付与する方法は?
では、タイムスタンプをどのように付与すればよいのでしょうか。
タイムスタンプはその信頼性を担保するために「時刻認証業務認定事業者(TSA:Time-Stamping Authority)」と呼ばれる第三者機関に発行してもらう必要があります。
参考:時刻認証業務認定事業者の選抜ルールについて(総務省のPDFより)
タイムスタンプを付与したい書類を認定事業者(TSA)に送付すれば、認定事業者が日時情報とハッシュ値を付与した「タイムスタンプトークン(通称:タイムスタンプ)」というデータを発行します。
「ハッシュ値」とは、それぞれのデータごとに付与される不規則で複雑な英数字情報です。
このタイムスタンプトークンは変更ができず、そのデータがその時点で存在していたことを示す証明印となります。
認定事業者にタイムスタンプを発行してもらうための最もカンタンな方法は、最近の会計ソフトやシステムを使うことです。
最近の会計ソフトやシステムでは、画像データをアップすることでタイムスタンプを付与できる機能が用意されています。
タイムスタンプの付与が必要のないケース
電子データの原本性を担保するために必要なタイムスタンプですが、実はタイムスタンプが必要のないケースがあります。
2022年1月の改正法により「内容の訂正・削除履歴が残るクラウドシステムやサービス」を利用して電子データを管理しているか、従業員全員が守られなければならない「事務処理規程」を設けるのであれば、タイムスタンプの付与は不要となりました。
これはつまり、原本を改ざんできない環境であれば、税務当局が税務調査する際にタイムスタンプの情報を確認する必要がなくなるためです。
電子帳簿保存法は、ペーパーレス化の実現や、印刷コストの削減や書類の保管場所の省スペース化といった、業務効率を改善する制度として注目されている一方で、税務当局の税務調査の効率化を実現するための制度でもあります。
この流れを知っておけば、なぜタイムスタンプが必要となったのかの理由をより理解できるようになるでしょう。
Adobe Acrobat Proで電子帳簿保存法に対応しよう
電子帳簿保存法への対応のみならず、昨今は文書の電子化が各所で進められています。
そうした中、文書の電子化で注目されているのが「PDF」です。
PDFとは「Portable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)」の略で、実はアドビが開発したファイル形式です。
PDFに関するサービスはいくつかありますが、国際標準規格であるISO 32000-1に完全に準拠しているのはアドビのアプリケーションで作成されたPDFだけ。
そこでオススメしたいのがアドビのPDFソフト「Adobe Acrobat Pro」です。
Acrobat Proには法的に有効な電子サイン機能が標準で搭載されているため、追加のコストをかけずに電子契約のやりとりが可能です。
また、電子サインを依頼した書類に対し、取引年月日、取引金額、取引先の情報を記載しておけるため、電子データの「検索性」も確保できます。
さらには、Acrobat Proのグループ版を使えば、管理者の設定画面から、同じ組織の他のメンバーがデータを間違えて削除できないように設定することもできます。
ぜひ、Acrobat Proを活用し、電子帳簿保存法に対応した文書作成・管理を進めましょう。
(監修:税理士法人 中央会計/執筆:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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