ビデオから作成して3Dでレンダリングされた恐竜のモデル

ビデオからの3Dモデル作成:時間をかける価値は?

映像測量法は、3Dメッシュを作成するためにビデオ素材から3D情報を収集する測量技術です。写真測量法と同様、ビデオから作成した3Dモデルも魅力的に見えるため、静止画像を使用した場合と動画を使用した場合の主な違いを2つ挙げて説明します。

ビデオから3Dモデルを作成する場合の問題を解決するには

ビデオから3Dオブジェクトを作成する場合に直面しがちな問題を、静止画像との比較で考察します。

1. 解像度

3Dスキャンで最適な結果を得るには、解像度がきわめて重要です。解像度は一定の空間にどれだけのディテールが含まれているかということであり、それが最終的にどの程度うまく3Dスキャンできるかに影響します。キャプチャプロセスで主に問題となるのは、解像度の低さと画像内に発生するアーティファクトです。画像にディテールが多く含まれていれば、3Dオブジェクトもディテールまで表現することができます。

市販されているカメラのなかには8Kカメラもありますが、価格が非常に高くなります。結局のところ、ビデオの代わりに静止画像を使用できる場合、解像度を上げるためにハイエンドの高価なカメラを使用する意味はほとんどありません。どのカテゴリーでも、写真のほうが鮮明で解像度の高い画像を作成でき、しかも安上りということになります。

2. モーションブラー

ビデオを使用して3Dモデルを作成する際に直面する問題の2つ目は、モーションブラーです。静止画像でブラーが発生するのは、カメラを手持ちで撮影し、シャッタースピードが遅くて手ブレした場合のみです。3Dキャプチャに関しては、これは問題になりません。三脚を使用すれば、ブラーのない鮮明な画像をオブジェクトのどの角度からでも撮影できます。

一方、ビデオの場合、モーションブラーの問題はそう簡単には解決できません。ビデオでモーションブラーが発生しないようにする最善策は、シャッタースピードを速くして撮影することです。1秒あたりのフレーム数を多くして撮影すれば用は足ります。ただし、シャッタースピードを速くするということは、カメラのセンサーに届く光量が少なくなるということでもあります。それを補うには、照明をコントロールできる環境で、最適な結果が得られるよう光量を調整するとよいでしょう。明るくしすぎると黒つぶれや白飛びができることがあり、スキャンするオブジェクトの仕上がりにも悪影響を及ぼします。

ビデオから作成した恐竜の3Dモデル

画像提供元:Andrew Palmer

映像測量のメリット:使いやすさ

ビデオよりも静止画像を使用したほうがよい主な理由を2つ挙げたので、今度はビデオにどのようなメリットがあり、なぜビデオの使用を検討するとよいのかを説明します。

うまく3Dスキャンするために必要な画像を、1枚ずつ何十枚も撮影するのは時間がかかります。解決策はいくつかありますが、通常はスマートフォンのアプリを使用します。ビデオを3Dに変換するオプションがあり、ビデオを使用すると簡単だからです。オブジェクトをビデオ撮影すれば、写真を何枚も撮るより大幅に時間を短縮できます。

簡単な方法を探していて、スマートフォンを利用できるのであれば、おそらくアプリを使用してビデオから3Dモデルを作成する方法が最もシンプルなソリューションでしょう。とはいえ、解像度の高い静止画像を使用したほうが、常により良い結果を得ることができます。これは重要な点ですが、こうしたアプリが使用しているのはビデオの個々のフレームであり、いずれにしても画像であることに変わりありません。ビデオからモデルを作成しようとしているアーティストは、三脚とカメラを使用して自分で静止画像を撮影するだけで得られるクオリティの高さを上まわるほど、時間を節約することに価値があるかどうかを自問してみるとよいでしょう。

映像測量を使用してビデオから作成した目の3Dモデル

画像提供元:Andrew Palmer

映像測量ソフトウェア

画像提供元:Andrew Palmer

ハードウェア要件

スマートフォンを使用する場合、最適な結果を得るには、LiDARセンサーを搭載しているiPhone 12や13 Proなどのスマートフォンを使用するとよいでしょう。

Adobe Substance 3Dの一部として提供されているSubstance 3D Samplerは、写真から3Dオブジェクトを作成するためのパワフルで使いやすい3Dキャプチャソフトウェアです。オブジェクトの写真やビデオを正確にスキャンするには、非常に高い処理能力が必要です。2023年リリースのSamplerの場合、アドビではIntel i7またはAMD Ryzen 7のCPU、あるいは同等のプロセッサーを推奨しています。GPUも、レベル30シリーズ以上の強力なものを使用しましょう。RAMは32GBでも構いませんが、多くのプロジェクトでは64GBが最適です。

Samplerのハードウェア要件と推奨構成の完全なガイドについては、こちらのドキュメントをご覧ください。

アドビのツールで魅力的な3Dアセットをキャプチャ

Substance 3D Samplerは写真測量法の初心者にも最適なツールです。ビデオを3Dオブジェクトに変換するソリューションはサポートしていませんが、AI技術を活用したプロセスはシンプルそのものです。適切なライティングで鮮明な写真を撮影できれば、あとはSamplerにお任せください。

Photoshopのマスクと同じテクノロジーを使用しているSamplerでは、メインの被写体だけを再現できるように、自動的に画像がマスクされます。納得のいくマスクに仕上がったら、その画像がSamplerで処理され、ポイントクラウドが作成されて、テクスチャのある3Dメッシュが生成されます。

Samplerではマテリアルを組み合わせてブレンドし、モデルの外観をすばやく調整して美しく仕上げることができます。

Substance 3D Samplerの3Dキャプチャを詳しく紹介

以上のように、ビデオからの3Dモデル作成には興味深いものがありますが、ほとんどの場合は最適なソリューションではありません。3Dキャプチャの詳細とAdobe Substance 3D Samplerの多彩な活用法については、次の入門ビデオをご覧ください。才能あふれるアーティストが静止画像を使用したキャプチャプロセスを最初から最後まで紹介しています。

よくある質問

写真測量とは、写真から測定データを抽出するプロセスのことです。オブジェクトを様々な角度から撮影した画像が十分にあれば、ソフトウェアを使用して、そのオブジェクトの3Dモデルを再構築できます。映像測量も仕組みは同じで、測定の元になるものがビデオ素材であるというだけの違いです。

Samplerは映像測量を直接サポートしていません。Samplerの3Dキャプチャツールを使用する場合は、一連の静止画像をウィザードに送信することになります。とはいえ、Photoshopのようなツールや動画編集ソフトウェアを使用して、ビデオから静止画像を抽出することはできます。最適な結果を得るには、高解像度の静止画像をキャプチャすることをお勧めします。

画像からの3Dオブジェクト作成は、3Dパイプラインを増強できる優れた方法です。オブジェクトが写真に大きく映っていればディテールの取得や手動のモデリングに役立ちますが、写真にはたくさんのオブジェクトが映っている場合が多々あります。アーティストや制作チームは写真測量を使用してリアルな3Dアセットを作成することで、時間を大幅に節約することができます。