これまで充分だと思われていた画像品質も、今日ではもはや充分とは言えない現状にあります。より効果的なコミュニケーションを行うために、プリント出力の品質に対しても要求が高まっています。Adobe PostScript 3は、こうした新しいニーズに対してEnhanced Image Technologyと呼ばれる新しい技術で応えます。これは、より高度なグラフィックス機能を持つPostScriptのイメージングモデルを拡張したものであり、プリントするドキュメントすべてに対し大きな効果をもたらします。 Enhanced Image Technologyとは、画像オブジェクトを認識し、最高の品質で再現できるように処理を自動的に最適化するものです。同時に、アプリケーションソフトウェアに戻る時間、つまりプリント指示を出した後ユーザがコンピュータを利用できるようになるまでの時間を大幅に短縮します。この新しいイメージ処理技術は、3D画像や写真品質のグレースケール、グラフィックオブジェクトのスムーズなグラデーション、イメージのマスク処理、およびフルカラーに対するスペクトラム(色分解)をサポートしています。Adobe PostScript 3は、ビジネスプロフェッショナルやグラフィックアーティストに求められるクリエイティブな表現を実現します。ビジネスプロフェッショナルは、自分のデスクトッププリンタからもプロ向けのプリンタと同様の高品質なプリント結果を望みます。Adobe PostScript 3は、ユーザが指定した出力装置の解像度に応じてグラデーションのブレンド(塗りつぶし)を描画するSmooth Shading(スムーズシェーディング)機能でこうした要求にお応えします。Smooth Shadingは、デスクトッププリンタで発生し得るバンディング(帯状印字)を最少限に抑え、プリント品質を向上させます。またイメージセッタやプレートセッタシステムなどの高解像度装置では、こうしたバンディングを完璧に排除します。さらに先進的で高度なイメージ処理アルゴリズムの採用により、モノクロでもカラーにおいても複雑なグラフィック画像をより高速にプリントすることを可能にしました。
また、高品質なプリント出力の要求に対しては、革新的なMasked Image(マスクドイメージ)技術が有効となります。Masked Imageとは、イメージのアウトラインを他のイメージと重ねる際に正確にトレースする技術です。こうした作業は、視覚的に無理強いされがちな写真を含む企業ニュースレターから、奇抜性を狙ってテキストがアーティスティックにイメージに包み込まれてしまいがちな広告に至るまで、さまざまなコミュニケーション手段として使われています。この技術を使用しないと、トレースした輪郭を示す線は数字的に計算しなければなりません。マスキングが正確になればなるほど、より多くの線が必要となり、これが作業用メモリーの大量消費につながり、プリンタによっては出力の信頼性を損なうことにもなりかねません。Adobe PostScript 3は、複雑なクリッピングパスを効率的なクロマキー、または1ビットのイメージマスクに置き換えることによってクリエイティブなグラフィックスの可能性を広げました。この置換作業はAdobe PostScript 3のRIP内部の処理によっておこなわれます。この革新的な技術によって品質と信頼性を両立させることに成功しました。
カラー出力は今日の印刷業界では最も注目されるトレンドとなっており、モノクロプリンタは西暦2000年までには過去の遺物となってしまうものと思われています。カラー出力にとって最も困難なチャレンジのひとつは、さまざまな出力装置を通じていかに出力品質を一定に保つかという事です。具体的にはユーザが自宅のカラープリンタでドキュメントをプリントし、そのドキュメントをインターネットで送ったり、あるいは身近にある別のプリンタで出力したとします。この際、色の統一が不適切なひどい出力結果になってしまうことが想定されます。そこで、Adobe PostScript 3のカラー処理は、使用される出力装置を想定して開発された他の技術とは異なり、使用される装置には全く依存していません。つまり、色の再現性がデスクトッププリンタから出版社の出力装置に至るまで、すべての環境で一定に保たれるのです。Adobe PostScript 3はまた、多くの新しい先進的なカラー処理技術を提供しています。そのひとつがプリンティングシステムにおけるHiFiカラーの分版への対応です。HiFi カラー分版はより活気のある色合いを提供し、5色以上使用する高速プレス印刷装置から、通常のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CYMK)以外に特殊なインクを使用して美しい写真をプリントすることのできる新世代のインクジェットプリンタに至るまで、広範な装置で豊かなカラー出力を実現します。Adobe PostScript 3はRIP内部でHiFiカラープリントを直接サポートしており、ユーザにとっては豊かなカラー出力の可能性を引き出す事ができます。例えば、出力するページやイメージが本来HiFiプリント用に作成されたものでない場合であっても、可能となります。RIP内部でのHiFiカラー分版により、より高速なワークフローを実現でき、プリプレス処理の工程を削減することができます。たとえ出力システムがそれぞれ異なった色再現性を持っていたとしても、ユーザは単に出力するためのファイルを1つ作成するだけで済むわけです。
カラー出力においては、画像の品質を追求する上で、黒レベルの表現はいまだに極めてシビアなもののひとつとなっています。われわれ人間の眼は、イメージの過度な明暗に対する判断能力を備えています。そこで、より精密なカラー・コントロール機能を備えたAdobe PostScript 3は、より濃度の一定した黒の再現性と優れたカラーレンダリングディクショナリー(CRD)を有することにより、より明瞭で高品質のプリント出力を提供します。
Adobe PostScript 3ではまた、Superscreens(スーパースクリーン)機能によって新しいグレースケールのレベルが提供されます。これはデスクトップのモノクロプリンタによって写真品質のグレースケールを最大256階調まで表現することができるものです。さらにイメージセッタなどの高解像度プリンタでは、4096階調ものグレースケールを描画することができ、それぞれの階調がそれぞれ異なった画像や写真、グラフィックスなどをよりスムーズに、市場で得られる最高の滑らかさをもって表現することが可能となります。
カラー出力の大幅な増加に伴ない、高品質の出力結果を得るため、カラーページの正確なトラッピングの必要性が高まってきました。トラッピングとはマルチカラー出力装置において、異なった色と色の間のギャップを減らすためのイメージの微調整技術のことです。アドビが特許を有するトラッピングエンジンは、Adobe PostScript 3のIn-RIP Trapping(RIP内トラッピング)ソリューションのコアをなすものです。オプションとして提供されるIn-RIP Trappingモジュールを使用することにより、出力するために送られたファイルがRIP内部でトラッピング処理されます。これによって最も複雑なプリプレス作業のひとつが単純化され、エンドユーザにとってはプリンティング環境におけるカラー出力の品質、信頼性および出力結果の予測性を向上させます。これまで自前でカラートラッピング機能を持っていなかったプリンティングサービス業者では、In-RIP Trappingにより、高価な専用システムを使った繁雑な手作業によるトラッピング処理を大幅に軽減することができ、時間とコストを大巾に削減することが可能となります。In-RIP Trapping機能を、Adobe PostScript 3の特徴である、Device Independent Color(デバイスインディペンデントカラー:出力装置に依存しないカラーの再現)ディバイスインディペンデントで高い信頼性を有したカラー出力機能と組み合わせることにより、高品質でプロ感覚のドキュメントを作成するための完璧なソリューションをアドビは提供いたします。
Adobe PostScript 3はまた、Selectable Separations(選択可能な分版)機能により、デジタルカラーのワークフロー処理を大幅に進化させました。このSelectable Separationsは、たとえローエンドのモノクロプリンタであっても、Adobe PostScript 3を使ったすべてのプリンティングシステムにおいて、分版出力を可能とするものです。これによって、信頼性の高いRIP分版の結果をフィルムに出力することなく確認することができ、時間とコストの削減を可能とします。
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