※ 本記事は「デジタルカメラ・マガジン」2020年11月号(発行:株式会社インプレス)の特集記事を抜粋したものです。
写真・文 ●館野二朗
撮影したのは10月の中旬の日の出時刻。残念ながら薄い雲があったため、朝日は期待したほど強い光にはならなかった。全体的にメリハリが付くように、RAW現像で光が当たっている部分を強調し、印象的にする。紅葉の場合、赤い葉の色を良く見せるために彩度を上げがちになるが、やり過ぎると色飽和を起こしてしまうので注意。
キヤノン EOS 5D Mark Ⅳ/EF24-70mm F2.8L Ⅱ USM/47mm/絞り優先AE(F11、1/2秒、±0EV)/ISO 100/WB:4,700K
レタッチのベースを画像を作るため「レンズ補正」のプロファイルを適用して、収差を自動補正する。
「輝度範囲」のマスクで木の境界線から空を選択する。雲のディテールが見えるまで露光量を−0.24、ハイライトを−58に下げる。空にかかる葉には影響があまり出ないように範囲45/100、滑らかさ47の「輝度マスク」を使用する。
<部分補正>
白飛びしないギリギリの露出で撮影しているが、薄い雲のディテールはほぼ見えなくなっている。これを復活させたい。「マスク」の「輝度範囲」を選択し、空の一部をドラッグで選択する。輝度マップを表示にチェックすると写真の輝度情報が白黒表現で表示される。輝度範囲のスライダーで調整をかけたい範囲を選択する。黒くなった部分が0で、白い場所が100になる。右上の空にかかる葉はそのままにしたかったので、暗部を45まで上げて影響が出ないようにしている。滑らかさはわずかに下げて雲のディテールが出てくるまでハイライトをマイナスにし、露光量も下げる。
明るくしない部分は輝度マスクで外す
「輝度範囲」で選択した範囲内に、効果を適用したくない部分がある場合は、ブラシで新しいマスクを追加しても良いが、輝度マスクで調整した方が簡単。範囲のスライダー内に除外したい被写体を入れる。
空が白飛びしないように露出を抑えて撮影したため、手前の林が暗くなっている。「基本補正」のシャドウを+68に上げて画像全体の明るさを取り戻す。
シャドウを上げたことで、林に当たる朝日の斜光が弱くなったので、「基本補正」の明瞭度を+20にアップする。
ポイントカーブで、入力60を出力57に、入力105を出力109に、入力155を出力168に、入力194を205にする。
葉の黄色と赤をより鮮やかに見せるために「基本補正」の自然な彩度を+18まで上げる。
葉の色にインパクトを与えるため、カラーミキサーパネルのHSLで輝度をアップ。レッドは+15、オレンジは+26、イエローは+18。
<色の調整>
STEP6で自然な彩度を上げたが、もう少し木々の発色を高めたい。自然な彩度や彩度を全体的に上げても、色が飽和したり彩度を上げたくない緑の葉の部分まで鮮やかになったりするので「カラーミキサー/HSL」で個別に調整する。朝日が当たった透明感のある紅葉を強調させたいので、彩度は変更せずに輝度だけを上げていく。色は黄葉と紅葉の要素であるレッド、オレンジ、イエローに絞って調整する。
空に朝の雰囲気を出すため「カラーグレーディング」のハイライトの色相を52にして彩度は22にアップ。バランスは−24にする。
<色の調整>
空や光に残っていた朝の雰囲気を「カラーグレーディング」で補いたい。ハイライトの色相でオレンジと黄色の中間あたりを選び、空が色づくまで彩度を上げて朝の雰囲気を表現した。バランスをマイナスに調整して、できるだけ空以外の場所に色がつかないようにする。
バランスを活用して空だけを調整する
バランスとはハイライトとシャドウの境界位置を決めるもの。空以外の色がシャドウ側に入るポイントが-24だったため、ここでは-24に設定している。