Lightroomで写真をきれいにする色補正のイロハ - スマホで「できる」基礎からはじめる映える写真の撮り方と仕上げ方 第30回
Lightroomにはたくさんの機能があって難しそうに思えますが、作業の流れさえ決めてしまえば簡単です。しかも、たった3つの機能を知っていれば、基本的な色の調整が行えてしまいます。
上の写真は、その3つを調整して仕上げていく流れを見せたものです。左が元の写真で、右が補正した写真です。
どんな色にすればよいのか分からなくても大丈夫です。今回紹介するのは、そのための方法ですから。
ちなみに、初心者向けのお手軽な使い方ではありません。筆者自身が基本とする作業手順なので、上級種の方でも十分に参考になると思います。
そして、いつまでたっても変わらない普遍的な色調整の手法でもあるので、保存版として役立ててください。
では、「写真の明るさや色を調整する」ためのLightroomの使い方を見てみましょう。
もっとも基本的な方法が、3つのスライダーを順番に調整する方法です。
その3つのスライダーはというと、
①「露光量」スライダー(「ライト」ボタンに搭載)
②「彩度」スライダー(「カラー」ボタンに搭載)
③「色温度」スライダー(「カラー」ボタンに搭載)
です。筆者は①②③の順に使っていますが、順不同でも大丈夫です。大切なのは、この3つのスライダーを繰り返し、繰り返し調整して、明るさや色をどんどん追い込んでいくことです。
3つのスライダーの効果を説明しておくと、次のようになります。
・「露光量」スライダー:明るくしたり暗くする機能
・「彩度」スライダー:モノクロにしたり鮮やかにする機能
・「色温度」スライダー:暖かみのある色にしたり冷たい色にする機能
もっとも、「この3つを使う」ことさえ覚えておけば、効果なんて知らなくてもかまいません。分からなくなったら、スライダーを大きく左右に動かして、写真の変化を確認すればよいのですから。
そして、「きれいに見える色」を目指して少しずつスライダーを動かす量を小さくしていけば、思い描いている仕上がりに近付くというわけです。
ただし、一度の調整だときれいならないこともあります。そのための「繰り返し調整」なのです。
「露光量」→「彩度」→「色温度」→「露光量」→「彩度」→「色温度」→「露光量」……と繰り返していくうちに、頭の中で思い描いている色に近付いていきます。
写真を見ても、「どう調整すればよいのか分からない」という場合は、まずはこの方法を試してみることをおススメします。
「露光量」「彩度」「色温度」の3つを調整する方法にプラスして覚えたいのが、「コントラスト」「自然な彩度」「色かぶり補正」の3機能を組み合わせる使い方です。
6つの機能を使うので難しく思えますが、Lightroomはよく考えられていて、「ライト」ボタンには「露光量」と「コントラスト」スライダー、「カラー」ボタンには「彩度」と「自然な彩度」スライダー、「色温度」と「色かぶり補正」スライダーが上下に並んでいます。まるで、「一緒に調整してね」といわんばかりの操作性です。
6つの機能を使う順番とその効果は、
①「露光量」→「コントラスト」で露出を補正
②「彩度」→「自然な彩度」で鮮やかさを補正
③「色温度」→「色かぶり補正」で色味を補正
となります。
ポイントは、「自然な彩度」と「色かぶり補正」を補助的に使う点です。
まずは「彩度」で不自然に見えない範囲で鮮やかさを調整し、不足する分を「自然な彩度」で補うようにします。
「彩度」と「自然な彩度」の違い紹介しておくと、前者はすべての色の鮮やかさ等しく調整する機能で、後者は鮮やかさの足りない色を鮮やかにしたり、鮮やか過ぎる色を弱めたりする機能です。
「色かぶり補正」は、「色温度」で調整した結果、色がしっくりとしないときに使うと効果的です。具体的な色の変化で説明すると、「色温度」は「フルーとイエロー」のバランス、「色かぶり補正」は「マゼンタとグリーン」のバランスが調整できます。
写真(光の色)的には、寒色系の「ブルー」と暖色系の「イエロー」のバランスを整えると自然な色味にしやすいので、これらが調整できる「色温度」を先に使うというわけです。
ここで、調整の手順とそれぞれの目的をまとめておきます。
<露出を補正する>------------------------------
①「露光量」スライダー
②「コントラスト」スライダー
<鮮やかさを補正する>------------------------------
③「彩度」スライダー
④「自然な彩度」スライダー
<色味を補正する>------------------------------
⑤「色温度」スライダー
⑥「色かぶり補正」スライダー
上の手順で①から⑥まで調整したら、もう一度①に戻って同じ手順を繰り返し、色を追い込んでいきましょう。
筆者も、ほぼすべての写真に対して、この方法で調整をスタートします。個性的な色彩に仕上げる場合も同様です。この方法でベースとなる色(イメージに近い明るさと色の写真)を作ってから、個性を出すための調整を追加していきます。
【ステップ2】の作業でも、写真の仕上げに困ることはほとんどないはずです。いわば、【ステップ2】は色調整の基本処理といってよいと思います。
ここで紹介する方法は必須ではありませんが、繊細な濃淡を表現する、覚えておくと役立つ「玄人っぽい処理」となります。専門的にいうなら、「階調感を整える」ための処理です。
とはいうものの、やるべき作業は【ステップ2】の後に、4つのスライダーを追加するだけ。スライダーを動かす順番も決まっているので、丸暗記でも大丈夫です。
必要な4つのスライダーはというと、「ハイライト」「シャドウ」「白レベル」「黒レベル」です。すべて、「ライト」ボタンに搭載されている機能です。
これらの機能の効果を紹介すると、
・「ハイライト」スライダー:明るい部分を明るくしたり暗くする機能
・「シャドウ」スライダー:暗い部分を明るくしたり暗くする機能
・「白レベル」スライダー:白に近い色を明るくしたり暗くする機能
・「黒レベル」スライダー:黒に近い色を明るくしたり暗くする機能
となります。つまり、どのスライダーも特定の明るさの範囲だけを明るくしたり暗くするための機能ということです。逆光で暗く写った人物などは、「シャドウ」スライダーを調整すると明るくできます。
この4つのスライダーは調整する順序が肝心で、筆者がおススメするのは、「白レベル」→「ハイライト」→「シャドウ」→「黒レベル」の順。つまり、最初に白の強さを決めたら、白の次に明るい領域、暗めの領域、黒、というように、明るい色から暗い色に向けて順に明暗を整えるという考え方です。
この方法で調整すると、白から黒までの明暗のつながりがよくなります。
4つのスライダーと【ステップ2】の調整と組み合わせた手順を紹介すると、次のようになります。
<露出を補正する>------------------------------
①「露光量」スライダー
②「コントラスト」スライダー
<鮮やかさを補正する>------------------------------
③「彩度」スライダー
④「自然な彩度」スライダー
<色味を補正する>------------------------------
⑤「色温度」スライダー
⑥「色かぶり補正」スライダー
<階調感を整える>------------------------------
⑦「白レベル」スライダー
⑧「ハイライト」スライダー
⑨「シャドウ」スライダー
⑩「黒レベル」スライダー
10の機能を使っているので難解に見えますが、やっていることは【ステップ1】の3つのスライダーから派生した作業に過ぎません。調整する順番は決まっているし、どんな写真でも使える万能の技なので、丸暗記でOKです。
もちろん、【ステップ1】や【ステップ2】と同様に、最後の⑩まで作業したら、①に戻って調整を繰り返すことが大切です。
【ステップ1】や【ステップ2】、【ステップ3】の調整を実行しても、「なにかが足りない」と感じたら、「効果」ボタンにある「かすみの除去」スライダーを試してみましょう。
このスライダーは、右に移動すると色が濃くてメリハリのある色調に、左に移動すると淡くかすんだ描写になります。文字どおり、かすんだ状態が補正できる機能なのですが、効果をマイナス(スライダーを左に移動)に調整して、幻想的に淡くかすんだ写真を作り出すのもおススメです。
ここまで覚えれば、写真の色調整に困ることはないはずです。
どんな仕上がりにしたいのかが分からないときも、明確なときも、なにから作業すればよいのか迷ったときも、暗い写真も、色が変な写真も、すべて同じ方法(【ステップ1】から【ステップ3】の方法)で解決できます。
「同じ機能を同じ手順で使うだけで?」と思うかもしれませんが、グルグルと手順を繰り返しながら仕上げていくので、結果的には「必要な機能」を「必要な分」だけ調整していることになります。
要するに、目指す仕上がりにするための調整を「いつの間にか行っている」というわけです。そう考えると、理にかなった作業手順(=ワークフロー)だと思いませんか?
3種類のワークフローの中から、シンプルながら対応力のある【ステップ2】を使った作業の実例を紹介します。それぞれのスライダーを使うと、どのように写真が変化するのかも合わせて確認してみてください。
補正するのは下の写真です。それぞれのスライダーの効果や調整の過程が分かりやすい写真を選んでみました。
①「露光量」スライダー
「ライト」ボタンにある「露光量」スライダーを左右に移動して明るさを変化させて、「きれいに見える」状態を探します。スライダーを大きく左右に動かしながら見当を付け、「ここだ」と思う範囲に近付けていくと思い描く明るさにしやすいと思います。
この写真の場合、「+0.5」の調整がきれいに見えたので、この設定に決めました。
②「コントラスト」スライダー
「ライト」ボタンにある「コントラスト」スライダーを左右に移動して、イメージするメリハリを作り出します。
スライダーの調整方法は「露光量」のときと同様で、大きく左右に動かしながら少しずつ動かす範囲を小さくして、「きれいに見える」色を探せばOKです。以下、すべてのスライダーをこの方法で調整していきます。
ここでは、少しコントラストが強めの、「+34」の調整を行いました。
③「彩度」スライダー
「カラー」ボタンにある「彩度」スライダーを左右に移動して鮮やかさを調整します。スライダーを左端(最小値:-100)にすると完全に色が抜けて白黒に、右端(最大値:+100)にすると倍の鮮やかさになります。
鮮やかにする場合、写真内の「もっとも鮮やかな色」が不自然な色になったり、濃淡のないベタ塗りの状態にならない範囲で調整します。鮮やかさが足りなくても、次の「自然な彩度」スライダーで補えるので問題ありません。
ここでは、きれいな色彩に見えた「+44」の設定にしました。
④「自然な彩度」スライダー
「カラー」ボタンにある「自然な彩度」スライダーで、足りない鮮やかさを調整します。このスライダーは効果が分かりにくいので、まずはスライダーをいちばん左(最小値:-100)といちばん右(最大値:+100)に動かして反応する色を把握し、その色に着目しながら調整すると仕上げやすくなります。
スライダーを左右に動かしながら色を探った結果、「+49」の設定に決めました。
⑤「色温度」スライダー
明るさと鮮やかさを整えると、色のズレ(寒色系/暖色系のバランス)が分かりやすくなります。それを、「カラー」ボタンにある「色温度」スライダーで調整します。
ここでは、空の色に少し青が残っているときれいに見えたので、「3800」に設定しました。
ちなみに、設定の数値は写真の形式(DNG/JPEG)によって異なり、DNGは「2000」から「50000」、JPEGは「-100」から「+100」の範囲で設定できます。もっとも、どちらの場合も「スライダーを適当に動かしてきれいに見える色」を探すだけなので、気にする必要はありません。
⑥「色かぶり補正」スライダー
「色温度」スライダーでグリーンとマゼンタのバランスを調整します。といっても、スライダーを左右に動かして好きな色を探すだけでOKです。
空の色に少しだけ紫っぽい雰囲気が出るときれいに見えたので、「+22」の設定にしてみました。
ひととおり調整を施したので、元の写真と比較してみます。
なんとなく目指す色に近い気はしますが、「これじゃない」感もあります。
各スライダーを1度しか調整しないと、このようにイメージする色に仕上がらないことも少なくありません。でも、2度目の調整はイメージに近い色からスタートするので、さらにきれいになるはずです。
実際、2度目の調整を施した流れが、下の画像になります。左上から、「1度目の調整結果」「露光量」「コントラスト」「彩度」「自然な彩度」「色温度」「色かぶり補正」の順に掲載しています。
2度目の作業では、「露光量」がマイナスに補正され、色の濃い色調に変化しました。これは、1度目の調整の結果を見て、「こっちの色が好き」と気付いたためです。
その変化によって次のスライダーの調整値も変わり、その次も変わっていきます。これを繰り返すことで、漠然と思い描いている「きれいな写真」が再現できるというわけです。
そして、最終的に色調整した写真が下になります。
この調整を行った結果、明るい部分や暗い部分の見え方をなんとかしたいと思ったら、【ステップ3】で追加した「白レベル」「ハイライト」「シャドウ」「黒レベル」スライダーを追加で調整し、それでもなにかが足りなければ、「かすみの除去」スライダーの出番です。
このように、【ステップ2】のワークフローをベースにして、必要に応じて調整を追加すれば、悩まずに写真の色調整が行えると思います。
紹介した3つのワークフローは、写真をきれいにしたり、ある程度の範囲で個性が出せる仕上げ方です。より個性的な色彩を出すときはさらに追加の調整が必要で、Lightroomにはそのための機能が豊富に用意されています。
その方法をいくつか紹介するので、作業の参考にしてください。
・「右上を明るくしたい」とか、「下のほうだけ色を変えたい」という場合は、「部分補正」機能を使います。
・赤や青などの特定の色を調整したいときは、「カラー」ボタンにある「ミキサー」機能を使います。
・アートな色彩や、レトロな色、味わい深いモノクロなどにしたいときは、「プロファイル」ボタンで効果を選択します。
・紗のかかったようなソフトな描写にしたいときは、「効果」ボタンの「テクスチャ」や「明瞭度」スライダーを使います。
・映画のような独特な色味にしたいときは、「カラー」ボタンの「色調整」を使います。
・コントラストを詳細に調整したり、カラーバランスの補正が行いたいときは、「ライト」ボタンの「カーブ」を使います。
今回は「色調整」という点に着目して編集方法を紹介しましたが、トリミングや傾きの補正、奥行き感の調整、シャープ感の調整、ノイズの軽減に修復(不要物の除去)など、Lightroomには色調整以外の編集機能もたくさん搭載されています。
もっとも、これらの機能は目的が明確なので、機能の選択に迷うことはないはずです。
Lightroomで上手に色を調整するコツは、「スライダーを動かして好きな色を探す」です。ワークフローを覚えるのが面倒なら、「ライト」ボタンと「カラー」ボタンにあるすべてのスライダーを上から順に動かして、好みの色を探すだけでもかまいません。
投げやりないい方に聞こえるかもしれませんが、それでも色調整できてしまうのがLightroomの凄さで、懐の深さなのだと思います。
長々と解説をした結果が、こんな落ちですみません。
でも、論理的で効率のよい色調整の手順として、3つのワークフローのどれかを覚えてもらえると嬉しいです。
執筆者:桐生彩希
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