チュートリアル記事

初級

20 分

スマホで映画風写真を作成する方法

映画っぽい雰囲気の写真に仕上げることはできる? - スマホで「できる」基礎からはじめる映える写真の撮り方と仕上げ方 第21回

雪不足が影響しました

この記事を作っている今は1月。季節に合わせて雪景色とか冬っぽい写真を紹介しようと思ったのですが……。

今年は雪が少ないみたい。山のほうに行って締め切りの2日前まで粘ってみても、思うような雪の写真が撮れませんでした。

代替案として用意していたのが、映画みたいな“味わい”のある印象にする仕上げ方です。「映画のような色」といってもいろいろなタイプがありますが、今回紹介するのはベーシックな「ティール&オレンジ」という手法です。

「ティール&オレンジ」は個人的に好きな仕上げ方なので、覚えてもらえると嬉しいです。

気負わずに撮影してみよう

失敗写真だって作品になるかも

映画っぽい色の写真にするなら、素材はやはり、映画のワンシーンのようなものが似合います。

具体的には、ゆるく撮影したスナップ的なものとか。「動画の中から切り出した1枚」をイメージしたり、いっそのこと動画からキャプチャしてもよいのかもしれません。

ほかにも、ブレていたり、撮影した意図が不明な写真なんかも、意味深な雰囲気が出てよい感じです。


下の写真も、Lightroomのカメラ機能で適当に写しただけです。でも、「ティール&オレンジ」にすると印象が一転するんです!

「ティール&オレンジ」はどんな写真にも対応できる懐の広い仕上げ方なので、まずは気負わずに撮影してみてください。適当に写した写真も、失敗写真も、味わい深くなることがありますから。

要するに、撮影のテクニックはさほど重要ではなくて、なんとなく“いい感じ”の写真が撮れればまずは大丈夫ということです。

Lightroomの編集機能で映画の雰囲気を出すには

「ティール&オレンジ」とは?

「ティール&オレンジ」とは、写真を青緑(teal)とオレンジ色に偏らせる技です。

色作りの考え方としては、ひとの肌などが含まれる中間から明るい領域をオレンジ色に、暗い領域を青緑色に偏らせます。これにより、人物は暖かみのある肌の色、シャドウはその反対の色になるため、人物の存在感が増すというわけです。

色の仕組みは、下の図のように黒から白までのグラデーションで考えると分かりやすいかもしれません。

以上のような理由から、「ティール&オレンジ」は映画でよく使われる色の仕上げ方になっていて、これを真似れば映画っぽい色になるのです。

映画の色調整の考え方、本当に参考になります。

興味を抱いたかたは、「グレーディング」とか、「カラーコレクション」とかをキーワードに検索してみてください。楽しいですよ。

今回仕上げた写真も、「ティール&オレンジ」で大きく印象が変わりました。というか、救われました。

まずは仕上げた写真を見てもらうと、下になります。普通の色とは違って、アクが強いというか、クセがあるというか。でも、見続けると味わい深さが出てくるのではないかと。

元の色が下の写真です。とくに撮影の意図はなくて、おしゃれな街灯があったので人物を入れて写しただけの写真です。

普通だからこそ、個性的な色に仕上げて印象アップを狙ってみました。

「明暗別色補正」機能が要です

では、編集作業に入りましょう。使うアプリはLightroomです。

Lightroomにはデスクトップ版やモバイル版、Web版がありますが、ここではモバイル版で編集を行います。そのほかのタイプでも、作業方法はほぼ同じなので参考にしてください。

Lightroomを起動したら、サムネール一覧で写真をタップして大きく表示し、①左上の文字の部分をタップします。表示された一覧から、②「編集」を選ぶと編集機能が表示されます。

最初の編集が、このテクニックのハイライトとなる「ティール」と「オレンジ」に色分けする調整です。

使う機能は「明暗別色補正」。

この機能を簡単に説明しておくと、明るい部分と暗い部分の色を別々に塗り分けられるものです。まさに、「ティール&オレンジ」に最適。

まずは、①「効果」ボタンをタップ。さらに、②「明暗別色補正」のボタンをタップして、補正の画面を表示します。

最初に、ハイライトの色をオレンジに調整します。

①の〇をドラッグして、下の画像と同じような位置になるように移動してください。数値の目安としては、②H(色相:色の種類)が40から50くらい、③S(彩度:色の強さ)が30から40くらいです。

多少ズレていても問題ないので、写真の明るい部分がなんとなくオレンジ色になればOKです。

次は、シャドウをティール(青緑)にする調整です。やり方は、ハイライトの調整と同じです。

①の〇をドラッグして、下の画像と同じような位置になるように調整します。

数値の目安は、②Hが130から140くらい、③S(彩度:色の強さ)が20から30くらいです。Sの数値はハイライトよりも少し小さくすると、アクの強さが抑えられます。

調整できたら、④「完了」ボタンをタップして確定します。

これで「ティール&オレンジ」は完成なのですが、動画で映像を見続けると目が馴染むため違和感が少なくなるのですが、写真だとちょっと個性が強過ぎます。

そこで、明るさやコントラストを整えつつ、写真向きにアレンジを加えていきます。

写真向きの色に落とし込もう

ここから先で行なうのは、明るさを整え、コントラストを調整し、鮮やかさ、色を仕上げていく作業です。普通に写真を編集するときと同じです。

①「自動」ボタンをタップして明るさや鮮やかさを自動調整します。この状態がスタートとなりますが、イメージよりも明る過ぎ/暗過ぎるようなら、②「ライト」ボタンをタップして、③「露光量」で調整しておきます。

自動調整や明るさの調整ができたら、「ライト」画面にある、④「カーブ」ボタンをタップします。

「トーンカーブ」機能が表示されました。難しさや分かりにくさのある機能ですが、最初にポイントを2つ作っておくと調整しやすくなります。

まずは、①のボタンをタップして、明るさが変えられる状態にします。

続けて、②線グラフの左下をタップしてポイントを作成し、③線グラフの右上をタップしてふたつ目のポイントを作ります。ポイントの位置は、薄く見えているグリッドを目安にします。

作ったポイントの左下を上下に移動すると暗い部分の明暗が変化します。右上なら明るい部分の明暗が調整できます。

たとえば、暗い部分を明るくするなら、左下のポイントを上に移動すればよいというわけです。簡単でしょ!

この写真はシャドウの暗さが気になるので、①のポイントを上に移動しました。これで、ハイライトの明るさの変化を抑えて、暗い部分が重点的に明るくなります。

続けて、ハイライトの明るさを調整します。使うのは、①右上のポイントです。

写真の状態を見ながら上下に移動して、気に入った明るさになる位置を探してみましょう。②シャドウのポイントは固定されて明暗の変化が抑えられているので、狙った明るさに仕上げやすいはずです。

この写真では、少し上に移動してハイライトを明るくしました。

調整できたら、③「完了」ボタンをタップします。

次は、鮮やかさを調整します。

①「カラー」ボタンをタップしたら、②「彩度」スライダーで全体の鮮やかさや色の濃さを整えます。

鮮やかさや色の濃さがもの足りないときは、③「自然な彩度」スライダーも合わせて調整します。「彩度」と「自然な彩度」の両方を使い、好みの色の強さに整えていくということです。

これで終わらせてもよいのですが、写真で見るにはちょっと個性が強過ぎるかも。そこで、写真として見られる色に整えます。

使う機能は引き続き、「カラー」ボタンにある、①「色温度」と、②「色かぶり補正」スライダーです。違和感の少ない色になるように、各スライダーを調整します。

ちなみに、色温度を補正しても「明暗別色補正」でハイライトとシャドウの色を偏らせた状態は維持されるので、「普通の色の写真」に戻ることはありません。

いろいろな調整を重ねたので、明るさやコントラストを見直します。まずは「明るさ」から。

①「ライト」ボタンをタップして、②「露光量」スライダーで調整します。この写真では、右に移動して明るくしました。

コントラストの仕上げには、「かすみの除去」機能を使う点が映画っぽい色にするコツです。この機能で調整することで、色濃く濃密なコントラストにしたり、淡いコントラストのファンタジックな仕上がりにできます。

①「効果」ボタンをタップしたら、②「かすみの除去」スライダーを調整します。右に移動するとコントラストと色の濃さがアップ、左で淡い色彩になります。

映画っぽくするなら、少し濃い色と強めのコントラストを目指すとよいかもしれません。

これで完成です。

「明暗別色補正」で「ティール&オレンジ」を作ってから、「色温度」と「色かぶり補正」で写真向きに色を整える点がこのテクニックの重要なポイントといえます。

それ以外は自由に作ってみてください。「ティール&オレンジ」にこだわらず、自分なりの色を見つけるのも面白いですよ。

映画のシーンの色を参考にすると、SFっぽくするなら「グリーン」、ラブストーリー風なら「イエロー」、ホラーなら「ブルー」辺りをベースに色を作るとそれっぽくなると思います。

このあたりの仕上げ方も、いつか紹介できるといいな。

執筆者:桐生彩希

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2022年5月17日

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