夕暮れ時に写すとどんな写真もきれいになる - スマホで「できる」基礎からはじめる映える写真の撮り方と仕上げ方 第18回
ドラマチックに映える写真といえば、夕焼けや朝焼けのシーン。
今回は、誰でも撮りやすい「夕暮れ時」に的を絞ってみます。朝焼けは……、早起きしなければならないので大変ですし。それはまた、別の機会に。
夕暮れは、お手軽にきれいな写真が撮れる“美味しい”シーンといえます。
もし上手に写せていないのなら、それは時間が悪いから。
夕暮れ時の撮影には最高の時間があって、それが日没前後の30分です。
個人的におススメは、日の入り直後からの15分間。
センチメンタルな写真を撮るには最適な時間帯です。
ちなみに、日没前後の時間は「マジックアワー」と呼ばれていて、オレンジ色や金色に染まった美しい写真が写せる“魔法の時間”なんです。
風景も人物もスナップも、どんなジャンルの写真も美しさ倍増です。
それと、かなりのレアケースですが、台風一過の夕方は撮影のチャンスです。
風雨で空気中のちりが洗われて澄んだ景色になるし、台風の残した雲が空にダイナミックな表情を出してくれますから。
写真は明るい昼間に撮るもの。と思うかもしれませんが、そうとも限りません。
確かに、太陽光が降り注ぐ日中はメリハリのある鮮やかな写真になります。でも、その代償として被写体に「濃い陰」が生じます。
この「陰」が厄介な存在で、人物写真なら顔に落ちた陰が美しさを削いでしまうし、スナップ写真や風景写真ではハイコントラストで濁ったような印象になってしまうのです。
もし写真を眺めて「なんだか美しくないなぁ」と感じたら、陰の濃さを疑ってみましょう。
もちろん、陰を生かした撮り方もありますが、まずはきれいな写真が撮りやすい時間帯を狙うほうが簡単です。
それが、前述した「マジックアワー」です。
とくに、日没直後なら周囲に明るさが残っている上、被写体に直接太陽光が当たらないため陰ができにくい、つまり、やさしい描写で写せるというわけです。
上に掲載した2枚の写真は、同じ日に同じ構図になるように撮影したものです。上は13時頃、下は日の入り直前の写真です(どちらも見やすくなる程度にLighroomで露出を補正)。
日中の写真は色彩豊かで立体感があるのですが、個人的には濃い陰がごちゃごちゃとした煩雑な印象に感じてしまいます。要は、コントラストが強過ぎるんです。
対して日の入り直前の写真は、被写体に直接太陽光が当たっていないため、陰の薄いやわらかな雰囲気が出ています。
この状態なら、Lightroomを使っていろいろな色彩に仕上げられそうです。
マジックアワーは「写真が写しやすい時間」という点も覚えておくと、今後の撮影に役立つかもしれません。
夕暮れのシーンというと、オレンジ色の太陽と黄金色の空をイメージするかもしれませんが、実際に太陽を写すと「白い球」になってしまい、ちょっと興ざめです。
それに、太陽を画面に入れると「逆光」の状態になるため、手前の被写体が真っ黒になるなどの難しさもあります。
Lightroomの編集機能で逆光写真も補正できますが、「きれいな色」で写したいのなら、太陽が画面に入らない構図で撮ると簡単です。
ダイナミックな印象は出ませんが、光に包まれたようなまったりとした、ミルキーでアンニュイな描写が得られます。
下の写真は、上とほぼ同時刻に写しました。画面外の左のほうに太陽があります。
どうしても太陽を入れた構図にしたいときは、日の入り直前の「少しだけ太陽が見えている」シーンや、「雲に隠れた瞬間」を広角(広い範囲が写る設定)で撮るとよいかもしれません。
これなら、太陽が白い球となって画面内で目立つことはなくなります。
どちらにしても、逆光状態なので撮ったままの写真は明暗差が激しいかもしれませんが、Lightroomで色調整すれば色彩豊かな写真に仕上がります。
たとえば、上の写真をLightroom補正すると下のようになります。具体的な補正に関しては、後述の編集方法を参考にしてください。
ちなみに、上の写真の30分後、日の入りから約10分後に撮影したものが、トップに掲載している写真です。
太陽が地平線の下に沈むと、高空が青くなるだけでなく、地表物が太陽光を遮り空に光の筋を描くことがあります。これがとても美しくて。
ほんの少し待つだけできれいな光景が写せるのですから、日が沈んでも粘ってみる価値は大いにあります。
それと、太陽が沈む方向とは異なる方角に目を向けると、下の写真のようにやさしい色彩で段階状に伸びる光の筋を写すこともできます。もちろん、気象条件によりますが。
いかがです。「マジックアワー」って、すごいと思いませんか?
これで皆さんもマジックアワーの存在を知ったわけですから、この時間帯の魅力を生かして、映える夕暮れ時の写真をどんどん撮影しましょう。
マジックアワーを狙って写すなら、確認したい3つのポイントというか、覚えておきたい知識があります。それが、
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①日の入り時刻を調べる
②カメラをRAWに設定する
③露出補正の方法を知る
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です。②はスマホによっては設定できないかもしれませんが、それ以外の項目は写真を撮る前に確実に把握しておきましょう。
①の日の入り時刻に関しては、スマホで検索すると簡単です。位置情報がオンになっていれば、ブラウザで「日の入り」と検索すれば確認できます。
繰り返しになりますが、個人的には「日の入りから15分後」までが、美しい写真が撮れる時間帯ではないかと。
②は、Lightroomのカメラ機能を起動して設定します。
iPhoneを例に紹介すると、カメラ画面の左端(スマホを縦で構えたときは上端)の中央に「DNG」と表示されていればOKです。「JPG」となっているときは、文字をタップして設定画面を表示して、「DNG」に変更します。
「DNG」とはAdobeが提唱するRAW形式の名称で、「DNG」にしておくことで高品位な画質で写せる上、編集機能を使って微妙な色の調整がしやすくなります。
③の「露出補正」とは、明るく写したり暗く写したりする機能のことです。
明るく写したいときはカメラ画面で指を上(スマホを縦に構えたときは右)、暗く写すときは下(同、左)にスライドします。「Exp」の文字をダブルタップすれば、元の明るさに戻せます。
露出補正を行わなくても、撮影後にLightroomの編集機能で補正することができますが、イメージする明るさと大きく異なるときは露出補正機能で撮りたい明るさにしておくと編集がラクになります。
いつもよりも蘊蓄が長くなってしまいましたが、それくらいマジックアワーは魅力的なんです。というより、個人的に好きな撮影シーンなので、つい熱く語ってしまいました……。
でも、撮るだけではマジックアワーの魅力は半分。
Lightroomの編集機能で潜在的な色彩を引き出すことで、美しさはさらにアップするのです。
編集する写真は、トップにも掲載している下の写真です。日の入りから約10分後に写したものです。
太陽が地平線の向こうに沈むと、日の入り前には見られなかった光の筋が空に伸びてきたので、空に浮かぶ月と海中の浮き輪の配置を意識した構図で写しました。
下が補正前の写真です。撮影したままの色彩もかなりいい感じです。
撮影時に露出の補正などは施していないので、カメラを向けてシャッターボタンを押しただけの写真ですが。
時間さえマッチすれば誰でも撮れる写真なのですから、マジックアワーってホント、すごいです。
マジックアワーに写した写真の補正で僕がよく使うのは、「自動」機能です。
前回の「提灯」のときも使いましたが、Lightroomの「自動」機能は優秀で、潜在的な色彩を引き出すように仕上げてくれます。
というわけで、モバイル版のLightroomを使って作業開始です。
サムネール一覧で写真をタップして大きく表示したら、①左上の文字の部分をタップ。表示された一覧から、②「編集」を選んで編集画面で表示します。
色鮮やかな発色にしたいので、補正をはじめる前に、①「プロファイル」をタップして全体の色の方向性を決めます。
①「お気に入り」の項目にある、②「Adobeビビッド」をタップして選択しました。これで、写真の基本的な色彩がビビッドな状態(発色のよい色)に調整されます。
写真によっては「風景」やそのほかのプロファイルが似合うこともあるので、サムネールの色を頼りにいろいろな設定を試すとよいかも。
設定できたら、③のボタンをタップして確定します。
具体的な補正作業に入ります。といっても、「自動」補正を実行して、好みと異なる明るさや色をカスタマイズしていくだけなので難しくはありません。
まずは、①「自動」ボタンをタップして自動補正を実行します。これで、Lightroomが写真を解析して、明暗や色彩を整えた状態にしてくれます。
「自動」補正の結果を元にして、自分好みの明るさや色になるように調整していきます。つまり、気になるポイントを探してそれを改善していくというわけです。
代表的な調整方法としては、
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明るさを調整したい→「ライト」ボタンの「露光量」
色濃くしたい→「効果」ボタンの「かすみの除去」
暗い部分を明るくしたい→「ライト」ボタンの「シャドウ」
白っぽい空に色を出したい→「ライト」ボタンの「ハイライト」
色を変えたい→「カラー」ボタンの「色温度」/「色かぶり補正」
鮮やかにしたい→「カラー」ボタンの「彩度」/「自然な彩度」
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となります。
この写真はもう少し色濃くしたいと思ったので、①「効果」ボタンをタップして、②「かすみの除去」スライダーを右に移動しました。
写真をよく見ると、建物が黒っぽくなっている点が気になりました。もう少しディテールを出したいので、暗い部分を明るく補正します。
使う機能は、①「ライト」ボタンにある、②「シャドウ」スライダーです。右方向に動かすと陰のように暗い部分が明るくなって、ディテールが見やすくなります。
いよいよ核心の作業でもある、夕暮れ時のドラマチックな雰囲気を左右する色づくりに入ります。
①「カラー」ボタンをタップして、②「色温度」スライダーを右に移動。これで全体がオレンジ色に偏って、焼けた空の雰囲気が強くなります。
さらに、③「色かぶり補正」スライダーも右に移動して、少しだけ藤色の印象を出しました。
これでひとまず完成です。撮影したときの色と比べると、だいぶ色彩豊かになりました。
でも、もしかすると「空の青い部分にもう少し深みを出したいな」とか思うかもしれません。そんなときのために、部分補正を使った仕上げ方も紹介しておきます。
トップに掲載している写真も、部分補正を使って仕上げています。
ただし、補足的な作業なので、難しいと思うなら今覚えなくても大丈夫です。頭の片隅にとどめておいて、必要になったときに調べればよいのです。
部分補正の効果も知りたいと思った皆さん、もう少しお付き合いください。
部分補正を行うには、①「部分補正」ボタンをタップして機能を表示します。
画面の左上に、①「+」ボタンが表示されたら、これをタップします。
部分補正の種類を選択するボタンが表示されました。
ここでは、空の高い部分に向かって徐々に色濃くしたいので、グラデーションのように補正できる、①のボタンをタップします。
写真上で、①補正する部分から補正したくない部分に向かって指をスライドすると、グラデーション状に色の付いた範囲が表示されます。これが補正される範囲の印で、赤く表示されている領域ほど補正の効果が強くなります。
補正の幅や角度は、②と③のバーを指でスライドすれば調整できます。
部分補正をするための準備が整いました。まずは、空の高い部分に対して色濃くなる補正を施します。
①「効果」ボタンをタップして、②「かすみの除去」スライダーを右に移動。補正した部分が目立ち過ぎないように、少しだけ色を乗せる感じで調整しました。
次は、光の筋を際立ててみます。明るい光と暗い青空の明暗差を大きくすればよいので、①「ライト」ボタンにある、②「コントラスト」スライダーでコントラストを強くします。
コントラストの補正で明るい部分がより眩しくなり、光の強さが出てきました。必要に応じて、鮮やかさや色などの補正も施せます(ここでは未調整)。
調整できたら、③のボタンをタップして確定すれば部分補正は完了です。
部分補正した結果が下の写真になります。
部分補正は使うまでの手順が少し面倒ですが、補正機能自体は通常と同じものが用意されているので、いつもの感覚で補正できます。
夕暮れ時(マジックアワー)は美しい。編集するともっときれい。ということが分かっていただけると嬉しいのですが、自分で経験しないと実感は得られないかもしれません。
冬にかけて日が短くなるこれからの季節、夕暮れ時は撮りやすくなります。
身近な場所でも美しく写せる魅力のシーンですから、皆さんもぜひ、マジックアワーの魔力を体験してみてください。
執筆者:桐生彩希
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