チュートリアル記事

初級

10 分

スタンプ風のかすれの作り方

今回のチュートリアルでは、Adobe Illustratorの「メゾティント」効果と「スタンプ」効果を使って、ベタ塗りのアートワークを、雰囲気のあるスタンプ風の画像に変えます。まずは、下の1分動画で制作工程を確認してください。

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本チュートリアル内で使用する主な機能

効果(スタイライズ - 光彩(内側), ピクセレート - メゾティント, スケッチ – スタンプ)、アピアランスを分割、画像トレース、分割・拡張

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手順1/8

Illustratorでファイルを開く

Illustratorを起動し、「ファイル」-「開く」から練習用サンプルファイル「 Stamp Effect Practice File.ai 」を選択し、「開く」をクリックします。

アートボード上に1枚のアートワークがあります。灰色1色だけを使って描かれた、コーヒーのアートワークです。

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手順2/8

選択ツールでアートワークを選択

選択ツールでアートワークを選択します。ツールパネルで「選択ツール」を選び、アートワークをドラッグで選択します。アートボード上の白い余白部分からアートワークの一部がかかるようにドラッグすることで、アートワーク全体を選択できます。

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手順3/8

光彩(内側)で縁取りをつける

イラストのエッジの内側に、光彩 (内側) で縁取りをつけて境界を強調します。ここでエッジを強調させておくことで、この後のステップでかすれを加えても、アートワークのエッジをしっかりと保つことができます。

「効果」-「スタイライズ」-「光彩(内側)」と進めます。描画モード、不透明度、ぼかしを以下のように設定します。

描画モード : 通常 (カラー:#000000)

不透明度 : 100%

ぼかし : 3px

プレビューで確認し、「OK」をクリックします。

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手順4/8

メゾティントの適用で全体をかすれさせる

アートワークにメゾティントのテクスチャを適用します。アートワークが選択された状態で、「効果」-「ピクセレート」-「メゾティント」と進めます。

「種類」は、「粗いドット」を選択して、「OK」をクリックします。

ヒント :メゾティントとは、銅版画で用いられていた技法のひとつです。版面に細かい線状の傷をたくさんつけて細かな凹凸を作ります。すると、インクののり方に差が生じ、微妙な明暗の変化が生まれます。その技法をモチーフにした絵画的な効果をIllustratorで利用することができます。かすれの表現や、木目風のデザインを作るときによく使われる機能です。ここでは、メゾティントを適用することで白い微細なかすれが生じ、一気に絵画的な雰囲気に変化しました。

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手順5/8

スタンプの適用

メゾティントによって、生じた塗りの部分の微細なかすれを、スタンプのインクで版を押したような、べたっとした風合いにします。「効果」-「スケッチ」-「スタンプ」と進め、以下のように設定します。

明るさ・暗さのバランス : 1

滑らかさ : 6

設定後、「OK」をクリックします。

ここまでできれば、今回のアートワークはおおむね完成です。ただし、以降の操作を加えることで、形状を細かく変化させたり、色を変えたりと、さらなる編集がおこなえるようになります。そのためには、さらに細かくアートワークの要素を分割する必要があります。そこで、まず「アピアランスを分割」を使い、いったん効果が定着された状態の1枚のビットマップ画像に変換します。

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手順6/8

オブジェクトのアピアランスを分割

アートワークが選択された状態で、「オブジェクト」-「アピアランスを分割」と進めます。

ヒント :オブジェクトの「アピアランスを分割」するというのは、少し分かりづらいテクニックかもしれません。本来は、多様な形状のアートワークをそのアウトラインに沿って分割するためにもちいます。例えば、以下はブラシストロークの例です。ブラシは複雑な筆先のものでも、一本パス上に描画されます。このアピアランスを分割したのが右の例です。このように、ブラシの外形にあわせてポイントが生成されています。このように、オブジェクトの実際の見た目(アピアランス)に沿うように、アウトラインをとるのが「アピアランスを分割」機能の特徴です。

ただし、今回は少し、特殊な使い方をしています。直前の操作で、スタンプ効果を適用しました。そのような効果を適用したアートワークに、「アピアランスを分割」を適用すると、ビットマップ画像に変換されるのです。その結果、次の手順で「画像トレース」をおこなえるようになります。

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手順7/8

画像トレース

「アピアランスを分割」の操作によって、いったんアートワークが1つの画像にまとまりました。これをふたたびベクター形式にして細かなアウトラインを取り出すための下処理として、画像トレース機能を使います。

「ウィンドウ」-「画像トレース」と進めて、画像トレースパネルを表示します。「詳細」セクションを以下のように設定します。

パス : 100%

ノイズ : 1px

曲線を直線にスナップ : オフ

ホワイトを無視 : オン

プレビュー : オン

ヒント :詳細セクションは、初期設定では非表示になっています。先頭の▶︎をクリックして、内容を展開してから操作をおこなってください。

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手順8/8

オブジェクトの分割・拡張

プレビュー状態の画像のトレースから、オブジェクトを「分割・拡張」します。分割・拡張の操作をすることにより、プレビュー状態のトレース画像が、ベクター形式の細かい図形の要素に分割されます。
「オブジェクト」-「分割・拡張」と進めます。
分割・拡張 ダイアログボックスで、以下のように設定し、「OK」をクリックします。

オブジェクト : オン
塗り : オフ

分割・拡張 の操作をすることで、アートワーク内のそれぞれの要素に対して、塗りと線の操作をおこなえるようになりました。

好みに応じて、さらに詳細に調整していただいてもいいでしょう。

以上のように、今回はIllustratorでスタンプ風のかすれた風合いのアートワークを作成しました。後半は、やや分かりづらい操作が続いたかもしれません。その場合は、手順5でいったん完成としていただいても大丈夫です。

ただし、

  1. 効果を設定 (スタンプなど)

  2. アピアランスを分割 (1枚の画像にする)

  3. 画像トレース + 分割・拡張 (あらためてベクター化)

という一連のテクニックは、テクスチャを作成するときには、よく使うものです。そんな、プロの仕様のテクニックも、この作例を通して、ぜひお試しください。


2022年3月30日

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