KDDI:顧客との深く長い関係を築く「デジタル×顧客体験」の取組み

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07-18-2023

KDDI:顧客との深く長い関係を築く「デジタル×顧客体験」の取組み

  • デジタルは「顧客体験を正確に把握してその体験向上を後押しする手段」と位置付ける
  • 顧客のモーメントを捉える施策が、LTV向上などのビジネス成果につながる
  • 顧客体験をデータとして活用する改善サイクルがサービスを進化させる

企業と顧客との「つながり方」が大きく変化しつつある今、「いかに顧客と長期的かつ深い関係を築いていくか」が、企業の継続的な利益を生み出し、事業基盤の強化を図る鍵となる。そのためには、顧客一人ひとりを知ること、そして顧客視点に立ち、新たな価値を創造し続ける取り組みが求められる。

「つなぐ」をキーワードに、顧客の期待を超える体験価値を生み出すビジネスへと変革を図っているのがKDDI株式会社(以下、KDDI)だ。KDDIは「通信インフラのとしての企業」から「顧客の豊かな生活をサポートする企業」へと飛躍しようとしている。顧客との深いつながりを築くため、デジタル変革をどのように推進しているのか。同社の取り組みを追う。

デジタルによって顧客体験を正確に把握し、体験向上を後押し

デジタルによって顧客体験を正確に把握し、体験向上を後押し

KDDIは、2020年3月期~2022年3月期の中期経営計画のなかで、「通信とライフデザインの融合」という方向性を明確にした。通信事業というコアコンピタンスから、エネルギー、コマース、ヘルスケア、金融、エンターテインメント、エデュケーションなどへと事業領域を拡張し、顧客の「ライフタイムバリューの最大化」を推進。これにより、通信と付加価値によるARPA(Average Revenue Per Account:契約者1人当たりの月間売上高)の向上を図る。顧客に自社サービスをより多く、かつ深く利用してもらうことで、顧客体験を向上させながら自社の収益にもつなげる、Win-Winの関係を築き上げようとしているのだ。

その中で、デジタルは「顧客体験を正確に把握してその体験向上を後押しする手段」と位置付けている。同社デジタルマーケティング部門のミッションは、「デジタルを活用して、価値を生み出し、融合をリードする」こと。「顧客体験の向上」「売上アップ」「コスト削減」すべてに貢献する。

井上 慎也氏

「私たちのチームでは、すべてのメンバーが、デジタルマーケティングを通して組織全体にどう貢献できるのか、と常に考えています。デジタル(データ、テクノロジー、オンライン接点)を活用して、最小限のコストで最大限の利益を上げ、同時にお客様により良い体験を提供することが私たちのミッションです」。

KDDI コミュニケーション本部 デジタルマーケティング部 部長 井上 慎也氏は、このように話す。従来、広告宣伝費や、各種の制作・運用費はコストととらえられがちで、それを主管する部門はコストセンターと見なされることも多かった。しかし同部は、デジタルを活用し「プロフィットサポートセンター」として存在感を発揮したいという意思を明確に示す。これまで複数の戦略を主管し、さまざまなアクションで結果を出している。その取り組みに注目していこう。

デジタルによる特定層へのサービス認知拡大

デジタルによる特定層へのサービス認知拡大

KDDIのサービスブランド「au」が提供するサービスの一つに「世界データ定額」がある。国内で利用しているスマートフォンをそのまま、海外150以上の国で、24時間980円で利用できる(注:2020年2月1日より事前予約での早割を開始)というものだ。空港でWi-Fiルーターをレンタルしたり、海外でSIMを購入したりする必要がなく、低コストに利用でき、利便性も高い。ただ多くの顧客にとって頻繁に需要が発生するわけではないため、大規模な広告展開による訴求には向かない。いま必要としている人に知ってもらってこそ、価値として認知される。

そのような顧客のモーメントを適切に捉えるため、同社はデジタルを活用した。サイトでの行動や外部データを活用し、このサービスに興味がありそうな層にのみに絞ってアプローチをする。サービスの特徴やメリットの様々な切り口からの広告を展開し、お客様の反応を軸に最も興味を持ってもらえたメッセージやクリエイティブに最適化を繰り返す。特定年齢層や性別に特化したメッセージやデザインを作成するなど、施策改善の繰り返しにより確度を高めた。

一連の施策により、既存顧客への認知度を高めるとともに、短期の海外旅行などを趣味とする特定層に即した認知も獲得。auを選択するインセンティブを高めることができたという。

「まずはサービスを知ってもらうこと。その次にキャンペーン施策という順番で進めました。A/Bテストを繰り返して万人向けの成功事例をまず1つ作り、それをバリエーション展開することで、特定層向けのキャンペーンでの成果を得ることができました」(井上氏)

顧客視点での改善がビジネス成果につながる

顧客視点での改善がビジネス成果につながる

かつてauのwebサイトは、auブランドサイトをはじめ、お客様サポートサイト、Q&Aサイトなど大きく5つに分断されていた。各部門が独自にwebサイトを制作していたためで、顧客から見ると決して利便性の高いものではなかった。そこで同社は、顧客視点に立って各サイトを統合するために、Adobe Experience Managerを活用。ガバナンスを効かせ、ブランドイメージを保ちながら顧客が使いやすいサイトへと生まれ変わらせた。

一般的に、「良くなった」という声は届きにくいものだが、その成果は外部調査から明らかになった。トライベック・ストラテジーが行った「webユーザービリティランキング

(2018年12月10日公開)」において、KDDIが総合1位、auは同4位という結果になったのだ。情報通信分野に絞るとauは3位になる。2位はグループ会社のUQコミュニケーションが獲得しており、KDDIグループが上位を独占したのだ。

また同社はデジタル顧客接点として、「My au」アプリも提供。契約内容や請求金額、データ利用量などが簡易に確認できる。誰もが常に持ち歩くことから、効果的な顧客接点へと成長した。そして、オウンドメディア「Time&Space」による情報提供を積極化させ、自社の取り組みをストーリーとして顧客に届け、顧客の問題解決に役立つ情報も発信している。

カスタマーサクセス促進に役立つこうした施策は、サービス契約の継続や契約拡大といった、ビジネス成果に貢献している。

デジタル戦略がサービスを進化させ、イノベーションを起こす

顧客視点での改善がビジネス成果につながる

これらの施策はすべて、顧客体験をデータとして活用する、デジタル戦略の成果だ。まずは顧客の声(VoC)、行動データ、ビジネスデータなど、顧客体験にかかわるデータを可視化、分析して、戦略/戦術の仮説を立てる。戦術の実行にあたっては、仮説をもとに設計された新たな顧客体験をテスト。そして顧客体験の変化を分析、改善する。このサイクルを繰り返すために、アドビのソリューションが力を発揮している。絶え間ない顧客体験の最適化が、サービスを進化させていくのだ。

「これから迎える5G時代は、スマートフォンだけでなく、あらゆるものがつながり続ける時代になります。通信があらゆるモノやサービスに溶け込む時代と言えるかもしれません」と井上氏。5G時代には、通信とセンシングの進化によってビジネスモデルは変化し、顧客との関係性が再構築される。

実際に同社は、自身のB2C事業を高度化させるだけでなく、B2B事業においても新たな取り組みを推進している。同社の取引先と提携し、5GとIoTを組み合わせた次世代サービスを共同開発する「KDDI DIGITAL GATE」だ。この提携から、誰も想像していなかった新たなビジネスが生まれてくるかもしれない。デジタル変革と顧客体験管理の取り組みは、自社と顧客のつながりを深めるだけでなく、自社を取り巻くエコシステム全体をつなぎ、新たなイノベーションを引き起こすという、大きな可能性も秘めているのだ。

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