- サブスクリプションビジネスにおいてデジタルが果たす役割は、価値の追求と持続性
- サブスクリプションモデルでは、「売ること」よりも「契約を継続してもらう」ことが重要
- 「選ばれる」サービスを提供し続け、持続的な関係を築き上げることが、サブスクリプションモデルのビジネス目標
デジタルの進化がサブスクリプションモデルを現実に
「モノを買って所有する」ことでなく、「モノを使う体験」に価値を置き、その価値に対して課金する。それが、「サブスクリプション」と呼ばれるビジネスモデルだ。
これまでも、「使用すること」に対して課金するスタイルのビジネスは存在した。たとえば、フォーマルドレスのレンタルや、賃貸住宅だ。前者は、使う機会の限られた高額なもの。後者は、購入価値とレンタル価値のトレードオフで、レンタルを選択したときに利用される。あるいは、公共交通機関も価値に対する課金で成り立っている。
しかし、いま注目されているビジネスモデルとは少し異なる。サブスクリプションモデルは、モノそのものではなく、モノを使って「何らかの喜びや利益を得る」ことが本当の目的であると捉え、その喜びや利益の部分に課金するというビジネスモデルだ。
音楽業界では、月額制の音楽配信が従来の音楽ビジネスそのものを変えつつある。ソフトウェア業界ではアドビが先陣を切って完全なサブスクリプション化に踏み切った。また、カーシェアに取り組む自動車業界、飛行機乗り放題サービスが注目を集める旅行業界などで変革が進む。定期宅配に目を向けると、飲料や食品、化粧品など、続々と新しいサービスが生まれている
そして、そうしたサブスクリプションモデルの実現に大きな役割を果たすのがデジタルだ。デジタルの果たす役割は、大きく2つある。
サブスクリプションにおけるデジタルの役割(1):価値そのものの追求
新聞は、サブスクリプションの代表例だ。毎日読んでくれる読者には、宅配サービスを包含した月額購読プランを提供する。一方、たまに読むだけの読者には、駅の売店などで単体購入してもらう。ここで顧客が欲しがっているのは何かと注目すれば、物体としての新聞ではなく、そこに掲載されている記事であり情報、すなわちコンテンツであることは明白だ。そのため、今では多くのビジネスモデルが、物体ではなくコンテンツを求めている顧客に、デジタルチャネルを通じて届けることで事業を展開している。
サブスクリプションにおけるデジタルの役割(2):顧客の持続的体験を管理
サブスクリプションモデルでは、「いつでも止められる」ことが、検討段階にある顧客にとってのサービス加入へのハードルを低くする。
米国で注目されたひげ剃りのサブスクリプションを考えてみよう。ひげ剃りの替え刃を定期的に届ける薄利多売のビジネスモデルでは、ビジネスを軌道に乗せるために、一定規模以上の顧客基盤を築く必要がある。その顧客管理や契約管理に人的コストがかかりすぎると、黒字化は困難だ。そこで、発送や契約などの顧客体験全般をデジタルで自動化し、継続率を高める施策の検討と実行に労力を集中することが、ビジネスの成功に不可欠となる。
サブスクリプションモデルにおいて注力すべきは「顧客維持」
多くの一般的なビジネスでは、「売ること」がゴールだった。サブスクリプションモデルでも、サービスの利用を始めてもらうことは大切だ。しかしサブスクリプションモデルにおける成功要因は「契約を継続してもらう」ことにこそある。顧客獲得時点で得られる利益より、契約継続から得られる生涯利益のほうが大きくなるためだ。