オンラインワークショップ「Adobe Expressを使って“ありのままの姿を映し出そう”」イベントレポート

高知県の砂浜美術館と、次世代人財塾 適十塾との共催でAdobe Expressを使ったオンラインワークショップイベントを開催しました。

2024年2月18日、高知県の黒潮町で活動を続ける砂浜美術館と、「Connecting the dots つながりそうにないものを繋げ、新しい価値を創造する」を掲げ、一人ひとりが持つ柔軟な発想を活かしながら活動する次世代人材塾 適十塾(以下、適十塾)との共催でAdobe Expressを使ったオンラインワークショップイベントを開催しました。

このイベントは「地球、そして私たちの「ありのままの姿」を見つめ、仲間と対話し、表現してみよう!」という砂浜美術館と適十塾のメンバーの思いから始まります。

複雑に絡み合う社会課題を目の前にすると、途方に暮れて悲観的になることもありますが、隣の人と話すことで、少しでも解決に近づくための希望を見出し、行動に移していく“場づくり”が大切だと考えました。

私たち一人ひとりに関係のある「環境問題」というとても大きな問題に対して「今の地球のありのままの姿」を学び、そして「自分の心の中に芽生える思いを、言葉やアートを用いて表現する」場を作るべく、2つのステップで構成されるオンラインワークショップイベントを企画しました。

ステップ1では「地球について学ぶ・感じる」というテーマで、砂浜美術館の塩崎さんと地球環境パートナーシッププラザの江口さんの2名にお話を伺いました。

ステップ2では「Adobe Expressでつくる・対話する」というテーマで、実際にAdobe Expressを使って参加者全員がTシャツをデザイン。作品をシェアして、自分のデザインについて説明し、仲間と思いを共有するワークショップの時間を設けました。

本記事では、ワークショップイベントの模様を抜粋してお届けします。

ステップ1-1 「砂浜から地球のことを考える」という思いから誕生した砂浜美術館とは

砂浜美術館の塩崎さんは、以下のように語りました。

「砂浜美術館は、高知県の黒潮町で36年間続いている”建物がない美術館”です。

”建物がない”とはどういうことかというと、”黒潮町にある長さ約4kmの美しい砂浜を美術館に見立てるという考え方からできているからです。砂浜美術館は、砂浜を訪れた方々にものの見方を変えていただき、頭のなかで美術館の見方を創り上げてもらうことをコンセプトとしています。

砂浜美術館の始まりは、”砂浜でTシャツをひらひらさせたら面白いんじゃないか”という小さな遊び心からです。1989年に開催したTシャツアート展は、地域の将来像を模索していた町の職員と、その相談を受けたデザイナーのアイディアが組み合わさって実現しました」

「このTシャツアート展は日本国内にとどまらず、海を渡ってモンゴルやハワイ、アフリカでも開催されています。これがきっかけで次世代を担う人材が他府県からも集まるようになりました。砂浜美術館の発想と考え方が、世代や地域、国の枠を超えて広がっていることは素晴らしいと思っています。

またこの写真は、砂浜美術館でアカウミガメの赤ちゃんが海に戻っていく様子です。このような海の作品も限られた期間だけに見られる、まさに自然の芸術。アカウミガメは綺麗な海でだけ産卵するので貴重な光景です」

「バブル経済の絶頂期には多くの地域が、いわゆる箱物といわれる観光施設を作っていましたが、砂浜美術館のある黒潮町は「建物を建てない」という選択をしました。だから今の砂浜美術館があります。

砂浜美術館は、「砂浜をはじめ、目の前に広がるありのままの自然や町の文化を作品として楽しんでいただく美術館」です。その考え方をよりわかりやすく伝えるために、Tシャツアート展や潮風のキルト展、砂浜にたどりついた漂流物をアートとして展示するなど、芸術に特化した企画展を開催しています。

ちなみにTシャツアート展は、日本全国からの応募作品で構成されていますので、美術館で鑑賞するだけでなく、どなたでも応募者として参加できます。ゴールデンウィークに開催していますので、ぜひご来館いただけると嬉しいです」(塩崎さん談)

記事の最後で、2024年が第36回目となるTシャツアート展の詳細を掲載していますので、ぜひチェックしてください。

ステップ1-2 今の地球環境について、私たち一人ひとりができること

次に、地球環境パートナーシッププラザの江口さんが地球環境について語ってくれました。

「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)は1996年10月に設立され、NPO・企業・行政など多様な主体による環境パートナーシップ促進を目的として活動してきました。東京都渋谷区の国連大学内にある環境省が拠点です」

「全国8か所にある地方環境パートナーシップオフィスとともに、環境・NPO・パートナーシップに関する情報やさまざまなノウハウを共有しています。

日本、そして世界の環境問題の話をいくつかハイライトして紹介します」

「持続可能な開発目標(SDGs)という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、その中には環境に関する事柄もいくつか目標として入っています。

国連が毎年SDGsの進捗状況を報告しています。例えば、世界的にフードロスという言葉が広がってきています。現代社会において、食べられるはずの食料にもかかわらず、廃棄されているという問題があります。他にも、気候変動や海洋資源の問題、陸上生態系の保護など、数多くの問題がありますが、私たちはそれらを良い方向に進めるために活動しています。

今回のイベントが”ありのままの姿”というテーマだったので、現在の地球環境の非常にネガティブで深刻なありのままの状況を共有しました。そういった危機的な状況がある中で、私たち一人ひとりにできることは何だろうか?ということを一緒に考えていただきたいです。

また、実はSDGsの前にMDGsという開発目標がありました。こちらは2000年から2015年までの15年を達成期限として、いわゆる開発途上国の人権や生活向上を目標としていたものです」

「この目標を掲げた結果、極度の貧困層にあたる人々が半減したり、5歳児未満の死亡率が半減したり、若者の識字率が上がったりと、多くの状況が改善されました。しかも世界人口自体は約20億人も増えている中で、です。

これは目標を定め、それに向けて努力した結果です。ただ漫然と過ごしているだけでは、極度の貧困層を半減させるなんて無理ですし、“達成させよう”という願いこそが大事です。

MDGsには未達成な目標もありましたし、先進国内の格差の拡大や環境問題が深刻化する中でSDGsが必要となりました。そのような時代の中で、私たちはどのような社会や地球環境を目指すのか、今日をきっかけにまた皆さんと一緒に考えていければすごく嬉しいです」(江口さん談)

続いてステップ2ではAdobe Expressを使ったワークショップがおこなわれました。

その模様をお届けします。

ステップ2-1 Adobe Expressとは

はじめに、Adobe Expressについて簡単に紹介します。

Adobe Expressとは、誰でも簡単に魅力的なコンテンツが作れるデザインツールです。豊富なテンプレートを使って、SNSなどで使用するコンテンツ、ロゴやチラシ、プレゼンテーション用の資料、動画などを作ることができ、基本的に無料で使えます。

またテンプレートだけでなく、高品質の画像を提供するAdobe Stockや、数千ものフォントを提供しているAdobe FontsもAdobe Expressの編集画面から直接使えます。それにより、さまざまな素材を組み合わせて思い通りのデザインを作成できます。

なお、Adobe ExpressはWeb(ブラウザ)で利用できるPC版、スマートフォンやタブレットで利用できるアプリ版があります。同じアカウントでログインすれば、PCとアプリでデータを共有することも可能です。

https://www.adobe.com/jp/express/

ちなみにこのイベントを運営するにあたって適十塾メンバーが制作した「告知ポスター、webページ、当日の説明スライド、Zoom背景画像」などの制作物全てがAdobe Expressで作成されました。

Webページ: https://new.express.adobe.com/webpage/R48jKhdnBDozY

ステップ2-2 実際にAdobe Expressで作品をつくってシェアしよう

ステップ2では、実践型ワークショップの時間を設け、参加者の方にAdobe Expressを使ってテーマに沿った画像をデザインしていただきました。Adobe Expressにはさまざまな機能が搭載されていますが、今回は画像生成AI機能「テキストから画像生成」をメインに使います。

「テキストから画像生成」は、生成したい画像を説明するテキスト(プロンプト)を入力すると、AIによって画像が自動で生成される便利な機能です。

参加者の方に作成いただく画像のテーマは、塩崎さん、江口さんのお話を聞いた上で感じたことを自由に決めていただく形式とし、自分で設定したテーマに沿って、画像生成AIの機能を使って画像をデザインしてみます。

運営によるチュートリアルでは「人間だけでなく、動物と共に自然を楽しみたい」という思いから、テーマを「みんなのお花見」に設定。Adobe Expressの編集画面にて、「テキストから画像生成」で、「桜の森で、動物たちがお花見をしている」と入力して「生成」ボタンをクリックします。すると一瞬で、桜の木の下で3羽のうさぎが桜を見上げている画像が生成されました。

最初に生成された画像はイメージと少し違ったので、デザインを変更してみましょう。テキストを「桜の森で、動物たちがピクニックをしている」に変えて再生成します。すると地面にシートが敷かれ、お弁当を楽しんでいる動物の画像が生成されました。ここに「デザイン素材」メニューから「ふきだし」を追加してみます。

ご覧のような、吹き出し付きの画像が生成されました。

Adobe Expressの画像生成AI機能を使えば、自分の思い描くイメージをテキストで入力するだけで、このような画像が簡単に作れてしまうのです。

次に、ワークショップで参加者の方がシェアしてくださった作品を少しだけ紹介します。

参加者の作品1「時には自分を見つめて」

参加者のお一人は「時には自分を見つめて」と題した作品をシェアしてくれました。

塩崎と江口さんのお話を聞いて、「ありのままを大切にしていきたい」という思いから、「海の中に鏡があり、その鏡から自分を見つめる」というイメージで作られたそうです。画像生成AIで生成したイラストに、デザイン素材を組み合わせて仕上げられました。

画像のなかのテキストの演出は、Adobe Expressのテキスト素材を「アーチ型」に配置する機能が使われています。

参加者の作品2「動物とお花見」

この参加者の方は「動物とお花見」という作品をシェアしてくれました。

Adobe Expressの画像生成AI機能で最初に生成されたイラストは、桜が多すぎたそう。そのため左側の桜を削除し、その下にデザイン素材を差し込むことで、幻想的な雰囲気の作品が生まれました。

画像生成AI機能で生成された画像に他のデザイン素材を組み合わせたり、ブラッシュアップしたりすることで、自分のイメージに近づけることができます。

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ワークショップは20分程度でしたが、短い時間でも自分のイメージに合う画像が簡単にデザインできるのが、Adobe Expressの特長です。

ぜひ想像力を形にして、あなただけのオリジナルコンテンツを作成してみてください。

今回のワークショップで完成した作品は、参加者のTシャツアート展に応募し、実際にAdobe Expressで制作した作品が実物のTシャツとなって美しい砂浜に展示されますそれでは最後に、砂浜美術館で開かれる2024年のTシャツアート展の詳細について紹介いたします。

2024年第36回Tシャツアート展について

砂浜美術館のはじまりは、1989年。

「写真・絵画展は室内でするもの」という考え方を無視した、世界ではじめての美術展、砂浜美術館はこの発想から始まりました。

キャンバスに見立てたTシャツに作品をプリントし、浜辺に杭を打ち、ロープを張り、洗濯物を干すように並べる。全国から集まったTシャツは波が寄せると砂浜に写り、風が吹けばひらひらと踊りだす。砂浜一面に並んだTシャツは、ひとつの「現代芸術」として完成します。

Tシャツアート展は砂浜美術館が一年で一番盛り上がる6日間。Tシャツの作者・来場者・自然のコラボレーションです。時間の流れとともに姿を変えるその風景作品はもちろん、日替わりの楽しいイベントも開催します。

みんなでつくりあげる大きな風景作品“Tシャツアート展”。

36回目の壮大なひらひらが現れる砂浜美術館へ、ぜひお越しください。

第36回Tシャツアート展

開催日時 :2024年5月1日(水)~5月6日(月)9:00-18:00

場所 :砂浜美術館(高知県黒潮町 入野の浜)

審査員 :團 紀彦さん(建築家/都市計画家)

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