※出典:経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改定について」
はじめに
2020 年 12 月に「2021 年度税制改正大綱」が公表され、翌 2021 年 3 月 26 日には「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会で可決、2022年1月より施行、これにより電子帳簿保存法が抜本的に見直されることになりました。また、直近では「デジタル改革関連法」が、参議院本会議で可決・成立する等、昨今様々な施策によりデジタル化が進められております。
【2021 年度の電子帳簿保存法改正ポイント】
① 承認制度の廃止
② 国税関係書類スキャナ保存制度の要件緩和
③ 電子取引データ保存の要件緩和と厳格化
④ 罰則規定の追加
⑤ 優良電子帳簿制度の創設
➀承認制度の廃止
電子帳簿保存を始める場合、国税関係帳簿や国税関係書類については、事前(電子保存を開始する 3 ヵ月前まで)に所轄税務署⾧の承認を受ける必要がありましたが、この承認制度が廃止され、一定の要件を満たせばデータ保存が可能になります。ただし、そのためには、電子帳簿保存法の法令要件に従ったデータの入力及び保存が必要になります。
適用時期
帳簿:令和 4 年 1 月 1 日以降開始する事業年度分から
書類:令和 4 年 1 月 1 日以降保存を開始するデータから
スキャナ保存:令和 4 年 1 月 1 日以降保存を開始するスキャナ保存から
②国税関係書類スキャナ保存制度の要件緩和
- タイムスタンプ要件の緩和
入力時、受領者による署名が不要。
タイムスタンプの付与期間が現行「概ね 3 営業日以内」から最⾧ 2 ヶ月以内に。
不正防止の策として電子データの修正・削除をしたことをログに残せるシステムであれば、タイムスタンプを不要とすることができる。
- 適正事務処理要件の廃止
従来、不正防止等の観点から適正事務処理要件(相互けん制)(定期検査)(再発防止)に従った入力体制をあらかじめ整備しなければならないとされていましたが、これらの要件がすべて廃止されます。しかしながら、企業のガバナンス上このような体制が整備されていなければ、コンプライアンス的に問題であり社会的な信頼にも影響するため留意が必要です。
- 検索要件の緩和
検索要件として「年月日・金額・取引先」に限定。
範囲指定及び組合せ検索については、国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じた場合は不要。
適用時期
令和 4 年 1 月 1 日以降保存を開始するスキャナ保存から
※出典:経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改定について
③電子取引データ保存の要件緩和と厳格化
- 電子取引に関わるデータ保存について、書面出力により整理保存する場合の書面保存が不可に。
- タイムスタンプ付与期間の明確化
現行「遅滞なく」からスキャナ保存制度同様最⾧ 2 ヶ月以内に。
- 検索要件の緩和
スキャナ保存制度同様
なお、前々事業年度の売上高が 1,000 万以下である保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じた場合は全て不要。
適用時期
令和 4 年 1 月 1 日以降行われる電子取引から
④罰則規定の追加
- 国税関係帳簿書類及び電子取引データについて、要件に従った保存がされていない場合、税法上保存義務がある帳簿書類として取り扱われない。
- スキャナ保存及び電子取引データの改ざん等により不正計算がされている場合の重加算税が 10%加重に賦課。
適用時期
令和 4 年 1 月 1 日以降に法定申告期限が到来する当該事業年度から
⑤優良電子帳簿制度の創設
電帳法施行規則第 3 条第 1 項
- 第 1 号 訂正又は削除の履歴が残るシステムの利用
- 第 2 号 システム間の相互関連性の確保
- 第 3 号 関係書類の備付け
- 第 4 号 見読可能性の確保
- 第 5 号 検索機能の確保
上記、すべての要件に従って作成された国税関係帳簿は優良電子帳簿の適用を受けることができます。上記要件に従って当該国税関係帳簿の作成及び保存がなされた場合、事前の届出により、所得税・法人税または消費税にかかる修正申告・更生等の申告漏れに課される過少申告加算税が 10%から 5%に減免されます。
適用時期
令和 4 年 1 月 1 日以降に法定申告期限が到来する当該事業年度から
【電子取引について Adobe Sign を利用した具体的な対応ポイント】
➀判定期間の売上高が 1,000 万円以下の事業者は検索要件が不要
②ファイル名の工夫により検索要件に対応する
③kintone、Salesforce 等のクラウドサービスを利用し検索要件に対応する。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要
電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)(規3 ①三イ、 ⑤七、8① ) |
見読可能装置の備付け等(規3① 四、8①) |
検索機能の確保(規3①五、⑤七、8①) |
次のいずれかの措置を行う(規8①)
|
➀判定機関の売上高が 1,000 万円以下の事業者は検索要件(検索機能の確保)が不要
個人事業者においては前々年、法人においては前々事業年度の売上高が 1,000 万円以下の小規模事業者のケースは、前述の通り国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じた場合は検索要件(検索機能の確保)が全て不要になり、保管までの対応が容易となります。
②ファイル名の工夫により検索要件に対応する
今回の改正により、国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じた場合は、範囲指定(任意の日付や金額等での範囲指定)や2つ以上の項目を任意に組み合わせて検索ができる機能が不要となり、検索項目は「年月日・金額・取引先」に限定されております。
上記項目により検索ができるようなファイル名にすることで Adobe Sign 単体での運用が可能になります。
また、アドビとの戦略的なパートナーシップによりAdobe Signとシームレスな連携が可能なMicrosoftのPower Automateをはじめとするローコード/ノーコードな自動化ツールを利用しファイル名の変更を自動化することで導入コストを抑えた電子帳簿保存法対応が可能となります。
例)請求書ファイルの場合、ファイル名を「請求年月日・請求金額・取引先名称」とする。
※法第 4 条 法令解釈通達 4-14 による制約
現在、検索項目についてブランク(入力漏れ等)の検索もできることが、通達上で要件となっているため、通達内容について改正後にも変更がないか留意が必要です。
③kintone、Salesforce 等のクラウドサービスを利用し検索要件に対応する。
Salesforceやkintoneなどの業務システムに「年月日・金額・取引先」等の検索項目を設定し、Adobe Sign の電子契約機能を連携させることで電子帳簿保存法の要件を満たした対応が可能となります。また、CRMやSFAなどの業務システムと連携して Adobe Sign を運用することが可能となり、顧客に紐づけた文書管理が実現します。Adobe Signの豊富なAPIを利用した各サービスとの連携コネクタは、アドビまたはAdobe Signソリューションパートナーにより提供されており、お客様の広範な要件に対応ができるシステムを短期間で構築することができます。
ハンコ文化を脱して積極的にオンライン契約を取り入れたい人のために、
ハンコ代わりに使える電子サインと電子署名の違いや導入した際のメリットなどを紹介します。
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