2021年7月「電子帳簿保存法Q&A」の重要ポイント「検索要件の緩和」「検索機能の確保」を解説 

パソコンと電卓とノート

2021年7月16日、電子データで帳簿保存を行うための要件や方法を定める「電子帳簿保存法」に関し、重要なQ&Aが国税庁から公表されました。

 

電子帳簿保存法は各種の帳簿や決算書類などの税務関係書類を「電子データ」として保存することを認める法律です。電子帳簿保存法に従って帳簿類を保存しておけば、紙で帳簿保存する必要がありません。ただし「国税庁の運用」に従う必要があります。

 

今回、国税庁から公表された「電子帳簿保存法Q&A」では、これまで明確にされてこなかった電子取引文書における保管方法についても取り扱いが明らかにされました。

 

本記事では2021年7月に公表された電子帳簿保存法Q&Aの中から「電子取引関係」における重要ポイント「検索要件の緩和」「検索機能の確保」を解説します。

電子帳簿保存法Q&Aとは

電卓で計算しながらパソコン入力している

「電子帳簿保存法Q&A」とは、国税庁が電子帳簿保存法の具体的な運用や解釈について「一問一答式」で答える資料です。

 

「令和4年1月1日以後に備え付けを開始する国税関係帳簿や保存する国税関係書類、あるいは令和4年1月1日以降に行う電子取引」へ適用されます。

 

Q&Aは以下の3部構成になっています。

· 電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係

· スキャナ保存関係

· 電子取引関係

 

今回は電子取引文書における「電子取引関係」の保管方法にフォーカスして解説します。

 

 

 

電子帳簿保存法Q&A「電子取引関係」の重要ポイント① 検索要件の緩和

 

電子帳簿保存法Q&A「電子取引関係」の重要ポイント①は、電子取引関係問12に記載されている「検索要件の緩和」です。

電子取引関係 問12

妻と2人で事業を営んでいる個人事業主です。取引の相手方から電子メールにPDFの請求書が添付されて送付されてきました。一般的なパソコンを使用しており、プリンタも持っていますが、特別な請求書等保存ソフトは使用していません。どのように保存しておけばよいですか。

 

この問いは「電磁的記録(取引データ)の検索性」についての質問です。

 

電子取引における電子帳簿保存法の適用要件では、取引データを電子的な方法で保存する要件として「真実性の確保」と「検索性の確保」が重要なキーとなります。つまり「データを改ざんできない状態」になっており、かつ取引を「検索できる状態」になっていなければなりません。

電子帳簿保存法改正により、検索要件が緩和された

近年、電子帳簿保存法の改正により「検索要件」が緩和されました。従来は「取引年月日」「取引金額」「勘定科目」等、主要項目をすべて検索条件としなければなりませんでした。また日付や金額は「範囲指定」できなければならず、さらに「2つ以上の項目」を組み合わせた検索条件設定(アンド検索)機能も必要でした。

 

法改正後は検索項目が緩和され

 

「年月日」

「金額」

「取引先」

 

3つとなりました。税務職員が税務調査において必要な範囲で行使する質問検査権にもとづくデータのダウンロード要求に応じる場合は、「範囲指定」と「アンド検索」機能が不要とされました。

電子帳簿保存法の検索要件が3つだけに変更したことを解説

今回発表された電子帳簿保存法Q&Aの問12は、この「検索性」へ具体的に対応する方法を明らかにしたものです。

索引簿に記載する方法

 

特別な請求書保存ソフトやシステムを導入していない事業所でも電子帳簿保存法に対応した方法で保存するため、国税庁は以下のように「索引簿」を作成する方法を示しています。

 

一般的なエクセルソフトなどで取引データの索引簿を作成し、税務職員が税務調査において必要な範囲で行使する質問検査権にもとづくデータのダウンロード要求に応じられる状態にしておく方法です。

 

 

2022年(令和4年)1月1日にA株式会社から受領した10,000円の請求書の場合

電子帳簿保存法に対応した請求書の索引簿への記載例

・表示方法

「20220101_A㈱_10,000」

複数の取引データには連番を付し、データは「取引の相手先」などのフォルダに保存しておきます。改ざんを防ぐため、電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を作成して備え付ける必要があります。

 

また税務調査でデータのダウンロード要求を受けた場合、上記データを提出しなければなりません。

電子帳簿保存法Q&A「電子取引関係」の重要ポイント② 検索機能の確保

 

電子帳簿保存法Q&A「電子取引関係」の重要ポイント②は、問33に記載されている「特別な電子取引データ保存システムがない場合の検索機能確保条件」です。

電子取引関係 問33

同様に「特別な電子取引データ保存システムがない場合の検索機能確保条件」について、問33でも回答例が示されました。

 

問33 当社には電子取引の取引データを保存するシステムがありませんが、電子取引の取引データを保存する際の検索機能の確保の要件について、どのような方法をとれば要件を満たすこととなりますか。

 

ここでは「ファイル名」の工夫によって検索条件を満たす方法が紹介されています。以下の条件を満たせば電子帳簿保存法の要件を満たした扱いになります。

 

・個々の取引データのファイル名に「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」を含む

・統一した順序で入力する

・「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索の条件設定できる状態にしておく

ファイル名の具体例

2021年1月10日付のB株式会社からの500,000円の請求書データの場合

20200110_B㈱_500,000.pdf

電子帳簿保存法に対応したファイル名の具体例と索引簿の記載例

なお取引年月日などの日付については和暦でも西暦でもかまいませんが、混在は認められません。どちらかに統一して入力しましょう。

 

またこの方法で帳簿保存する場合、税務調査が入ったときには税務職員の要求に応じてダウンロードに対応しなければなりません。

 

 

特別な文書管理システムを導入せず電子帳簿保存に対応できる

パソコンとノート

令和3年度の税制改正により、2022年1月1日以後の「電子取引」情報については紙に出力して保存する方法が廃止されました。電子データは電子データのまま保存しなければなりません。

 

そうはいっても電子帳簿保存法に対応する文書管理システムを導入できていない事業者も多いでしょう。そこで、エクセルなどを利用した対処方法が国税庁から明らかにされたのが、問12や問33です。

 

ただしこれらの方法を導入するには一覧表への入力やファイル名の変更などの作業が必要となります。取引件数が多い場合、システム導入を検討した方が効率的な運用が可能となる可能性もあります。

 

【2022年追記】

 

2021年12月27日、国税庁は改正省令により、2022年1月1日から施行される改正電子帳簿保存法における2年間の宥恕規定を設けました。

そして、その翌日12月28日に、関連通達の改正及びQ&AやパンフレットをHPに掲載しています。

 

電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」より抜粋

 

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年財務省例第25号)附則第2条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する宥恕措置))の規定の適用に当たって、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存を要件に従って行うことができなかったことについてやむを得ない事情があると認められ、かつ、その電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の要求に応じることができる場合には、その出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存を行っているものとして取り扱って差し支えない。

 

今回、国税庁が周知している内容は「猶予」ではなく「宥恕(ゆうじょ)」となっており、宥恕とは、日本の法律では「刑事罰対象だが、今回は○○を理由に特別に刑事処罰を求めない」という意味で使われることがあります。

 

そのため、改正電子帳簿保存法は2022年1月1日に施行されていますので、義務化はスタートしており、納税地等の所轄税務署長が ”やむを得ない事情” があると認定せずに電子化保存に対応していない場合は「法律違反」となる可能性があります。

 

次に、「『やむを得ない』事情があれば、許容する」という意味の内容が「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」に掲載されていますが、

「やむを得ない事情」とは何でしょうか?また、やむを得ない事情とは誰が判断するのでしょうか。

 

「やむを得ない事情」とは

・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に係るシステム等や社内でのワークフローの整備未済等、保存要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難であること

※詳細は電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)

 

「やむを得ない事情を判断する人」

・納税地等の所轄税務署長と書かれています。

 

なお、もし「やむを得ない事情」で対応が間に合わない場合の対応については、以下のように記載されています。

 

やむを得ない事情の有無や出力された書面については、必要に応じて税務調査等の際に確認することとしており、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、対応状況や今後の見通しなどを伝えられるように準備しておく必要があります。

 

※国税庁が提供している改正電子帳簿保存法に関係する情報ページ

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm

 

 

「Adobe Sign」と電子帳簿保存法

田中亮司と電子署名をした

今回の国税庁電子帳簿保存法Q&Aにより、アドビの電子契約サービス「Adobe Sign」が問題なく適用できることが明らかになりました。Adobe Signでももちろん、今回の国税庁の見解に即した検索簿の作成やファイル保存の導入は可能です。

 

必要に応じて税務署職員からのダウンロード要請に応じれば、Adobe Signで帳簿保存することに何の問題も生じません。

Adobe Signを導入するメリット

電子署名をしている

Adobe Signは機能性に優れており、世界に多くのユーザーを抱えているのでグローバル展開を検討している企業には優位性を感じていただける仕様となっています。

 

さらにAdobe Signには任意で多彩なフィールドを設けることが可能です。たとえばドロップダウンや、添付ファイルフィールドを設けて関連書類を併せて送ってもらうこともできるので、書類や取引の性質によって柔軟に対応できる利点もあるといえるでしょう。

 

Adobe Signに関するお役立ち資料はこちら

 

この記事は、Adobe Signの業務/法令対応コンサルティングパートナーである、ケインズアイコンサルティンググループ監修の元に書かれております。

 

▼電子帳簿保存法の具体的な対応方法について

【2022年1月施行開始】専門家に聞いた Adobe Signによる改正電子帳簿保存法への対応

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