ビジネスシーンでPDFを使うメリットは?Adobe Acrobatによって可能になること
ビジネスシーンで活用されるデータ形式「PDF」。よく目にしているものの、どのような特徴やメリットがある形式なのか、よく理解している人は少ないのではないでしょうか。そんなPDFデータについてと、PDFデータを用いた作業に特化したシステムAdobe Acrobatについて紹介します。
Web上で書類のやり取りをするとき、定番のファイル形式としてよく使われる「PDFデータ」。今やPDFはビジネスシーンだけではなく、学術研究の分野や個人ベースの作業においても広く利用されるようになりました。
また、PDFデータの作成・編集には、アドビシステムズによる「Adobe Acrobat」が便利です。さまざまな特徴を併せ持つPDFデータ、およびAcrobatを使いこなすため、それぞれの基本的な知識や使い方を知っておきましょう。
【目次】
4. Adobe Acrobatによってできるようになること
5. ビジネスシーンにおけるAdobe Acrobatの活用例
6. 用途や目的に応じて、AcrobatとPDFデータを活用しよう
PDF(Portable Document Format)形式のメリットは、情報の再現性の高さや情報管理のしやすさから、作成者の意図を損なわず、文書の内容を受け取り手に伝えられることにあります。その大きな特徴は4つ。1つずつ説明していきましょう。
文書を元データどおり、正確に再現できる
PDF形式では、フォントや画像など複数の情報をひとつのデータにまとめて保存しています。よって、異なったOSやスマホやタブレットなど、どのプラットフォームで読み取っても元データを正確に再現可能。
文書ファイルはもとの書式のまま、プレゼン資料は自分が選んだフォントのまま、デザインを損ねることなく受け取り手の画面上で表示できます。
文書の真正さが証明できる
紙の文書では、書類の真正さを証明するため、作成者が紙面にハンコやサインを残します。それと同じように、PDFの文書では「電子署名」が使用可能。「文書が本人によって作成されたデータであること」を証明することができます。
文書の内容を保護できる
文書の機密性を保ちたいときには、「パスワードや証明書による暗号化」を実行することで、PDFデータにおける「真正な電子データに必要な性質」を満たすことができます。
機械で処理できること
テキスト検索できるようにメタ情報を埋め込めたり、段落のつながりを認識できるようにPDFタグで構造化できたりする機能などを備えています。
この機能を利用することで、特定のファイルを中身のテキスト検索から見つけたり、タグから同様のファイルをまとめて処理したり、PDFタグを利用してテキストを正しく読み上げたりできるようになります。
ビジネスシーンでPDFデータを利用すれば、次のようなメリットが得られます。
・マルチプラットフォーム仕様で、端末やOSを問わずに閲覧
・契約書などの元データを正確に再現
・PDFデータ内のテキスト検索
・画像が自動的に埋め込まれるため、リンク画像のメール添付が不要
・印刷紙やインク、保管、管理、情報交換にかかるコストを削減
・セキュリティ機能を備え、安全にデータをやり取りする
・電子署名を施すことで、PDF内の文書が改ざんされた場合は検出する、など
今では在宅勤務などの影響もあり、従業員があらゆるデバイスで情報にアクセスできることが求められています。しかし、Microsoft Wordなどほとんどのファイル形式は、作成した環境(アプリケーションやプラットフォーム)に依存しているため、ファイルを正しく読み取るためには作成者と同じバージョンのWordや、同じフォントがインストールされていなければいけません。
一方、PDFは端末やOSを問わずに閲覧できる「マルチプラットフォーム仕様」です。そのため、作成したプラットフォームとは異なる環境でも読み取ることができ、作業効率を上げられます。
PDFデータと、ビジネスシーンでよく利用されているMicrosoft Wordのような文書作成ソフト。両者を比較したとき、PDFデータはどのような場面で強みがあるのでしょうか。
ファイルに「公共性」を持たせることができる
Word文書は、作成・閲覧に有料のソフトウエアが必要です。一方、Adobeが開発したPDFは「ISO 32000」として国際標準のオープンな規格で仕様が公開されているため、作成・閲覧するソフトウェアに制限がありません。つまり、どの端末でも同じように開き、確認することができるのがPDFデータの特徴です。
レイアウトなどが変わりにくい
文書を作成した環境とは異なる環境で読み取ったとき、アプリケーションに依存するWord文書はレイアウト崩れや文字化けが起こる可能性があり。しかし、文書を元データどおり正確に再現できるPDFはそれらが起こりにくくなります。
設定を施すことで改変しづらい
Word文書は、作成後も編集がしやすいファイル形式です。
一方、PDFデータは作成後に大幅な編集を想定しない上で開発されているため、編集を行うのに一手間かかる仕組みになっています。このため、「ファイル確認中に、うっかり内容の一部を削除してしまう」といった意図せぬ改ざんをあらかじめ防ぐことができます。
PDFデータ本来の優位性のほかに、有料サービス「Adobe Acrobat」を使うと以下のようなメリットが得られます。
ほぼすべてのファイル形式をPDF形式に変換できる
ほぼすべてのファイル形式やWebページをPDFデータに変換できます。また、PDF化したファイルをAcrobatで編集したうえで、「別のPDFファイル」として保存することも可能です。
そもそも、PDFは国際標準のオープンな規格になっているため、Adobeの技術を使わずとも、文書作成ソフトの機能を使えばPDFデータを作成できます。ただし、Acrobatのような「PDFの編集サービスをフル活用するためのファイル」としてはデータの内容が不十分である場合があるため注意が必要です。
スキャンした文書を検索可能なPDFに変換できる
Acrobatには、文書をスキャナから取り込むとき(または、取り込んだあと)、「OCR(光学式文字認識)」を適用できる機能が付いています。そのため、PDFデータの内容を後から検索・編集を行なえます。
PDFの加工・編集
Acrobatを使えば、ファイル内のテキストや画像を直接編集できます。
元データとなる紙文書やPDFデータが見つからない場合でも編集可能ですので、ワンクリックで「新しい段落の追加」や「誤字の修正」などができ、編集もスムーズに行なえます。
また、Adobe Acrobat Readerモバイル版アプリでは、スマートフォンやタブレットからでもPDFの編集が可能になります。
オンラインでPDFデータを編集・操作できる
Acrobatは、AcrobatモバイルアプリやAdobe Document Cloudと連携しています。
モバイル版アプリを利用すれば、スマートフォンでもAcrobatと同様の機能が使えるようになり、かつブラウザ上でも「Microsoft Officeによる各種ファイルや画像をPDFに変換する」などAcrobatの一部機能を利用できます。
Document Cloudの共有レビュー機能を使えば、1つのPDFデータを複数人が共同でコメント付与することも可能。作成した書類のレビューやフィードバックを、複数人のチームで短時間にまとめて行うことができます。
また、OneDrive やGoogleドライブなどの外部ストレージとの連携も強化しているため、ワークスタイルに合わせたPDF処理をよりシームレスに実行できます。
PDFデータを保護する
機密性の高いデータが含まれるPDFファイルは、パスワードで暗号化したり権限を適用したりすることで、コピーや変更、印刷を防ぐことができます。
ビジネスシーンでは、次のようにAcrobatの機能を活用できます。
枚数の多いPDFデータから必要箇所のみをピックアップしたいとき
取引先や社内に共有したいPDFデータがあるのに、データのページ数やデータ容量が多く、なかなか相手に送りにくい、といったケースはありませんか?
そんな場合は、Acrobatの「ページ整理」から「抽出」機能を使って、必要ページを選択、既存のデータの他に、新しくPDFデータを作成することができます。
「送りたい箇所以外のページに社外秘の情報がある」、「要点にしぼって情報共有したいので、該当ページのみのファイルを作りたい」といった場合でも活用できるはず。
断片的な情報を1つに集約して、PDFデータを作成したい
必要箇所にしぼって抽出したPDFデータを作成したら、ファイルの本数が増えてしまい、管理が大変になってしまった……といった場合には、複数のPDFデータを集めて1つのファイルに統合して保存しておくのも一つの方法です。
Acrobatのツールパネル「ファイルの統合」から、ファイルの追加および統合を行うことができます。
たとえば、社内システムの「使い方」だけをピックアップしたPDFデータを統合して、使い方の説明に特化したPDFデータを作成したり、ある案件に関する資料や情報を1つのPDFデータにまとめて、一覧性を高めたりしておくのに便利です。
PDFファイルを軽量化したい
PDFファイルを多数保存したり、メールに添付したりするためにはデータの軽量化が必要不可欠です。
そんなときは、PDFデータを作成する前、Wordなどで文書作成時に画像データなどの解像度を落としてから保存しましょう。そうすればPDFに変換したとき、ファイルを軽量化できます。
すでに作成済みのPDFデータであれば、「名前をつけて保存」から「サイズが縮小されたPDF」を選択することで、軽量化された新しいファイルを作成できます。
PDFファイルを、使い慣れた形式に変換したい
Acrobatを使えばPDFデータの編集は可能ですが、場合によってはWordなど、使い慣れた形式で編集・確認作業をしたい、というケースもあるかと思います。
そんなときは、「名前を付けて保存」から変換したいファイル形式を選んで保存することで、書式設定やレイアウト情報などを残したまま、PDFファイルをほかのファイル形式に変換できます。
承認や押印が必要な書類を、データ上で処理を進めたい
複数人が承認しなければいけない書類に押印するときや、お客様と契約書を交わすときなど、書類の承認や契約を、すべてデータ上で行いたい……と思うことはありませんか?
Acrobatには、電子契約サービス「Adobe Sign」が標準機能として搭載されているため、電子書類へのサイン付与もスムーズに行うことができます。電子契約に必要な機能も備わっているため、Acrobat導入がペーパーレス化の一助となるでしょう。
WebページをPC内に保存したり、資料として印刷したい
Web ページをPC内に保存したり、社内に配布する資料として印刷したりするにあたっては、WebページのPDF化がおすすめです。
Web ブラウザによってはページの印刷画面からPDF化を行うこともできますが、Acrobatの機能を使ってもそれは可能。「Web ページからPDF」を選択し、PDF化したいページのURLを入力します。ページ範囲やレイアウトを選んで保存しましょう。
編集前と編集後、2つのファイルを比較したい
PDFデータに修正を加えたあと、改めて修正前と修正後の2つのファイルを見比べながら、相違点を確認したいときはありませんか?
Acrobatを使えばファイルの比較が可能です。「ファイルを比較」から「比較するファイルを選択」、必要であればテキストのみを比較することもできます。
共有先で、PDFファイルの開封確認をしたい
共有した資料が相手に無事届き、PDFファイルを開封したかどうか確認したい場合は、「共有」機能が便利です。
ファイルはシンプルにメール添付するのではなく、Acrobatから「共有」、「このファイルへのリンクを共有」もしくは「このファイルを他ユーザーと共有」を使用して相手にファイルを共有します。送付後は、ファイルのステータスをチェックして、相手がファイルを閲覧したかどうか判断できます。
PDFが持つさまざまなメリットをあらかじめ理解しておくことで、必要な場面でPDFを役立てることができます。同時に、Acrobatを使いこなせるようになれば、PDFファイルを使用する作業を効率よく行なえるようになるのです。
(執筆:流石香織 編集:ノオト)
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