企業内における伝達事項の多くは、「社内文書」によって行われています。業務を円滑に進め、効率化を促進する役割を持つことから、短文で簡潔明瞭にまとめることが求められるなど、書き方にも一定の基準があります。この記事では、社内文書の基本知識とともに、社内文書をより効率的に管理する方法をお伝えします。
【目次】
4. 社内文書のスマート管理に便利な「Adobe Acrobat」
社内文書は、組織に所属するメンバーの意思疎通のために交わされる文書です。ビジネスを円滑に遂行するために、重要なコミュニケーション手段とも言えるでしょう。読み手や目的に応じて、次のように大別できます。
●会社(上司)が従業員(部下)に発する掲示や通知
通達文:会社や業務にまつわる重要事項を従業員に知らせるための文書。情報を正しく伝える必要があるため、分かりやすく整理して書くことが必要。
例)社則の通達、社内規定の通達、行事の通達、配属の通達
指示文:上層部から下層部へ業務遂行に関する指示や要望などを具体的に伝えるための文書。情報を共有して行動を促すため、指示の背景や理由を伝え、内容を理解してもらう工夫が求められる。
例)資料作成の指示、目標達成の指示、提出期限厳守の指示
規程文:会社の社内制度や事務手続きの方法を定めた文書。具体的な内容や要求するルールを明確に記すことが必要。
例)就業規則、給与規程、人事規程
掲示文:社内の共有スペースに掲示して、従業員の大多数に情報を伝えるための文書。タイトルから要件を読み取れるようにする工夫が必要。また、参加希望者を募る掲示文の場合は、従業員の意欲を喚起するため、メリットを明確に記載する。
例)社内行事の実施、健康診断の実施、防災訓練の実施
回覧文:従業員(主に部門のメンバー)に確実に知らせたい内容を記載した文書。回覧内容を一目で理解できるよう、簡潔に書くことが必要。回覧者が署名・捺印できるスペースを設けて、回覧漏れを防ぐように工夫する。
例)人事異動連絡、組織変更連絡、歓送迎会連絡
●従業員(部下)が会社(上司)に提出する提案や報告
稟議書:
自分の権限では決定できない事項について、決裁権のある人に承認を得るための文書。決裁を求める理由や目的を分かりやすく箇条書きにして、メリット・デメリットを短時間で的確に判断できるように整えておくことが一般的。
例)発注関係、新規取引関係、雇用関係
提案書:
課題や問題点を指摘し、改善につなげるアイデアを提案するための文書。数字やデータを活用して現状の理解を促したり、提案によってどのような効果が期待できるのかを示したりと、相手を納得させる書き方の工夫が必要。
例)商品開発の提案、職場環境に関する提案、海外視察の提案
報告書:
業務に関する記録や進捗状況をまとめて報告するための文書。業務の内容や経過について上層部へ正確に伝える。一般的には、情報を活用しやすいように事実だけ述べ、意見や感想は備考などに別記する。
例)日報、週報、月報、調査報告書
届書:
就業状態や個人情報の変更、報告の必要がある事柄が生じたときなど、会社や上層部に提出するための文書。誰が見てもわかるように、理由は具体的かつ簡潔に示す。
例)休職届、結婚届、住所変更届、早退届
●企業活動の記録を残すための文書
議事録:
会議の議題や決定事項、発言を書き残した文書。次回開催時の参考資料にしたり、その場にいない人へも共有したりするため、後から読んでも内容が把握できるようにまとめること、決定事項や事実に漏れがないように書くことが必要。
例)取締役会議事録、部門会議議事録、部内定例ミーティング記録
その他:
従業員の人事、営業や販売、経理に関するデータなどを記録し、残しておくための文書。必要事項を正確に記すことが必要。
例)従業員名簿、現金・預金の日計表、売上管理表
(1)文書1通に用件は1つのみ
社内文書は1通につき、記載する用件は1つに留めることが望ましいです。同じ宛先だからといって、複数の用件を文書1通にまとめて記載してしまうと、文書を受け取る立場の人がどのように処理すれば良いか判断に迷ってしまいかねず、結果として非効率になってしまいます。
(2)「5W2H」で分かりやすい文章にまとめる
相手に伝えたいことを正確に伝えるため、簡潔に書くことを心がけましょう。不正確な情報や曖昧な表現、事実と意見が混ざっている文章にならないように、言葉選びや書き方には注意が必要です。
分かりやすい文章を考えるときのコツは「5W2H」の活用です。「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「Why(なぜ)」「What(何を)」「How(どのように)」、「How many(いくつ)/much(いくら)」で情報を網羅し、簡潔に整理して文書に盛り込むようにしましょう。
(3)敬語は必要最低限にする
社内文書は“身内”宛てに、意志の伝達を優先して書くため、必要以上の敬語は不要です。社外文書で使用するような尊敬語や謙譲語はいりません。上層部宛の文書であっても「です・ます」の丁寧語で問題ありません。
(4)「前文」や「末文」はいらない
社内文書は伝えたいことを早く相手に届けることを重視しているため、前文は省略して件名のあとにすぐ用件を書きます。社外文書に記すような「拝啓」「前略」などの頭語や時候の挨拶はいりません。また、文の終わりは「以上」で締めくくります。
社内文書の種類は多岐にわたります。そのため、運用方法を間違えてしまうと、従業員の手間が増える一方です。従業員の負担を減らし、業務効率アップを目指すためにも、社内文書の見直しは欠かせません。そこで、効果的なのが社内文書のペーパーレス化です。紙からデジタルへ移行すれば、社内文書にまつわる作業の効率化やコストの削減を目指せます。
社内文書をペーパーレスにすることで得られるメリットの一つは、「リモートワークへの対応が容易になること」です。電子のやり取りにより、誰がいつ・どこにいても情報共有をスムーズに行えるようになりました。それにより、社内文書の確認から意志決定までの速度も上がるため、企業活動全体のスピーディーな進行につながるでしょう。
さらに、デジタルデータは物理的な場所をとらないため保管が容易になり、また検索性に優れているため、紛失リスクを減らすことにつながります。また、大量の紙資料による印刷費用はもとより、保存するスペース確保のために発生した間接的な費用も削減できます。
これらの側面を検討すると、社内文書のペーパーレス化は業務の無駄を省くための有効な手段だと言えます。
過去に紙で作成した文書や資料を電子化には、膨大な作業が必要となるため、早めに電子化を検討することが望ましいでしょう。
電子文書のフォーマットとして活用されているPDFですが、「Adobe Acrobat」があれば閲覧だけではなく、編集も可能になります。
たとえば、社内文書のペーパーレス化にともない、懸念されるのがハンコ文化です。現在も、回覧文をチェックした証拠や、稟議書に誰が決済をしたかを示す証拠として、ハンコで捺印するケースが多いのではないでしょうか。
しかし、ハンコでの運用を続けることは、リモートワークの障壁になり、紙からの脱却を困難にします。「Adobe Acrobat」は、そうした捺印の代わりに、PDFファイルに自分の署名を追加する機能を持ち合わせています。
タブレットであればタッチペンで、PCであればマウスのカーソルを動かしながら、PDFに直接手書きサインを付与でき、名前のスタンプを押印代わりに用いることができます。ほとんどの社内文書は、これらの機能で通用するでしょう。
柔軟な働き方が求められる昨今、オンラインでも社内文書を扱えるように整備しておくことがますます必要になるはずです。そのためにも、いち早く電子化するだけではなく、書き方や署名方法など、運用ルールを定めることが大事です。
こちらの記事で社内のビジネスシーンで重要な役割を持つ社内文書の書き方をおさらいしながら、業務効率を目指してペーパーレス化を検討されてみてはいかがでしょうか。
【参考書籍】
『そのまま使える! ビジネス文書』(中央経済社)著者・杉田あけみ
『困ったときにすぐに使える!ビジネス文書 書き方&マナー大事典』(学研プラス)監修・神谷洋平
(執筆:末吉陽子 編集:ノオト)
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