文書管理システムとは?導入によって起こる変化と効果的な使い方
文書管理システムとは?導入によって起こる変化と効果的な使い方
社内文書を管理・運用する際に便利な「文書管理システム」。同様の目的で使用されるファイルサーバーと比較して、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
書類の取り出しやすさやスムーズな送受信などを考慮しながら、文書を管理・保管する企業の文書管理ですが、そこには「使いたい書類をすぐに探し出せない」「保管コストがかかる」「セキュリティが心配」などの課題がつきものです。
そんなときに利用したいのが、従来の文書管理の課題をクリアした「文書管理システム」。そのメリット・デメリットを押さえることで、スムーズな文書管理への一歩を踏み出せます。
効率的な文書管理を目指して「紙文書の電子化」を進める企業が増えています。その結果、多くの文書が「電子化文書(紙文書をスキャンしてPDFなどの電子データとして保存した文書)」や「電子文書(Wordなどのソフトウェアで作成・保存された文書)」などの電子データで管理されるようになりました。
ただし、企業の扱う情報量が増えるほど、電子データによる文書管理にはある課題がつきまといます。それが「情報漏えい」や「不正アクセス」といたリスク。文書管理を行なうときは、WordファイルやPDFファイルなど、それぞれの電子文書へのアクセス制限を行なうだけでなく、社外の人たちとデータをやり取りしながら活用するときにも、情報セキュリティへの注意が必要になります。
たとえば、書類をPDF化してWeb上にアップロード、社外の人ともデータを共有する場合、PDFファイルの内容が変更されないよう「編集の制限」をかけるのが一般的です。この機能を利用することで、第三者によるPDFデータの編集を防ぐことができます。
たとえば、ある資料を取引先に提供するにあたって、資料内の社外に見られてはいけない情報をPDFファイル上で黒くぬりつぶした(墨消し)うえで、送付することがあります。しかし、編集の制限がかかっていないPDFファイルを送ってしまうと、送付先でぬりつぶした箇所を編集で取り除き、隠したはずの情報が確認できてしまうことに(※)。そのようなリスクを防ぐためにも、ファイルのフォーマットに合わせたセキュリティ対策が必要になるのです。
※ 他社サービスを利用したケース。Adobe Acrobatの墨消し機能を使って削除した情報は見ることはできません。
文書管理の方法は、「ファイルサーバーを用いて行う」方法と、より企業の文書管理に特化した機能を持つ「文書管理システムで行う」方法の2種類があります。それぞれの特徴をご紹介します。
代表的な電子データの管理方法のひとつが「ファイルサーバー」を使う方法です。ファイルサーバーには社内に設置したファイルサーバーを使用する「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があり、Dropbox等のクラウドストレージサービスもこれに近い機能を持っています。
このファイルサーバーを利用する主なメリットは、次のとおりです。
ファイルサーバーのメリット
・低いコストで導入できる
・データをスピーディに登録(保存)できる
・データを保管するときの操作が簡単、など
このようなメリットから、ファイルサーバーは「少人数の部内で管理するデータ」や「定期的に確認・参照することが多いデータ」を保管・共有するときの場所としては最適です。また、今ではデータにメタ情報をタグ付けすることで、スピーディに検索できるクラウド型のファイルサーバーも登場しています。検索機能は向上していると言えるでしょう。
ファイルサーバーのデメリット
・簡単にデータを保存できるぶん、不要なデータが増える
・ファイル名の付け方がバラバラだったり、ファイルが複製されたりすると検索しづらい
・サービス次第では、セキュリティ管理が不十分に感じる
・操作ミスによって削除したデータの復元が困難、など
このようなデメリットから、長期間保管する必要があるものだったり、大勢と共有したりするようなデータを保管する場所としては適していません。そのときに使える文書管理の方法が「文書管理システム」です。
文書管理システムとは、電子文書の保管を行うだけでなく、それらの共有・活用・破棄を効率的に行うためのシステムです。「目的の資料をすぐに探し出せる」などの業務効率化につながるメリットがあり、細かい図面や大量の仕様書を管理しなければいけない製造業や、国内もしくは世界各地に拠点を持つ企業が各サーバに点在する書類を検索・管理するために導入するケースが増えています。
文書管理システムの主な機能
・紙文書を電子化して、保管期限・更新日などの情報を付与して管理
・分類やタグ、全文検索による高度な検索機能
・期限が過ぎた文書の自動廃棄
・承認・申請などを電子上で行うためのワークフロー機能
・アクセス権限、情報漏洩対策など、高度なセキュリティ機能
・マルチデバイスに対応
ファイルサーバーがデータを保存しておくためにシンプル、かつ最低限の機能から高い汎用性を持つのに対して、文書の管理や社内処理・検索・破棄までを行うことができる文書管理システムは、「企業の文書管理により特化したシステム」であると言えます。
業務効率化を期待できる文書管理システムには、主に次のようなメリットがあります。
文書管理システムのメリット
・スピーディな文書検索が可能
・最新版のファイルが明示され、古いデータを誤って使うリスクを回避しやすい
・クラウド型であれば、どこでも複数人でデータ共有可能
・削除したデータを復元できる可能性が高い
・紙文書の電子化によって、保存場所や印刷代などのコストを削減
・セキュリティを強化できる、など
検索機能については、ファイルサーバーよりも文書管理システムのほうが十分な機能が備わっている場合がほとんどです。文書管理システムを使えば、ファイルサーバーと同じく、書類にメタ情報を残すことができるだけでなく、そのメタ情報を検索できる高度な検索機能を備えているので、効率的な検索が可能になります。
このようなメリットがある一方、主に次のようなデメリットがあります。
電子文書システムのデメリット
・運用中に課題点が見つかるため、運用ルールの定期的な見直しが必要
・データをやり取りするとき、情報漏洩のリスク対策が必要(※ クラウド型の場合)
・システム運用にかかるコスト(初期費用と維持費)がかかる
・システムを使いこなすための教育コストがかかる
クラウド型の文書管理システムのメリットは「どこでも複数人でデータ共有できる」ことですが、データを取り出しやすいぶん、情報漏洩のリスクが発生します。そこでデータ自体を「暗号化」して、特定の人や期間だけしかファイルを開けないように設定するなどのセキュリティ対策が必要です。
また、システム運用などにコストがかかる場合もあります。ファイルサーバーと比べるとシステム自体が高価で、オンプレミス型だと自社サーバーの購入などの初期費用がかかります。ただし、低価格で運営できる「月額制クラウド型の文書管理システム」が充実するなど、使い方に合わせたシステムの導入で、ある程度のコスト削減ができる可能性はあります。
文書管理システムをうまく活用することで、検索時間を削減できたり情報を共有しやすくなったりするなど、業務効率化を期待できます。ただし、企業ごとに抱えている文書管理の課題は異なるものです。まずは、自社の課題を明確にして、その課題を解決できる文書管理システムを導入しましょう。そうすれば、システムを導入したあと、その効果をより実感しやすくなるはずです。
企業で扱う電子文書には、保護・編集が行なえ、かつマルチプラットフォームでファイルに公共性をもたせることができる、PDF形式の利用が便利です。Adobe Acrobatは、そんなPDFデータの編集や活用に特化したソフトウェアです。導入すればタブレットやスマホ上でもPDFデータの編集・他者との共有やコラボレーションが容易に行なえます。
文書管理ツールの1つとして、Acrobatの導入も検討してみてはいかがでしょうか?
(執筆:流石香織 編集:ノオト)
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