動画編集とはどんな仕事か? 編集歴10年の宮本裕也さんに聞く
YouTubeやTikTokの普及に伴い、動画編集に興味を持つ人が増えています。パソコンやスマホがあれば在宅で作業ができるため、動画編集は副業としても人気です。では一体、動画編集とはどんな仕事なのでしょうか。
今回は、未経験から独学で動画編集を始め、現在はフリーランスのビデオグラファーとして活動している宮本裕也さんに、動画編集を始めたきっかけや仕事内容についてお話を伺いました。
動画の編集を始めたきっかけ
——宮本さんは、どのようなきっかけで動画編集を始めたのでしょうか?
宮本 動画編集を始めたきっかけは、今から約10年ほど前に友人の結婚式用の動画制作を頼まれたことです。当時はWebサイトの制作会社でHPの作成やインターネットを使った販促企画の仕事を担当していました。動画を作った経験はなかったのですが、頼まれたからには期待に応えたいと思い、他の動画を参考に見よう見まねで一生懸命作ったのを覚えています。普段仕事でAdobe PhotoshopやAdobe Illustratorは使っていたので、Adobeにだったら動画編集ソフトもあるに違いないと思い、Adobe Premiere Pro とAdobe After Effectsを見つけてインストールしました。
当時すでにYouTubeはありましたが、海外の人が作った動画が多く、Premiere Proのチュートリアル動画もほとんどが英語でしたね。動画や書籍で操作方法を学びながら、ひたすらソフトを触ってみて使い方を身につけました。初めての動画編集にもかかわらず、当時あったAdobe Flashを併用してLINEのやりとり風のものを作るなど、かなり凝った編集にもチャレンジしたので時間がかかりました。結婚式当日、私の作った動画を観て、新郎新婦をはじめたくさんの方々が笑ったり感動してくれたりする様子を見て、動画編集の楽しさを感じました。
——その後、動画編集を本業にされたのでしょうか?
宮本 すぐに動画編集を仕事にする勇気はなく、しばらくは動画編集は趣味として続けていたのですが、その頃転職した会社で社内向けSNSやプロモーションの動画を作る機会もあり、少しずつ仕事としての動画編集の経験も増えていきました。まだ今ほどYouTubeも流行っていない頃でしたが、“これから絶対にYouTubeの時代が来る!”という根拠のない自信があり、今後動画制作を仕事にしていきたいと思うようになりました。そこから1年経って、動画制作をしようと覚悟を決めて、フリーランスとして活動をスタートし、現在に至ります。
動画編集の仕事と働き方
——独立後の動画編集のお仕事内容や働き方について教えてください。
宮本 独立後は、前職で知り合った知人などから紹介をしてもらい、企業紹介やインタビュー動画の撮影、編集の仕事を始めました。紹介以外にも仕事を受けられるように、Web制作をしていたときのスキルを活かして、自分のHPを制作しました。私は広島県広島市を拠点に活動をしているのですが、当時、広島の動画制作会社でHPを作っている人が多くなかったので、「広島 動画制作」などで検索するとすぐに上位に表示されるようになったんです。現在の仕事の約8割はHPからの問い合わせがきっかけで決まりました。
ご依頼いただくお仕事は、撮影と動画編集がセットになっているものが多く、動画の企画構成から携わります。クライアントの希望に合わせてサンプルになる動画を検索してイメージのすり合わせをしたり、企画書や絵コンテを書いたりすることもありますね。企画構成から動画編集まで一連の作業ができることで、仕事の幅はかなり広がると思います。普段の仕事のスタイルは、撮影をする日と動画編集をする日で異なりますが、動画編集をする日は自宅兼事務所で仕事をしたりコワーキングスペースで仕事をしたりと、作業内容に合わせて場所を選んで活動しています。フリーランスなので、働き方も自由です。
動画編集の楽しいところ、大変なところ
——動画編集のお仕事をしていて、楽しいところを教えてください。
宮本 自分が撮影した複数の映像が、1つの映像としてきれいにつながる瞬間が、動画編集をしていて一番楽しいです。カットはつなぎ方によって見え方、伝わり方が変わってきます。1つのカットを入れる、入れない、入れるならどのくらいの尺で入れるかなどによっても印象は変わってきたりしますので、通しで見た時に最後まで違和感なくまとまっていると達成感があります。あとは自分が制作した動画をクライアントにお見せして喜んでもらえる瞬間が一番嬉しいですね。
——動画編集をしていて大変なことはどんなことでしょうか?
宮本 デザインの仕事も同じだと思いますが、正解がないというところが大変だとも思います。時間をかければかけるほど、良くも悪くも凝ったものに仕上げていくことはできます。しかしそれが本当に必要なことなのかは、その動画を作る意味や、見る人によって変わってくるので、そのバランスなどを考えながら行う必要があります。
動画編集者を続けるために求められるスキル・心構え
——動画編集者を続けるために求められる心構えはありますか?
宮本 動画編集を長く続けるために一番必要なことは、動画編集を楽しむ気持ちです。最近では、動画編集の副業も人気ですが、稼ぐことを目的にしていると、長く続けられないのではないかなと思います。私の場合、今は仕事として動画編集をしていますが、お金にならなくても趣味で動画を作りたいと思っているくらい、純粋に動画編集が好きなんです。
今でも新しい機材を買うと、プライベートの時間にそれを使って自分の作品を作っています。CM風の動画を作ってみたいなと思って、個人の趣味として動画制作をしたものをYouTubeにアップしたことで、仕事につながったこともありました。仕事とは関係なく、楽しみながら自分の作品をどんどん作っていくことがとても重要なのではないかと思います。
——動画編集者に必要なスキルを教えてください。
宮本 動画編集にもCMやTV番組、YouTubeチャンネルなどさまざまな種類があって、その種類ごとに作り方も必要なスキルも異なるので、まずは自分がどのような動画に関わりたいかを明確にすることが大切です。自分の作りたい動画に必要なスキルを身につけた上でさらに、デザイン力があるとテロップやサムネイルのクオリティーも上がります。
他にも、撮影スキルがあれば動画の中にどのようなシーンがあるとよりよくなるか判断できるなど、全体を俯瞰で見れるようになります。スマートフォンでもいいので、まずは気軽に撮影から始めてみるのもおすすめです。
動画編集に使用しているソフト・機材
——動画編集に使用しているソフトや機材を教えてください。
宮本 PCはMacBook Proの16インチを使っています。編集ソフトは主にPremiere Pro、After Effects、Adobe Auditionなど。代表的な撮影機材はカメラ、レンズ、三脚、マイク、ジンバルです。
【宮本さんの使用している代表的な撮影機材】
●カメラ
・Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K
・Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K
・Sony Fx3
・Sony α7c
・Sony α7III
●カメラレンズ
・標準ズーム、広角ズーム、望遠ズーム、単焦点など計12本
●三脚
・ザハトラーFSB 8&フローテック
●マイク
・SONY URX-P41D
・SONY UTX-B40
・SYNCO Mic D2
・TASCAM DR-10L
・Wireless GO
●ジンバル
・DJI Ronin S2
——複数所持されているカメラやレンズ、マイクをどのように使い分けているのでしょうか?
宮本 CM・Web広告系の動画と、それ以外(イベントの記録、ダイジェスト、講演など)とで使用するカメラを分けることが多いです。
レンズに関しては、もちろん画角をどうしたいかによって変えるのが基本になるかと思いますが、被写界深度(ボケ感)をどれだけ作るか、遠近感をどれだけ出すかなど、どのような表現をしたいかによって変えることもあります。
マイクは、声がしっかりと聞こえないと成立しないインタビューなどの映像はピンマイク系を使うことが多いですが、環境音+たまに人の声がするイベントダイジェストなどは、カメラに直接とりつけるマイクを使用することが多いです。しかしピンマイクを装着すると、どうしても映像に映りこんでしまうため、ノイズの少ない環境であれば使用しないなど、臨機応変に対応しています。
これから動画編集を始めたい人や初心者へのアドバイス
——最後に動画編集を始めたい方や初心者の方へアドバイスをお願いします。
宮本 私が動画編集をスタートした10年前に比べて、学べる環境や機材なども充実していて、チャレンジしやすくなっていると思います。手軽に始められる分、ライバルも多いと思いますが、まずは編集ソフトをインストールして気軽に挑戦してほしいですね。
動画編集ってどういうことをするんだろうと気になって検索をすると、難しそうだな、無理かもしれないなと思ってしまうかもしれないので、とにかく一度、編集ソフトを触ってみてください。実際に編集をしてみると意外と頑張ればできるかもと感じたり、楽しいかもと感じたりすると思うので、その感覚を大切にしてほしいです。
YouTubeでVlogを発信したいとか、Instagramのリール動画を制作したいとか、具体的に作りたいものがすでにあるなら、ぜひ積極的にチャレンジすることをおすすめします。
Premiere Proで動画編集も簡単に
動画編集初心者の方でもPremiere Proを使えば、簡単に動画編集にチャレンジできます。自分の作りたい動画や編集したい映像を見つけたら、まずは気軽に始めてみましょう。
アドビ公式サイトでは、初心者の方に役立つ動画編集に関する記事を掲載しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
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取材協力: 宮本裕也
「これからきっと動画の時代がくるはず! 」「動画が楽しい、好き! 」という思いだけで、職種未経験にも関わらず31歳の頃に映像クリエイターとして独立。現在は地元である広島県を中心に企業や学校関連などのプロモーション用の映像を企画から撮影、編集とワンストップで制作している。独立した当初から始めたYouTubeチャンネル「GIV-ギブ」のチャンネル登録者数はおよそ3万人。Premiere Pro、After Effectsのチュートリアルや、撮影機材の紹介などを通して動画制作の楽しさを日々発信している。近著は「Premiere Pro よくばり活用辞典」(インプレス)。
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(取材・執筆:ユウミ ハイフィールド 編集:ノオト)