動画編集における“タイムライン”とは?

動画編集は、映像や音の素材をつなぎ合わせて一本の作品に仕上げていく作業です。そこで必須となるのが動画編集ソフトです。

 

ソフトを起動して“タイムライン”と呼ばれる作業スペースで編集を行いますが、今回はタイムラインがどのような役割を持つか、また各部の名称や機能について説明していきます。

 

この記事では Adobe Premiere Pro例に各機能を紹介します。Adobeの動画ソフトや一般的な動画制作の現場においても名称などに共通項が多いので、ここで基本を押さえておくとよいでしょう。

 

今回は、映像作家として活躍されているスタジオねこやなぎ代表・大須賀淳さんに、タイムラインまわりの知識や役割について、お話を伺います。

 

タイムラインをはじめとする、編集画面上で使用される用語と役割 

 

のちほど詳しく説明しますが、タイムラインは「時間軸に沿って編集作業を行うエリア」です。ここに映像や音声、静止画などの素材を配置し、それらをアレンジして動画を編集していきます。

 

動画のトリミングや速度の変更、素材の移動や回転、拡大、縮小など、基本的な編集作業をここで行います。なお、タイムラインで編集しても、それぞれの素材の元ファイルには影響を与えずに、編集した結果をプレビューすることができます。

 

タイムラインで編集を加えた動画は、最終的にmp4などの動画ファイル形式で書き出し、そのファイルをYouTubeなどの動画投稿サービスにアップロードすれば、インターネット上に公開することが可能です。

 

それでは、タイムラインをはじめとする、編集画面上で使用される用語と役割を見ていきましょう。

 

Premiere Proでプロジェクトデータを開くと、このような画面が表示されます。

 

画面下部には横方向に延びている複数のラインが並び、その上には編集中の動画をプレビューできる画面も確認できます。

 

こちらがタイムラインを操作する「タイムラインパネル」です。パネル内の各種用語を説明します。

 

トラック  

横方向に延びるレーンのような場所をトラックと呼びます。トラックはいわば映像や音声などの素材の置き場です。映像・写真・イラストなどのビジュアル素材、収録した人の声や効果音そしてBGMなどの音声素材、テロップなどの文字情報も配置できるようになっています。

 

トラックは横方向が時間軸で、右に進んでいきます。縦方向は複数のデータが積み上がったような見た目になります。映像や音などのデータはトラック内で自由な場所に動かすことができます。

Premiere Proは、音声用のオーディオトラック(A1、A2……)と、映像用のビデオトラック(V1、V2……)に分かれています。ビデオトラック上の映像を一括で非表示にしたり、オーディオトラック上の音声を一括でミュートにしたり音量を上げたりすることも可能です。

 

【大須賀淳さんのワンポイントアドバイス】

BGMや人の声、効果音などを、その種類ごとに複数のトラックに分けて入れると効率的です。人の声が入ったトラックだけを目立たせたい場合は、対象外のトラックの音量を下げてバランスをとるといった操作が行えます。

 

クリップ  

トラックに配置する映像や音声、テロップ、画像、これらのひとつひとつの素材を“クリップ”と呼びます。編集作業とは、これらの各クリップを切ったりつなげたりしながらストーリーを組み立てていくことです。

 

クリップが縦方向に複数重なっている箇所は、基本的に上のクリップが上書きで表示されますが、バラエティー番組のワイプのように、メインの映像の片隅にもう一つの映像を表示させることもできます。

 

また、クリップが横方向に連結している箇所にはトランジション適用でき、映像をクロスディゾルブで切り替えるなどの表現が可能です。

▲クロスディゾルブ

 

オーディオクリップに関しては、トラック上に配置したクリップはミュートをしない限りすべて再生されます。ここが、上のトラックが優先的に表示されるビデオクリップとは異なるところです。

 

シーケンス 

トラック上にビデオクリップやオーディオクリップが配置され、一つの動画データの塊として集合している様を“シーケンス”と呼びます。“シークエンス”と呼ばれることもあり「連続」や「順序」といった意味があります。

 

シーケンスを作り始める際に、動画の大きさを定義するフレームサイズや、動画の滑らかさを決めるフレームレートの設定を行います。これらは後から変更も可能です。

【大須賀淳さんのワンポイントアドバイス】

Premiere Proはシーケンスを複数作ることができ、トラック上に自由に配置できます。例えば1時間のテレビ番組の編集をする場合、1つのシーケンスで1時間分の作業をするのではなく、コーナーごとに分けてシーケンスを作成し、後で1本にまとめると管理がしやすいです。

 

タイムライン 

シーケンスと似ていますが、タイムラインは「時間軸に沿って編集作業を行うエリア」、シーケンスは「タイムライン上で編集したデータ」というイメージになります。

 

トラック上に配置された各クリップは横方向に延びており、その幅が時間の長さとなります。編集中の動画データをプレビューできるプログラムモニターパネルで再生ボタンを押すと、タイムライン上のトラックを串指すように縦に細い一本線が表示され、右方向に進んでいきます。その一本線の通る瞬間がプログラムモニターに表示されます。

なお、シーケンスにはフレームサイズやフレームレートの設定も含まれますが、タイムラインは動画データではなく作業エリアになるため、そのような設定は含まれません。

 

タイムライン上では、クリップに加える編集がメインとなる  

タイムラインパネルでは、ビデオトラックを非表示にしたり、オーディオトラックをミュートにしたりといったトラック単位での操作も可能ですが、主にクリップ単位での編集を行います。

 

トリミング  

クリップの余分な部分を削除できます。クリップの前後にある冗長な部分をカットすることで動画の流れがスッキリします。またクリップ途中の任意の場所でハサミマークをクリックするとクリップを分割できます。別のクリップを挟み込みたい場合に有効です。

 

移動(配置)

クリップを任意の場所に置けます。シーンの前後を入れ替える場合は、ビデオクリップをドラッグして移動させるだけで映像の順序が変わります。

 

速度の変更  

再生速度をクリップごとに変更することができます。特定のクリップのみスロー再生や倍速再生をさせたい場合などに使います。

 

回転  

映像や静止画の向きを変更したい場合に任意の角度に回転させることができます。

 

拡大・縮小  

映像や静止画を、拡大もしくは縮小することができます。メインの映像の片隅に縮小したサブの映像を重ねればワイプ(ピクチャ・イン・ピクチャ)のような使い方ができます。

 

エフェクト  

映像や音声に特殊な効果を加えられるエフェクトも用意されており、さまざまな演出ができます。さらにトランジションとよばれる効果もシーンの継ぎ目、場面転換に有効です。

 

【大須賀淳さんのワンポイントアドバイス】

Premiere Proはビデオクリップをトリミングしても、見えなくなった元のデータは消失していません。再編集時にクリップの端をドラッグして延ばしていくと、トリミングした部分のデータが再度表示されます。

 

「タイムラインの俯瞰」が動画編集をスムーズに行うカギ  

Premiere Proを例に、タイムラインの基本的な名称や操作方法を説明しました。

 

数十分の動画を一本編集しようとすると相応の時間と根気が必要になります。トラックやクリップの数にもよりますが、増えるほどにチェックしなければいけない数も多くなります。

 

これらの作業を動画の頭からはじめて「トリミング、音量調整、トランジション……」と場面が変わる度に繰り返すと、途中で何をどこまで済ませたか、わからなくなる場合があります。

 

こうした作業中の迷いを防ぐコツがあります。動画の開始から終了まで一つの動作に徹することです。例えば映像のトリミングを全て終えてから一旦確認、次は音量を整えるためにチェック、それを終えたら頭から確認、と一つの作業が終わるごとにチェックしましょう。俯瞰してタイムラインをチェックするイメージを持つと、整った動画に仕上がると思います。

 

今回はタイムラインの基本や簡単な操作方法についてお伝えしてきましたが、Premiere Proでは、より高度な編集が可能です。動画タイムライン の初心者向けガイド」や初心者向けPremiere Proの使い方基本」も参考にしながら、一歩ずつ動画編集のレベルアップを図っていきましょう。

 

Adobe Premiere Pro

Adobe Premiere Rush

 

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取材協力: 大須賀淳

映像作家、音楽家。スタジオねこやなぎ代表。企業ビデオなど、さまざまな映像・音楽コンテンツを制作すると同時に、書籍や雑誌での執筆、大学やeラーニングなどでの講師、製品デモなども数多く務める。2014年、日本初のシンセサイザードキュメント映画「ナニワのシンセ界」を監督。近著は「ネット時代の動画活用講座」(玄光社)ほか。

公式サイト

https://junoosuga.com/

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(取材・執筆:赤坂太一 編集:ノオト)