初心者は覚えておきたい、スマホで動画を撮影・編集するコツ
近年スマートフォンのカメラ性能が上がり、高価なカメラや機材がなくてもクオリティの高い映像を撮影できるようになりました。スマホで動画を撮影・編集する際には、どのようなことを心がけるとよいのでしょうか。
今回は映像作家の大須賀淳さんにインタビューし、スマホで動画を撮影する際のコツ、編集する際の便利な機能について教えていただきました。
スマホで動画をきれいに撮るコツの一つは、手ブレを抑えること。手で持って撮影すると、どうしても多少のブレが生じてしまいます。三脚があればスマホ本体を固定でき、手ブレを防げます。最近では100円ショップにスマホ用の三脚が売られているので、手始めに購入してみるのもよいでしょう。
屋外で撮影することが多い場合は、風が吹いたり人がそばを通ったりしてもグラつかない程度に脚が太く重量のある三脚を使うと安心です。また、脚の長さを変えられる三脚のほうが撮影環境を選ばないため幅広く使えます。
歩きながら撮影する場合は、モーターの作用により揺れを吸収する機材「ジンバル」があると便利です。スマホを安定させ、歩くことで生じる映像の揺れを除去してくれます。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
おすすめのアイテムは、スマホを三脚ねじに取り付けられるホルダーです。三脚ねじの規格は各社共通なので、ホルダーがあれば、カメラ用の三脚も含め、ほぼすべての三脚に取り付けることができ重宝します。
ピントを合わせる
通常、スマホではオートフォーカスで動画を撮影します。ピントを合わせようと意識せず撮影しても、致命的な失敗につながることはまずありません。
ただし、近くの物を撮る時は注意が必要です。例えばカメラのすぐ前にある被写体にピントを合わせていても、不意に画面の中に不要な物が入ると、そこにピントが合ってしまい撮りたかった物がボケてしまうのです。そのような事態を防ぐためには、ピントを固定することをおすすめします。iPhoneの場合は、画面のメイン被写体の上を長押しすると「AE/AFロック」が有効になりピントが固定されます。アプリによってはメインの被写体が動いてもピントがズレない追従機能を搭載しているものもあります。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
一番避けたいのは、通行人などメインの被写体ではないものにピントが合ってしまうこと。スマホの小さな画面ではピントのズレに気づきにくいので、念のためミラーリング機能を使ってノートパソコンなど大きな画面でプレビューすると安心です。
音声の収録
動画撮影と同時に音声も収録する場合は、音声の発生源とマイク(スマホ)の距離および方向を一定に保つことがポイントです。例えば人の声を録る場合、話している人がマイクから遠ざかったり近づいたり、人が時々横を向いたりしてマイクとの距離や方向が変わると、音質低下の原因になります。
また、屋外での撮影で風の音が入ると、編集での除去が難しいので注意が必要です。そのような事態は、ウインドジャマ―(風防)を付けた外付けのマイクを用意することで解決できます。スマホの内蔵マイクのみで収録する場合は、風の影響を受けない場所で撮るか、音声を映像と別に録るほうがよいでしょう。
スマホの内蔵マイクで人の声を録音している時に起こりがちなのが、スマホを持っている撮影者が声を出してしまい、本来収録したい人の声がかき消されるケース。かき消された声を編集で復活させることはできないため、注意しましょう。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
良い音質で録音するには、音声の発生源とマイクの距離が近く、一定距離に保たれているのがベストです。人の声を録る時には、話す人がピンマイクもしくはインカムマイクを装着するとよいでしょう。インタビュー動画などを本格的に撮影したい方におすすめなのは、小型のデジタルワイヤレスマイクです。送信機・受信機ともにコンパクトで、音質もよく、重宝します。
明るさを調整する
スマホのカメラには、撮影環境に合わせて自動で明るさを調整する機能が搭載されています。暗いところで撮影するとカメラが自動で感度を大きく上げて明るくしようとするため、ノイズ(見えなくてよい凹凸などが目立ってザラザラした印象になること)が目立ってしまいがちです。
写真であれば編集でノイズを除去することが可能ですが、動画ではそれが難しいため、暗いところで撮影することが多い場合はカメラの明るさ調整機能に頼らず照明器具を用意することをおすすめします。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
最近は撮影用の小型照明器具が多数出回っているので、手に入れやすいでしょう。おすすめは、縦10cm×横20~30cmほどの長方形の平面LEDライトです。照明部分が平面なので被写体に均一に光が当たり、きれいに撮影できます。明るさや色を変えることもできるので、さまざまなシーンで活用できます。
画質(解像度)の設定
解像度とは、縦と横を「ピクセル」という単位で表す映像の大きさを指します。簡単に言うとピクセルの数字が大きいほど画質が良いということです。現在最もよく使われている規格が「フルHD(フルハイビジョン)」で、1920ピクセル×1080ピクセルです。テレビ番組やYouTube動画もほとんどがフルHDで作られており、スマホカメラでも動画撮影の初期設定はフルHDになっています。
それよりも解像度が大きい規格が「4K」で、解像度は3840ピクセル×2160ピクセルです。サイズが大きいぶん細かいところまできれいに撮影できるのが特徴です。4Kで撮影するメリットは、最終的な仕上げサイズがフルHDであればトリミングや傾き補正を行っても画質が悪くなりにくいことです。あとで大幅に加工する余地を残したい場合は4Kで撮ることもあります。しかし現在はそこまで高解像度の動画を求められる機会は少なく、またサイズが大きいと動画の容量が膨大になるというデメリットもあるので、基本的にはフルHDで撮影して問題ないでしょう。
スマホで動画を編集する際の便利な機能
もしパソコンがない場合でも、スマホの動画編集アプリがあれば編集は可能です。スマホで手軽に本格的な編集ができるアプリ「Premiere Rush」は無料で2GBまでのデータを扱うことができ、書き出しは無制限に行えます。
また、Premiere Rushで編集した作業データ(プロジェクトファイル)は、「Premiere Pro」でも開くことが可能です。撮影した帰りの電車内でPremiere Rushを使ってカット編集をし、家に着いてからPremiere Proで細かい作業やPremiere Rushではできない高度な作業をする、といった連携もできるようになります。
ここではPremiere Rushの初心者でも扱いやすい機能を紹介します。
Premiere Rushのオーディオ機能を用いて、音声の大きさの調節や、BGMや効果音の追加などができます。撮影時にエアコンなどの環境音が入ってしまうことがありますが、そうしたノイズを低減させる機能もあるので便利です。
BGMの挿入箇所や音量を自由に指定できるのはもちろん、人が話しているすべての箇所で自動的にBGMをボリュームダウンできる「自動ダッキング」という便利な機能もあります。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
編集中の音声をスマホのスピーカーだけで聞いていると細かな部分に気づきにくいため、イヤホンでモニタリングすることをおすすめします。さらにノートパソコン内蔵などではなく、音楽視聴などにも使える単体のスピーカーでも仕上がりを確認すると安心です。
色・明るさの編集
Premiere Rushの「カラー」メニューを開くと、多数のフィルターが用意されており、タップするだけで手軽に動画の世界観を演出することができます。そのほか色や明るさを調整する機能もそろっており、例えば画面が暗かったり赤みがかった色になったりしているものを、違和感のない状態に調整することができます。一度行った調整を編集中のすべての素材に適用させる機能や、自分で行った調整を保存できる機能もあります。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
色や明るさの調整は、動画の1コマだけを見るのではなく、必ず時々動かして複数のコマを見ながら行いましょう。また、色や明るさは動画を再生するデバイスによって見え方が異なるので、できればパソコンやテレビ画面などでも仕上がりを確認してください。
素材やテンプレートを活用する
Premiere Rushで編集中の動画に文字やアニメーションを挿入する場合は、テンプレートを使います。シンプルなものから華やかなものまで多彩なアニメーションや静止画像のテンプレートが用意されており、必要に応じて自由に文字を打ち込んで使用できます。
無料で使えるものもある素材サービス「Adobe Stock」の中にはPremiere Rushというカテゴリーがあり、それを選ぶとPremiere Rushで使用できるテンプレートを一覧できます。
また、Premiere Rushには無料の音楽素材(BGM・効果音)が充実しており、商用なども制限がないため便利です。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
Premiere RushやAdobe Stockのテンプレートに文字を打ち込んだ時、アニメーションや画像の雰囲気に合わせてフォントも変更すると、違和感なく動画になじみやすくなります。フォントの定額制使い放題サービス「Adobe Fonts」は、日本語だけでも400種類近くのフォントが登録されているため利用するとよいでしょう。
スマホを活用して動画撮影・編集の一歩を踏み出そう
はじめから高価なカメラや機材を買いそろえなくても、普段使っているスマホで動画の撮影や編集を行うことができます。スマホの画面上で直感的操作できて本格的な映像作品を作れるPremiere Rushを活用し、動画撮影・編集にチャレンジしてみてください。
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取材協力:
大須賀淳(おおすが・じゅん)
1975年生、福島県出身。映像作家、音楽家。スタジオねこやなぎ代表。企業ビデオなどのさまざまな映像・音楽コンテンツを制作すると同時に、書籍や雑誌での執筆、大学やeラーニングなどでの講師、製品デモなども数多く務める。近著は「Adobe Premiere Pro超効率活用術」(玄光社)「YouTuberの教科書」(インプレス)ほか。
公式サイト:https://junoosuga.com/
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(取材・執筆:北村朱里 編集:ノオト)