映画制作のための撮影用台本
ハリウッドの映画でも、ショートビデオでも、撮影台本は映像制作に欠かせません。確実に品質の高い作品にするため、台本の使い方を学びます。
撮影台本の目的
映画制作では撮影台本はとても重要です。カメラショット、小道具、ロケーションなど、映画撮影に必要な指示を順を追って説明したもので脚本の一種です。撮影台本は脚本とショットリストを合わせたようなものです。
感動的なストーリーは映画にとって必要ですが、制作チームが共同して制作目的を実現するためには、全体の情報が必要となります。「制作スタッフはチームとしてまとまってなければいけません。そのためには、撮影台本が必要なんです」と脚本家兼監督のサム・ローデンさんは言います。
「ストーリーを観客に伝えるための必要なものを計画立てて入手することが書かれています。希望するアングルに必要な特定の撮影方法を知りたいときに使います」とビデオグラファーのデビッド・アルブライトさんは言います。
定番のテレビ番組でも、新しい映画のアイデアでも、新しいストーリーがある場合、脚本家はスペックスクリプトと呼ばれる、執筆しても報酬にならないスクリプトを書くことがあります。その作品が承認されるか、購入されることがわかった場合、スペックスクリプトは次の段階として脚本の制作対象となり、そして作品のストーリーが最終的な脚本になります。
通常の台本や脚本はストーリーの流れに従いますが、撮影台本は、本番撮影において制作スタッフの作業に役立つよう調整された文書です。ストーリーの時系列に沿うのではなく、撮影スケジュールに従ってまとめられています。運営面と予算面の理由から、ストーリーの順序に合っていなくとも、特定のシーンを撮影したいときに使用します。撮影台本は、正確にいつ何を撮影するということが具体的に記載されています。
家の中、次は公園、次は学校、そしてまた公園、また家の中、というストーリー展開のときでも、家のシーンを一括して撮影したいでしょう。その方法がとれれば、セットや照明を片づけて、また設置を繰り返すという作業をする必要がなくなります。
「特に、屋外のシーンやコントロールの利かない自然光を扱う場合は、ロケーションと時刻に合わせて日程を調整しなければなりませんそのための予定を組まなくてはなりません。規模の大きな撮影では、俳優組合やスタッフの組合を活用します。出演する人やスタッフたちに報酬を払うのですから、効率的に彼らを使いたいところです」とデジタルプロデューサーのマット・モニンさんは説明します。
撮影台本の書き方
「脚本から撮影台本に至るまで、映画制作というのは創造力が必要な作業です。入念に、そして何度も台本を確認して、何をすべきなのか明確に理解しておくことが重要です。質問があれば、監督や撮影監督に確認します。撮影に臨む前に、すべてがしっかりと考え抜かれて、準備されていることが重要です」とローデンさんは言います。
撮影台本の作成に通常必要になる手順は以下のとおりです:
1.絵コンテを作る:脚本の絵コンテを作成し、作品をビジュアル的に描写します
2.撮影リストを作る:監督と撮影監督は脚本を確認し、制作に必要な各ショットの詳細リストを作成します。監督またはAD(アシスタントディレクター) は撮影順序をすべて決めておきます
3.詳細にする:撮影計画が作成されたら、美術監督、小道具チーフ、衣装デザイナーなどスタッフ全員が撮影台本を読み、そこに書かれている各ショットを撮影するための情報を確認します
撮影台本の記載事項
台本の形式はスタッフや制作会社にとって適したものを任意に決めます。脚本ソフトウェアを使う場合、撮影台本用のテンプレートが入っていることがあります。大抵の場合、ヘッダーの行があり、各列に情報のラベルを付けられるスプレッドシートスタイルのレイアウトで作成することになります。情報はスタッフが必要としている内容によってまちまちですが、一般的に以下のとおりです:
- シーン番号:すべてのシーンに番号を網羅することが大切です。編集し始めるときに特に重宝します。1つのシーンが細かいシーンに分割される場合、アルファベットを使います(例:シーン1a、1b、1cなど)
- カメラショット:各シーンで使用するカメラアングルと台数、必要なショットのタイプ(クローズアップ、ミディアムショット、肩から上のショット、POVショットなど)、照明の向きなど各ショットに必要な特別の情報が記載されます
- 撮影対象:登場人物名、アクションの詳細、各設定でどのようなオブジェクトまたはbロールを撮影するのか、望まれる演技の記録など、各ショットで見せるものについて記載されます
- セットと小道具:各ショットのロケーション名、小道具やセット装飾の一覧、主な衣装についての詳細な情報が記載されます
- 特殊効果とスタント:スタント、特殊効果、撮影中や編集中に発生するトランジション(フェードイン、クロスフェード、次のシーンに移るところの突然の切り替えなど)、その他特記事項が記載されます
撮影台本の編集システム
長編映画やテレビ番組の大規模な制作では、編集用にカラーコードシステムを使います。リビジョン(変更)は準備段階や制作段階を通して発生するため、このシステムによりどのシーンがリビジョン対象なのか全員がわかるので大変便利です。内容は9種類の色の紙に印刷され、リビジョンがどの段階にあるかを示し、またさらにリビジョンがあっても色で判別できます。
1. 白:リビジョンなし
2. ブルー:1回目のリビジョン
3. ピンク:2回目のリビジョン
4.黄色:3回目のリビジョン
5. グリーン:4回目のリビジョン
6. 鮮やかな黄色:5回目のリビジョン
7. 肌色:6回目のリビジョン
8. サーモンピンク:7回目のリビジョン
9. チェリーレッド:8回目のリビジョン
撮影台本を基により良い作品をつくる
詳細に記載された撮影台本は、制作の考え方を実現していくための設計図のようなもので、撮影を滞りなく進めるために大変役に立ちます。また制作スタッフは、日々の仕事で何か確認したいことがある場合にはこの撮影台本を参照します。誰よりもこの撮影台本が重要になるのは、スクリプターで内容がすべて予定通りに進んでいるかどうかを確認します。
スクリプターは、巧緻に編集された動画や映画として、台本を最終形態にもっていくときに重要な役割をします。巨額予算の映画制作に携わっていなくとも、この役割を果たす人の存在が重要です。スクリプターは撮影内容から目を離さず、衣装やその他のアイテムと台本とに一貫性があるかどうか気を配り、撮影が進むごとに台本に記録を加えていきます。
スクリプターは、必要なショットが順調に撮影されているかどうか確認します。さらに、あるセリフにはどのテイクが最適なのか、またあるテイクを他のテイクに合体させるにはどのシーンを「ピックアップ」や撮り直しが必要なのかについて記録をとります。
「その仕事をしていたとき、記録をとって『テイクスリーはテイクツーより良かったが、1語間違えたのでピックアップが必要』と記録したものです。そうすれば、テイクフォーをピックアップの開始点として、テイクスリーと合わせて使えます。ただ単に台本通りに進められるのを見届けるのではなく、使える良い台本にするため、小さなことでも記録していきます」とモニンさんは言います。
撮影台本で映像を編集する
詳細にわたる記録としっかりとした撮影台本は、効率の良い編集作業を可能にします。Adobe Premiere Pro のような後処理ソフトウェアで映像をまとめてカットした場合、シーン番号を使えばストーリーの正確な順序を参照できます。また、スクリプターの記録から、各ショットの最上のテイクがわかります。
必要な制作スタッフのいない初めての映画制作者でも、作品を統一性のあるものにする撮影台本を使用することで良い作品を制作できます。
「ただ単に撮りたいものが撮れれば、それで作品ができる、と思う人がいますが、そんな簡単にはいかないものです。前もって重要なポイントをおさえておき、撮影を開始する前に、映画のストーリーを描写するには何が必要なのかを把握しておかなければなりません」とアルブライトさんは言います。
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