マッチカットで芸術的にシーンを繋ぐ

この映画編集技術を駆使し、シーンから次のシーンへの転換をよりアート風に見せる方法を学びます。

マッチカットとは？

マッチカットとは、映画撮影において、あるシーンを次のシーンに転換する際に使用する編集技術のことです。マッチカットの目的は、異なる場所で撮影されたシーンなど、本来は関連していない異なるシーンを、何らかの方法で 2 つ目のショットを最初のシーンに反映して視覚的なマッチングをさせることにあります。

マッチカットは、映画や動画の編集でよく使われるテクニックです代表的な例としては、『市民ケーン』、『アラビアのロレンス』、スタンリー・キューブリック監督の『2001 年宇宙の旅』、アルフレッド・ヒッチコック督の『サイコ』などがあります。

「1 つのショットで何かをしていて、同じフレーム内で次のショットでは前のショットと同じ方向や位置で何かが動くこと場合にこのテクニックは便利です。そのため、場面転換があってもとてもスムーズに見えます。シーン全体がスムーズに流れているように見えるので、見ている側は楽に場面転換を見ることができるのです」とビデオグラファーのニック・キャンさんは言います。

マッチカットは、動きのある場面のためだけではありません。モンタージュのように、時間の経過を表現するためにも使用できます。また、テレビが次のシーンのウィンドウに切り替わるように、同じフレーム構成の類似した形をつなげるためにも使用できます。

マッチカットの種類

映画制作では、下記の通り3 種類のマッチカットが使われています。

グラフィックマッチカット

ビジュアルマッチカットとも呼ばれ、色や形、パターンなどのビジュアルスタイルが似ている 2 つの異なるシーンをつなぐ場面転換です。

「例えば、ボールが画面に向かってきて、フレームいっぱいにボールが写るとき、次のショットはタイヤのような似たものでなければなりません。全く異なる 2 つのシーンであっても、似たような形で、似たような方向に動き、フレームの構成がほとんど同じなので、映像に違和感がありません」とキャンさんは言います。

全く同じものでなくても、2 つの異なるものの間にあるマッチカットは象徴的な意味を持ちます。有名な『サイコ』のシャワーシーンでの登場人物マリオンの生気のない目と排水溝を回る水のクローズアップショットは、マッチカットを駆使した素晴らしい例のひとつです。

アクションマッチカット

連続する 2 つのシーンを類似した動きでつなぐカットです。一般的には、同じシーンのショット間で使用されます。例えばアクションシーンをさらに盛り上げるために使用されます。アクションマッチカットの最も有名な例は、『2001 年宇宙の旅』で霊長類が骨を空中に投げ出すシーンです。次のシーンでは同じような形の宇宙船が映し出され、人類の進歩と 2 つのシーン間の時間の経過を 1 つのトランジションで表現しています。

オーディオマッチカット

サウンドブリッジとも呼ばれるこの編集では、トランジションの両側にマッチしたサウンドエフェクトを使用し、2つのシーンの間に1つのサウンドを共有します。一般的なサウンドトランジションには、J カットと L カットの 2 種類があります。J カットでは、最初のシーンの音が次のシーンで使われますL カットでは、2 つ目のシーンの音声を聞いてから映像が出てきます。「これは、強引に進めるのではく、ストーリーの流れに沿った繊細な方法なのです」とキャンさんは言います。

事前準備

事前準備の段階では、どのようなマッチカットが映像を効果的なものにするのか考えます。他の監督のマッチカットを調べて、気になったものを書き留めておきます。そして、それを自分の作品のヒントにします。後処理の段階での編集を容易にするために、最初に構想を絵コンテにしてショットリストを作成します。

「ショットリストがないと、実際の撮影に入ったときに混乱してしまい、思い通りの作品になりません。だからこそ、絵コンテとショットリストを用意して、どの方向に物が動いているか、マッチさせるフレームでの被写体がどのようになっているかを確認してから、次のカットで似たような感じになるようにメモを取るのです」とキャンさんは述べています。