学生YouTuberのなり方とは?必要な機材、活動の注意点など
YouTubeの登場により、誰もが気軽に動画で情報発信できる時代が到来しました。YouTube上で動画を配信する人を「YouTuber」と呼び、近年では学生がYouTuberとして活躍しているケースも増えています。
今回はYouTube事情に詳しい映像作家の大須賀淳さん、学生YouTuberとして活躍している「バンカラジオ」のきいたさんとやねすけさんにインタビュー。専門家の知見をもとに、学生YouTuberの活動内容やメリット・デメリット、必要なツールなどをご紹介します。
YouTube上で動画の投稿や生配信をする学生を「学生YouTuber」と呼びます。学生YouTuberには年齢制限がありません。しかしYouTubeのプラットフォームを使って配信を行う都合上、YouTubeの利用規約を厳守する必要があります。現在の利用規約では、原則としてサービスを利用できるのは13歳以上と定められています。(2022年1月時点)
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
YouTubeは、18歳未満のユーザーがアカウントを作り動画をアップロードする際、「非公開」を初期設定にすると発表しています。若年層の安全を守る目的で、18歳未満のユーザーに対して慎重な姿勢を示しているため、今後も利用規約が変わる可能性があります。
13歳以下の場合は、保護者の判断、管理の下であれば、保護者が作成したアカウントを使ってYouTubeを視聴することは可能です。利用規約に違反すると、アカウント停止やチャンネル削除となる場合も。YouTuberの活動を始める際は利用規約を確認し、しっかりと守りましょう。
興味のある分野とのつながりを作ることができる
学生は、住んでいる場所によって行動範囲が限られたり、未成年の場合は触れられる情報に制限がかかったりすることがあります。そのため興味のある分野とのつながりを持つことが難しく、同じ趣味を持つ仲間に出会う機会に恵まれないこともあるでしょう。
YouTubeはインターネット環境とデバイスがあれば、誰でもどこからでもアクセスすることが可能です。学生が自ら「こういう分野に興味があります」と動画で発信することで、興味のある分野に精通した人物と情報交換ができたり、目指したい業界から仕事のオファーがきたりすることも期待できます。学生のうちに、将来の人生設計に関わる重要なつながりを作ることができるのです。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
学生時代に興味があるジャンルの情報発信をしたことで、就職やデビューに繋がった学生YouTuberは数多く存在します。特にCGや音楽制作などのクリエイティブな活動と相性が良く、「うっせぇわ」で一躍有名になった歌手のAdoさんも学生YouTuberでした。学生YouTuberは、将来の夢を叶えるための効果的なアプローチ方法の一つです。
同年代の共感を得やすく、ファンを増やすことができる
学生ならではの視点で動画を作ることで、同年代や同じ学校に通う学生に親しみやすさを感じてもらうことができます。特に、学生あるあるや日常のルーティン、受験に関する動画などは共感性も高いようです。学生YouTuberとしての認知度が高まることで、学園祭や文化祭などのイベントに声をかけてもらえるケースもあります。
【バンカラジオきいたさんのワンポイントアドバイス】
チャンネル開設当初は、早稲田大学の学生であることを売りにして、受験対策や勉強法を教えるコンテンツを作っていました。動画を更新するたびに、早稲田大学を目指す受験生からのリアクションも増え、僕らの動画をきっかけに早稲田大学の見学に行く人も増えました。共感してもらえるコンテンツを作ることは、登録者や視聴者を増やすために大切だと思います。
仕事に必要なスキルを身につけることができる
YouTube動画を作る過程で、撮影や編集などのさまざまな作業が発生します。手を動かす作業だけではなく、企画や撮影の段取りを考える、他のチャンネルを分析するといった、頭を動かす作業も行わなくてはいけません。どうしたら関心を持ってもらえるのか、再生数が伸びない理由は何なのかなど、原因を考えて改善をしていく中で、仕事に必要なスキルがたくさん身につきます。チャンネルの再生回数や登録者数に限らず、経験することに価値があるので、失敗を恐れずにチャレンジしてみましょう。
【バンカラジオきいたさんのワンポイントアドバイス】
YouTube動画の編集スキルが認められて、他のYouTuberやテレビ局のYouTubeチャンネルの編集アシスタントを依頼されたことがありました。YouTubeで撮影や編集技術を身につけたことで、高い時給でアルバイトをすることができました。
サークルや部活など仲間と一緒に取り組むことができる
動画制作をするサークルや部活の増加に伴い、作った動画を友人に見せて感想をもらったり、周りの人に技術を教えてもらったりしやすい環境も整ってきています。授業の合間や放課後の時間を使い、みんなで切磋琢磨しながら動画を作ることで、スキルやクオリティの向上にもつながります。
【バンカラジオやねすけさんのワンポイントアドバイス】
僕も学園祭の運営サークルに入ったことがきっかけで、動画編集をするようになりました。バンカラジオは一度サークル化して、その中から出演者や編集をする人を募集していた時期もあります。YouTubeに興味を持っている学生は多いので、一声かければ人が集まってくるのは大学生ならではのメリットです。
学生YouTuberに必要な機材
スマートフォン
パソコンよりもスマートフォンの方が使い慣れている人も多いでしょう。パソコンに比べ画面が小さいため操作のしづらさはありますが、編集ソフトが充実しているのでスマートフォンが1台あれば、撮影~編集、アップロードまで可能です。
パソコン
高度な動画編集、動画のアップロード、データの保管などは、パソコンがあるとよりスムーズに行うことができます。アドビ公式サイトでは、動画編集ソフトAdobe Premiere Proを実行する際の推奨スペックを紹介していますので、パソコン購入時にはぜひ参考にしてください。
マイク
スマートフォンの内蔵マイクでも録音できますが、声が聞き取りにくいと視聴者にストレスを与えてしまいます。特に外で撮影する際は、マイクから離れてしまい声が拾えなかったり、風の音がノイズになったりすることも。撮影する内容や企画によって、ピンマイクや風防を使うなどの工夫をしてみましょう。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
マイクを購入する前に、一度自分で撮影した動画の音声を聴いてみることをおすすめします。撮影をする環境で音声の聴こえ方は変わります。例えば、本棚がある部屋や少し狭い部屋、カーペットが敷いてある部屋などで撮影すると、音の反響を吸収して落ち着いた質感の音声になります。撮影環境の特性を知り、それに合うマイクを選びましょう。
カメラ
基本的にはスマートフォンのカメラで問題ありません。もしカメラ単体で購入する場合は、スマートフォンでは撮影できない場所やできないことをカバーできる機能を重視して選ぶことをおすすめします。例えば、水中や炎天下での撮影、遠くにいる野鳥の撮影などはスマートフォンには不向きです。
アドビ公式サイトで、YouTube動画の撮影に向いているカメラを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
【バンカラジオきいたさんのワンポイントアドバイス】
現在活躍しているトップYouTuberの方でも、iPhoneで撮影している人が多いです。スマートフォンの動画撮影の機能は、年々グレードアップしているので、問題なく撮影できます。見ている人にストレスを感じさせなければ、機材は何を使ってもいいと思います。
Adobe Premiere Pro
テレビ番組や映画製作などの現場でも使われている、高性能な動画編集ソフトです。操作性や機能性がとてもシンプルなので、初心者でもスムーズに動画の編集をすることができます。
Adobe Premiere Rush
Adobe Premiere Proと同じエンジンを用いながら、より簡単な操作で編集できるソフトです。Adobe Premiere Rushにはモバイル版があり、クラウド上にデータを保存することで、出先でもスマートフォンで編集をすることができます。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
学生向けのAdobe Creative Cloudを契約するとAdobe Premiere ProやAdobe Premiere Rushを低価格で利用することができます。アドビの製品以外にも、大学生協を、通して購入することで安価になる動画編集ソフトもあるので、ぜひ一度チェックしてみてください。また、コロナ禍でオンライン授業が増えたことにより、新たに撮影機材や動画編集ソフトを導入したり、撮影用のスタジオを新設したりする学校も増えています。学校内に何か使える機材や設備がないかリサーチしてみるのもいいかもしれません。
テーマ先行型
自分の関心のあることや趣味などに関連した情報発信をします。自分の得意なもの、好きなものをテーマにしているため、伝えたい情報が明確で、企画も考えやすいでしょう。絵を描いたり、音楽を作ったりとクリエイティブな活動の発表の場としてチャンネルを活用する学生YouTuberもたくさんいます。
自分の知りたいことや目指している職業に近づくために情報発信を行うことは、もちろん自分のためにもなりますが、誰かの役に立つこともあります。人の役に立つ情報を発信することで、動画を見つけた視聴者から感謝の気持ちを込めてSNSで拡散してもらえることもあるようです。
収益先行型
チャンネル登録者数や再生回数を増やして、収益化することを目的としています。自分が発信したいテーマからコンテンツを作るのではなく、「バズる」テーマや企画を探したり考えたりする必要があります。どのようなチャンネルが人気なのか、どのようなコンテンツが流行っているのかを分析するマーケティング能力が必要です。
公開した動画が注目されると、一気に人気者になりますが、競争率が高くライバルも多いです。常に新しい切り口の企画を求められたり、芸能人のようにトークスキルやカリスマ性が必要とされたりすることもあります。
【バンカラジオきいたさんのワンポイントアドバイス】
すぐにテーマを決められない場合は、まずはどんなテーマでもいいから手元にあるスマートフォンで撮影して、今すぐに始めてみてください。僕の弟はまだ中学生ですが、スマートフォンで撮影や編集をしてYouTuberをしています。自分で編集ができない場合は、誰かできる友達に頼んでチームを組んでもOKです。まずはやってみたいという気持ちを大切にして、一歩を踏み出してみてください。
個人情報が特定されないように気をつける
顔を出してYouTube動画を公開する場合は、個人情報の扱いに気をつけましょう。個人情報が動画に含まれていると、自宅や本名を特定される可能性があります。YouTubeのコメントには、指定キーワードが含まれた投稿をブロックする機能があります。本名や住所、学校名など知られたくないキーワードを事前に登録して、個人情報をコメント欄に書き込まれないようにすることがおすすめです。
学校やアルバイト先への不満や人の悪口を言わない
暴露系のチャンネルは、再生数を稼ぎやすい傾向にありますが、ネガティブなコンテンツになりやすいので注意が必要です。また身元を明かさずに行う場合でもささいなことがきっかけで、トラブルに発展する可能性があります。動画を作成する際は、できる限りポジティブな視点を心がけましょう。
炎上しないように行動や発言に気をつける
動画を公開する前に、問題行動や発言がないかをしっかりと確認しましょう。過去には、公開した動画が大炎上し、法的措置を取られたケースもあります。自分の作った動画には責任を持ち、誠実な行動や発言を心がけるよう気をつけてください。
【バンカラジオやねすけさんのワンポイントアドバイス】
テレビでNGの表現はYouTubeでももちろんNGです。内容に問題がないか、誤解される言葉を使っていないか、差別的な表現を使っていないかをしっかりとチェックしています。これは動画を作る上で、僕たちの中でマストの作業です。YouTuber以前に人としてのモラルを守ることが大事なので、学生のうちに世間の常識もきちんと学んでおきましょう。
学校の授業や課題をおろそかにしない
学生の本分は勉強です。YouTuberとしての活動に一生懸命励むことも大切ですが、学校の授業やテスト、課題などにもしっかりと取り組みましょう。
YouTuberの活動において、学生というステータスは大きなアドバンテージになります。授業の合間など有効に時間を使ったり、学生向けのAdobe Creative Cloudプランや大学生協で安価に購入できる編集ソフトを活用したりするなど、学生ならではの強みや特権を活かしてYouTuberの活動をスタートしてみましょう。
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取材協力:
大須賀淳(おおすが・じゅん)
1975年生、福島県出身。映像作家、音楽家。スタジオねこやなぎ代表。企業ビデオ等様々な映像・音楽コンテンツを制作すると同時に、書籍や雑誌での執筆、大学やeラーニング等での講師、製品デモなども数多く務める。近著は「Adobe Premiere Pro超効率活用術」(玄光社)「YouTuberの教科書」(インプレス)ほか。
バンカラジオ
現役早稲田大学生のきいたとやねすけからなる、太田プロダクション所属の2人組YouTuber。「天才小学生VS最恐の母」というコメディ動画が小学生に人気を博している。総再生回数は4億回再生以上を誇る。
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(取材・執筆:ユウミ ハイフィールド 編集:ノオト)