会社員がYouTuberになるには?副業と本業を両立させるコツ
働き方改革の一環として、多くの企業が副業を解禁しています。最近では、会社員をしながら副業でYouTubeの動画配信を行う人が多く見られるようになりました。会社員がYouTuberになるにはどうすればよいのでしょうか。
今回は、YouTube事情に詳しい映像作家の大須賀淳さんと、会社員YouTuberとして活躍しているコスメティック田中さんにインタビュー。専門家の知見をもとに、会社員YouTuberの活動内容やメリット・デメリット、必要なツールなどをご紹介します。
YouTuberの副業を始める前に、まずは会社の就業規則や社内規定で、副業が認められているのかを確認しましょう。
YouTubeに動画をアップロードすると、登録者数や再生回数に応じて収益が発生します。趣味の一環として始めた場合でも、収益が出ることで会社によっては副業とみなされる可能性があります。
会社とのトラブルを避けるためにも、チャンネル開設前に社内ルールを確認し、収益化の見込みがある場合には会社へ相談することをおすすめします。
【コスメティック田中さんのワンポイントアドバイス】
YouTubeチャンネルを開設した当初は、登録者数が少なかったこともあり、会社に申告はしていませんでした。徐々に登録者数が増加し始めたタイミングで会社と話をする機会があり、今は大きな問題にならないような形でYouTube活動をさせてもらっています。
本業の収入があるので収益化のプレッシャーが少ない
YouTuberになる上で、専業か兼業かの選択は個人に委ねられますが、会社員がYouTuberになる場合は、会社員として毎月固定の収入が見込めるため、金銭的な不安やリスクは少ないでしょう。
YouTubeで広告収入を得るためには、下記3つの条件を満たすことが必須です。(2021年8月時点)
・チャンネル登録者数1,000人以上
・過去1年の総再生時間4,000時間以上
・YouTubeのガイドラインに反していない
「チャンネル登録者数」と「総再生時間」の条件を満たすには一定の期間が必要で、すぐに収入を得ることはできません。また、広告収入の金額は、登録者数や視聴者数に左右されるため、波があることにも理解が必要です。
時間を効率的に使い、収入を得ることができる
通勤時や昼休みなどの隙間時間に動画の編集を行うことで、時間を有効に使うことができます。また、収益化まで時間がかかる一方で、広告収入に必要な条件を満たせば、本人が稼働をしなくても過去にアップした動画をもとに収入が得られるのもYouTuberの魅力でしょう。
情報をアウトプットすることがスキルアップにつながる
社会人になると、何をするにも時間の確保が課題になります。勉強しようと思っても、日々忙しいと重い腰が上がらず、サボりがちになることも。インプットした情報を、定期的にYouTubeへアウトプットすることで勉強を習慣化できます。例えば、「本を紹介する動画を週1回公開する」という目標を立てれば、読書の時間を積極的に確保するようになります。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
インプットをし続けることは、強い意志がないとできません。誰かに見てもらうことを前提にアウトプットをすることで、インプットのモチベーションを保つことができます。
転職や独立開業に役立つ
専門分野に特化したチャンネルを作っている人の中には、書籍の出版やイベント登壇など、YouTube以外のフィールドに活動を広げている人もいます。YouTuberとしての活動実績や動画から伝わる人柄などがきっかけで、条件の良い転職先に出合えたり、独立開業に役立ったりする場合もあります。
本業の効果測定や実験ができる
会社で取り組むには難しいことでも、個人のYouTubeチャンネルを使えば気軽にチャレンジできることもあります。例えば、何かアイデアを思いついたけど、会社で予算をかけて実験するには難しい場合、アイデアを具体化する動画をいくつか公開し、再生数や反応をチェックすることで効果測定ができます。視聴者から良いリアクションがあれば、その結果やデータをもとに企画提案することもできるでしょう。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
自信がある動画の再生回数が低いこともあれば、反対に予想以上に再生されることもあるのがYouTubeです。私自身も視聴者の反応や視聴者数をもとに、書籍や講座の企画を考えることがあります。再生数や評価などのデータは、貴重な一次情報です。ユーザーのニーズや意見が数値化された客観的なデータを企画とともに提出することができれば、アイデアにもより説得力が増すでしょう。
会社員のYouTuberに必要な機材
スマートフォン
パソコンに比べ画面が小さいため操作のしづらさはありますが、編集ソフトが充実しているのでスマートフォンが1台あれば、撮影~編集、アップロードまで可能です。
【コスメティック田中さんのワンポイントアドバイス】
僕も最初はスマートフォンだけで撮影を始めて、三脚やアクションカメラなど必要に応じて機材を増やしていきました。どの機材を購入するか悩む時間がもったいないので、まずは手元にあるもので撮影を始めてみることをおすすめします。
パソコン
スマートフォンでも一連の作業は可能ですが、高度な動画編集や動画のアップロード、データの保管などはパソコンがあるとよりスムーズに行うことができます。
動画編集はパソコン作業の中でも特に重い処理の一つです。動画編集向きのモデルやハイスペックのモデルを選ぶとよいでしょう。アドビの公式サイトでは、動画編集ソフトAdobe Premiere Proを実行する際の推奨スペックを紹介していますので参考にしてください。
マイク
スマートフォンで撮影をする場合、内蔵マイクで録音しても問題ありませんが、声が聞き取りにくいと視聴者にストレスを与えてしまいます。外で撮影する際は、マイクから口が離れて声が拾えなかったり、風の音がノイズになったりすることもあります。撮影する内容や企画によって、ピンマイクや風防を使うなどの工夫をしてみましょう。
カメラ
基本的にはスマートフォンのカメラで問題ありません。もしカメラ単体で購入する場合は、スマートフォンでは撮影できない場所やできないことをカバーできる機能を重視して選ぶことをおすすめします。
例えば、水中や炎天下での撮影、遠くにいる野鳥の撮影などは、スマートフォンには不向きです。撮影対象や企画に合わせて、一眼レフカメラや「GoPro」などのアクションカメラを選びましょう。
アドビの公式サイトでは、YouTube動画の撮影に向いているカメラを紹介しているのでぜひ参考にしてください。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
カメラの選び方は、ブランディングにも直結します。一眼+レンズを使って撮影をすると、映像の高級感やクオリティが上がり、真面目な印象を与えることができます。お金が動く分野や権威性が必要な分野には、一眼を使った撮影が有効的です。チャンネルの方向性や企画に合わせて、カメラを選んでみましょう。
会社員のYouTuberに必要なソフト
Adobe Premiere pro
テレビ番組や映画製作などの現場で、プロフェッショナルも使っている高性能な動画編集ソフトです。プロユースのツールながら、操作性や機能性はとてもシンプルで、初心者でもスムーズに動画の編集をすることができます。
Adobe Premiere Rush
Adobe Premiere Proと同じエンジンを用いながら、より簡単な操作で編集できるソフトです。Adobe Premiere Rushにはモバイル版があり、クラウド上にデータを保存することで、出先でもスマホで編集をすることができます。移動中や休憩中などの隙間時間で編集するのに最適です。
Adobe Photoshop
写真のレタッチ、画像の切り抜きやトリミングといったデータの加工から、デジタルペインティング、アニメーション、グラフィックデザインまで幅広く活用できます。YouTubeでは、サムネイル画像の作成や動画内の特殊加工などに使われています。
Adobe Audition
音声の録音やミックス、ノイズ除去などができる音声編集ソフトです。撮影した動画にナレーションを入れるなど、Adobe Premiere Proとの連携もシームレスです。
【コスメティック田中さんのワンポイントアドバイス】
上記のソフトはすべてAdobe Creative Cloudを契約していれば、誰でも利用できます。無料ソフトを使用していると、ソフトが突然クラッシュしてデータが消えてしまうこともありました。アドビ製品は自動バックアップの機能があり安心で、ノイズ除去も細かくできるなど性能に大きな差を感じました。
Adobe Premiere Proは、ショートカットキーを細かく設定できるので、編集の時短もできてとても重宝しています。
テーマ先行型
仕事や趣味などに関連したテーマを設定するケースが多く、伝えたい情報が明確です。自身の中に蓄積されている知識や経験を活かして企画を立てるため、楽しみながら動画制作をすることができます。
役に立つ情報を発信することで、動画を見つけた視聴者から感謝の気持ちとともにSNSで拡散してもらえることも。資格試験の受験者やスキルアップを目指す人は毎年一定数存在するため、長期的に再生されやすい傾向にあります。
収益先行型
収益化できるテーマを探すために、どのようなチャンネルが人気なのか、どのようなコンテンツが流行っているのかなどを分析するマーケティング能力が必要です。
公開した動画が注目されると、一気に人気者になる一方、競争率が高くライバルも多いため、常に新しい切り口のコンテンツや企画力が求められます。芸能人同様に、トークスキルやセンスが問われますが、人気に火が着けばファンもつきやすく収益化しやすいのも特徴です。
こちらの記事で、YouTubeチャンネルのテーマ選びのポイントを詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
会社の機密情報を漏えいさせない
会社員である以上、機密情報やデータの扱いには細心の注意が必要です。従業員が機密情報を漏えいした場合、所属企業が法的措置を取ることもあります。発言内容はもちろん、重要な書類などが動画に映り込まないように十分気をつけましょう。
個人が特定されないように気をつける
YouTubeに顔を出した動画を公開する場合は、個人情報の扱いにも気をつけましょう。個人を特定されることで、住所や職場などの情報が公になる可能性があります。
YouTubeのコメントでは、指定キーワードが含まれた投稿をブロックする機能があります。本名や住所、会社名など知られたくないキーワードを事前に登録して、個人情報がコメント欄に書き込まれる事態を防ぎましょう。
会社や業界の悪口を言わない
暴露系のチャンネルは、再生数を稼ぎやすい傾向にありますが、ネガティブなコンテンツになりやすいので注意が必要です。また身元を明かさずに行う場合でも、ささいなことがきっかけで、予期せぬ事態に発展する可能性があります。何か問題提起をしたい場合は、ポジティブな視点を心がけましょう。
炎上させないように行動や発言に気をつける
動画を撮影、公開する前には、問題行動や発言がないかをしっかりと確認しましょう。過去には、面白半分で撮影した動画が大炎上し、解雇や法的措置を取られたケースもあります。社会人としての自覚を持った言動を心がけてください。
趣味の延長でYouTuberを始める場合は、楽しみながら自分のペースで行うことが大切です。例えば、スマートフォンで編集ができるAdobe Premiere Rushを導入して、通勤時間や休憩時間をうまく活用したり、サムネイル画像を作る際にテンプレートを作ったりと、時間を有効的に使うための方法もあります。
また、本格的に収益化を目指す場合は、仕組み化して編集作業を外注する方法もあります。自分の目的に合わせて、本業とYouTuberとのバランスを検討してみましょう。
会社員がYouTuberとして活動をする上で、効率よく時間を使うことはとても重要です。オールラウンドな動画編集ソフトであるAdobe Premiere Proを使えば、一瞬でノイズカットをしたり、動画の色味を自動で統一したりと、簡単にクオリティを向上させることができます。
動画編集初心者の方はぜひ一度「思い通りにできちゃうYouTube動画に向いた動画編集ソフト」のページをチェックしてみてください。出勤の合間や休み時間を有効に使い、会社員YouTuberとしての一歩を踏み出しましょう。
——————————————————
取材協力:
大須賀淳(おおすが・じゅん)
1975年生、福島県出身。映像作家、音楽家。スタジオねこやなぎ代表。企業ビデオ等様々な映像・音楽コンテンツを制作すると同時に、書籍や雑誌での執筆、大学やeラーニング等での講師、製品デモなども数多く務める。近著は「Adobe Premiere Pro超効率活用術」(玄光社)「YouTuberの教科書」(インプレス)ほか。
コスメティック田中
会社員として働きながら、2020年にひとりで行動することを楽しむ「ぼっち」系YouTubeチャンネルを開設。会社員の日常や休日に一人で外出する様子をユニークに切り取った動画が多くの若者の共感を呼び、現在のチャンネル登録者数は28.4万人を超える。https://cos-tanaka.com
——————————————————
(取材・執筆:ユウミ ハイフィールド 編集:ノオト)