1本の動画を作る場合、編集にかかる時間はどのくらい?
近年SNSの投稿においても、テキストや画像だけではなく、動画の投稿を目にする機会が増えています。YouTubeやTikTokなど、投稿するプラットフォームによって動画の長さはさまざまですが、約20分の動画を作成する際、撮影や編集、テロップの挿入などの作業にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。動画編集の初心者がチャレンジしやすい、レビュー動画の動画編集で必要となる作業工程やそれぞれにかかる時間について解説します。
今回は、未経験から独学で動画編集を始め、現在はフリーランスのビデオグラファーとして数々の作品を手がけている宮本裕也さんに、動画編集にかかる時間や時短テクニックについてお話を伺いました。
まずは動画に必要な映像の撮影からスタート
今回の記事では、宮本さんが作成した約20分の動画「音が小さすぎる?YouTubeに最適な音量とは。ラウドネスに関してお話します」を参考に動画編集にかかる作業工程や時間について説明します。
素材を用意するための準備
まず動画制作には、編集するための素材が必要です。カメラやマイクなどの機材を使って、作りたい動画に合わせて撮影を行います。動画を作る上で一番大切なことは、あらかじめ動画の構成を考えておくことです。どんな動画を作成したいのか、どんなことを伝えたいのかが明確に決まっていると、必要なシーンだけを撮影すればいいので、その後の編集作業も無駄なく進めることができます。
さらに効率的に撮影を行うために、撮影する動画の内容に合わせて、カメラの設定や画角、撮影場所を決めておくと効率的です。例えば、家でトーク系の動画を撮影する場合は、室内の一角に撮影スペースを確保し、三脚やカメラを定位置に固定しておくことで、すぐにいつもと同じ環境での撮影が可能になります。
【今回の動画の「撮影」にかかった時間】
約40分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
今回の参考動画では、セリフを言い間違えた部分の撮り直しなどを含めて約40分かかりました。商品紹介やハウツー、ゲーム実況など、トークが必要な動画の撮影は、最初の頃は上手くしゃべれないことも多々あるかと思います。NGが増えると素材が増えたりファイル容量が大きくなったりしてしまうので、まずは箇条書きでもいいので、話したいことを書き出し、スムーズにしゃべるための準備をしておきましょう。
映像を編集する
映像の編集に必要な作業工程や加工にかかる時間について以下にまとめました。
撮影データの取り込み作業
編集を始めるにあたり、最初に行うのが撮影素材の取り込み作業です。撮影した動画データを編集作業を行うパソコンに移行します。このときにかかる時間は動画のデータ容量や、使用するSDカードのスペックによって異なるので、取り込みにかかる時間を短縮したい場合は、一度手持ちのSDカードを確認してみましょう。
映像編集をスムーズに行うための準備
素材の読み込みが終わったら、編集をスムーズに行うために撮影データの整理を行います。使用するデータがパソコンの中であちこちに散らばらないように、撮影素材や音楽データなど編集に使用するデータは、すべて同じフォルダに入れて管理するのがおすすめです。編集作業に慣れないうちは、作業中のフォルダや素材を見失ってしまうことも多いので、ひとところに集めて管理をする習慣をつけておくと安心して作業に取り組めます。
使用するシーンをつなぐ「カット編集」
編集に使うデータがすべてそろったら、いよいよ編集作業に入ります。今回動画編集に使用するソフトは、Adobe Premiere Proです。まずは撮影データの中から動画に使いたいシーンを決め、大まかな構成に合わせてデータをつなぐ作業「カット編集」を行います。この作業で動画全体の流れをしっかりと把握しておきましょう。事前に動画の構成が決まっていると、カット編集もその内容に沿ってスムーズに進めることができるので時短になります。
【今回の動画の「カット編集」にかかった時間】
約40分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
私は動画編集を始めて今年で10年目ですが、初心者の頃は、同じような動画を作成するのに倍近い時間がかかっていました。経験を重ねることで、編集スキルも身につきますし、映像をつなぐときに悩む時間も減っていきます。ショートカットキーを使いこなすことができれば、編集時間は短縮可能です。
カット編集のあとに、色味を調整するカラー編集を行う場合が多いですが、今回の参考動画では同じ場所、同じ明るさで撮影しているためカラー編集はほとんど行っていません。また、動画の冒頭でTwitterアカウントを紹介するアニメーションが入っていますが、こちらは他の動画からの流用のため、今回の作業時間には含まれていません。
編集した動画に字幕テロップを入れる
字幕テロップとは、動画の中に配置する文字のことです。タイトルや登場人物の名前、話している内容など、その種類はさまざまですが、効果的に使うことで動画がより見やすくなります。字幕テロップの入れ方や大まかな流れについては、「動画に字幕テロップを入れる方法」を参考にしてください。
テロップの挿入作業時間は、テロップの長さによって異なります。例えば、話している内容のキーワードだけをピックアップして入れる場合と話している内容すべてを入れる場合では、文字に起こす時間に大きな差が生じます。編集を始めたばかりの初心者は、キーワードや印象付けたい言葉だけをテロップにするといいでしょう。
もし話している内容をすべてテロップにしたいのであれば、 Premiere Proの音声テキスト変換機能があります。文字起こしを自動化できるので、スピーディーな編集が可能です。
動画をシリーズ化する場合などは、一度使用したテロップの位置やデザインを固定したり、デザインルールを作ったりすることで、編集時間の短縮が可能です。
【今回の動画の「字幕テロップ挿入」にかかった時間】
約10分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
今回の参考動画では、要点や用語の説明のみ字幕テロップを入れています。どのような動画にしたいのか、誰に見てほしいのか、どのような状況で視聴されることを想定するかによって、字幕テロップの使い方が変わるので、作業前に一度しっかりと考えてみましょう。
音声を編集する
音声編集にかかる時間や作業工程について以下にまとめました。
音の大きさや音声に入ったノイズを除去する
音声編集とは、動画内の音の大きさの調整やノイズの除去などを行う作業です。音声編集をしていない場合、人の話す声や音楽の大きさにバラつきがあるため聴き取りづらく、視聴者のストレスにつながります。TVやCMなどでは、音声編集のプロがMA(Multi Audio)と呼ばれる音声の編集プロセスを担当し、動画を完成形へと仕上げていきます。個人で動画を編集する場合は、Premiere ProやAdobe Auditionを活用することで、音声の編集が可能です。音声編集については、「Premiere Proを使ったオーディオファイル編集」「Adobe Auditionで音楽の録音と編集をする方法」もぜひ参考にしてください。
BGMや別収録した音声を編集で合わせる
音声編集で音のレベルを整えたら、次にBGMや効果音などをつけます。BGMのセレクトは時間がかかるので、あらかじめ動画の内容や雰囲気に合わせて選び、素材のフォルダに入れておきましょう。音楽を効果的に使うことで、動画にメリハリがつきます。
また動画制作でよく起こりがちなのが、撮影時に音声が録れていなかったというケースです。この場合は再度収録が必要となり、さらに時間がかかってしまうため、撮影時には音が入っているかしっかり確認するようにしましょう。また、カメラのマイクだけではなくレコーダーやスマートフォンでも同時に録音をすることによって、カメラのマイクで一時的にトラブルなどがあった際の保険としても活用できます。
【今回の動画の「音声編集」にかかった時間】
約15分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
今回の参考動画では、ボリュームもノイズ処理も動画全体を一度に調整してから、音割れや音が小さすぎるところがないかを部分的にチェックすることで作業時間を短縮しています。BGMは、オープニングとエンディングは同じものを使い、メインパートは説明に集中してもらえるように無音にしています。BGMをパターン化することで、音声編集の時間を短くすることができるので、内容に合わせて工夫してみてください。
編集した動画の最終チェックを行う
編集が終わったあとに大切なのが、動画の最終チェックです。書き出しの工程に進む前に、動画にミスがないかしっかりと確認しておきましょう。チェックポイントはいくつかありますが、最低限以下の3つはチェックしておきたいです。
まずはカット編集のチェックです。無駄なカットが入っていないか、つないだカット同士が離れずしっかりつながっているかなどを確認します。
次に字幕テロップの誤字脱字のチェック。画面に表示されるのはわずかな時間ですが、字幕テロップのミスは目立ちます。動画を書き出してから不備が見つかると、修正後に再度書き出し時間がかかってしまうため、このタイミングでしっかりとチェックをしておきましょう。
最後は、動画の音量です。動画全体の音量に大きな差がないか、ヘッドホンなどをつけて最初から最後まで聴いてみてください。また、編集画面で音量のレベルメーターも確認し、音割れなどがないかどうかも確認するようにしましょう。すべてチェックして問題がなければ、書き出しの工程に進みます。
【今回の動画の「最終チェック」にかかった時間】
約30分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
書き出し前にチェックすることはもちろん必要ですが、書き出した後のファイルも実際に再生して確認するようにしましょう。まれに、書き出し時に不具合などでおかしな場所がある場合があります。
編集した動画の書き出しを行う
サムネイルとは、動画の内容を一目で伝えるためのアイキャッチ画像のことです。動画の中の印象的なシーンを静止画として切り取って使用したり、タイトルのフォント、色などに工夫を凝らすことで、視聴者の目を引くことができます。効果的なサムネイルを作成し、再生回数のアップを目指しましょう。サムネイルについては「魅力的なYouTube動画サムネイルを作るポイント」「YouTube サムネイル無料デザイン作成アプリ」もぜひ参考にしてみてください。
【今回の動画の「サムネイル作成」にかかった時間】
約5分
【宮本さんのワンポイントアドバイス】
YouTubeの場合、動画をアップロードしたあとでも、好きなタイミングでサムネイルの差し替えができます。動画編集同様、慣れるまでに時間がかかる作業なので、まずはシンプルなもので構わないので気楽に作成してみましょう。画像編集ソフトのAdobe PhotoshopやグラフィックデザインソフトのAdobe Illustratorを使うと、より凝ったサムネイルを作ることができます。
Premiere Proで動画編集を楽しもう
【今回の動画の作業時間まとめ】
撮影=約40分
カット編集=約40分
字幕テロップの挿入=約10分
音声の編集=約15分
編集データの最終チェック=約30分
サムネイル作成=約5分
宮本さんの制作した参考動画の編集にかかった時間は、撮影からの一連の作業でトータル約2時間20分でした。データの取り込み、書き出し時間なども含めると2時間半から3時間ほどです。
経験を重ねることで、編集の効率やスピードは上がっていきます。Premiere Proは、動画編集をサポートするさまざまな機能があります。初心者のみなさんもぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
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取材協力: 宮本裕也
「これからきっと動画の時代がくるはず! 」「動画が楽しい、好き! 」という思いだけで、職種未経験にも関わらず31歳の頃に映像クリエイターとして独立。現在は地元である広島県を中心に企業や学校関連などのプロモーション用の映像を企画から撮影、編集とワンストップで制作している。独立した当初から始めたYouTubeチャンネル「GIV-ギブ」のチャンネル登録者数はおよそ3万人。Premiere Pro、After Effectsのチュートリアルや、撮影機材の紹介などを通して動画制作の楽しさを日々発信している。近著は「Premiere Pro よくばり活用辞典」(インプレス)。
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(取材・執筆:ユウミ ハイフィールド 編集:ノオト)