動画編集の初心者でも簡単に使える機能は?
動画編集に興味を持ちながらも、何から始めたらいいのかわからないと思っている方も多いでしょう。今回は、動画編集ソフトAdobe Premiere Proに詳しい映像作家の大須賀淳さんにインタビュー。簡単な使い方や初心者でも扱いやすい機能について解説していただきました。
より細かい作業を行いたい場合は、編集前のクリップを再生しながら作業できる画面(ソースモニター)を使うと便利です。映像の動きを詳細に見ながら、カットする箇所を手動で細かく指定することができます。
その他、Premiere Proを使ったカット編集の詳しい手順は、「カット編集の基本を覚えよう」「動画と動画をつなげる編集方法」で解説しています。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
編集に慣れないうちは、視聴者に多くの内容を伝えようと思うあまり1カットを長くしがちですが、長すぎると飽きさせてしまう原因にもなります。短くまとめるコツは「この動画は全体で5分にする」「この章は1分におさめる」「このクリップは3秒だけ使う」というように、あらかじめ制限時間を決めてから編集にとりかかることです。
タイトル・テロップ挿入
テキストは、編集中の動画を見られる「プログラムモニターパネル【A】」で映像の上に直接文字を打ち込んで挿入します。文字や図形をデザインする機能がまとまった「エッセンシャルグラフィックスパネル【B】」を使って文字のサイズ変更、フォントの種類や色の変更、縁取りや影の追加などが可能です。動画の中の文字を出したり消したりするタイミングは「タイムラインパネル【C】」で調整できます。
基本的な文字編集の方法は、「動画のテロップはなぜ必要?作り方のコツ3や注意点を解説」「テロップ編集の基本を覚えよう」を参考にしてください。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
動画の中に文字をある程度長い時間表示する際は、映像の変化に伴って文字の背景の色が変わると読みづらくなることがあるので注意が必要です。そうならないためには、白字に黒のふちどりをつける、もしくは黒の影をつけるとよいでしょう。また、インタビューの回答内容などしっかり文字を読ませたい場面では、文字に背景色をつけると視認性がアップします。
フォントの選び方
動画のタイトルやテロップには、基本的に明朝体よりもゴシック体、中でも太めのフォントを選ぶと可読性が上がります。フォントの選び方については「YouTube動画に向くフォントとは?字幕のフォント選び」でも解3説しています。
また、動画に文字を入れる機会が多い人にとって重宝するのが、フォントの定額制使い放題サービス「Adobe Fonts」です。日本語だけでも400種類近く、欧文も含めると2万種類ほどのフォントが登録されています。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
使用するフォントに迷ったら、Adobe Fontsの「UD」カテゴリーから選ぶことをおすすめします。UDとはユニバーサルデザインのことで、誰もが読みやすいフォントがそろっています。
インパクトを狙う場合は、個性的なフォントがそろった「デザイン」カテゴリーが便利です。ただしデザイン性の高いフォントで長い文章を書くと読みづらくなるため、例えば返事の「ハイ!」やツッコミの「オイ!」のように記号的な短い文言に用いるのがおすすめです。
色や明るさの調整
Premiere Proには、色や明るさを調整する多数の機能が一つにまとまった「Lumetriカラー」というパネルがあります。初めて使用する方は、ワンクリックで自動的に自然な色合いおよび明るさに調整される機能「自動補正」から使ってみましょう。
それでも足りないと感じたら、色温度、ホワイトバランス、色かぶり補正、彩度の順で色合いを調整し、ハイライトとシャドウで明るい部分と暗い部分のバランスをよくします。さらに明るさを補正したい場合は、白レベル、黒レベル、露光量で微調整を行ってください。
通常Lumetriカラーで行った調整は1本のクリップごとに適用されますが「調整レイヤー」という機能を使うと編集中のすべてのクリップに一括で適用させられます。例えば全編をモノクロにしたいときなど、動画全体に同じ加工を施したい場合に便利です。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
複数のクリップをつなげた動画を作成するときには、まずすべてのクリップの色を調整した後、改めて先頭のクリップから順に明るさを調整すると、全体の色と明るさを合わせやすくなります。
音の挿入
パソコンからPremiere Proに音声ファイルを取り込むと、動画に効果音やBGMを追加できます。
音の挿入に関する機能
「オーディオトラックミキサー」という機能を用いることで、もともと動画に収録されている音声と後から取り込んだ効果音やBGMとの音量のバランス調整が可能です。
効果音やBGMが入るタイミング、消えるタイミングはタイムライン上で設定できますが、これを手動で自由に行うには「キーフレーム」という機能が便利です。タイムライン上の横軸を時間の経過、縦軸を音量の大小として任意の箇所をクリックし丸い点を打っていくと、点と点を結んだ線の通りに音声の大きさが調整されるため、人の声を聞かせたい時にBGMを小さくしたり、盛り上げたいラストシーンで音楽を徐々に大きくしたりといったことができます。
音声のコントロールを自動で行える機能もあります。「オーディオトランジション」を使うと、挿入した音楽の最初と最後にフェードイン・フェードアウトが自動でかかります。また、インタビュー動画などで便利なのが「オートダッキング」です。いったん動画全体にBGMを設定してからこの機能を使うと、人が話しているすべての箇所でBGMが自動的にボリュームダウンします。
音声の素材
動画に挿入する音楽を選ぶ際は、素材集を使うと便利です。Adobe Stockのオーディオ素材は、商用利用が可能です。Adobe Stockの使い方は「Premiere Pro での Adobe Stock オーディオの使用」を参考にしてください。
フリー(無料)素材は個人で使用するぶんには問題ありませんが、YouTubeにアップロードした場合に警告が来たり使用が制限されたりすることがあります。無料音楽素材集「YouTubeオーディオライブラリ」は、YouTubeでのみ使用が可能であり、SNSなど他のメディアでは使えないので注意しましょう。
音声編集ソフトを用いた編集
ほとんどの音声編集はPremiere Proで十分ですが、音声編集に特化したソフト「Adobe Audition」を使うとより幅広い編集が可能です。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
Auditionの優れた点のひとつに、撮影中に物を落としてしまって入った音や、スマホの通知音などの不要な音を自然に削除する機能があります。編集中の動画の音声をいったんPremiere ProからAuditionに移し、不要な音を削除してからPremiere Proに戻すことが簡単にできるので便利です。
トランジションの適用
トランジションとは、カット編集でつなげたクリップ同士のつなぎ目に与える効果です。Premiere Proでは、エフェクトメニューの中にある「ビデオトランジション」という機能を使います。
効果の種類は数多くありますが、最もポピュラーなのは映像が重なり合いながらフェードアウト、フェードインしていく「クロスディゾルブ」でしょう。その他、一つの映像が徐々に白くなって消えた後に次の映像が現れる「ホワイトアウト」、映像が左右や上下にスライドするように切り替わる「ワイプ」などの効果もあります。
トランジションの活用法については、次の記事で紹介しています。
Premiere Proでカッコいいトランジションを入れる方法
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
トランジションは使い過ぎると動画が見づらくなるので注意しましょう。ほとんどのつなぎ目はカット編集したままで問題なく、時間の経過や場面転換を表現するなど「意味のあるところ」にのみトランジションを使うのがポイントです。さらに、時間の経過はホワイトアウト、場面転換はワイプを使うといったように、同じ意味のところを同じ効果で統一すると視聴者にとってわかりやすくなります。
絵や文字を動かす、色や大きさを変えるなど、時間の経過に伴い見え方に変化を与えることをアニメーションといいます。
アニメーションの適用方法
Premiere Proでは「エフェクトコントロール」という機能で、テキストや図形にアニメーション効果を加えます。文字の位置、大きさ、角度(回転)、不透明度の組み合わせで時間の経過に伴う動きをつけることができます。
例えばタイムラインの3秒地点に「大きさ0%(表示されていない)」を指定し、8秒地点に「大きさ100%」を指定すると、3秒~8秒の間で徐々に大きくなり奥から迫ってくるようにテキストを表示させることができます。また「モーショングラフィックステンプレート」に、作成した効果を保存することも可能です。
アニメーションのテンプレート
Adobe Stockには、アニメーションのテンプレートが多数登録されています。無料のものもあるので気軽に試してみるとよいでしょう。Adobe Stockのテンプレートは無料であっても商用が可能ですが、他の無料素材は制限がある場合もあるので確認してから利用しましょう。
【大須賀さんのワンポイントアドバイス】
アニメーションはデバイスによって見え方が変わることがあります。スマホとパソコン、さらにできれば大型テレビでプレビューするのがおすすめです。
Premiere Proを使って動画編集にチャレンジしよう
Premiere Proは映画の制作にも使われるプロ仕様でありながら、初心者にも使いやすい機能が多数搭載されています。「初心者向けPremiere Proの使い方基本」も参考にしながら活用法を身につけ、動画編集の一歩を踏み出してみましょう。
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取材協力:
大須賀淳(おおすが・じゅん)
1975年生、福島県出身。映像作家、音楽家。スタジオねこやなぎ代表。企業ビデオなどのさまざまな映像・音楽コンテンツを制作すると同時に、書籍や雑誌での執筆、大学やeラーニングなどでの講師、製品デモなども数多く務める。近著は「Adobe Premiere Pro超効率活用術」(玄光社)「YouTuberの教科書」(インプレス)ほか。
公式サイト:https://junoosuga.com/
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(取材・執筆:北村朱里 編集:ノオト)