ディゾルブを活用した映像演出
ディゾルブ
時間経過を表したり、回想シーンへの転換に使われるトランジションとして、カットとカットを徐々に重ね合わせて次のカットへと移行していくディゾルブと呼ばれる手法が多く使われています。映画だけではなく、テレビ番組やウェディング映像など、様々な場面でディゾルブは使用されています。ふわふわと優しいイメージでカット間を切り替えることができるのが魅力です。
フィルムによる映像制作が主流であった時代から、トランジションによる演出はされていました。映画「月世界旅行」で有名な映画監督ジョルジュ・メリエス(1861-1938) は、多重露光や低速度撮影、ストップモーション、そしてディゾルブなどの原始的なものを開発したと言われています。現在においてもよく使われるSFX(特殊効果)を生み出し、当時の映画業界に革命を起こしました。フィルムを切ってつなぎ合わせていた時代からディゾルブ効果を使っていたとは驚きです。
Adobe Premiere Proの主なディゾルブは、ディゾルブ、クロスディゾルブ、フィルムディゾルブ、暗転、ホワイトアウトの5種類があります。フォルダ内には他のエフェクトもありますが、今回は純粋なディゾルブを紹介します。
ディゾルブ
クリップ B からクリップ A にカラー情報を追加し、クリップ B からクリップ A のカラー情報を差し引きます。中間地点では輝度情報が重なるので、白っぽく明るくディゾルブが進んでいく印象があります。
クロスディゾルブ
クリップ A をフェードアウトしながらクリップ B をフェードインします。
ディゾルブと違い、輝度に大きな変化は見られないまま変化していきます。
フィルムディゾルブ
フィルムディゾルブトランジションは、リニアカラースペース(ガンマ = 1.0)でブレンドを行うディゾルブです。よりリアルな方法でブレンドを行います。見た目に違和感を生じないようにディゾルブするトランジションと言えます。
暗転
クリップ A を黒にフェードし、黒からクリップ B にフェードします。
ホワイトアウト
クリップ A を白にフェードし、白からクリップ B にフェードします。
また、ディゾルブとライトリークやレンズフレア、adobe-transitionスモークエフェクトなどを組み合わせた、ドラマティックなトランジションの使い方もあります。
ジャンプカットに使えるディゾルブ機能
独創的なカメラワークや大胆な編集技法によって映像表現の世界に革命をもたらしたフランスの映画監督、ジャン=リュック・ゴダール(1930~)は、映画「勝手にしやがれ」制作時に、尺を短くするために、長回しのショットをランダムに短くしました。シーンの連続性を無視した、当時では考えられない手法でしたが、それが独特のテンポを生み評価を受けたそうです。のちにジャンプカットという効果として、テンポよく物語を進行させていく表現や、時間が経過していくような表現、なんども挑戦する、といった表現に使われています。
また、インタビュー映像や、YouTuberによる1カメ固定の映像で、「えーっと」などの間を編集で詰め、尺を短くする手法もまたジャンプカットと呼びます。インタビューなどでは、編集したことがあからさまにわかってしまい、違和感を感じるため、2カメ以上で撮影してつなぎ合わせたり、インサートをかぶせて編集してジャンプカットを防いでいました。
Premiere Proのディゾルブの機能【モーフカット】は、意図しないジャンプカットを防ぎます。Adobe SenseiによるAiと機械学習によって、カットとカットの間を自動補完してスムーズに繋ぎます。
近年においては、YouTuberによる映像でジャンプカットは当たり前に使われるようになったため、ジャンプカットによる違和感を感じる人は少なくなったのかもしれません。
このように、トランジションの一種であるディゾルブは使い方によって映像表現や演出の一助になります。YouTuberの映像やVlogにも活用できるディゾルブ機能がPremiere Proには備わっているので、新たなクリエイティブを生み出してみてはいかがでしょうか。
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