ビットレートを理解して動画のクオリティを調整する
動画データを視聴可能なデータ形式に変換するエンコード作業をする際に調整すべきなのがビットレートです。ビットレートは動画の画質を左右します。ビットレートを高くすればクオリティが上がるメリットもありますが、デメリットも生まれます。ビットレートについて知ることで、動画のクオリティをコントロールすることができるでしょう。
ここでは、ビットレートの意味や種類やビットレートの算出方法、YouTubeで動画をアップロードするときに最適なビットレートについて説明します。
ビットレートとは、何を意味するのでしょうか。まずビットとは、コンピューターが扱うデータ量のことです。そして、ビットレートは、「エンコード(データ圧縮)された動画や音声の1秒間に対して、どれくらいのデータ量を使用しているか」「1秒あたりプログラムが何ビットのデータを処理できるか」「通信回線で1秒間に処理できるデータ量」など、複数の意味があります。なお、ビットレートの単位は「bps」で、bit per second(ビット・パー・セカンド)の頭文字を取ったものです。具体的に、ビットレートにはどのような種類があるのか見ていきましょう。
映像ビットレート
映像ビットレートは、映像1秒間に対してのデータ量を表します。映像ビットレートを算出する計算式は、下記のとおりです。
映像ビットレート=解像度(画像の幅1インチあたりの画素数)×RGB(Red Green Blue color model)データ量(1画素あたりの色情報)×フレームレート(映像1秒間あたりの静止画数)
映像ビットレートが高いほど映像はきれいになりますが、データ量が増えるデメリットがあります。
音声ビットレート
音声ビットレートは、音声1秒間に対してのデータ量を表します。音声ビットレートを算出する計算は、下記のとおりです。
音声ビットレート=サンプリングレート(音声1秒間あたりの処理回数)×ビット深度(1サンプリングあたりのデータ量)
映像ビットレートと同様に、音声ビットレートが高いほど音質は良くなりますが、データ量が増える点がデメリットです。
オーバルビットレート
オーバルビットレートは、映像ビットレートと音声ビットレートの合計値です。つまり、動画全体のビットレートを知ることができます。オーバルビットレートを算出する計算式は、下記のとおりです。
オーバルビットレート=映像ビットレート+音声ビットレート
固定ビットレート
固定ビットレートは、動画や音声のエンコード(データ圧縮)に使われるビットレートのひとつです。「CBR(Constant Bit Rate)」とも呼ばれます。
固定ビットレートは、動画の情報量にかかわらず同じデータ量でエンコードするので、圧縮後のデータ量が一定になります。これにより、圧縮後のデータ量を予測できるというメリットがあるのです。ですが、動画や音声の情報量が多い部分も少ない部分も同じビットレートでエンコードするため、エンコードされた動画の画質や音声の音質が不安定になる場合があります。
また、固定ビットレートは圧縮後のデータ量が予測できるため、ストリーミング配信に最適な回線速度が事前にわかるというメリットもあります。
可変ビットレート
可変ビットレートも固定ビットレートと同じく、動画や音声のエンコード(データ圧縮)に使われるビットレートのひとつです。可変ビットレートは「VBR(Variable Bit Rate)」とも呼ばれます。
可変ビットレートは、動画や音声の情報量に応じで圧縮率が変わるので、全体的に画質や音質が良くなります。しかし、圧縮後のデータ量がわからないのがデメリットです。
そのため、可変ビットレートをインターネットで動画を配信するストリーミング配信に使った場合、事前に最適な回線速度を予測できず、配信が不安定になる可能性があります。
平均ビットレート
平均ビットレート(Average Bit Rate)は、動画や音声のエンコードに使われるビットレートのひとつです。
平均ビットレートは、動画や音声データの情報量にかかわらず、同じデータ量でエンコードします。この点は固定ビットレートと同じですが、平均ビットレートは可変ビットレートでエンコードした場合の平均値に近くなるよう、データ量が調整されます。これにより、情報量の多い部分でも、画質や音質をあまり落さずに処理することが可能です。
アダプティブビットレート
アダプティブビットレートは、ストリーミング配信で使われるビットレートのことで、「ABR(Adaptive Bit Rate)」とも呼ばれます。
アダプティブビットレートは、通信環境に合わせて、自動で動画や音声コンテンツの画質を調整してエンコードすることが可能です。そのため、動画を正しく視聴できない、音声が正しく聞こえないといったトラブルを回避できます。
適切なビットレートにするにはどうする?
一般的に、動画はデータ量が多いほど画質が高くなります。ですから、ビットレートが高いほど、高画質になるのです。しかし、ビットレートを高くして動画の画質をアップさせると、データ量が増えるので動画配信の際に高速回線が必要になりますし、動画を保存するサーバーの容量も圧迫します。ですから、画質をできるだけ落とさないデータ量になるよう、適切なビットレートを選択しなくてはなりません。
ストリーミング配信の場合も同様で、ビットレートを高くすれば高画質の動画を配信できますが、ユーザーの通信回線がデータの転送量を超えてしまえば、動画の再生が遅延してしまいます。
動画を適切なビットレートにするには、撮影時に機器などの設定をしておく必要があります。撮影時の動画の設定や編集時に注意すべき点は下記の3つです。
フレームレート
適切なビットレートの動画を制作するために撮影時に気をつけたいのが、フレームレートです。フレームレートは、映像1秒間あたりの静止画の枚数を示す単位のことで、「fps(Frames per second)」で表されます。
動画は、フレームレートを上げで撮影すれば動きが滑らかになりますが、一般的な動画のフレームレートは24fpsです。ただし、撮影対象がスポーツのように動きの激しいものであれば、30fps以上が望ましいでしょう。
解像度
適切なビットフレームの動画を撮影するには、解像度についても注意が必要です。最近は、一般向けの撮影機器でも4K画質(3840×2160画素)で録画できますが、4Kテレビなどがなければ、4Kのクオリティで見ることができません。撮影する際の動画の解像度は、動画を視聴するモニターを考慮して選ぶことが大切です。
コーデック
適切なビットフレームの動画を制作するには、コーデックの種類にも気をつける必要があります。インターネットにアップロードするなら「H.264」や「AV1」、テレビで見るならDVDで使われている「MPEG-2」などがいいでしょう。
コーデックの種類については下記の記事で詳しく説明しています。
YouTubeに最適なビットレート
最後に、世界一の動画配信サービスであるYouTubeに最適なビットレートをご紹介します。SDR(Standard Dynamic Range/スタンダード・ダイナミック・レンジ)動画、HDR(High Dynamic Range/ハイ・ダイナミック・レンジ)動画それぞれについて、YouTubeにアップロードする際に推奨されているビットレートは下記のとおりです。
なお、YouTubeにアップロードする動画に推奨されるビットレートは、YouTubeヘルプの「アップロードする動画におすすめのエンコード設定」で詳しく解説しています。
SDR動画
SDR動画は、一般的なテレビや映画などで使われる動画です。なお、人間の目で認識できる明るさの範囲をダイナミックレンジと呼びますが、映像が持つ明るさの範囲を「輝度」といいます。
■SDR動画をアップロードする際におすすめの映像ビットレート
解像度 |
標準フレームレート |
高フレームレート |
2160p(4K) |
35~45Mbps |
53~68Mbps |
1440p(2K) |
16Mbps |
24Mbps |
1080p |
8Mbps |
12Mbps |
720p |
5Mbps |
7.5Mbps |
480p |
2.5Mbps |
4Mbps |
360p |
1Mbps |
1.5Mbps |
HDR動画
HDR動画は、SDRに比べて輝度が高く、日陰が黒くつぶれたり、日向が白飛びしたりしない高画質な動画です。
■HDR動画をアップロードする際におすすめの映像ビットレート
解像度 |
標準フレームレート |
高フレームレート |
2160p(4K) |
44~56Mbps |
66~85Mbps |
1440p(2K) |
20Mbps |
30Mbps |
1080p |
10Mbps |
15Mbps |
720p |
6.5Mbps |
9.5Mbps |
※標準フレームレートは「24fps、25fps、30fps」、高フレームレートは「48fps、50fps、60fps」になります。
なお、Adobe Premiere Proでは、YouTubeに最適なビットレートで動画を書き出すプリセットが用意されていますので、ぜひご利用ください。
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