アスペクト比を理解して画像や動画の設定を最適にしよう
画像や動画を扱う上で、知っておきたいのがアスペクト比に関する知識です。これまで、画像や動画におけるアスペクト比は、使用する撮影機材や技術によって決まるものでした。しかし、現在では自由にアスペクト比を設定することができるようになっています。
ここでは、アスペクト比と動画配信プラットフォームとの関係性、画像や動画のアスペクト比の種類など、画像や動画のアスペクト比を最適に設定するために知っておきたいことをご紹介します。
アスペクト比とは矩形の縦横比を表すもので、画像や動画においては画面比率になります。画像や動画においてのアスペクト比は、被写体を写す構図を決める大切な要素で、被写体や構図によって最適なアスペクト比が変わります。
例えば、人間が二人で会話しているところを撮影する場合を考えてみましょう。まず、アスペクト比1:1の正方形では、ある程度のサイズで二人を画面内に入れると背景はほとんど写りません。また、アスペクト比を縦長にした場合、二人を画面内に入れるには、カメラを引いて二人の身体を含めて写すことになります。
どちらか一人の身振りやしぐさなどをはっきり写したければ、縦長ではなく横長のアスペクト比で、上半身だけ写すのが最適です。二人の表情などを見せたければ、横長にして身振りよりも顔にフォーカスを合わせる方法もあるでしょう。
映画の世界では、横長のワイドスクリーンを使います。これは、観客の視界いっぱいに、雄大な風景や戦闘シーンを映し出すことができるからです。
また、横長のアスペクト比が好まれる理由として、編集者・カラリスト(カラーリングの知識を資格を持つ人)のゲリー・ホルツ氏は「私たちの顔には、2つの目が横に並んでいます。視界は縦よりも横に広いので、横長の画面で見るほうが自然に感じられるのです」と述べています。
また、商用動画を撮影する場合は、配信プラットフォームについて考慮する必要があります。長編映画なのか、プロモーション動画なのか、いずれを撮影するにしても、撮影を開始する前に、視聴者がその動画を見る環境について考えなくてはなりません。
もし、ほとんどの人がスマートフォンで視聴する動画であれば、正方形または縦長のアスペクト比が良いでしょう。
撮影する動画のアスペクト比を決めるには、「何を、どう見せたいか」「視聴者はどのようなプラットフォームでその動画を見るのか」を、しっかり考えることが重要なのです。
なお、アスペクト比は、画像の上下や左右に黒い帯を挿入することで調整することができます。例えば、16:9の動画を4:3のテレビで再生したい場合は画像の上下に黒い帯を、逆であれば左右に黒い帯を挿入します。
動画でよく使われるアスペクト比の種類と用途
次に、動画で使われる代表的なアスペクト比を見ていきましょう。今回ご紹介するもの以外にも、名刺に使われる1:1.618(黄金比)や、A4判の用紙サイズでもある1:1.414(白銀比)、コンピューターのモニターに採用されている16:10(WXGA)などがあります。
16:9(ワイドスクリーンやハイビジョンテレビ)
アスペクト比「16:9」は、1980年代後半にアメリカで「HDTV(高精細度テレビジョン放送)」の計画が進められた際に提案され、今では一般的となっているアスペクト比です。16:9のアスペクト比は、背景を映すのに十分な横幅と、人の表情をしっかり見せることができる高さがあるため、YouTube(ピクセル単位での比率は1920:1080、4K解像度では3840:2160)やVimeoなどでも採用されています。
テレビでこの比率を超えるワイド映画を見るときには、画面上下に黒い帯でアスペクト比を調整した状態(レターボックス)で表示すれば、映像を撮影した監督が意図した細かい部分も逃さず鑑賞することができます。
3:2(デジタルカメラ)
アスペクト比「3:2」は、デジタルカメラで採用されているフォーマットです。このアスペクト比は、アナログ時代の35mmサイズのフィルムフォーマットを流用しています。
ですが、最近のデジタルカメラは3:2以外にも、パノラマ撮影に使う「16:9」に加え、スタンダードと呼ばれる「4:3」、正方形の「1:1」など、アスペクト比を自由に選べるものもあります。
4:3(スタンダード)
アスペクト比「4:3」は、2011年7月まで放送されていた地上アナログ放送で採用されていたフォーマットです。スタンダードと呼ばれていますが、最近ではこのアスペクト比で動画が制作されることは、あまりありません。
9:16(スマートフォン)
アスペクト比「9:16」は、スマートフォンの画面に合わせた縦長のフォーマットです。Twitter、Facebook、InstagramといったSNSのシェア拡大に伴い、多くの人がスマートフォンで動画コンテンツを視聴するようになりました。現在では、スマートフォンで短い縦型動画を作成する人も増え、2年に1度、オーストラリアでVertical Film Festival(縦型動画フェスティバル)が開催されるほどの人気です。
作品が視聴される可能性が最も高い方法に合うアスペクト比で撮影・編集するのが最適とはいえ、近年は、配信プラットフォームの種類が多岐にわたっているため、最適なアスペクト比が事前にわからない場合もあります。実際、映画監督のテイラー・カバナウ氏によれば、クライアントにどのアスペクト比がいいかを聞いても、「いろいろな形式で配信する予定なので、全部お願いします」というような反応もあるようです。
そこで、対応策として「Adobe Premiere Pro」の「オートリフレーム」機能を使う方法があります。オートリフレームを使えば、使用可能なプリセットから縦横比を選択したり、カスタム縦横比を指定できたりしますので、さまざまな縦横比で動画を制作できます。
オートリフレームの使い方については、下記の記事で詳しく説明しています。
様々なソーシャルメディアチャンネル用にビデオを自動的に再フレームします
アスペクト比を知ることで動画に説得力を持たせよう
動画のアスペクト比は、撮影対象によって最適値が変わります。ですが、動画を配信するプラットフォームと動画の視聴者も、アスペクト比を決定する重要な要素です。
こうした要素を考慮して最適なアスペクト比で撮影すれば、伝えたいことがより伝わりやすい動画になります。動画のアスペクト比を知り、説得力のある動画を撮影しましょう。
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