新たな力をもう1つ - Plus One
グラフィックから映像、webとメディアを超えたデザインを展開する株式会社パレイドで代表を務めるクリエイティブディレクター・真辺庄帝さん。グラフィックデザインから始まったキャリアは、時代の流れに合わせて柔軟に変化、拡張していき、いまやあらゆるメディアの、あらゆるクリエイティブを手がけるまでに至っています。
幅広いジャンルのなかでも、その中心にあるのは常にグラフィックデザイン。そこからこれほどまでにメディアを拡張することができたのはなぜでしょうか。Adobe Photoshop、Adobe Illustratorといったグラフィックアプリケーションに、Adobe Premiere ProやAdobe After Effectsといった動画アプリケーションを組み合わせて、グラフィック+1のデザインでより効果的な提案をしていく、真辺さんのクリエイティブメソッドについて伺いました。
“いまや映像もデザイナーの領域。クリエイティブの世界が広がる”
Photoshopで人物を切り抜き→After Effects & Premiere Proで動きをつける
「時代に合うコミュニケーションを考えたとき、動画もアップできるInstagramやTwitter、サイネージを静止画で済ませてしまうのではなく、(この例のように)写真に動きのある文字を加えるだけでも、より多くの人の目を引く、リッチなコンテンツにすることができます。
動画=映像制作=専門家の仕事と思いがちですが、この動画はPhotoshopの『被写体を選択』で写真から人物を切り出しておき、After Effectsで作成したアニメーションテキストとともにPremiere Proでムービーとして書き出しているだけです。いわゆる映像編集のスキルは必要としません。
たとえば、Tシャツの絵柄がグラフィックデザイナーの領域であるのと同じように、こうした写真に動きを与える表現もまたグラフィックデザインの領域にあると考えています。メディアや表現によって自分のフィールドではないと線引きするのはもったいないと思います。グラフィックデザイナーだからこそできる動画表現があるはずです。
グラフィックにアクセントを加えるためだけにAfter EffectsとPremiere Proを使う、そうした贅沢な使いかたができることはAdobe Creative Cloudのメリットです。とにかく触ってみればPhotoshopやIllustratorと基本構造が同じであること、操作の親和性が高いことは実感できる。平面の静止画表現にとらわれることなく、時代の変化に合わせて表現の幅を広げていくことは、必ず次の仕事につながるきっかけになると思います」
1. Photoshopで写真を開き、「被写体を選択」を使って人物に選択範囲を設定して切り抜き、ライブラリに登録します
2. After Effectsを使って、人物の背景に表示させる動きのあるテキスト(テキストアニメーション)を作成します
3. Premiere Proで下から順に背景写真/テキストアニメーション/人物写真を配置すれば、人物のうしろに文字が浮かぶ映像に
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/photoshop.svg | Adobe Photoshop
複雑な選択範囲をコマンドひとつで作成
Photoshopの「被写体を選択」
「Photoshopの『被写体を選択』を使うと、これまで1時間かかっていたような複雑な選択範囲作成が、コマンドひとつで80〜90点のところまで一気に到達できる。複雑な背景でもまるで白バックで撮影した写真のようにきれいに選択できるAI(Adobe Sensei)の精度は驚異的です。ここから100点を目指してブラッシュアップするだけでも大幅な時間短縮になりますし、サイズの小さいサムネール画像であれば、これで充分というケースもあるでしょう。
ここまでのクオリティが出せるのなら、『被写体を選択』をアクションに組み込み、手間のかかっていた切り抜きを自動化する、被写体と背景を個別に自動補正するという使いかたもできますし、背景に動画を合成して、よりリッチなコンテンツに仕上げることもできる。効率だけでなく、トータルの品質も上げることができる、非常に便利な機能だと思います」
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/premiere-pro.svg | Adobe Premiere Pro
動画編集アプリで写真に動きを加えて
SNSに強いリッチなコンテンツに
「今回の例のようなグラフィックに+αの表現を加えるだけなら、映像編集の知識はそれほど必要ありませんし、なにより“Premiere ProとAfter Effectsは映像制作に使うもの”と思い込んでしまうのはもったいないと思います。
人物のうしろにただ動く文字を入れるだけなら、PhotoshopとPremiere Proだけで完結させることもできますが、ここではふわりと文字が浮かび上がるようにしたかったので、テキストアニメーションだけAfter Effectsで作成しています。Premiere ProにAfter Effectsを組み合わせることで、映像の写真や文字にさまざまな効果をつけられるようになります。
動画にはビジュアルの見せかたや構図、文字の組みかたなど、グラフィックのスキルを活かせる部分もたくさんあります。むしろ動画・映像こそ、これからグラフィックデザイナーが関わるべき、取り組むべき領域なのではないかと思っています」
クリエイティブディレクター
真辺庄帝
2001年よりグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタート。2015年にブランディング、映像、webを主軸とした制作会社・株式会社パレイドを設立し、ブランディング、映像、web、ファッションなど、メディアの垣根を越えたクリエイティブを展開している。
株式会社パレイド 公式webサイト
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