After Effectsで3Dアニメーションをはじめよう
3Dアニメーションは3Dソフトを使わないと作ることができない。
Adobe After Effectsでは外部の有料プラグインを購入しないと作れない。このように思っている方も多いのではないでしょうか。バージョンアップを重ねるごとに進化を続けるAfter Effectsは、3DCG作成の機能も進化を続け、様々な3Dアニメーションが作れるようになりました。
今回は、After Effectsに標準搭載されている3D機能をご紹介します。
2Dアニメーションと3Dアニメーションの違い
はじめに、CGアニメーションにおいての2Dと3Dの違いについて改めて確認しておきましょう。
2D、3Dという言葉はよく耳にしますが、そもそも「D」とは何なのか。これは、英語の「Dimension」の「D」を省略したものです。「Dimension」の日本語訳を調べると「寸法」や「次元」といった言葉が出てきます。CGアニメーションの世界では、2D(two dimensions)を2次元、3D(three dimensions)を3次元と表現します。
この平面と立体の差は、CGアニメーションで映し出せる視点の差となります。
平面で見ることができるのはひとつの視点だけです。
例えば、平面で描写した絵や写真をいろんな角度からのぞき込んでみても見える部分は変わりません。立体として扱うことで、様々な視点から映し出せる3Dアニメーションとなります。
2種類の3D機能
After Effectsに標準搭載されている3D(3次元)を表現する機能は、大きく2種類あります。
一つ目が3Dレイヤー。レイヤーを3D空間に配置してアニメーションを作ることができます。
この機能を使うと、通常の2DアニメーションのX軸(左右)・Y軸(上下)の動きに加え、Z軸(前後)の動き(3D空間)が表現できるようになります。厚み情報がない素材(被写体)のまま平面を立体として扱います。
古くからAfter Effectsが得意とするモーショングラフィックス表現のひとつで、平面と立体の表現が交差することで印象的なCGアニメーションを作ることできます。
二つ目がシェイプの押し出し。After Effectsで作成した、文字や図形などのシェイプレイヤーの形状を押し出すことで、厚みを持たせて立体にすることができます。
これらふたつの3D機能を組み合わせることで、様々な3Dアニメーションを作ることができます。では、実際にどんなことができるのか順を追って見ていきましょう。
2Dから3Dへ
はじめに、After Effectsアニメーションの基本形となる2Dアニメーションを見てみましょう。
平面表現となる2Dアニメーションでは、縦横の移動・大きさの変化・横回転が基本的な動きとなります。被写体に回り込んで側面や裏面を見ることはできません。
次に、3Dレイヤーを使った3Dアニメーションを見てみましょう。
3Dレイヤーを使うことで、X /Y/ Zの3次元で動きが作れるようになります。前後の動きと裏面への回転が表現できるようになります。裏面を見ることはできますが、側面に厚みがないのが特徴です。
3Dレイヤーは、3Dレイヤーのボックスにチェックを入れることで有効になります。3Dレイヤーを有効にすると、トランスフォームの設定項目にZ軸の設定項目が追加されます。
3Dレイヤーにすると、カメラとライトを配置することで光学効果が使用できます。
例えば、ライトから受けた光で影を落としたり、カメラの被写界深度で背景をボカしたりといったより奥深い空間表現を作ることができます。
【レイヤー】→【新規】→【カメラ】からカメラが作成できます。カメラの配置を変えることで被写体を映す視点が変わります。また、カメラの位置をアニメーションさせることでカメラワークを作ることもできます。
【レイヤー】→【新規】→【ライト】からライトが作成できます。複数のライトを作成して配置することで3D空間の明るさを作ります。この作例ではポイントライトとアンビエントライトをひとつずつ配置しています。
最後にシェイプの押し出しを使った3Dアニメーションです。
After Effectsのシェイプレイヤーとテキストレイヤーは押し出しで厚みを持たせ、レイヤーを立体にすることができます。この押し出し3Dは、コンポジションのレンダラーを変更することで有効になります。
3Dレイヤーのレイヤープロパティで暗転表示されている【形状オプション】の【レンダラーを変更】をクリックして3Dレンダラーの設定画面を開き、レンダラーを【CINEMA 4D】に変更します。
CINEMA 4Dレンダラーに設定すると、レイヤーの設定項目の【形状オプション】が有効になります。【形状オプション】の【押し出す深さ】の数値を増やしてレイヤーを押し出します。
様々な3D作例
四角・三角・円などの基本的な図形を押し出して立体化。
積み木のように立体形状を組み合わせて作った3D街アニメーションです。ポイントライトで影の向きを作ってカメラを動かすことで、被写体と空間の奥行き感、立体感がより引き立ちます。
シェイプのパスを細かくパーツ分けすることで複雑な立体も作成できます。
複雑な形状のグラフィック作成にはAdobe Illustratorを使うこともおすすめです。
After Effectsのタイムラインにaiデータを配置して、右クリック【作成】から【ベクトルレイヤーからシェイプを作成】でシェイプに変換することで、After Effectsのシェイプとして押し出してアニメーションすることができます。
【マテリアルオプション】を使用することで質感やレイヤー同士の映り込みを表現することもできます。
この作例では、グラフの棒に光沢感を持たせて隣接する棒と床の文字が移り込んでいます。カメラが移動する際に映り込みも変化するので、よりリアルな3D演出を表現することができます。
このようにAfter Effectsだけでも様々な3Dアニメーションを作ることができるので、実際にチャレンジしてみてください。
(取材協力:川原健太郎)