プロフィール写真の撮り方
個人でもなにかを発信する機会が増えています。そこで必要になってくるのが、自分はこんな人であることを表すプロフィール写真(顔写真)です。証明写真や一般的なポートレートとは何が違うのでしょうか。
フォトグラファーとして活躍中の高木慎平さんに、服装選び、ヘアメイクの仕方といった、プロフィール写真ならではの撮影のコツを聞きました。
ヘアメイク:脇田直弥
プロフィール写真撮影の流れ
プロフィール写真を撮影するには、事前打ち合わせから撮影時間の確保まで、撮影の流れを考えることが重要です。
誰のための写真なのかを意識する
[プロフィール写真を使うのは誰でしょう?]
一般的な写真であれば、そのほとんどは、撮影した人自身が使う/公表することになります。商業目的であれば、依頼した媒体や企業が使います。自分の写真を撮ってもらう場合、その多くは自分や家族、近しい人で見る目的になります。
一方で、プロフィール写真は、写真を撮って欲しいと依頼した人が公表するために利用します。この「撮られた本人が使う写真」というのが、プロフィール写真では重要なのです。
相手が望むイメージを、事前に打ち合わせする
高木さんは、中日美容専門学校の依頼で、学生の作品を撮影しています。ヘアメイクを学んでいる学生の作品で、友人などにモデルを頼み、自分が用意した服を着せ、髪をセットし、化粧を施した姿を写しています。
どういう写真にしたいか決めるのは、ヘアメイクなどを学んでいる学生です。なにを表現したいのか、見せたいのかは制作したその学生にしか分かりません。
まず、そのモデルに施したヘアメイクや服装は何をイメージしたのかを、聞くそうです。
「どういう意図があるのか」
「力を入れたのはどこか」
「お気に入りはどこか」
「なにを表現したのか」
など聞くそうです。これはプロフィール写真でも同じです。
メイクを施した人が主体であるか、撮影される人が主体であるかという違いはありますが、
「どんな目的で使うのか」
「どういうイメージで写して欲しいと思っているのか」
「自分のどこをアピールしたいのか」
といったことを正しく理解して撮影しましょう。
写真は撮る側の表現手段でもありますが、撮ったものを本人が使うプロフィール写真では、本人の意向こそが重要です。撮影後にイメージと違ったということにならないようにしたいものです。
もし、時間があれば事前の打ち合わせで、時間がなくてもできるだけ相手が望んでいるイメージを理解するようにしておきたいものです。
ヘアメイク:田中海来
アシスタントをアサインして、撮影時間を確保する
高木さんが学生の作品(モデル)を撮るとき、一人当たりにかけられる時間が短いため、手際よく撮影を進める必要があるそうです。
当然、学生ごとに異なるイメージによってライティングは異なりますから、素早く変更できるようにしておく必要があります。単色のバック紙での撮影であっても、その変更に時間はかけられません。
実際の撮影時間を確保するには、そうしたセットの変更を短時間で済ませる必要があり、アシスタントの存在は不可欠です。
もちろん、セットを組むための指示は的確でなければなりません。あれこれやり直していては、時間ばかりが過ぎてしまいます。一瞬の判断が必要になります。
高木さんは、できるだけ海外のファッション誌などを見るようにして、判断力を鍛えているそうです。色々な写真を見ることで、メイクや服装に応じてどんなライティングや背景が合うか、分かるようになるそうです。
もちろん、漫然と見るだけではダメで、その写真がどのようなライティングで撮られているのか、ハイライトや影の出方を想像することが大切です。
ヘアメイク:合戸萌愛
撮影機材を準備しておく
事前にイメージを聞ければいいのですが、それができなければ、できるだけイメージに沿った撮影ができるような撮影機材を準備しておくことが必要です。
ある程度機材は絞る
あれもこれも用意するのは大変ですから、ある程度は絞ることが必要です。
高木さんは、時間が短く、次々撮影しなければならないためシンプルにしているそうです。
しかし、それでもモノブロック2灯、LEDライト、カポックといったライティングに必要なもの、ストロボ/ライトに付ける各種カラーフィルター、レンズにつけるクロスフィルターなどは用意しているそうです。
ソフトフィルターなどを用意しておく
ブラックミスをはじめとする、ソフトフィルターなどを用意しておいてもよいでしょう。鏡もライティングの補助としてだけでなく、写り込ませるなどすることで、アクセントとして使えます。
ヘアメイク:後藤真広
ヘアメイク:森瑠菜
一般人の表情を引き出すコツ
プロフィール写真を撮って欲しいと依頼してきた人が、プロのモデルやタレントのように、撮影に慣れていればいいのですが、ほとんどの場合はそうではありません。
高木さんが学生の作品として撮影するときも、学生の友人などプロではないことがほとんどのようです。多くの人は、プロのカメラマンに撮影されるのは初めてです。簡単には表情は作れません。上手に表情を引き出すことが必要です。
角度を探す
もちろん、作品としての撮影なので、学生から聞いた髪型やメイクの特徴や力を入れた部分を生かしつつも、女性であればその人が可愛く見える角度を探していくそうです。
気分をのせる言葉をかける
気分をのせていくことも大切。撮影しながら、「可愛い」や「素敵」モデルがうれしくなる言葉をたくさんかけていくそうです。
被写体が男性であれば「かっこいい」「渋い」など言葉をかけてもいいでしょう。高木さんは、撮影しながらも口は止めないそうです。
表情を引き出す
続いて、表情を引き出していきます。初めは照れてニヤニヤしてしまう人も多いようで、その照れを切り替えてもらうために
「真顔で」
「カメラを睨んでみて」
「死んだ目をしてみて」
といったように頼んでみるとそうです。もちろん、一発で決まることはないのですが、そうしたやりとりの中で最適な表情を探っていきます。
目線を調整する
特に目線は大切です。目の力は写真の強さに直結します。顔の角度との相性を考えながら、バランスをとっていくことになります。
必ずしもカメラに目線があればいいわけではありません。高木さんも、上のほうを見てもらったり、目を細めてもらったりするそうです。
その際、顔の角度に比べて目線が上のほうになると、白目がちになるので、その際は少し下を見てもらう、といった調整をしていきます。
ヘアメイク:藤原陽和
ヘアメイク:新家七果
なお、視線をカメラから外したポートレートは、単に目の向きを指示しただけでは、中途半端な視線になりがちです。具体的にどこを見てもらうのか指示したほうがよいでしょう。
会話をしながら撮影する
若い女性であれば可愛さも必要ですが、そればかりではありません。会話をしつつも、撮影しながら様々な表情をしてもらうことで、その人に最適なバランスを探っていきます。
明確な指示を出す
たった一回の撮影かもしれませんが、それがその後の自信に繋がってくれればいいと高木さんは考えています。そのため、不安につながるような曖昧な指示は避けています。
「決めた顔をしてみて」
と言っても、どうしていいか分からない人も多いようで、そんなときは
「この角度が絶対カッコイイ」
と言い切るそうです。照れや不安があっても、そこまでいうならやってみようかなと思うことが大半のようです。
色々な表情をしてもらって引き出すしつつも、相手に不安にさせない明確な指示を出していきたいものです。
ヘアメイク:小林友香
ワンランク上のプロフィール写真を撮るコツ
せっかくの撮影なので、カメラマンにしか撮れない、ワンランク上の写真にすしたいものです。いくつかのコツをご3紹介します。
シンプルな背景にする
プロフィール写真であれば、シンプルな背景のほうが使いやすいといえます。
背景の色は白がシンプルで使いやすいものの、白といっても濃淡があります。その人の表情やメイク、服装とのバランスを考えて選びたいものです。ちなみに、服装や髪の色から、一色抜き出して選ぶとバランスがとりやすくなります。
シンプルなライティングを心がける
自然光での撮影もいいのですが、太陽の位置の変化による影の出方や、背景の処理やなどを考えると、やはりフラッシュなどの照明機材を使った方が、出来映えも効率もよくなります。
高木さんは、短時間で撮らなければならないということもありますが、シンプルならライティングを心掛けていると言います。
加えて、順光で当てると肌がきれいで可愛く写せるそうです。顔に影が出ると、可愛さが失われることもあるので、注意が必要です。
一方で、なんでもかんでも影を消すことに注力するのではなく、ときには影を生かした撮影、あえて影をつけて遊ぶことも高木さんはしているそうです。
ヘアメイク:加藤寿々穂
ヘアメイク、服装選びが重要
プロフィール写真では、その人らしさが大切ですが、それは必ずしも何もしない素の普段通りを撮ればいいわけではありません。高木さんは過去に屋外でノーメイク、普段着という方の撮影をしたことがあるそうですが、非常に難しかったそうです。
もちろん、そうした自然な雰囲気を生かしたプロフィール写真もありますが、屋外では背景の中にいる人という印象がどうしても出てしまいますし、その人をアピールする写真にするには髪型や化粧、服装もまた重要になってきます。
男女問わず、ヘアメイク(髪型と化粧)を施すことでパワーアップすると高木さんは言います。撮影だけでカバーするのにも限界があります。
プラスアルファを施したうえで、カメラマンの力が加わることで、よりよい人物写真になります。プロフィール写真では相手の希望が第一ですが、期待を上回る写真にすることも大切なのです。
ヘアメイク:日比野葵
ヘアメイク:大栗海斗