豊かな表情、感情表現の描き方【笑顔・泣き顔・怒った顔・困った顔・驚いた顔】
表情は、漫画やイラストに描かれた人物の感情を他者に伝える働きがあります。喜怒哀楽をはじめとする多種多様な表情があり、その描き方もさまざまです。
今回は、眉や口の動きなどを中心にした表情の描き方の基本と、「笑顔」「泣き顔」「怒った顔」「困った顔」「驚いた顔」といった具体的な表情の描き方の例を解説します。
表情を構成する重要な顔のパーツは眉・目・口
顔にあるパーツのうち、表情を構成する重要なものとして、眉、目、口が挙げられます。
図の3つ並んだ顔のイラストのうち、中央が特に感情を表していないフラットな状態の表情、左がかすかな笑顔、右がかすかな泣き顔です。
眉や目、口の形や角度がほんの少し変わるだけで、表情から伝わるイメージが変化します。
表情を形づくるのは骨と筋肉の動き
表情は顔の表面にあらわれますが、表情を形づくるのは皮膚の下にある骨と筋肉の動きです。
口を閉じたり大きく開けたりする顎の骨の動きはわかりやすいですが、たとえば、眉が吊り上がったり下がったりするのは額から眉にかけての筋肉、中央に寄るのは眉間にある筋肉が関わっています。
また、にっこり笑った時など口が横に広がり口角が上がるのは、頬骨のあたりから口の周囲にかけての筋肉が関わっています。
記号的に眉や目、口の形や角度を変えるだけでも、笑顔や泣き顔といった表情を描くことはできますが、骨や筋肉の動き意識して描くと、より説得力のある表情につながります。
実際に鏡で自分の顔を見ながら表情を変えていき、手で触れて筋肉がどのように動くのかを確認してみましょう。
笑顔の描き方
笑顔の描き方を紹介します。笑顔の基本パターンを知る、角度や表情を変える、年齢による笑顔の特徴を描くことなどがポイントです。
笑顔の基本パターンを知る
笑顔の基本は、眉がやや下がって目と近くなること、下瞼が上がって目そのものの形がアーモンド形から上にふくらみを持つ三日月形に近くなること、口の両端が左右に広がり口角が上がることです。
笑顔の度合いで角度を変化させる
かすかな笑顔を描く場合には、眉や目、口の形や角度の変化も少なくします。
笑顔の度合いが強くなるに従って、歯が見えるくらい口が左右に開いたり、笑い声をたてるために口が上下にも開いたりするようになります。
3つ並んだ顔のイラストのうち、左は基本の表情、中央はかすかな笑顔、右ははっきりとした笑顔です。
子どもは頬のふくらみ、老人はシワを描く
笑顔になると、頬の筋肉が引き上げられるため、子どもなどふっくらとした頬の人物の場合は、頬のふくらみがより目立つようになります。老人など顔にシワがある人物の場合はシワが深くなり、新たなシワがあらわれることもあります。
涙、咳き込み、頬の紅潮など表情の変化を加える
また、大きな声で笑うなど強い笑いが続くと、涙腺が刺激されて涙が浮かんだり、喉や呼吸器に負荷がかかって咳き込んだり、血行がよくなって頬が紅潮したりといった、新たな変化が表情に加わります。
つくり笑顔は基本を外して不自然な笑顔にする
一方、「つくり笑顔」などの場合は、たとえば口角の片方だけが上がっている、口角が上がっているが目や眉に変化はない、といった、あえて基本を外した描き方をすることで、不自然な笑顔であることを表現することができます。
泣き顔の描き方
泣き顔の描き方を紹介します。涙を流すか、眉尻や口角の変化などを意識することがポイントです。
涙を流す
泣き顔を描く場合は、涙を流すという具体的な要素を加えることでわかりやすく表現することができます。
眉尻・目尻、口角などの表情も変化させる
ただ、涙を流すほどの強い悲しみを、涙だけで表現するとちぐはぐになってしまいます。眉尻や目尻が下がる、口角が下がり口は「へ」の字形になるなど、表情も変化させましょう。
ためる涙かあふれる涙かを考える
2つ並んだ顔のイラストのうち、左は涙が浮かんでいるくらいのかすかな泣き顔、右は涙を流している泣き顔です。涙がたまることで目がうるみ、あふれた涙は通常目尻からこぼれ落ち頬の膨らみに沿って流れます。
口の開閉を意識する
声を上げて泣く場合は、大きく口を開けて「わんわん泣く」という子供のような泣き方や、口はあまり大きく開けず嗚咽を漏らす泣き方などがあります。
くしゃくしゃな泣き顔にするのも手
涙を堪えようとして目の周囲の筋肉などに力が入り、くしゃくしゃになった顔も泣き顔の一種です。
怒った顔の描き方
怒った顔の描き方を紹介します。眉の吊り上がり、口元や赤い顔などで怒りを表現することがポイントです。
眉は直線的に吊り上がる
怒った顔を描く時に、一番のポイントとなるのは眉です。怒った顔の場合は、眉間の筋肉に力が入った結果、眉間にシワが寄り、眉頭が下がります。
眉間だけでなく額の筋肉にも力が入って上に引っ張られるため、眉尻が大きく吊り上がります。こめかあたりに血管が浮き出ることもあり、それを漫画的に表現したものが、いわゆる「怒りマーク」と呼ばれるものです。
口元でも怒りを表現する
口元は「へ」の字に下がったり、歯を食いしばったりと、いずれも口の周りの筋肉に力が入った状態になっています。
赤い顔や涙でも怒りを表現する
怒りによって顔が赤くなる場合や、涙が浮かぶ場合もあります。怒りで浮かんだ涙は、目頭が下がり気味になっているため、泣き顔の涙とはちがい目頭にたまります。
力が入るので顔のパーツが寄る
怒ることで下の画像の部分に特に力が入るので顔の各パーツが寄ります。
困った顔の描き方
困った顔の描き方を紹介します。眉や視線や口角で困った顔を演出するように描きましょう。
眉は平行やハの字になる
困った顔を描く時も一番のポイントとなるのは眉です。困った顔の場合は、眉間にやや力が入りますが、眉尻が下がるため左右の眉が「ハ」の字のようになります。
伏し目がち、視線を逸らす
目は伏せたり、逸らしたりするほか、困っていることを訴えたい相手がいる場合は、そちらに視線を向けることもあります。
口角を下げて困った顔を表現する
口は口角が下がって「へ」の字になるほか、強く引きむすんだり、軽く口を開きため息をついたりといったバリエーションがあります。
驚いた顔の描き方
驚いた顔の描き方を紹介します。 驚きの内容で表情パターンを変える、眉や黒目や口で驚きを表現しましょう。
驚きの内容で表情パターンを変える
驚いた顔、いわゆる「びっくり顔」は、どんな内容に対して驚いたかによって、表情のパターンはさまざまです。
うれしい驚きなら笑顔の要素、恐怖をともなう驚きなら泣き顔や怒り顔の要素などが加わります。
引き上げられた眉と見開いた目にする
びっくりした最初の瞬間や、軽い驚きの場合は、シンプルに引き上げられた眉と見開いた目で表現できます。
黒目を小さく描く
目が大きく開いていることを強調するため、黒目の部分を小さく描く場合もあります。漫画的な例えで「目が点になる」というびっくり顔の表現です。
口で驚きを表現する
びっくりした時に、咄嗟に息を飲む場合は口を閉じて口の幅も狭くなります。咄嗟に声を上げる場合は、口は左右に開きます。声の大きさに応じて口を大きく開けて表現する方法があります。
いわゆる「ポカンとする」びっくり顔の場合は、声を上げる場合に比べて口の周囲には力が入らず、口は上下に開きます。
大げさな瞬きで驚きを表現する
パチパチと大げさに瞬きする動作で、驚きをあらわすこともあります。
(作画・取材協力:Saku.U)