デフォルメされた“ちびキャラ”の描き方
ちびキャラ、ミニキャラとは、もとのキャラクターの特徴を残して変形(デフォルメ)させたキャラクターのことです。おもに頭身を2頭身や3頭身にしたキャラクターを指し、デフォルメキャラとも呼ばれます。デフォルメキャラは、可愛さやシンプルさが大きな特徴で、キャラクターグッズ化やギャグ漫画化など幅広い目的で作成されます。
今回は、キャラクターの個性を生かした、デフォルメキャラクターの描き方の基本と、顔を描くときのポイント、身体をうまくデフォルメしていくコツを紹介します。
キャラクターの頭身とは
頭身とは、身長が頭部(頭頂からあご先まで)の長さのいくつ分に相当するかをいう場合に使われる言葉です。人間の頭部は、身体のほかの部分に比べて成長による大きさの変化が少ないため、一般的に子どもの頭身の数値は小さく、大人の頭身の数値は大きくなります。個人差などもありますが、大体1歳児は4頭身、2〜4歳児は5頭身、成人は7〜8頭身と言われています。
図は8頭身の女性を描いたイラストです。
漫画やイラストなどで描かれる人物は、身長の高さや足の長さといったプロポーションにデフォルメが加わり、中高生でも8頭身以上で描かれる場合や、逆に成人でも6頭身程度で描かれる場合もあります。
いずれも場合も、ミニキャラやちびキャラ、SDキャラといったデフォルメキャラにするためには、もとのキャラクターの頭身から大きく変化するため、バランスをよくしたり、キャラクターの特徴を生かしたりするには工夫が必要です。
デフォルメキャラクターのバランス
デフォルメキャラクターは、多くが2〜3頭身で描かれます。
ミニキャラやちびキャラのほか、2頭身以下や1頭身とも言える球体や立方体にキャラクターを差別化する表情などの要素を加えたものを、SDキャラ(スーパーデフォルメキャラ)と呼ぶ場合もありますが、呼び方に具体的な区分けの定義はありません。
また、もとになる特定のキャラクターがない場合でも、実際の人間や動物などを大きくデフォルメしたという意味で、4コマ漫画などに登場するキャラクターをデフォルメキャラと呼ぶ場合もあります。
図は8頭身、6頭身、2.5頭身のキャラクターを並べたものです。このように、全身を描いた場合、頭身の数値が低いほど顔の部分が大きくなり、キャラクターごとの特徴や表情などがわかりやすくなります。このため、ゲームのキャラクターなどの場合は、5〜6頭身くらいでキャラクターをデザインすることもあります。
前述のように、現実では子どもの方が頭身の数値が低く、成長して身長が伸びるにつれて頭身の数値が高くなります。しかし、ミニキャラやちびキャラ、SDキャラは、こうした身体的な差異が均一化されるため、顔や身体のパーツが描き分けのポイントになります。
デフォルメキャラの顔の描き方
デフォルメキャラの顔はどのように描けばよいでしょうか。絵柄にもよりますが、ミニキャラやちびキャラ、SDキャラの可愛さを出すには、頭身の数値が低くなるのに合わせ、丸みを強くし、線はシンプルにしていきましょう。
顔の輪郭は、全体的に横幅を広げ、縦長の楕円から円形や台形に近づけていきます。顎などのとがった部分はなくし、丸みを意識します。
目鼻など顔のパーツの配置は下に移動させ、顔全体の大きさに対して、目の比率は大きくします。このとき、つり目やたれ目といった目のかたちや眉のかたち、まつ毛といったキャラクターの特徴となる部分は、しっかり残しましょう。やや強調すると、よりわかりやすくなります。
鼻は低く、場合によっては省略しましょう。口は小さくなりすぎると表情が出しづらくなるため、目とともに顔全体の大きさに対して大きめにしておくと表情のバリエーションが豊かになります。
顔が下方に配置されるため、頭部の比率が増します。そのため、髪のボリュームがアップします。顔と同様に線はシンプルにするため、髪のまとまりを大きくし、細かい髪の流れなどは省略します。ポイントは髪の分け目とサイドの髪です。髪のボリュームが変化しても、髪の分け目の左右バランスと、耳が出ているのか隠れているのかといったサイドの髪の処理は、もとのキャラクターと揃えるようにしましょう。
デフォルメキャラの身体・ポーズの描き方
身体は、頭身の数値が低くなるほどデフォルメが強くなります。いわゆる幼児体型のようにふっくらと丸みがつくパターン、身体はスマートなバランスを保ったまま小さくなるパターン、高さが圧縮されて手足が短くなるパターンなどがあります。また、球体や立方体など、極端にデフォルメされたタイプのSDキャラであれば、手足が省略されている場合もあります。
かわいさを強調する場合は、実際の人間の身体にある凹凸を省略し、全体的に丸みをつけましょう。
首は短くするか省略します。マッチョキャラ等、筋肉がキャラの特徴である場合をのぞいて、男女ともに肩幅をせばめ、なで肩にします。また、手なども短くしたほうが、かわいさが増します。
また、身体の凹凸が省略され、手足が短くなるため、ミニキャラやちびキャラ、SDキャラにポーズをつける場合には、通常の頭身のキャラクターよりも誇張する必要があります。
通常の頭身のキャラクターでは重心のバランスなども考えて、現実的に可能なポーズのほうが自然ですが、ミニキャラやちびキャラ、SDキャラの場合は、可愛さやわかりやすさを優先したほうがうまく仕上がります。
たとえば、驚きを表すポーズとして手足をほぼ水平に広げ身長より高く飛び上ったり、喜びを表すポーズとして身体を傾けたまま片足でくるくると回転したり、悲しみを表すポーズとして寝転がって手足をバタつかせながら噴水のような涙をまき散らすといった、大袈裟な感情表現を用います。
動物のデフォルメキャラの描き方
動物をもとにしたデフォルメキャラの場合は、擬人化によって直立二足歩行など、もとの動物と大きく変化する部分もありますが、身体のパーツに動物の要素を残すことで、キャラクターの個性がわかりやすくなります。
4コマまんが「どうぶつ自衛隊」(漫画:フカキショウコ)より/カラカル隊員、うさぎ隊員、チュー隊長、たぬき隊員
上図の動物キャラクターは、カラカル(食肉目ネコ科)、ウサギ、ネズミ、タヌキをもとにしています。耳のかたちや大きさ、尻尾のほか、体毛の色などによって差別化をしているのがわかります。
人間のデフォルメキャラと同じように、顔や身体を丸くし、手足を短くすることで、よりかわいくなります。
人間以外の動物をデフォルメキャラにする場合は、デフォルメの度合いが高いぶん、より自由度の高いキャラクターの造形にチャレンジできます。
(作画・取材協力:フカキ ショウコ)