名刺デザイン・作成の副業を始める方法―未経験からスキルアップするヒント―
オンラインによるコミュニケーション手段が広がった現在。ビジネスシーンにおいて、名刺の需要は低くなっていると考える人も多いでしょう。しかし、近年では副業(複業)で多様な活動をする人が増えていることから、個人による名刺のニーズが高まってきています。
さらにウィズコロナ時代では、人に直接会う機会が貴重になったからこそ、印象に残りやすい名刺を作りたいという考え方も出てきました。このような背景から、名刺のデザインや作成ができるクリエイターは、まだまだ世間に求められているといえます。
今回はクリエイティブ分野の副業事情に詳しい、株式会社クラウドワークスの眞道祐介さんに取材。専門家の知見をもとに、名刺デザイン・作成の副業を始めるにあたって、必要なツールや気になる単価、スキルアップの方法までご紹介します。
目次
初心者でもチャレンジでき、在宅で取り組みやすい副業
グラフィックデザインの数あるジャンルの中でも、名刺はデザインする面積が小さく、掲載する要素が限定的なため、比較的に初心者でも取り組みやすいといえます。特にクライアント(発注者)側がロゴといった素材をあらかじめ用意している案件は、難易度が低く未経験の人もチャレンジしやすいでしょう。
また、今はテキストベースのやり取りが主流で、場所を問わず作業をしやすくなっています。作業に必要なものも少なく、在宅で取り組みやすい点でも、名刺デザイン・作成は副業に向いているといえます。
名刺デザインはチラシやパンフレットといった、より自由度が高いデザインにもステップアップしやすいのも魅力。初心者にはうってつけのジャンルといえます。
名刺作成を副業にするため必要な4つのスキル
では、実際に名刺デザイン・作成を副業にするには、どういったスキルが必要になるのでしょうか。以下にて4つのスキルを解説します。
デザインの基本的な知識
名刺において重要なのは、どのような仕事をしている人なのかすぐに伝わること。そうした名刺を作るためには、限られたスペースに必要な項目を見やすくレイアウトするスキルが求められます。フォントの種類や文字の大きさ、余白の取り方、色の使い方といったデザインの基礎知識は必須と言えるでしょう。
デザインの基礎知識については、アドビのオンラインコンテンツ「デザインのいろは」でも解説しています。こちらを参考としつつ、デザインの基礎づくりをしていきましょう。
デザインソフトを使いこなす力
名刺のデザインを作成するAdobe Illustratorといったグラフィックデザインソフト、写真の切り抜きや加工ができるAdobe Photoshopといった画像編集ソフトを使いこなせるスキルも必要です。必ずしもすべての機能を使いこなせなくてもいいですが、知っている機能が多いほどできることの幅が広がり、獲得案件増や単価増につながるでしょう。
ヒアリング能力
名刺にどのようなことを載せたいのかはもちろん、その中でも重要な情報はどれなのか、渡す対象は誰なのか、相手にどんな印象を与えたいのかなどを聞き出すことも、名刺作成において大切なプロセスです。相手が具体的な言葉にできない場合でも、会話の中から思いを引き出したり、サンプルデザインを見せたりしながら探っていく工夫が重要です。
プラスアルファの提案スキル
名刺作成はデータ納品で完了する案件が多いですが、最終的に名刺は紙に印刷して使用するもの。そのため、印刷のことまで考慮したフォローができるとクライアントに喜ばれ、信頼の獲得につながります。
特に印刷に詳しくないクライアントの場合、紙の種類や印刷の方法までアドバイスできると頼りにされ、次の依頼にもつながりやすくなるでしょう。また、将来的に内容の修正や更新が必要になった場合のサポートについても案内しておくと、リピート依頼も期待できます。
デザインの発注に慣れてないクライアントに対して、噛み砕いた説明や先回りのアドバイスができるコミュニケーションスキルも、名刺作成の副業で大いに役立ちます。
パソコンとデザインソフトがあればスタート可能
基本的にはIllustratorやPhotoshopといったソフトをパソコンにダウンロードしておけば、名刺のデザインや作成は可能です。さらに手描きのロゴやイラストを載せた名刺を作りたい人は、タブレットやタッチペンもあると便利でしょう。
また、最近ではスマホで名刺デザインができるアプリケーションもあります。例えば、Adobe Sparkには豊富なテンプレートを活用しながら、手軽におしゃれな名刺を作成できるモバイルアプリがあります。
アドビのオンラインコンテンツ「Adobeの名刺デザイン&作成ソフト」では、IllustratorとSparkにおける名刺デザインに役立つ機能をご紹介しています。こちらもぜひご参照ください。
名刺デザイン案件の単価相場
名刺のデザインや作成を副業にすると、どれくらいの収入が得られるのかは気になるところでしょう。例えば、クラウドワークスでは、2021年時点での名刺デザイン案件の単価相場は2万円からとなっています。
ただし、クライアントが用意した素材を組み合わせるだけの簡易な案件であれば、数千円のものもあります。必要な手間や求められる技術力で単価が変わってくるため、単価を上げるにはスキルアップが求められます。
より単価の高い案件を獲得するには、名刺に限らず優れたデザインを吸収する、流行のデザインにアンテナを張るといった、技術や知識をアップデートすることでデザイナーとしての価値を上げるのがポイントです。
名刺デザインで副業収入をアップする方法
では、名刺デザイン・作成の副業収入を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。売り上げや単価をアップさせるコツを紹介します。
ポートフォリオを充実させて案件数増を狙う
クライアントにとって、そのデザイナーがこれまでどんなデザインを手がけてきたのかは発注を決めるにあたって重要なポイントです。
そのため、ポートフォリオにある程度の数の作品が掲載されていることは売り上げアップを目指すにあたってマストといえます。Adobe Portofolioのような、ポートフォリオサイトも活用しましょう。
多くのクラウドソーシングサイトでは、「コンペ形式」の案件があります。これはクライアントがデザイン案を募集し、集まった作品の中から優れたもののみを採用する案件です。中でも、クラウドワークスのコンペ形式にて提案した作品は、クラウドワークス上のポートフォリオに掲載されます。そのため、実績が少ない人は多くの案件に取り組むとよいでしょう。
高度な技術や幅広いスキルを身に着けて単価を上げる
与えられた素材を組み合わせるだけでなく、クライアントの思いや世界観を汲み取ってデザインに落とし込む表現力や提案力の要求される案件は、比較的に単価が高くなる傾向にあります。
また、「名刺と一緒にロゴも発注したい」「名刺に載せるイラストも描いてほしい」といった複合的な案件もあるため、名刺以外のデザインやイラスト作成の技術を磨くことでも単価アップにつなげられるでしょう。
名刺入稿まで対応することで単価を上げる
名刺のデザインだけでなく入稿と印刷、発送まで請け負うことで、工数が増えるぶん単価を上げることができます。依頼を受けた場合は、印刷会社に支払う印刷代金や送料だけでなく、入稿データ作成や用紙の選定の手間によるコストを考慮し、単価設定をしましょう。
自分がデザインした名刺に「営業」してもらう
仕事としてクライアントの名刺作成に力を注ぐだけでなく、自分自身の名刺もこだわって作り、持ち歩きましょう。名刺交換の際に「素敵ですね」「誰がデザインしたのですか?」と言われたらチャンス。名刺デザインや作成を副業で承っていることを伝えておくと、必要なときに思い出してもらえるきっかけになり、将来の受注につながることが期待できます。
未経験から名刺デザインを勉強する方法
名刺のデザインや作成ができるようになるための勉強方法には、どのようなものがあるのでしょうか。代表的な3つの方法をご紹介します。
たくさんの優れた名刺デザインを見る
良い名刺を作成できるようになるには、多くの良いデザインを知ることが大切です。写真共有アプリなどで良いと思う名刺の画像をピックアップし、なぜそれを良いと感じるのかを自分なりに言語化、理論化してみましょう。
そのトレーニングを積み重ねることで、自分が作りたいイメージや与えたい印象から逆算して、デザインを考えられるようになっていきます。
デザインに求められるのはセンスではなく、課題解決力です。なぜそのデザインにするのか論理的に考えて、言語化する習慣を身につけることが何より大事。
オンライン上のコンテンツで学ぶ
何から着手していいかわからないという人は、オンライン上のコンテンツを参考に、まずは自分自身の名刺から作ってみるのもおすすめ。
例えば、「初めましては名刺から Illustratorでオリジナルの名刺をつくろう!」では、一つの名刺を完成させるプロセスを通してIllustratorの基本的な使い方を習得できます。こうした制作の体験を通して、自分が一つの名刺を完成させるのにかかる時間の目安を知っておくことも大切です。
慣れてきたら「Illustrator入門ガイド 名刺を作ろう(文字をスタンプ風に加工する方法)」などを参考にしながら、さまざまな加工の仕方を覚えていきましょう。表現の幅が広がって、多様なクライアントのニーズに対応しやすくなります。
名刺作成から副業クリエイターの一歩を踏み出そう
デザインの分野で副業を始めたい人にも取り組みやすい名刺作成。将来はチラシやポスター、ロゴ作成といった仕事の幅を広げたいという人にもマッチしています。
世界中のクリエイターに使われているIllustratorやPhotoshopは、本格的なプロユース製品でありながら、初心者でも始めやすい機能や学べるコンテンツが充実しています。これらを活用しながら名刺デザインにチャレンジし、副業クリエイターとしての一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。
--
取材協力:眞道祐介(しんどう・ゆうすけ)
株式会社クラウドワークス・社長室ワーカーエクスペリエンスチーム。地方創生担当として、地域パートナーや自治体と連携してクラウドソーシングの普及促進・ワーカー育成に携わりながら、ワーカー育成のナレッジをもとに、2020年5月にクラウドカレッジを開校。クラウドワークスに登録するユーザーを対象に、スキルアッププログラムの開発・運営を行う。また本業の傍ら副業として株式会社Naegiにてクリエイティブ制作に携わっている。
--
(取材・執筆:北村朱里 編集:ノオト)
そのほか、アドビ「いろは」シリーズでは、クリエイティブ初心者向けの動画コンテンツを提供。「無料オンライン講座 : デザイナーじゃないけど、『いい名刺をデザイン』したい! 〜 つくる流れと考えかた 〜」といった実践的なコンテンツもありますので、ぜひご活用ください。
オンラインスクールを活用する
例えば、クラウドワークスが運営する自分らしい働き方の実現をサポートするオンラインの学びの場。同サービスでは、デザインソフトに触れるのが初めてでもIllustratorなどのアドビソフトを学べるコースを開講しています。
関連記事
バナー作成で副業を始める方法
webデザインの分野の中でも、バナー作成は初心者にも取り組みやすい、人気の副業の1つ。専門家の知見をもとに、バナー作成の副業を始めるにあたって、必要なツールや未経験者に適した案件の選び方まで、バナー作成の副業に役立つ方法をご紹介します。
イラスト作成の副業を始める方法―好きなことで収入を得るには—
絵を描くことが好きな人は、「いつかイラスト作成を仕事にしたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。イラストを副業にするために必要なスキルやツール、気になる単価の話までご紹介します。
ロゴデザインの副業を始める方法
クライアント(発注者)の理念や思いが伝わるロゴを作成するには、デザインの腕だけでなくさまざまな能力が必要です。専門家の知見をもとに、ロゴデザインの副業を始めるために必要なスキルの身に付け方、揃えておきたいツールや単価アップのコツを解説します。