デザインの副業を始めるには―未経験から活躍する方法―
政府による働き方改革の推進などを背景に、副業というワークスタイルが注目されるようになりました。中でもデザインの分野は、パソコンなどのデジタルツールや通信環境があれば在宅で行える 、本業にも生かせるスキルが身に付くといった理由から人気を集めています。
今回は、クリエイティブ分野の副業事情に詳しい株式会社クラウドワークスの眞道祐介さんにお話を聞きました。専門家の知見を踏まえて、デザインの副業に必要なスキル、仕事の種類、相場単価や収入アップの方法を紹介します。
目次
デザインが副業に向いている理由
デザインの仕事は初心者・経験者問わず、副業がしやすいジャンルです。その大きな理由の1つとして需要が高く、案件が豊富にあることが挙げられます。日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」には、デザインの案件(ロゴ・印刷物・キャラクターなど)が約27,000件、ホームページ制作・webデザインの案件は約12,000件が掲載されています(2021年8月26日現在)。
また、デザインは案件数が多いだけでなく、種類が多岐に渡るのもポイント。絵が得意であればロゴやキャラクターの作成、インターネットの知識が豊富であればwebデザインというように、自分のスキルに合った案件を選べます。
【眞道】
そのほか、限られたリソースでも取り組みやすい単発の案件が多いことも、副業で行いやすい理由といえます。
初心者でもできる案件・できない案件
デザインの仕事の中には、初心者でも取り組みやすい案件と、経験者でなければ難しい案件があります。
未経験の方におすすめなのは、デザインの素材がクライアントに用意されている案件、クライアントがデザイナーへの発注に慣れている案件、納期に余裕がある案件です。一から図形を描画したり、専門的なことを噛み砕いて説明したりすることが求められないため、デザインの仕事に慣れていない人でも無理なく取り組めるでしょう。
逆に、描画や彩色の高い技術が必要な案件、デザイン発注に不慣れなクライアントの案件、スピードとクオリティの両立が求められるタイトな納期の案件などは、ある程度の経験を積んでからチャレンジするのが無難です。
【眞道】
名刺やショップカードなどデザインする面積が小さいものも、初心者でもトライしやすいといえます。そこからチラシ、ポスターなど徐々に大きなものへとステップアップしていくとよいでしょう。
デザイン案件の種類と単価
デザインの仕事にはどのような種類があるのでしょうか。具体的なジャンルとクラウドワークスでの単価相場(2021年時点)を紹介します。
Webデザイン
Webサイトのデザインやコーディング、バナー作成などを行う仕事です。
<クラウドワークスの単価相場>
・Webサイト制作…20万円程度
※デザインとコーディング(トップページ・下層ページの計2ページ)の場合
Webサイト制作の副業についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
・Webサイトデザイン…5万円〜
※トップページのデザインのみの場合
・コーディング…3万円〜/ページ ※HTML・CSSコーディング(レスポンシブなし)の場合
・LP(ランディングページ)制作…8万円〜/ページ
※デザイン・コーディング(長さ3000px程度)の場合
・バナー制作・デザイン…5,000円〜
※バナー制作の副業についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
平面・印刷物のデザイン
グラフィックデザインと呼ばれる、主に平面の印刷物に使われるデザイン作成の仕事です。
<クラウドワークスの単価相場> ・ロゴ…2万円~10万円程度
※ロゴ作成の副業についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
・名刺・ショップカード・ポストカード…2万円程度~
※クライアントに素材が用意されている案件であれば数千円のものもあります。
名刺作成の副業についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
・チラシ・ポスター…3万円~5万円程度
【眞道】
そのほかにも多くのクラウドソーシングサービスでは、Adobe Photoshopを使った画像の調整で1枚あたり数百円、ページ数の多い冊子で1件数十万の案件のように 、幅広い案件があります。
立体物・空間のデザイン
製品やパッケージのデザイン、ショップや住居の内装をデザインする仕事もあります。デザインそのものだけでなく、ものづくりや建築といった知見が必要です。
<クラウドワークスの単価相場>
・パッケージデザイン…3万5,000円~十数万円程度
※形状やデザインの複雑さによって単価が変わる傾向にあります。
・インテリアデザイン・プロダクトデザイン…業務の性質上、クライアントとともに打ち合わせを重ねて作り上げていくといったコンサルティングの要素を含むため、見積もりによる固定報酬制や時間単価制になることが多いです。
デザインに必要なツール
続いて、デザインの副業を始めるために揃えるべきツールを紹介します。まずはデザイン作成に必要なソフトをパソコンにダウンロードしましょう。世界中のプロクリエイターに使われているAdobe Illustratorは、デザインの仕事を始めるにあたって必携といえます。
そのほか、画像の加工や編集ができるAdobe Photoshop、ペインティングや描画に便利なAdobe Frescoもあると表現や技術の幅が広がります。手描きの図形やイラストを作成したい人は、タブレット型端末や液晶タブレット、タッチペンも用意するとよいでしょう。
さらにwebの分野にチャレンジしたい人は、サイトのコーディングや管理ができるAdobe Dreamweaverもあると便利です。
身に付けておきたい5つのスキル
続いて、デザインの仕事で求められるスキルや知識を5つに分けて解説します。
デザインのスキルと知識
まず、見やすいレイアウトの作り方、きれいな描画の技術、配色に関するノウハウといったデザインの基本的なスキルや知識を網羅しておく必要があります。その上で、手がけたいジャンルに合わせてwebや印刷などプラスアルファの知識を習得していきましょう。
【眞道】
クラウドソーシングサービスには、名刺+ロゴ、ショップカード+挿絵など、複合的な案件も掲載されています。あえて一つのジャンルに絞らず、多くのスキルを身に付けたほうが受注できる案件の幅が広がります。
トレンドをキャッチする力
デザインは一度勉強したら終わりということはありません。トレンドにアンテナを張り、流行しているデザインを分析するなどして、時代に合ったものが作れるよう常に自分をアップデートしていく必要があります。
【眞道】
企業から案件を受注した場合、webサイトなどを見て、その企業がめざすブランディングや求めるデザインの方向性をつかみ取るリサーチ力も大切です。
コミュニケーション能力
クライアントのニーズに合ったデザインを作っていくには、コミュニケーション能力が重要になります。言われたことを聞き取るだけでなく、自分から問いかけをしたり、参考となるデザインを見せたりしながら、クライアントの本質的な要望を探っていくことが大切です。
【眞道】
「カッコいいものを作ってほしい」「インパクトのあるもの」といった 抽象的なオーダーを受けた場合は、Pinterestなどの画像検索・共有サービスを使うのがおすすめ。クライアントに画像を見せながら、イメージをすり合わせていきましょう。
Webデザインスキル
Webの分野で勝負したい人は、まずwebサイトの構造やレイアウトを支える柱といえるHTMLとCSSの知識を身に付ける必要があります。そのほか、UI・UX、CMSのカスタマイズ、JavaScript(jQuery)といった 知識やスキルもあると、対応できる案件の幅が広がるでしょう。
Webデザインの副業については「webデザイナーの副業を成功させるために必要なスキルとは」も参考にしてください。
印刷や紙の知識
名刺やチラシ、パンフレットといった案件を受注する場合、必要に応じて印刷や紙に関する提案までできると信頼獲得につながります。特に印刷物の制作に慣れていないクライアントには喜ばれるでしょう。
【眞道】
クラウドワークスでも「納品したら終わり」ではなく、その先のことまで考慮したフォローができるワーカーはクライアントから頼りにされ、リピート依頼が来やすい傾向にあります。
未経験からデザインを学ぶ方法はたくさんありますが、以下の方法でデザインを学ぶのがおすすめです。
オンラインコンテンツから学ぶ
未経験からデザインのノウハウを習得するためには、オンラインコンテンツの利用がおすすめです。デザインを行うにあたっての基本的な考え方や進め方のコツをつかむには「デザインのいろは Vol.1デザイン迷子にならないために、最初に整理しておくべきこと」や「デザインのいろは Vol.2全体感をつかんでから、細部を詰める。デザイン制作のダンドリ」が参考になります。
基本が身に付いてきたら、徐々に技術や知識の向上をめざしてみましょう。失敗を防ぐ方法や魅力的なデザインを作るためのテクニックについては「デザインのいろは Vol.3 まずは基本品質を確保せよ。陥りやすいトラップとは」や「デザインのいろはVol.4世界観をつくるのは楽しい。デザインをより良くするためのヒント」をチェックしてみてください。
オンラインスクールから学ぶ
デザイン技術が身に付くのはもちろん、受講生限定のチャットグループやオンラインイベントにも参加できるため、一人で勉強するのは心細いという人にはうってつけです。
【眞道】
未経験からスタートして、現在活躍している副業ワーカーの方もたくさんいます。ある方は、Illustratorを使い始めてから4カ月でクラウドワークスのコンペ形式案件(多くの案の中から優秀なもののみ採用される形式)にチャレンジし、20数件目で初採用。その後、安定的に活動を続けています。すぐに成果が出なくても、諦めずにコツコツ続けると道が開けるでしょう。
技術と表現力を磨き、副業デザイナーとして活躍しよう
デザインの仕事は、努力と工夫次第でどこまでもスキルアップができ、自分の価値を上げることで収入も増やしていけるため、副業として魅力的な分野といえます。アドビ製品を使いこなして技術や表現力を磨き、副業デザイナーとしての活躍をめざしてみてください。
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取材協力:眞道祐介(しんどう・ゆうすけ)
株式会社クラウドワークス・社長室ワーカーエクスペリエンスチーム。地方創生担当として、地域パートナーや自治体と連携してクラウドソーシングの普及促進・ワーカー育成に携わりながら、ワーカー育成のナレッジをもとに、2020年5月にクラウドカレッジを開校。クラウドワークスに登録するユーザーを対象に、スキルアッププログラムの開発・運営を行う。また本業の傍ら副業として株式会社Naegiにてクリエイティブ制作に携わっている。
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取材・執筆:北村朱里 編集:ノオト
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