写真販売を副業にする方法―ライバルに差をつけるコツ ―
作品をストックフォトサイトに登録して、収入を得る「写真販売」。登録から販売まで手軽にでき、自分のペースで始められるため、未経験者でも副業にしやすい分野です。しかし、その分ライバルが多く、すぐに収入を得るのは簡単ではありません。
では、写真販売の副業を成功させるには、どうすればいいのでしょうか。今回は、写真撮影・編集に関する書籍を出版している、フリーランスフォトグラファーの桐生彩希さんに写真販売に必要なスキルやツール、ライバルに差をつけるためのコツを伺いました。
目次
- 写真販売の副業が始めやすい3つの理由
- 写真販売サイトの敷居の低さ
- 自由に撮った写真を収入源にできる
- スマートフォンで撮影した写真もアップ可能
- 写真販売に必要な4つのスキル
- 撮影スキル
- 写真編集スキル
- マーケティングスキル
- 著作権・肖像権の理解
- 写真販売に必要なツール
- カメラとレンズ
- スマートフォン
- ストロボ
- 三脚
- パソコンとディスプレイモニター
- 写真編集ソフト
- 写真販売における収入の目安
- 写真販売の収入を高めるポイント
- 売れている写真を分析する
- 購入者のニーズを考えて撮影する
- 販売写真のタイトルやキーワードにこだわる
- 写真の枚数を増やす
- セルフプロモーションをする
- 未経験から写真撮影の勉強をする方法
- 写真販売の仕事から、副業の世界に踏み出そう
写真販売の副業が始めやすい3つの理由
写真販売の仕事は、初心者でもプロでも始めやすい副業ジャンルです。ここでは、3つの理由をご説明します。
写真販売サイトの敷居の低さ
Webサイトで利用されているさまざまな写真素材。こうした素材はAdobe Stockといったストックフォトサイトから購入されています。クリエイター登録が簡単なサイトが多く、審査にさえ通ればすぐに写真を販売できます。
世界中に公開されるサイトもあり、国内外問わず販売できるのもポイント。サイトによって需要が異なるので、さまざまなサイトに写真を登録することで、収入のチャンスを増やせます。
自由に撮った写真を収入源にできる
現場撮影の場合、クライアントからの依頼内容に基づいて撮影します。カットや時間に制限があるため、一定以上の知識と経験が求められます。
しかし、写真販売の場合は自分のペースで、自分の好きな被写体を撮影できます。そのため、プロだけでなく実績がない初心者も始めやすいでしょう。
過去に撮影した写真も使えるので、仕事のアナザーカットや趣味で撮った写真といった、データの中に眠っている写真から報酬が発生することもポイントです。
スマートフォンで撮影した写真もアップ可能
ストックフォトサイトの審査に通るには、高価な機材が必要だと考える人も少なくないでしょう。しかし、テクノロジーの発達が目覚ましい近年では、スマートフォンカメラで撮影した写真が承認されるケースも増えています。
初心者にはさまざまな機材を揃えるのはハードルが高いもの。まずはスマートフォンカメラで写真販売を始めて、手応えを感じてから用意してもよいでしょう。
写真販売に必要な4つのスキル
副業として始めやすい写真販売ですが、デメリットももちろんあります。まず写真販売を始めるには、ストックフォトサイトの審査に通らなくてはいけません。また、せっかく審査に通ったとしても、写真が売れない可能性もあります。
以下では、そうしたハードルを乗り越え、写真販売の副業を成功させるための4つのスキルをご紹介します。
撮影スキル
構図やライティング(照明)、写真のボケ具合に関わる絞りの値(F値)、モノの動きやブレに関係するシャッター速度のように、撮影ジャンルによって設定は異なります。より良い写真のためには、基礎的な撮影スキルは必須となるでしょう。
【桐生】
ポートレートでは、人物の首に水平線がかからないようにする」のように、ジャンルごとに撮影のタブーやルールが存在します。事前にできるだけ調べておくとよいでしょう。
写真編集スキル
購入者が使用しやすいよう、写真の色味や明るさなどを編集する必要があります。編集ソフトの基本的な操作は身につけておきましょう。Adobe Photoshop、Adobe Lightroomといったソフトが定番です。
【桐生】
写真編集をする際、デジタルのファイルシステムについての知識はマストです。プロファイル、解像度、ピクセル数、画素数などの関係を確実に把握しておきましょう。
マーケティングスキル
数多くの写真をアップしても、売れなければ収入につながりません。世間の流行や購入希望者のニーズを調査し、バリエーション豊かな写真をアップし続けるスキルも必要です。
【桐生】
ストックフォトサイトの審査を通して、写真の良し悪しを学んでいくのも一つの手です。審査で落ちる写真としては、著作権・肖像権を侵害する写真や、明度が極端な写真などが挙げられます。
著作権・肖像権の理解
撮影時に気を付けなければならないのが、著作権と肖像権です。著作権を有する被写体や人物が写っている場合、許可を得る必要があります。被写体に無断で写真を販売してしまうと法律違反にあたるため、しっかり理解しておきましょう。
写真販売に必要なツール
写真販売を始めるには、まずカメラやスマートフォン、写真編集ソフトをインスールしたパソコンが必要です。そして、撮影したいジャンルによって、ストロボや三脚といったツールを増やしていくのがおすすめです。以下では、その詳細をご説明します。
カメラとレンズ
さまざまなジャンルの撮影に対応できるよう、一眼レフやミラーレスなどのレンズ交換式カメラを用意しましょう。比較的安価なカメラでも撮影の基本を押さえていれば、質の高い写真撮影ができます。
レンズは汎用性の高いものがベター。おすすめは標準ズームが24mm〜70・80mm、F値(絞りの値)がf2.8〜f4程度のレンズで、手広く撮影を行うことができます。
スマートフォン
街歩きをしながら撮影する場合は、スマートフォンを活用するとよいでしょう。ストックフォト用のアプリもあり、撮影した写真をすぐアップできます。
【桐生】
スマートフォンでも十分撮影可能ですが、レンズが変えられないため撮影ジャンルや表現に制限がかかります。徐々にカメラやレンズを使った撮影に慣れていくと、フォトグラファーとしてもスキルアップできるでしょう。
ストロボ
撮影場所に照明がない場合や暗い場合はストロボを使用します。特に、ポートレートや物撮りをする際に必要です。
【桐生】
ストロボが準備できない場合は、小型のLEDライトを代用するのもよいでしょう。恒常的に光らせることができるので、光の当たり方を研究するのにも打って付けです。
三脚
カメラを固定して撮影したいシチュエーションでは三脚を準備しましょう。強度があり軽いカーボン製で、安定性の高い脚の太い製品がおすすめです。
パソコンとディスプレイモニター
写真の編集は、PCの容量をそれほど使わないため、最新のパソコンを準備する必要はありません。ただし、正しい色味の確認のため、モニターが良質なものを準備しましょう。「IPS液晶」など、できるだけ広い角度で明暗や色が変化しないタイプのものがおすすめです。
写真編集ソフト
写真編集ソフトの定番Photoshopでは、写真の基本的な調整から、加工や合成までを行うことができます。Lightroomは、写真の編集に加え、写真のタグ付けや管理が可能です。用途に応じて使い分け、作業の効率化を図りましょう。
写真販売における収入の目安
写真販売で得られる収入は気になるところでしょう。Adobe Stockでは、写真の単価に対して33%のロイヤリティーが発生します。獲得したロイヤリティーの総額が$25に達成すると、収入を受け取ることができます。また、ダウンロード数に応じてAdobe CCのソフトが無料で使える「ボーナスプログラム」特典もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
1ダウンロードあたりのロイヤリティーは少額ではあるものの、長期間にわたって販売すれば思いがけない収入になることも。売れる写真を見極めながら販売点数を増やし、ダウンロード数を伸ばす努力をしましょう。
写真販売の収入を高めるポイント
売れるフォトグラファーになるために、収入アップのポイントを押さえておきましょう。
売れている写真を分析する
例えばAdobe Stockでは、直近4週間の売り上げの高いクリエイターが紹介されています。人気クリエイターのポートフォリオを見たり、ストックフォトサイトの作品ランキングをチェックしたりして、人気のあるジャンルやシチュエーションを研究してみてください。
購入者のニーズを考えて撮影する
ストックフォトは広告利用が多いので、バナー広告を意識的に見ておくとよいでしょう。その際、写真ジャンルはもちろん、構図にも注目してください。
例えば、広告や雑誌では、写真の上にコピー(文章)を載せて使用することがあります。写真に文章を載せるスペースを確保してあると、より使いやすい素材になります。さまざまなニーズに応えられる写真素材を準備しておきましょう。
販売写真のタイトルやキーワードにこだわる
販売する写真にはタイトルやキーワードがつけられます。タイトルは具体的にするのがポイント。抽象的なタイトルだと被写体の判別がつかず、購入を見送られてしまう可能性があります。例えば、りんごの写真をアップする場合、タイトルは「果物」ではなく「りんご」を含んだものにしましょう。
キーワードの設定も重要です。Adobe Stockの場合、検索アルゴリズム上、キーワードの最初の10個は重要とみなされるので、被写体を具体的に説明する言葉をつけましょう。11個目以降は、コンセプトや感情を表すものを20〜30個ほどつけておくとよいでしょう。
写真の枚数を増やす
ストックフォトの枚数が多ければ多いほど、購入者の目に留まる可能性が高まります。購入希望者のニーズを踏まえて、コンスタントに写真をアップし続けましょう。
【桐生】
初めて写真が売れるまで、数ヶ月かかるという話もよく聞きます。写真販売で成功するには根気強さがマストです。料理やドライブなど、自分の趣味と掛け合わせて撮影を行うと、心理的なハードルも下がるのでおすすめです。
セルフプロモーションをする
Adobe Portfolioなどを活用しポートフォリオを作ったり、SNSで写真をアップしたりして、自分の撮れる写真をアピールしましょう。ストックフォトの販売だけでなく、写真撮影の仕事を担えるようになれば、収入アップが見込めます。
Adobe Stockのコントリビューターアカウントを持っていれば、Adobe Portfolioを無料で使用できます。積極的に活用していきましょう。
未経験から写真撮影の勉強をする方法
未経験からフォトグラファーデビューを目指す方には、まずは写真のスキルを身につけるために、オンラインコンテンツを読むとよいでしょう。
例えば、「初心者向け静物写真の撮り方」「料理写真の撮り方 - 食べ物を美味しそうに見せるコツ」では、被写体別に撮影のノウハウを学べます。
「写真にぼかしを入れる方法」のような 写真編集に生かせるコンテンツや、「被写界深度とは?浅い被写界深度で写真撮影する方法」といった撮影技術を学べるコンテンツもあるので、ぜひ参考にしてみてください。
写真販売の仕事から、副業の世界に踏み出そう
気軽に始められ、初心者でも収入が得やすい写真販売。売れる写真を研究していく中で、撮影や編集のテクニックも身に付くため、現場撮影など難易度の高い仕事の前準備としてもおすすめです。収入とスキルアップのどちらも見込める写真販売を、ぜひ副業デビューのきっかけにしてみてください。
Adobe Stock
Photoshop
Lightroom
Portfolio
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取材協力:桐生彩希(きりゅう・さいき)
フォトグラファー・レタッチャー・エディター・ライターなどマルチに活躍するフリークリエイター。Photoshopでの画像編集に魅了され、そこからフォトグラファーデビューしたという異色の経歴を持つ。アドビ主催のイベントで講師としても活動。著書に『はじめてのPhotoshop CC(秀和システム)』『写真が映えるデジタル処理のコツ(玄光社)』など。
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(取材・執筆:守屋和音 編集:ノオト)