シルエット写真を撮るには
シルエット写真を撮影するには、背景に何もない空間があればいいというわけではありません。適切な撮影プランニングと後加工の両方が求められます。
シルエット写真とは?
シルエット写真とは、被写体が暗く、背景をそれより明るくすることで、被写体のかたちを映し出した写真のことです。シルエット写真は通常、被写体の輪郭がよく見えるように、横向きの写真になります。最初のシルエットは、肖像画より安い方法として1850年代のフランスで始まり、絵画、スケッチ、紙の切り絵で使用されました。今でもシルエットはありますが、現在では紙ではなくカメラで写真として作ることがほとんどです。
シルエット写真を撮影するには、日が沈む時間の屋外や明るくコントラストを作りやすいスタジオの背景の前で、暗い輪郭を写し出せる被写体を配置します。シルエット写真は、コントラストを印象的に目立たせている点で、ほかの写真とは表現技法が異なります。写真家は通常、各部分の光の差異を調整する、または、それぞれの物の影がより均一になるように調整しますが、シルエット写真では影をできる限り深く、暗くするのです。
シルエット写真のタイプ
シルエット写真の撮影のためにセットアップする際、まず、どのようなかたちでどのようなアングルを強調したいかを決めます。
「強調するのはドレスのシルエットなのか、それとも顔なのかを決めておきます。「かたちという点から考えると、シルエットは白黒写真のようなものと言えるでしょう」(写真家/ドーンドラ・バッドさん)
どのようなシルエットのかたちを表現したいかを決めたら、撮りたいシルエット写真のタイプを検討します。大まかに言えば、シルエット写真には「完全シルエット」と「部分的シルエット」という2つのタイプがあります。
完全シルエット
完全シルエットは、一般的に人々が“シルエット”と聞いたときに思い浮かべるイメージです。被写体が完全に暗くなり、その後ろに明るい光源があり、まるで被写体が太陽の前に位置しているかのように見えます。このタイプは、被写体が認識可能なかたちかどうか、また背景がどれだけ明るく、クリアであるかが成功の鍵になります。
部分的シルエット
部分的シルエットとは、たとえば被写体の片側には光があたり、反対側は暗くすることで、被写体の一部をシルエットにするものです。部分的シルエットは、どこかミステリアスな雰囲気を出し、また、被写体が部分的に暗闇に包まれているような、あるいは暗闇から出てくるような感じを与えます。完全シルエットも部分的シルエットも、よい写真にするには後加工が必要です。特に部分的シルエットではイメージにするシルエット効果を出すには、さらなる加工が必要になるでしょう。
シルエット撮影時のカメラ設定
素敵なシルエット写真を撮ることは容易ではありません。シルエットは、ほとんどの写真で避けたいもの、つまり、写真の中心の真っ暗な部分を捉えようとしているからです。デジタル一眼レフカメラでは、暗さを捉えるためのカメラの設定はありません。デジタルカメラの初期設定では、すべてのものに均等に露出を合わせ、明るい背景と暗いものを分離しようとします。
「写真家は暗くなっている部分からその影を除去しようとするカメラと悪戦苦闘することになります。自分が意図している写真と、カメラがいいと判断する写真は違うわけですね」(写真家/ジェフ・カールソンさん)
そのため、シルエット撮影はほとんどの場合、マニュアルモードで撮影することになります。
かんたんにシルエット写真を撮るテクニックがあります。まずカメラを空のように明るい光源に向け、そしてすばやく被写体の写真を撮ります。
「空に向けてカメラをさらけ出し、その明るさにカメラを合わせておくのです。被写体の後ろからその光が当たっているので、結果的に被写体は暗く写ります」(バッドさん)
被写体を暗くするもうひとつの方法は、シャッタースピードを速くすることです。シャッターを開いている時間が長いほど、多くの光が入ってきます。シャッタースピードが速いと、カメラは青空、沈む太陽、スタジオのライトなど明るい光源からは光を取り入れることができますが、バックライトを浴びた被写体の少ない光を取り入れることができません。その結果、背景はよく写りますが、被写体はシルエットとして写ることになります。
シルエット写真の後加工
完全に暗いシルエットと明るい背景の画像を得る、もっともよい方法は、明るさを変えて撮影した2枚の画像を合成することです。多くのカメラには「ブラケット撮影」というモードがあり、同じシーンを異なる設定で何枚も撮ることができます。シルエット写真では、このブラケット撮影で撮影した、異なる背景と被写体を合成すれば、イメージ通りの明るい背景と暗い被写体の写真を実現することができます。
それでも、適切な露出のシルエット部分が濁って見えたり、エッジがボケてしまったりすることがあります。
「ハイライトが強すぎると写真は台無しになります」とバッドさんは言います。特にシルエットのエッジには、手直しが必要になります。
「私たちはいつも、カメラだけで完璧な写真を撮りたいと思っています。しかし、そううまくはいきません。特にシルエット写真を作り上げるにはアドビのツールが必要になります」(カールソンさん)
アドビのツールを使ってレタッチを加えたとしても、再度チェックすることは重要です。
「シルエットが十分暗くならないことがあります。自分のディスプレイでは暗く見えているかもしれませんが、適切に調整されていないディスプレイで作業をしている場合には、印象的で素敵なシルエットにはなっていないかもしれません。そうしたときはヒストグラムを見るとよいでしょう。暗く見えている部分が本当に黒なのかを確認することができます」(カールソンさん)
自分の目だけに頼ってはなりません。完全な黒にしたい場合、Adobe Photoshop Lightroom やAdobe Photoshopで写真データを開き、異なるディスプレイやデバイスでどのように映っているのかを確認するようにしましょう。
シルエットで印象的な写真を作る
シルエット写真はとても印象的で、人の目を惹きつける表現です。背景を強調しながらも被写体を強調する方法として、シルエットは適していると言えます。有名なランドマークに人物を入れた写真を撮る場合、人物をはっきりと写すよりも、シルエットにしたほうが人物のサイズ感を表現でき、見る人も自分をそこに自分がいるような気分になります。
シルエットは、それ以外の印象的なアート写真の要素にもなります。
「シルエットは美しくてミステリアスだと思います。すごく格好のいい二重露光写真も作成できます」とバッドさんは話します。シルエットは写真の中の空白でもあり、見る人やアーティストは、そこに想像力を働かせます。すばらしいシルエット写真は、そのかたちにただの暗い影以上のものを表現することができるのです。
寄稿
ドーンドラ・バッド、ジェフ・カールソン
Adobe Photoshop Lightroom の多彩な機能
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