絞りとシャッタースピード
絞りとシャッタースピードという写真原理の基本を学び、そこからどのようなクリエイティブな写真が生まれるかを学びましょう。
写真は芸術と科学の組み合わせです。難しさが倍になるように感じるかもしれませんが、それぞれの基本を理解してしまえば、この2つを組み合わせによって、クリエイティブなビジョンを表現する方法が無限に広がります。シャッタースピードがいい例です。シャッタースピードの調整方法を学ぶと、鮮明なフリーズフレームのスポーツ写真からビロードのような躍動感あふれる滝の写真まで、何でも実現できるようになります。
シャッタースピードとは
シャッタースピードとはその名の通り、カメラのシャッターが閉まるスピードのことです。シャッタースピードが速いと、カメラが光を取り込む時間が短くなります。適正な量の光を取り込もうとしたとき、シャッタースピードが遅いと、露出時間は長くする必要があります。
「シャッタースピードには、2つの効果があります。ひとつは時間を止められることです。シャッタースピードが速いと、シャッターはすばやく開閉して、瞬間を切り取ります。また、シャッタースピードを遅くして絞りを開くと、より多くの光を取り入れることができます。暗い場所で被写体に適切に露光するには、より多くの光が必要なため、遅いシャッタースピードが効果的です」(著者・写真家/Jeff Carlsonさん)
シャッタースピードの調整における課題
シャッタースピードを調整する場合、光と動きを考慮する必要があります。より多くの光を取り込もうとシャッターを長時間開いたままにすると、動きが写真に影響し、思うような結果が得られません。
「シャッタースピードが長いと、その間にフレーム内を移動するものがブレてしまいます。さらに、カメラのシャッターが長時間開いたままで、カメラを動かしてしまうこともあります。生きている人間が撮っているのだから仕方がありません」(作家・教師・写真家/Ben Longさん)
シャッタースピードを遅くすると、レンズを通してより多くの光が取り入れられるため、暗い場所でも撮影ができるようになります。一方、シャッタースピードが速いと、レンズが開く時間が短くなるため、レンズに入る光は少なくなります。光が少ない場所では十分な撮影は行なえないので、より明るい場所で撮影することが大切なのです。撮影するときはこのことに注意しましょう。そうしないと撮影したい被写体が見えないほど、非常に暗い写真になってしまいます。
特に動きの速い被写体を撮影する場合、シャッタースピードを適切に設定することはシャッターチャンスを見逃さないために重要です。
動物写真家であり、ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家であるCarli Davidsonさんはこう語っています。「数ヶ月前、私は狩りをしているチーターを撮影していました。チーターに『すみません、もう一度お願いできますか?シャッタースピードが足りず、画像がブレてしまったので、もう一度、ゆっくりお願いします』と言うことはできませんからね」
シャッタースピードで時間を止める
長時間の露出または遅いシャッタースピードでの撮影中に被写体やカメラが動くことによってモーションブラーが起こってしまう場合は、速いシャッタースピードで時間を止めましょう。
「2歳児はじっと立っていられないものです。カメラのシャッタースピードをより短く設定すれば、2歳児を撮影する場合でもブレることはありません」 (Carlsonさん)
シャッタースピードを速くすることで、単にモーションブラーが起こらないようにするでなく、瞬間を切り取った魔法のような写真を撮影することも可能になります。
「池に石が落ちるときのように、水が空中に舞い上がる一瞬を表現することができます。撮影時には、動きを表現したいのか、それとも動いている被写体の一瞬の静止を表現したいのかを考える必要があります」(写真家・デザイナー/Shawn Ingersollさん)
露滴のように静的に撮りたいのか、あるいは荒波のように力強くもなる水を撮りたいのか。シャッタースピードによって異なる物語を伝える方法を紹介します。
「夕暮れの海を見ている場合は、露出を30秒の長時間にするとよいでしょう。そうすると、より多くの光が取り込まれ、すべてが完全に暗くはなりません。波は滑らかになり、水はとても柔らかく、ガラスのように見えます」(Carlsonさん)
一方、同じ海を速いシャッタースピードで撮影すると、白く泡立つ波や荒々しいうねりを表現できます。写真家は、このように技術的な調整をすることで創造の世界を広げているのです。
遅いシャッタースピードで写真に動きをつける
「私はこの暗いジムでバスケットボールを撮影していました」と、ジャーナリストでウェディングフォトグラファーでもあるAnna Goellnerさんは回想します。「適切な露出を得るために、シャッタースピードを1/50に落とさなければならないこともありました。スポーツ写真では鮮明な画像が求められますが、そのときは写真に動きが入ってしまいました」
撮影の目的が鮮明で焦点の合った写真であり、アスリートが勝利のゴールを決めたときの顔の表情を捉えたい場合といった場合、そうした動きのある被写体を捉えるためには、速いシャッタースピードが必要です。特定の瞬間を停止することでストーリーを伝えるのです。しかし、時間を止めて動きを止めてしまうと、語れない物語もあります。
「バスケットボールチームが圧勝している場合や、必要な写真をすべて撮影し終わった場合、私は動きをいろいろと試してみたくなります。フットボール選手がフィールドを駆け抜けている動きを捉え、瞬間を芸術的に表現することはとても楽しいことです。シャッタースピードをいろいろ試してみることで、スポーツのなかの動きをうまく捉えることができるようになります」(Goellnerさん)
遅いシャッタースピードでブレを残して撮影すると、瞬間を超えるストーリーを伝えたり、動きを捉えたりすることができるのです。撮影においてはときに、そうした表現も必要なのです。
「レース場で、F1レースカーが時速200マイルで通過しているとしましょう。私はその動きを完璧に捉えるために1/8,000秒のスピードで撮影しました。できあがった写真を見ると、まるで駐車している車のようでした」(Longさん)。その瞬間には現実味がありません。高速で進んでいる感覚がないのです。
「代わりに、長いシャッタースピードで車が目の前を通過する際にカメラで追いかけると、車は少しブレますが、背景は完全に流れ、時速200マイルで進んでいるように見えるのです。私は真のリアリティをより現実的に表現するために、クリエイティブな判断を選択しました」 (Longさん)
シャッタースピードの選択
どのような写真を撮りたいのか、自問してください。シャッタースピードを決定するには写真の仕上がりを考える必要があります。
「通常のシャッタースピードで滝の写真を撮影すると、水は静止し、そのものの質感が得られます。しかし、水が滑らかで絹のような滝の写真を撮影できることも知っています。それはすばらしい技術であると同時に、とてもかんたんなのです。カメラが動かないことを確認し、長いシャッタースピードで撮影するだけです」(Carlsonさん)
シャッタースピードをコントロールできると、動きを利用したり、止めたりして、物語を伝えたり、雰囲気まで捉えた写真を撮影することができるようになります。速いシャッタースピードでその一瞬のスナップショットを撮影するか、遅いシャッタースピードの写真で被写体の動きを表現するか、どちらにもストーリーが込められているのです。
表現したい物語は、瞬間をそのまま捉えるものでしょうか、それともそのシーンを感じてもらうものでしょうか。あるいは、単に視覚的な詳細ではなく、瞬間のエネルギーを捉えるものでしょうか。シャッタースピードを習得すれば、意図した通りの表現を思い通りに撮影できるようになります。
技術的知識は役立つように思えますが、実践しなければこの技術は身につきません。
「撮影の知識が写真にどのように機能するかという技術的な知識を得ることはできるでしょう。しかし常に実践し、経験を重ねることで、知識と技術が結びつくのです」(Davidsonさん)
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