長時間露光を使った写真表現
シャッタースピードを調整することで、写真家は時を思うままに操ります。長時間露光による撮影で、遠くの星を輝く光の筋に、荒々しく流れる川を柔らかな水のブランケットに変身させることができるのです。
長時間露光撮影のすべてを学ぶ
シャッタースピードを速くすると、時間を止めて世界の瞬間を捉えるスナップショットが撮れます。逆にシャッタースピードを遅くして露光時間を長くすると、時間の感覚が変わり、写真に躍動感、ダイナミズムを加わります。
「長時間露光撮影では、カメラのセンサーに長時間、光を集めます。おもな目的は、シーンの暗い部分のディテールをもっと明らかにしていくことです」
標準的な写真のシャッタースピードは 60分の1秒ですが、シャッタースピードを変え、カメラのシャッターを長く開けておくことで、さらに光を集めて、それまでは写すことができなかった、新しいものを捉えることができます。しかし、シャッタースピードは絞りやISO感度など、カメラのほかのセッティングにも影響を与えます。長時間露光による撮影では、驚くようなイメージを捉えることができますが、美しい写真を撮るにはテスト撮影を繰り返し、適切な露光時間を見つけなければなりません。
技術的なしくみを学ぶ
風景写真や夜景写真を撮りたいなら、長時間露光撮影のしくみを理解する必要があります。光が弱いとき、たとえば空に色の筋が走っているような日没直後の時間帯に、速いシャッタースピードで写真を撮っても、イメージ通りには撮れないでしょう。だからといって、ただシャッタースピードを長くしても思い描く写真は撮れないでしょう。
機材を整える
長時間露光を完璧なものにするには練習が何よりも大切ですが、カメラと機材の理解も必要です。うまく撮るには、まずカメラが少しでも揺れないようにしましょう。「三脚が最も重要な機材です。しっかりした三脚がないと、風が吹いたときにカメラが揺れてしまい、写真がブレてしまうからです」(写真家・大学教授/アダム•ロングさん)カメラはシャッターボタンを押しただけでも揺れてしまいますが、シャッターレリーズボタンを使えば、カメラに触れることなく、撮影できるようになります。
カメラによって異なりますが、一眼レフカメラにもデジタルカメラにもマニュアルモードがあり、絞りやシャッタースピード、ISO 感度を自分で選ぶことができます。長時間露光をする場合、カメラによってはシャッタースピードを最長 30 秒にできるものもあります。シャッタースピードをもっと長くしたい場合は、バルブセッティング(バルブモードとも呼ばれます)にして、適切な露光にします。カメラのバルブセッティングを使うと、シャッターレリーズボタンを押さえている間、ずっとシャッターを開けておくことができます。
シャッタースピード、絞り、ISO 感度は密接な関係があり、いずれも画像の露光に影響を与えます。ひとつのセッティングを変えたら、ほかのセッティングもそれに合わせて変える必要があります。f値(絞り)を上げていくとレンズの開口は小さくなり、カメラのセンサーが受け取る光の量が限定されていきます。結果、シャッタースピードと露光時間は長く設定する必要があります。場合によっては、 ISO 感度、つまり光の感度を上げる必要があるかもしれません。しかし ISO 感度を上げると、画像の粒子も粗くなり、写真にノイズが目立つようになります。
長時間露光撮影で撮った写真はほとんど、f 値を大きくして、画像の露光オーバーを防いでいます。f 値を小さくして長時間露光撮影をすることもできますが、さらに数ステップのレッスンが必要です。
減光フィルターは、NDフィルターや10ストップフィルターとも呼ばれ、カメラレンズの前につけて、カメラに入ってくる光の量を減らす役目をします。これを使うとf 値と ISO 感度を低くしながら、シャッタースピードを遅くすることができます。ND フィルターは、日中、太陽の光が非常に強いときに使うと便利です。つまり、ND フィルターを使うと、被写界深度やシャッタースピードをもっとコントロールできるのです。
マニュアルフォーカス
撮影モードは、オートフォーカスではなく、必ずマニュアルフォーカスを使いましょう。マニュアルフォーカスなら、焦点を合わせるものや被写界深度を正確に決められるからです。オートフォーカスにすると、カメラが勝手に間違ったものに焦点を合わせてしまい、せっかく 2分間露光しても台なしになってしまうことがあります。
長時間露光撮影の可能性を探る
長時間露光撮影のしくみがわかったら、今度はどんなことができるのかを探ってみましょう。まず覚えておきたいのは、どのようなスタイルの写真を撮るとしても、撮影環境、被写体、光、天候、時間……そのすべてをコントロールすることはできないということです。「木が風に揺れたら、カメラを構えた目の前を車が通り過ぎたら……状況による写真の変化を頭に思い描かなければなりません。写真がどのように見えるかを想像する必要があるのです」(ロングさん)このビジュアライゼーション能力を練習によって向上させ、「何ができるか」「どうしたらできるか」を学べば、臨機応変に、そのとき撮れる最高の写真を捉えることができるでしょう。
長時間露光で撮る風景写真
長時間露光撮影に最適な時間帯は、日没後 15 分から 1 時間の間です。「光のクオリティが最高ですし、空にまだ色が残っています。長時間露光撮影にはうってつけの時間帯です。上には青が深まっていく空、下には広がる街の灯があり、その間で均一的な露光を得られるからです」(ウリビエリさん)長時間露光はその場所が醸し出す、独特の雰囲気を表現する機会を与えてくれます。夢のようにうっとりした風景でも広大な海の景色でも、長時間露光はいつも新しい何かを撮影させてくれます。
稲妻と嵐の写真
稲妻と嵐の予測できないドラマは、ユニークな長時間露光写真が撮影できるすばらしいチャンスです。いつ稲妻が落ちるかわからないからです。「たとえば、12秒間露光するということを、そのときの空のコンディションで判断します。あとはそのまま何枚も撮り続けて、“稲妻が落ちたとき、シャッターが開いていますように”と祈るのみですね」(ウリビエリさん)一枚の写真に、これだけダイナミックな現象を捉えるには、練習と忍耐が必要です。しかし、長時間露光写真のしくみが理解したことで、息をのむような嵐の写真を撮るために一歩前進したと言えるでしょう。
どのような題材を選んでも、長時間露光写真はアーティストに、時間をコントロールする新しい方法を与えてくれます。試行錯誤を重ね、どんなセッティングや機材がその状況に適切かを学んでいきましょう。
さあ、あとは最初に何を撮影するか決めるだけです。
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