夜景の中に輝く光跡写真を撮ろう
長い露出時間で夜の道路を走る車の光を捉え、鮮やかな光跡写真を撮ってみましょう。
撮影:ライアン・ディッチ
光跡写真の撮り方
光跡写真とは、光の動きを強調する長時間露出写真です。カメラのシャッターを長時間開けておくことで、光をさらに多く取り入れ、その動きをフレーム全体で表します。
「何か光っている物の動きを捉えて、その軌跡を表すのが光跡写真の目的です」と語るのは写真家のショーン・サラモンさんです。
光跡写真は、車のヘッドライトやテールランプ、ヘッドランプ、街灯、自転車のライトなど動く光を捉えたアートです。 ライトペインティングのように懐中電灯を動かして光の線を作ることもできますが、通常、光跡写真とは道路の光の軌跡を捉えた写真を指します。車のヘッドライトやテールランプで作られた、光の道を捉えている車の光跡写真
道路の光跡写真の重要ポイント
長い露出時間が光の動きを捉えます。これが、魅力的で興味深い光跡写真を撮るための重要なテクニックです。
「光跡は現実には存在しない幻影です。光跡写真は、興味深く、そして特殊なタイプの写真です。何しろ、実際にはどの瞬間にも存在しない物を表現するのですから。写真は真実を正確に写すものだと、ほとんどの人は考えます。光跡は、それを裏切っているのですが、真実を曲げているような感じを与えることなく、上手に幻影を表現しています」とサラモンさんは説明します。
撮影:ライアン・ディッチ
道路と光の軌跡を捉えるための基本的なカメラ設定
フィルムカメラでもデジタルカメラでも、光跡写真を撮影するには、 ISO、絞り、シャッタースピードの標準的な設定の方法を知っている必要があります。撮影プランを立てる前に、このような設定が互いにどのように機能するのか理解する必要があります。
ISO は、デジタル一眼レフやミラーレスカメラが光を感じ取る度合いを表します。ISO値が高ければ高いほど、カメラは光を多く感知できます。大半の標準的なデジタル一眼レフの場合、 ISO設定は ISO100 から ISO1600 まであり、カメラによっては、それより高い ISO設定もあります。 ISOをなるべく低く設定し、その代わりシャッタースピードを長くして、光をより多く取り入れるようにします。
シャッタースピード は、レンズを通してカメラのセンサーに光を取り入れるために、カメラのシャッターを開けておく時間のことです。シャッタースピードは1秒の数千分の1から、数秒または数分に至るまでまちまちです。光跡写真の場合、シャッタースピードは5秒から60秒にします。これなら、フレームを横切って動く光の動きを全て捉えることができます。
絞りはレンズがどれだけの光をカメラに取り込むかをコントロールします。フィルムカメラでもデジタルカメラでも、絞りはf-ストップとも呼ばれ、カメラには f/8 や f/22というように表示されています。光跡写真の場合、f/16が適切な絞りとされています。
光跡写真にはマニュアルモードが最適です。光の軌跡を写真に収めるには、撮影場所の条件に合わせ、ISO、絞り、シャッタースピードを変えたり操作したりする必要があります。
セルフタイマー機能は、ほとんどのデジタル一眼レフに付いています。光跡写真の場合、シャッタースピードと絞りは、光がカメラの中に長時間通るように設定します。カメラが少しでも動いたり揺れたりすると、写真がブレてしまいます。それを防ぐには、セルタイマー機能かシャッターリリース(カメラに触れずにシャッターを切る道具)を使います。
バルブモード は、シャッターを開放しておくために、好きなだけ長くシャッターボタンを押すことを意味します。この方法で光の軌跡を捉えることができます。特に、光っている物体が、視点を次から次へと通り過ぎていく場合に効果的です。ただし、カメラが動いたり、露出不足または露出オーバーのために背景がブレることがあります。
最高の光跡写真を撮るためには最適なカメラ設定
ISO、シャッタースピード、絞り(f-ストップ)の相互関係とその作用を理解しましたら、色々な組み合わせでその機能を試し、好みの撮影ポイントから光跡写真を撮影します。
周囲が暗ければ暗いほど、より多くの光が必要だということを覚えておく必要があります。ISO感度を高くし、シャッタースピードを長くして絞りを大きく開ければ、光を十分レンズに通すことができ、光の軌跡を撮影することができます。まず、ISO 800、シャッタースピード5秒以上、絞り f/8で撮影してみましょう。好みの光跡写真が撮れるまで、設定を色々に組み合わせたり、変更したりして試してみましょう。
撮影:アーロン・ラシッド
「私から初心者の方々へのアドバイスとしては、光跡写真の場合は忍耐が必要だということです。時には、思い通りの露出が得られるまで色々な設定を試さなければなりません」と写真家のアーロン・ラシッドさんは言います。
道路の光跡写真を撮影するための時間と場所
撮影に適している場所を探す
創造力を駆使して、好みの撮影場所を探しましょう。興味を誘う、魅力的な場所を見つけます。通常、良い撮影視点とされるのは、道路の高架交差地点や高速道路、山道、屋根の上、高い建物の屋上などです。構図とフレーミングを考慮して、最適なアングルを探します。
「私の好みは、曲がり角や曲線のある場所です。撮影のもう一つの楽しみは、車が街の通りや田舎道を曲がりくねって走る動きを、写真で表現することです」と写真家のライアン・ディッチさんは言います。
撮影:ショーン・サラモン
ブルーアワーの時間帯で最高の光跡写真を撮る
光跡写真を撮影する最適な時間帯はブルーアワーです。ブルーアワーは、人気のゴールデンアワー(日没の直前の時間帯)の反対側の時間帯です。ブルーアワーは日没と夜の間の時間帯で、空に青い影が出てきます。太陽が地平線よりかなり下に沈み、そのため青い光の影が空を染めます。ブルーアワーの時間帯では、光源の位置は低くしますが、まだ夜になっていないので、シーンがまだ闇に包まれていません。
撮影用に適切な機器を用意する
光跡写真は、光源が低い環境での撮影になるので、それに備えて準備する必要があります。
カメラ
デジタル一眼レフかミラーレスカメラを使います。またはマニュアルで撮影でき、 ISO、絞り、シャッタースピードをマニュアル設定できるのであれば、どのようなデジタルカメラでも構いません。
三脚
光跡写真を撮影する場合、カメラの次に重要なのが三脚です。長時間の露出で撮影する場合、三脚がカメラの揺れを抑え、安定させてくれます。カメラが安定していれば、写真にブレが生じる可能性も少なくなります。
L型ブラケット
L型ブラケットは、カメラの底にネジで固定する金属製の物で、これでカメラを三脚にはめます。L型ブラケットがあると、カメラを横長の位置から縦長の位置に変えることができ、また、カメラの揺れを防ぐことができます。
広角レンズ
撮影ポイントから、最大限の広さの景観を捉えるために広角レンズを用意します。広角レンズは、フレームで画面をより広く捉えて幅広く撮影できるので重要な被写体を外すことはありません。
NDフィルター (オプション)
NDフィルター、つまりニュートラルデンシティ・フィルターは、金属の縁のあるガラスで、カメラのレンズの上に被せて使います。NDフィルターは、光の強度を減らす役割があります。光跡写真を撮影する場合、背景の光や他の光源からの光が強すぎて、露出設定に影響を与えてしまうような時に、NDフィルターが役に立ちます。
リモートシャッター (オプション)
リモートシャッターはテレビのリモコンと同じような機能を持ち、離れた所からカメラのシャッターをコントロールできます。これはオプションですが、カメラの揺れを防ぐので写真がブレません。また、シャッターを押す前に、カメラのフレームよりも前の位置に行って、撮影地点を確かめることができます。
光が導く
光跡写真を数枚撮りましたら、次は後処理を行います。Adobe Photoshop Lightroom を使えば、色の彩度を調整したり、影とハイライトを調整して明るさを上げたり、その他さまざまな編集で光跡写真をいっそう魅力的に仕上げることができます。
「後処理はツールを信頼して自信をもって編集を行いましょう。怯まずに新しいことに挑戦し、自分なりの設定で色々楽しんでください」とラシッドさんは語ります。
撮影:ライアン・ディッチ
協力
Adobe Photoshop Lightroom の多彩な機能
Adobe Lightroom のプリセットで写真を簡単に編集し、クラウドの写真ストーレージ管理を使えば、どこにいても自分の作品にアクセスできます。
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