プロフィール写真のきれいな撮りかた
顔写真やビジネスポートレートは、あいさつのようなもの。写真の印象によって、相手にどのように思われるかも変わります。ここでは、SNSやオーディション用のプロフィール写真でいい印象を与えられる写真撮影のヒントを紹介します。
素敵な顔写真でいい第一印象を
すぐれた顔写真は、その人物を語ります。パスポートや運転免許証のような、その人物の外見を示すだけの証明写真とは違い、顔写真は被写体の態度、性格、個性など、より多くの情報を伝える必要があります。
素敵な顔写真を撮影しようと思うなら、写真家はどのような人物の顔写真を撮っているのか、用途は何なのかを知る必要があります。たとえば、ビジネス系SNSなどで使用するビジネス用の顔写真は、俳優やモデルの顔写真とは異なる印象になりますし、同じ人物であってもブライベートなコミュニティで使うものなのか、ビジネスコミュニティで使うものなのかによって、撮影の仕方も変わるからです。この分野を極めるには、人物の顔写真を撮影する方法を知り、被写体をリラックスさせて個性を引き出す人間力も培う必要があります。
顔写真とは何か
顔写真はあいさつと同じようなものです。それを見る人に、実際に会っているような感覚を与える必要があります。その人となりを感じさせる顔写真は、添えられてある紹介文や経歴を引き立てる役割も持っており、それがあることによって、LinkedInのようなビジネス系SNSのプロフィールは単なる職務経験、スキル、専門分野のリストではなくなるのです。
「顔写真でその人のストーリーを伝えることは非常に重要です。何かを語り、見る人と共鳴して、感情を喚起する必要があるのです。それができない顔写真は、ただの人物写真に等しいと言えます。写真に描かれる感情は被写体から湧き出るものですが、それが写真として表出するための状況を作り出すのは写真家の役割だと思っています」(編集・ポートレートフォトグラファー/Grace Riveraさん)
人物を被写体とし、個人に重点を置いた写真という点では、顔写真と ポートレート写真 には多くの共通点があり、一方の技術的なヒントがもう一方にも当てはまるケースが多々あります。しかしRiveraさんは、あくまでもこの2つは違うものだと指摘しています。顔写真とポートレートにはそれぞれ異なるストーリーがあり、撮影するとき、写真家はその目的を意識しておく必要があるのです。
「ビジネスプロフィール用の顔写真を撮影する場合は、雑誌記事用の写真とはまったく異なるアプローチで撮影することになります。雑誌用の撮影なのに、ビジネス用の写真のように撮ってしまうとうまくいきません。誰を撮影するのか、何のために撮影するのか、そしてその写真が最終的にどのように使用されるのかに注意してください。時間をかけて準備を行なえば、かならずよい結果が得られるでしょう」
顔写真撮影のライティング
顔写真にどのようなライティングがふさわしいのかは難しい問題です。従来の顔写真の考えかたでは、白い背景に対して白いやわらかい光を当てることが推奨されていましたが、適切なライティングで撮影しさえすれば、強い光でもやわらかい光でもうまく撮影できるでしょう。スタジオライティングの修士号を持つHeather Concannonさんはこう話します。「どのようなライティングにするか、写真をどんな風に見せたいか次第です。より印象的に仕上げたい場合は、直射日光や大きなライトの強い光を利用して被写体を撮影します。それは本当にクールです」
ライティングを被写体の外見、個性に合わせることも不可欠です。「ポートレートを撮影するときは、常に直感を働かせて、光がどこから来ているのかを考え、状況に応じて調整をしましょう」(Concannonさん)
多くの撮影初心者にとって、強い光の下、または後ろから光に照らされているときに、被写体を撮影することは難しいものです。Concannonさんもこれを認めています。強い光やバックライトを使用することは可能ですが、これを活用できるレベルに至るには経験が必要だとも言います。顔写真撮影の初心者に対する、Concannonさんからのアドバイスは次のようなものです。「曇り空を活用することです。ポートレート撮影のライティングでもっとも便利なのは曇りの日の窓の隣です。雲は太陽光を拡散させますから、曇りの日にはどこで撮影するにもぴったりなのです。屋内にいる場合は、雲によって拡散した光が届く窓の隣や、窓の上に屋根があり、強い太陽光が遮られている場所を選びましょう。そうすると、被写体に美しく、やわらかく、均一な光を当てることができます」
多くの場合、屋外で撮影すればすばらしい結果が得られますが、屋外には屋外ならではの変動しやすい要素があるため、予期しない問題が発生することもあります。「日中の明るい太陽が頭上にある場合は、被写体を日陰に移動させます。頭上の光は顔に鋭い影を作り、写真編集アプリでも修正が難しい場合があるからです」(写真家/Saraa Aagesenさん)
人間の顔に焦点を当てる
すぐれた顔写真の写真家は、顔の多様な表情と輪郭に注意を払っています。「被写体の目、鼻、おでこに焦点を合わせて、その人の本質を捉えていきます。そうすると自動的に肌も背景も滑らかになり、余計なものが取り除かれるのです」(Concannonさん)
顔写真の撮影では、背景を強調したり、ぼかしたりしながら、被写体にフォーカスしていきます。このときもっとも重要なのは、被写体の見えかたと被写体がカメラに向ける視線です。絞り値F2.8くらいの浅い被写界深度での撮影、または最小絞りで撮影することによって、より被写体を強調することができます。
感じのよい背景ボケは、50~85ミリの焦点距離で十分に出すことができますが、焦点距離を長くすると、背景のよりよいボケ味が得られます。
50ミリという焦点距離は、人間の目に近い視野が得られると言われています。ナチュラル感がある写真が撮影できるため、顔写真やポートレートにも適しています。「カメラを覗いてみると、極端にズームインしているわけでも、ズームアウトしているわけでもない、目で見ているものに近いものが見えるのです」(Concannonさん)
焦点距離を長くして顔写真を撮影するときのメリットは何でしょうか。たとえば85ミリなら、被写体から距離をとって撮影することができます。写真を撮られることが苦手な人を撮影する場合、距離に余裕があったほうが、そのような人の個性を引き出しやすくなる場合があります。
逆に、写真家と被写体の間の距離を短くなるような焦点距離を選ぶと、被写体が安心することもあります。
「スタジオにいるときは、撮影対象と物理的にやり取りできるくらいの焦点距離が必要です」と、写真家でありニューヨーク・タイムズ のベストセラー作家であるCarli Davidsonさんは言います。Davidsonさんによると、距離があると撮影対象から切り離されたように感じ、それは最高の写真を撮影するために必要な信頼関係を確立する妨げになるそうです。「撮影対象から遠く離れたくはありません。遊び心、本気さ、悲しさ、そうしたものを肌で感じ取りたいのです」
リラックスしている瞬間を捉える
顔写真は個性を語るものです。被写体の本当の人物像を捉えるには、被写体が安心した状態でなければなりません。しかし、多くの人々は、カメラを前にすると自分らしさを失ってしまいます。緊張したり、カメラをじっと見つめたり、不自然な笑顔になったりします。それを普段の状態に戻せるかどうかは写真家次第です。
被写体に安心してもらうためには、自信が重要です。「自信がなくても、少しだけ自信があるフリをしてください。写真撮影の開始時に撮影相手が抱いていた緊張が和らぎ、その後は自然に任せて撮影することができるでしょう。撮影相手と話をして、その人について知り、その人がもっともリラックスしている瞬間を見つけましょう」(Riveraさん)
こうした瞬間を目で捉え、カメラで撮影できるようにすることは、ビジネスプロフィール写真でも宣材写真でも、顔写真を成功させるためのもっとも重要なポイントと言えます。撮影相手のいちばん自然な姿、本当の姿を引き出し、すばらしい第一印象を与えられる顔写真を撮りましょう。
合わせて使いたい便利な機能
Photoshopのニューラルフィルターは、Adobe Senseiの先進のAI機能を活用して、画像に対する複雑な調整を瞬時に適用できるフィルターギャラリーです。人物の肌や顔の表情などを簡単に調整し、思い通りのポートレイトに仕上げましょう。
【1分解説!CC便利機能】ポートレイトを思い通りに調整
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プロの写真家からコツを学び、アドバイスに従ってポートレート写真を撮りましょう。
被写界深度を浅くするには
被写界深度を浅くすると、どのように写真に奥行きが加わるかを説明します。
写真を印象的に見せる美しいぼかし効果について詳しく説明します。
どのような写真でも必要な焦点距離を選択できる方法を説明します。