ガウスぼかしで写真をやわらかく
画像処理中に「ぼかし(ガウス)」のフィルターをいつ使用するかを学び、細かいしくみや機能を理解して、創造性あふれる作品を作りましょう。
ガウスぼかしとは
Adobe Photoshopにある「ぼかし」フィルターのひとつ「ぼかし(ガウス)」、通称「ガウスぼかし」は、数学者のカール•フリードリッヒ•ガウス(ライチョウを意味する言葉「グラウス」と似ています)の名前から「ガウス」(英語ではGaussian「gow-see-an」)とつけられました。ガウスぼかしは画像をぼかすために使われる数学的な機能です。「まるで画像の上に、羊皮紙のような半透明の素材を重ねたようです。全体にやわらかい感じが出ます」と写真家のケントン•ワルツさんは語ります。ローパスフィルターの一種であるガウスぼかしは、画像の不均衡なピクセルの極端な数値をカットして均等化します。
いつガウスぼかしを使うべきか
写真家やデザイナーがガウスぼかしを使う目的はいくつかあります。写真を低照度で撮った結果、画像にノイズがたくさん入ってしまった場合、ガウスぼかしでノイズを抑えることができます。画像の上に文字を入れたい場合、ガウスぼかしを使うと画像がソフトになり、文字がより鮮明に見えるようになります。
商品写真で特定の部分に注意を引きたい場合、写真のそのほかの部分にガウスぼかしを使うことで、人の目をもっとも鮮明な部分に自然に誘導することができます。また、人間の目鼻立ちのような特徴や、車のナンバープレート、使用ライセンスを持っていないブランドロゴなどをガウスぼかしで隠すこともできます。
ガウスぼかしは、色収差、つまり画像のコントラストが強い境界部分に出る、色の縁を抑えるためにも便利です。たとえば、青空をバックにして遠い所にあるヤシの木の風景写真を撮影したとき、ヤシの葉が集まっている部分の縁に沿って、白または赤の明るい線が現れることがあります。ガウスぼかしを使うと葉の縁の周囲の極端に明るいピクセルを減少させ、その明るい部分を取り除くことができます。
このツールを使うと、もっとクリエティブなこともできます。写真家のアンドレス•ゴンザレスさんは、肖像写真のプロジェクトで、ガウスぼかしを使ってシュールレアリスム的な効果を出しています。彼は Adobe Photoshop で、複製したレイヤーをオリジナルの画像の上に重ね、そこにガウスぼかしを使ったのです。「その後、鮮明に見せたい部分にかかっているぼかしを消しゴムで消しました。そうやって霧のかかったような雰囲気の写真を作ったのです」(ゴンザレスさん)
シャープさを失わない方法
ガウスぼかしを使うときに覚えておきたいのは、ぼかしを強めると鮮明さは落ちるということです。上で説明したような風景写真の場合、画像にぼかしフィルターを適用すると白や赤の色収差はなくなりますが、ヤシの葉と空との境界線がはっきりしなくなります。
こうしたケースでは、ぼかしの範囲(半径)を小さくすることで、画像の鮮明さをキープすることができます。この値はピクセルで指定します。ぼかしを計算するときに、ガウス関数がいくつの隣り合うピクセルを計算に入れるかを決定するのです。また、ぼかしフィルターを適用した像に対して、境界線を検出するツールを使うこともできるほか、Photoshop の「シャープ(輪郭のみ)」を使うと、輪郭だけを鮮明にすることもできます。
ガウスぼかしのしくみ
ノイズが多い、またはピクセルの明るさや色相が不規則というケースは、グレースケール画像にもカラー画像にも起こり得る問題です。こうした画像は、ピクセルのグループの中にバリエーションがいろいろある状態になっており、ピクセルには高い標準偏差があると言えます。画像データは二次元画面なので、ガウスぼかしは 2 つの関数(x 軸と y 軸にそれぞれ 1 つずつ)を使って、畳み込みと呼ばれる 3 つめの関数を作ります。
この 3 つ目の関数はピクセル値の正規分布を作り、ランダムな部分を平らにします。平らにする度合いは、ぼかす範囲(半径)のサイズによります。各ピクセルは、周囲のピクセルの加重平均に合わせて新しい値の集合を取ります。遠くにあるピクセルよりも、近いピクセルの方が大きな加重を与えられます。この計算の結果、画像に霞のかかったような感じが強くなります。これがガウスぼかしのしくみです。
そのほかのぼかし効果とフィルター
Photoshop のぼかしギャラリーには、ほかにも多くの選択肢があり、いろいろなぼかし表現を試すことができます。被写界深度を浅くして、ある対象物に焦点を当てると同時に、レンズぼかしでそのほかをぼかす。虹彩絞りぼかしを使って、焦点を強調し、背景をぼかす。また「ぼかし(移動)」や「パスぼかし」でモーションぼかしを適用すると、ドラマチックな動きを出すことができます。表面が不自然にスムーズに見えることを防ぐため、ぼかした範囲にノイズを復元する方法も学びましょう。また、こうした編集作業によって、オリジナルのデータが破壊されてしまうことがないように、レイヤーは「スマートオブジェクト」に変換しておきましょう。こうすればいつでも加工処理を取り消すことができます。
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