花の写真の撮りかた
遠近法、構図、ライティング技術を学び、美しい花の写真を撮りましょう。そして専門家から写真の編集方法や花の撮りかたのコツを学びましょう。
どうして花の写真を撮るのか
目にするだけで楽しい気分にさせてくれる花は、色、質感、かたちのいずれもが写真映えする題材です。花の写真を撮影することは植物の美しさを讃えることであり、さまざまな写真のスキルを向上させるいい方法でもあります。「花の撮影は初心者にとっていいスタート地点です。でも、難しい撮影でもあるのです。ことわざにもあるでしょう?『習うのは優し、極めるのは難し』ってね」そう語るのは写真家のデレク・ボイドさんです。しかし、写真のアングル、フレーミング、ライティング、編集方法に注意すれば、シンプルな花の写真を、人の心を動かし、もう一度見たくなるような美しい花の写真に変えることができます。
さあ、花の写真を撮りましょう
始めるのは簡単です。花の写真撮影というアドベンチャーを始める前に、いくつかのアイテムを用意しておきましょう。
携帯電話
撮影に必要な機材は実際にはカメラだけです。スマホのカメラでも十分、用は足りるでしょう。「スマホならいつも持っていますよね。最近のモデルなら、すごくいい花の写真を撮れるし、かなり大きなサイズにプリントすることもできます。スマホで撮影をする場合、露出オーバーになりがちです。スマホのカメラできれいに撮るには、まずスクリーンの明るさをあげてから写真の露出を調整します。露出を少し低めにしたほうが、花のディテールを捉えることができるでしょう」(写真家/ジェイク•ブロートさん)
デジタル一眼レフと 50ミリレンズ
デジタル一眼レフを使えば、スマホで撮影するよりさらに多くの選択肢を得ることができ、プロ並みの花の写真を撮れるようになります。「私が頼りにしているのは50ミリレンズです。花を撮るにしても人物を撮影するにして、初心者に強くオススメしたいですね。私は人物や花を撮るのに85ミリも使っています。この2本の単焦点レンズ(ズーム機能のないレンズ)の大きな利点は、絞り値の幅が広いことで、被写界深度を浅くすると、魔法をかけたように背景をぼかすことができるのです」(ブロートさん)
三脚とケーブルレリーズ
三脚があれば手ブレを防いで花をシャープに写し撮ることができます。さらにケーブルレリーズがあれば、シャッターを押すとき、カメラに手を触れる必要がなくなり、より安定した撮影が可能になります。カメラを固定して、設定を変えていくことで、写真にどんな効果が現われるか、試してみましょう。「三脚があれば、おもしろいことがいろいろできますよ。夕暮れどきに露出時間を長くして、数秒間シャッターを開けておくと、ちょっとした動きをカメラが捉えることで、花を絵画のように見せることができます」(ブロートさん)
レフ板
「花の写真を撮るとき、レフ板は特にお気に入りのツールです。特に屋外で、影を薄くするのに便利です。低いアングルで撮影をするのでどうしても影が入ってしまいます。こうしたときは、レフ板で太陽光を跳ね返すのです」(ボイドさん)
写真旅行を計画しよう
花の写真のコツやトリックを使って、心に残るきれいな花の写真を撮りましょう。
- 一日の違う時間帯に撮影してみる
「私は日の出か日没の時間帯に撮影するのが好きなのですが、花の写真はもっと許容範囲が広いのです。正午ぐらいに花の撮影に臨めば、影でいろいろ遊ぶことができますよ」(ブロートさん)
- 完璧を目指さない
予期しないできごとが、おもしろい結果を生むこともあります。「どの写真も技術的に完璧なわけではないし、自分のベストな写真すら完璧ではないこともあります。でも、たとえ動きやブレを捉えてしまったとしても、それが逆にいつもとは違う感情を引き起こしてくれることだってあるのです」(ブロートさん)
- 道具を使う
花のみずみずしさを水滴で演出するためには霧吹きを使いましょう。幻想的な光のひずみを作るには、レンズをキッチンラップで覆って光を拡散させます。落ちた花びらをレンズの近くにかざせば、意図的にレンズフレアを作りだすことができます。プリズムレンズやフラクタルレンズを使えば、光を屈折させて花に当てることができます。「こうした実験は楽しいですよ。透かして向こうが見える素材のものをレンズの前にかざすと、なんでもユニークなかたちに、ものが変形して見えます」(ブロートさん)
花から多くを学ぶ
どんなに引っ込み思案な写真家でも指示を与えられるモデル……それが花です。色と質感を活かして、撮影技術とカメラのセッティング技術をさらに上達させていきましょう。花の写真撮影を通して、学ぶべきポイントを紹介します。
構図が肝心
「花の撮影でおさえておきたいポイントはまず“構図”です。メインの被写体を写真の適切な位置に置くということですね。そして前景と背景にあるものを活かして、被写体の構図を決めていきます」(ボイドさん)
よい構図を作るために三分割法を使ってみましょう。一輪の花のクローズアップでも、庭全体のフルフレーム撮影でも構いません。別アングルからもたくさん撮ってみましょう。「たとえば地面から見上げるような角度で撮ってみてください。逆に真上から撮るのもいいですね」(ボイドさん「別の角度から見たり、ほんの少し、見る角度を変えるだけで、花は全然違って見えますから」(ブロートさん)
露出アンダー寄りにする
「露出は常にアンダー寄りにしておきましょう。スマホでも一眼レフカメラでも、データになっていれば、後からいつでも写真を明るくできますから。写真が露出オーバーの場合、白く飛んでしまった部分はもう取り戻すことができません」(ブロートさん)露出をアンダーにするには、露出の設定を落とすか、F値を一段階高い値にして、開口部を絞ります。シャッタースピードを早くするのもいい方法です。
被写界深度を浅くする
被写界深度を浅く設定して撮影すると撮影対象だけにピントが合い、前景と背景はすべてぼやけて写ります。重要ではないものから注意をそらせたい場合には、焦点距離を短くして撮るとよいでしょう。「背景に建物があったり、ゴミが落ちていることがあるのですが、被写界深度を浅くして撮影すれば、ほとんどはボケて気にならなくなります。何も心配する必要はありません」(ブロートさん)
前景と背景をぼかして撮りたいときは、絞りを開きましょう。このとき、ただ花のごく一部だけに焦点を合わせたいというとき以外は、過度に開かないようにします。「絞り値はF5.6 か F8 なら被写界深度としては十分です。花全体に焦点が合いつつ、前景と背景がぼやけた状態で撮影することができます」(ボイドさん)絞りを大きく開けているときは、シャッタースピードを短くして、写真が露出オーバーにならないようにしましょう。
花の写真を編集する
「私の場合、花の写真作品を作るうえで、編集作業は大きな位置を占めています。編集によって写真にトーンやムードを加えるのです」Adobe Photoshop Lightroom を使ってかんたんな編集を行ない、その後、 Adobe Photoshop を使ってさらに細かい編集をしていきましょう。
すばやく写真を演出したいなら、Lightroom のプリセットを
自分のカスタムフィルターを作り、Lightroom のプリセットから好きな写真家のフィルターを探してみましょう。「マニュアルで作業しようと思うことでも、Lightroomにはプリセットに用意されています。写真の雰囲気をすぐに変えることができるのです」(ボイドさん)
色温度と色合いを調整する
撮影した写真のホワイトバランスをチェックします。次に Photoshop で「トーンカーブ」を使い、写真の色調を微調整します。「私はホワイトポイント(白色点)を真っ白か、スペクトラムの中で寒色寄りの、青みがかったトーンにします。写真をきれいに仕上げようと思ったら、こうした色のバランスを取らなくてはいけません。もし色温度をかなり下げたなら、マゼンタをもっと出すように調整します」(ブロートさん)
コントラスト、彩度、質感の変化を楽しむ
「私はコントラストと彩度をよく調整します。写真をドラマチックに見せるのが好きなんです」(ボイドさん)セッティングを好きなように動かして、自分の好みを探ってみましょう。彩度を高くすれば、幻想的なムードが加わりますし、彩度を白黒まで低くすれば、構図とコントラストを強調することができます。「フイルム写真のような粒状感が好きなので、デジタル写真にあとから加えることもあります。粗さを加えるとさらに質感が増し、撮影した花が時間を越えて存在しているように感じられるんです」(ブロートさん)
被写界深度合成を試す
スマホやデジタル一眼レフで撮影した写真を合成して、複数のポイントではっきりとピントがあった写真を作成したいなら、被写界深度合成を使ってみましょう。被写界深度合成を使うと、花束全体や庭全体に焦点が合った写真を作り出すことができます。
花の写真を撮りはじめよう
ひと口に“花の写真”と言っても、太陽の光が降り注ぐ一面の水仙から、変わった角度で撮った枯れた一輪のバラまで、そのバラエティは非常に豊かです。クリエティブな花の写真でどんなムードを表現できるか、試してみましょう。
近隣を探検してみる
「私は近所を散歩して写真のインスピレーションを得ています。地域の歴史を知るにはいい方法ですし、日常の中にある美しさを発見できますから」(ブロートさん)
自宅で静物写真をセットアップしてみる
フラワーショップで選んだ花でも、オンラインで買った花でも、野に咲く花を摘んできても構いません。自宅で静物写真撮影のためのセットアップをしてみましょう。「おもしろい構図を作るために、自分でアレンジしてみましょう」とボイドさんは提案しています。
花の写真に興味が出てきたら、オンラインで好きな花の写真家を探してみましょう。そしてその作品に親しみ、気後れせずに、それを撮った人に質問してみましょう。「写真家のコミュニティはお互いに親切なので、いろいろなヒントをくれますよ」とブロートさんは言います。そして自分で花の写真を撮り始めましょう。「一番最初の写真がすごく気に入ったとしても、とにかくたくさん撮影をしてください。たくさん撮れば撮るほど、最初の一枚が自分のお気に入りだったということはまずありませんから」(ボイドさん)
合わせて使いたい便利な機能
Adobe Photoshopの新機能「空を置き換え」を使⽤すると、写真の空を別の空に⼀瞬で変えることができます。Adobe SenseiのAI技術によりマスクの作成と合成が⾃動的に⾏われ、さらに独⾃の調整を⾏うことで思い通りの雰囲気に仕上げることができます。
【1分解説!CC便利機能】写真の空を、⼀瞬で好みの空に変える
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