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ワンランク上のファッションスナップの撮り方

街ゆく人の服装や着こなしがよく分かるファッションスナップ。いわゆるスナップ写真よりも、相手を被写体として強く意識し、さらにファッションにフォーカスして撮影するものだと言えます。

ファッションスナップはシンプルに見えても、被写体やロケーションで全く仕上がりの変わる、面白くて奥が深いものです。今回は、撮影に出かける時に心がけておくと良いポイントを写真家の三澤亮介さんに紹介していただきます。

撮影に出かける前に

まず、ファッションスナップに向いているカメラやレンズとはどのようなものでしょうか?

カメラはレンズ交換式一眼レフカメラ・ミラーレス一眼どちらでも構いません。ただ、ボディを購入してレンズを揃えるとなかなか他のメーカーに移行することは予算上難しいので、最初に自分に合ったメーカーを選ぶことは大切なことだと思います。

極論を言うと、最初のうちは標準レンズよりも、単焦点レンズのほうが練習しやすいかもしれません。撮影できるサイズが決まっているため、自分でアングルや構図を探るために被写体との距離を探り、画を決める際の構図を自分のなかで模索する癖がつくからです。全身を撮影する際は35mmくらいが使いやすいですが、バストアップや上半身に寄ったファッションスナップを撮る際には50mmレンズも万能でオススメです。

ではカメラとレンズが決まったところで、早速街に出かけてみましょう。街に出かけて撮影する際は、道で気になった方に声をかけても良いですし、自分の友人と待ち合わせても良いでしょう。その際に知っておくと役に立つポイントが3つあります。

Point 1 光と時間帯について

ファッションスナップを撮るときは、まず光の当たる方向について考えてみましょう。スナップ写真と同様、被写体に光の当たる光源の位置はフロント、サイド、バックが基本であり、光源の位置によって写真の印象も変わってきます。まずはじめは服がはっきりと見えるほうが良いと考えて、フロントから光が当たる位置に被写体を立たせてみましょう。そうすることによって、「被写体が暗くなってしまい服のデティールが見づらい」という問題も避けられます。

次に時間帯についてです。同じ風景も朝昼夜で全く違う表情を見せてくれるので、そこに被写体が加わることで更に写真が幅を持ち始めます。これはファッションスナップの醍醐味だと思います。

まずこの写真ですが、お昼ごろの時間帯に撮影しています。光源の場所は正面よりの右側です。被写体の自然な表情に合っているのと、アンニュイな雰囲気に合っているのでこの時間帯と光の当たる向きを選びました。ファッションスナップとはいえ、被写体の持つ雰囲気に合わせて光源の位置や、時間帯を選ぶことは大切です

Point 2 ロケーション選びについて

ロケーション選びもファッションスナップの撮影には非常に大切です。もしかすると、ロケーション選びに最もこだわる方が多いかもしれません。ロケーションを選ぶ時に大切なことは「被写体がそこに立たなくても写真として画になりそうな場所であるか」だと思います。

この視点を持っているだけで、ロケーション選びの際にピンとくる場所を見つけやすくなるでしょう。ここで、「背景をぼかせば写真がかっこよくキマるのでは?」という疑問にも回答できるかと思います。たしかに、背景をぼかすとなんだか本格的に見えるかもしれません。それが有効な場合も往々にしてありますが、ロケーション選びに納得がいっていれば、背景をぼかさず全てをはっきりと写しても、かっこいいと思えるファッションスナップになる場合もあるのです。

まずはこの写真を見てみましょう。

この写真は左奥に遠近感のある抜けが見えるものの、メインは写真の右上から斜めに角度のついている黄色い壁です。この時は、被写体が紺色の服を着ていたので存在感を際立たせるために黄色の壁の前に立たせて、被写体を写真の真ん中に配置しました。そして正面から撮影するのではなく、斜め下から煽り気味で撮影することで、黄色の壁が写真の中で被写体に対して斜めに入ってくれることが画としてきまるであろうという想像のもと、この位置からシャッターを切っています。

こちらの写真も、少し変化球ではありますが紹介します。具体的に変則的な点は、テーマのロケーション選びにあります。撮影場所は古いゲームセンターです。被写体には、我々から見て右側のゲームセンター入り口から差し込む自然光が顔の左側に当たっています。ロケーションの不思議さもあり、時間帯が朝か夕方かわかりません。さらに、背景の絵力が強いので、主役は被写体であることを強調するために背景をボカしなんとなく感じさせる程度にしています。このように、写真の仕上がりを想像しながら、背景をぼかすか否か、そして被写体をどこに立たせるのか考えていきましょう。

Point 3 被写体への指示について(目線、ポージング等)

さて最後のポイントです。ここでは、被写体への指示についてお話しします。

まずはこちらの写真。被写体が下を向いて目線が外れています。ですがこちらも、きちんと狙って撮影しているのです。

現場では、「服を触ったり、色んな所を向いたりしながら、なんとなくこっちに歩いてきて」という指示を出しました。このような指示で作り出せるのは「抜けた瞬間」です。これはどんなスナップ写真でも大切な、「一連の流れの中を切り取る」という作業です。これだけ具体的な指示をこなそうとすると、被写体としてもカメラへの意識が多少なりとも散漫になります。そうすると、自ずと表情や目線を作り込むことが難しくなるのです。ファッションスナップとして画になる瞬間をあらかじめイメージしておき、抜けた一瞬で逃さないようにシャッターを切る、という流れです。

同じように、人は動作の途中になればなるほどカメラへ意識を向けなくなるので、被写体に思い切ってジャンプのような動きをさせるのも手です。一見難しそうですが、タイミングさえ合えば躍動感も出やすいのでオススメです。

また、この写真ように、被写体の体ごとカメラと直角になるように座らせ、目線だけをこちらに向けることで、服の袖に入っているロゴを自然に見せつつ被写体の顔を印象的に見せることが出来ます。この時は、被写体のポージングも影の向きに合っていて自然だったので、全体としてバランスの良い写真になっています。同時にファッションを見せる目的もしっかり果たしています。

ここまで3つのポイントを挙げましたが、ファッションスナップはとにかく練習あるのみです。その中で、自分にとって応用しやすいポイントがどれだか見えてくると思います。この他にもファッションスナップを撮る際のティップスはたくさんありますが、ここで述べたことは特別な機材がなくても身一つで挑戦できることなので、是非おさえておいてください。

最初はカメラを持ってたくさん散歩し、「ここで撮影してみたい!」「ここに被写体を立たせたらかっこいい!」という場所を見つけましょう。その後、そこにどんな光が差し込み、どんな影が落ちて、どの時間帯が自分のイメージに近いのか観察してみましょう。もちろんこのときにも写真を撮ってみてください。

その次は被写体を立たせてみて、まっすぐ撮るのかしゃがむのか、上から撮るのか試し、しっかりとイメージを作りましょう。

そこまで準備をしてファッションスナップの撮影をはじめたら、どんどん自由に歩いて、ロケーションとの偶然の出会いや、モデルが見せてくれる一瞬の表情をたくさん撮ってみましょう。

まずは撮ることを楽しんで、特別な一枚を撮りに出かけましょう。

(取材協力:三澤亮介さん)

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