
グレーの領域がない線画
線画は鉛筆、インク、またはピクセルで描かれた、様々な太さの線から成るモノクロのイラストです。通常は白黒ですが、単色の背景にひとつの色を使用する場合もあります。ひとつの楽器で曲を演奏する音楽に似た現代美術で、単なる落書きとは別物です。単色の背景に黒い線だけで、精緻な被写体を描くこともできます。
1本の線で世界を創り出す
線画は簡単に見えるかもしれませんが、注意しながら練習すれば大きく上達します。漫画家のJonathan Case氏は、こう述べています。「暗い部分から明るい部分への変化は、クロスハッチングや線の太さで表現する必要があります。影になっている部分には太めの線、光が当たっている側には細めの線を使います」。また、「習得するには、明暗を操り、立体感を伝えることが重要です」と同氏は言います。「細部にとらわれ過ぎずに物体を描くには、物体の細部を描く方法を知っておく必要があります。それでこそ線画はおもしろくなりますし、物の形を効率良く伝えることができます」
線画の歴史
何世紀にもわたり、多くの偉大な芸術家が独自の線画スタイルを試みてきました。レオナルド ダ ヴィンチの科学的スケッチ、パブロ ピカソの抽象的な線画、マティスのミニマリズムなどがその例です。20世紀初頭、画家のエゴン シーレは陰影をほとんど付けずに輪郭線画を描きました。シーレの絵は、線と被写体の外形の表現力に重点を置いています。
線画の種類
線画は、静物画、肖像画、本のイラスト、漫画本、グラフィックノベルなどに使用されます。線画の達人なら、黒いインクでひと続きの線を描くだけで、おしゃれなウォールアートを描くことができます。実際、スカンジナビア(「スカンジ」とも呼ばれる)の線画プリントには大きな市場があります。幾何学的な線で美しい模様を作り出すアーティストもいます。ここ数十年、タトゥーのデザインには、レトロな水夫の絵や象徴的なカタロググラフィックを模した線画がよく使われています。

線画を描くためのヒントとインスピレーション
被写体の様々な部分のアウトラインを輪郭線だけで描いてみてください。または、クロスハッチングと様々な太さの線で陰影を追加してみてください。どちらにしても、線画は光、質感、遠近法、構成など、芸術の様々な要素を学ぶのに効果的な方法です。プロのイラストレーターによる以下の線画のヒントを参考に練習しましょう。
線の太さを変える
様々な線の太さを試してください。ペンやデジタルブラシのサイズを変えて使用しましょう。主要な線は中程度、強調するには太め、細かいディテールや陰影の線を追加するには細めにします。紙やデジタルタブレットへの筆圧の強弱によって、ひとつのブラシで異なる太さの線を描くこともできます。
迷いながら線を重ねない
線画は、一般にくっきりと鮮明に描かれた見やすいものが優れているとされます。いくつかスケッチした後は、線を何度も重ねて描くのではなく、極力1回で線を描く練習をします。「ほとんどのアーティストは、最初は線をたくさん描き過ぎますが、腕が上がるにつれて、1回で描きたい線を描けるようになるものです」とCase氏は言います。
継続的にスケッチする
いつでも練習できるようにスケッチブックを手元に置いておきましょう。腰を据えて目的のものを描き始める前に、ウォーミングアップとしていくつか思いついた絵を描いて、手を慣らし、気を落ち着かせてください。「ウォーミングアップをすると、より自信を持ってイラストに取り組めるようになります」とファッションイラストレーターのJosefina Fernandez氏は言います。
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紙やタブレットを回しながら描く
描くときに手を体に近づけ過ぎず、体から離して描くと、より滑らかな線を描くことができます。Case氏は、「カンバスを回転させないと、手が邪魔になって思い通りに描けません」と説明します。
デジタル線画では解像度に気を付ける
線画はピクセル化されていない鮮明な状態に保つことが重要です。600~1200DPI程度の高解像度で描画し、印刷やweb用にサイズを小さくする必要がある場合は、適切な画像補間方式を使用します。Adobe Photoshopでモノクロアートを作成する場合は、「ニアレストネイバー法」が最適です。「白と黒の間にグレーが加わることはありません」とCase氏は言います。
デジタル線画から始める
まずは線画を作成して描き方を習得してから、別のスタイルのアート(グラフィックデザインなど)のスキルを磨いていきましょう。線画はカラーイラストや水彩画の出発点として最適です。デジタル水彩ブラシを使用すると、新しいレイヤーにカラーを追加して線の上または下にきれいに流し込むことができます。Adobe Frescoには、デジタルアプリで線画を極めるために必要なツールがすべて揃っています。紙を1枚も使わずに何百ものスケッチを描き、様々なブラシの太さやテクスチャを試してみましょう。
Frescoでスケッチや写真をトレースする
レイヤーを操作すると、スケッチや写真を簡単に線画でなぞることができます。「Pinterestから取得した画像をペーストし、不透明度を下げてから、別のレイヤーを追加してその上にスケッチすることができます」とFernandez氏は言います。
スムージングツールを試してストロークを安定させる
Frescoでブラシにスムージングツールを適用すると、手ぶれが自動的に補正されます。Fernandez氏はこう述べています。「Frescoでは、線をそれほど正確に描かなくても、滑らかな線を思いのままに描けます」
芸術作品の中で光や形を表現する能力を高めたい方には、線画の練習をお勧めします。「線画の練習では、白と黒だけで形を表現する方法と、それらのバランスをとる方法が否応なしに身につきました」とCase氏。「アーティストとして未熟な私の画力が向上したのは、そのおかげだと思っています」。この万能な描画方法をぜひ活用してください。
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